貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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いやぁ、ディプラデニアちゃんの開花おめでとう。
まさかリンゴ団長の傷心中に来るなんて、これはネタにしろってことですよね!!
早速ネタにしたよ!!

そろそろネタ切れも見えてきたので、運営さんにも感謝しきれません。
それにしても今回開花の金全員持ってるから、突マニュ足らねぇ。



ブラックサレナ史上最大の危機

 懐かしい夢を見た。

 

「サクラ、お前は他人の悪意に無頓着すぎる」

 あれは騎士学校時代だろうか。

 いつものように頼まれごとを終えた私は、ウメちゃんにそう言われた。

 

「う~ん、どういうこと?」

「嫌がらせで仕事を押し付けられたんだ、お前は」

 彼女は表情を少し硬くしてそう言った。

 

「でも、先輩たちはどうしても外せない用事があるからって」

「町で遊びほうけることが外せない用事なのか?」

「今日しかできない事があるのかもしれないかもしれないじゃない。

 仮にそうだとしても、先輩たちの教練は厳しいもの。私はすることは無かったし、遊びに行ったとしても別にいいと思うわ」

 私は思ったことを口にしたのだが、ウメちゃんは細い目を閉じて首を振った。

 

「お前はそう言うやつだと知っているがな、時々その思考回路が理解できないよ」

 それはどこか諦めたような物言いだった。

 

「サクラ、お前が羨ましいよ。お前は嫉妬とは無縁なのだろうから」

「そんなことないのに~」

 と、私は返したが、きっとウメちゃんの言う通り、私は他人の嫉妬なんて理解できていなかったのだと思う。

 

 この頃の私はまだ周囲から天才だとか、期待の新人だとか、言われていなかった。

 だからただ単に、面倒事を押し付けられただけだったのだろう。

 

 だけど、私は間もなく花騎士に選ばれた。

 在学中に花騎士に選ばれることは珍しくは無い。けど私はその中でも逸材だったらしく、頭角をすぐに現した。

 

 その頃からだと思う、先輩たちからいけ好かないと言われるようになったのは。

 悪意を持って仕事を押し付けられることも増えた。

 だから花騎士に選ばれないのだ、とウメちゃんは言っていたけれど。

 

 だからと言って、彼女たちは私に直接的な行動には出なかった。

 私は私のしたいことをしていただけだけど、私には人望があったらしく、多くの人が私の周りに集まり、先生や同期、多くの尊敬できる先輩たちが味方となってくれていたからだ。

 私はその頃から優等生筆頭みたいな感じだったのよねぇ。

 

 だから陰口はあっても、それ以上のことは無かった。

 私はいつか彼女たちも認めてくれると、そう思っていたからだ。

 

 それがたまらなく不愉快なのだろう、とウメちゃんは言っていたけれど、私は首を傾げることしかできなかった。

 

「私もな、時々お前と自分を比べて嫌になる時がある。

 頑張れば頑張るだけどうにかなってしまうお前が、心底羨ましいよ」

「そんなことないのに、私の目標はウメちゃんなのよ?」

「そういう飾らないところが、お前の良い所なんだろうな」

 そこでウメちゃんは何か言いかけたが、結局は何も言わなかった。

 今なら、彼女が何を言おうとしたのか分かる。

 

 私だって誰もが自分のように出来るとは思っていない。

 でも私は私のしたいことをしているだけなのだ。

 皆もそうすればいいと、思っていた私は何もわかっていなかったのだと思う。

 

 

 ある時、新しい教官が教導部隊を引き連れやってきた。

 その頃には私も後輩ができていて、百年に一度の逸材だ、なんて言われるようになっていた。

 

 教導部隊の人たちはみんな良い人で、教官はロリコンだから二人きりになっちゃダメだよ、と冗談めかして触れ回っていたりもした。

 彼もそれは否定しなかったし、私たちくらいの子はフレッシュでいいなぁ、なんて言って部下たちから顰蹙(ひんしゅく)を買っていた。

 

「おい、サクラ、外円部をもう一周して来い」

 そんな冗談の分かる教官だったが、しばらく私たちの指導をしていると、突然私にだけそんな風に言うことがあった。

 

 私は期待されて特別目に掛けられているのだと思っていたけど、ウメちゃんは納得いかない様子だった。

 

 ある時、私は教官に昼休みの殆どを走るように言われたことがあった。

 幾ら私でも、物理的に不可能なことがある。

 実は頼まれごとがあるので、放課後で構いませんか、と私は彼に頼んだ。

 

 すると、彼は心底不快そうな表情になった。

 私はそれが、厳しく睨まれているだけなのだと思っていたが、そうではなかったのだろう。

 

「サクラ、お前は何で花騎士になろうとしたんだ?」

 私を叱咤する為に彼はそのように言ったのだと思っていた。

 彼は私の普段の行いが気に入らないから、教練の終わりにそんなどうでもいい話をしたりしたとか、ずっと後に酒の席で後悔と共に語っていた。

 私の良い子ちゃんぶりが、鼻につくらしかった。

 

「ええと、強いて言うなら、頼まれてですかねぇ」

「はぁ?」

 お前は何を言っているんだ、という表情で彼は私を見た。

 

「実は近所のおばさんが害虫に襲われて怪我をしたんです。

 他にも、近くのパン屋さんのご主人が害虫の所為で小麦が高くなったと言っていました。

 あと、遊び場に害虫が出てくるようになって泣いている子も居ました。

 みんな、どうにかならないかなぁ、って言っていたんです。それと……」

「……いや、わかった、もういい、行っていいぞ」

「え、本当ですか!? 放課後しっかり走りますんで、それじゃあ!!」

 私は彼の呆けたような顔を背に、校舎へ走り出した。

 

 それ以来、教官は教導を終えて騎士学校を去るまで突然私に何かを言う様なことは無くなった。

 

 

 

「懐かしいわ~」

 私は目を覚ますと、感慨に耽ってそう呟いた。

 何だかんだで、彼は分かってくれたのだ。

 それが分かって、私は嬉しかった。

 

 私は身支度を整えて、自室を出た。

 外への道中である宿舎の食堂には個人向けの新聞が自由に観覧できるように置いてあった。

 

 私はそれを広げて、その内容を確認し笑みを浮かべた。

 そこには、ウメちゃんが大きな作戦で活躍したと、他の花騎士たちの名前と共に書かれていた。

 そのことがうれしくて、何度も読み返し、もう内容も覚えてしまった。

 

「おっと、いけないいけない、もうそろそろ馬車の時間だわ」

 目的地はウインターローズ。

 そろそろ回復しているだろう団長さんをお迎えに上がらないと。

 

 

 

 別に私が彼を迎えに行く必要はないが、彼の容態が心配なのでお見舞いついでと言ったところだった。

 数日かけて私はウインターローズの診療所に戻ると、この地に残っていた部隊の仲間たちがロビーで困り果てた様子で集まっていた。

 

「みんな、どうしたのかしら~?」

「あ、サクラさん、どうしたんですか?

 忘れ物でもあるなら、手紙をよこしてくれればよかったのに」

 と、リンゴちゃんは私が来たことに驚いた様子だった。

 

「いいえ、団長さんのお見舞いと一緒に皆を迎えに来たの。

 近く吹雪になるそうだし、そろそろ出ないと間に合わなくなっちゃうわ」

 流石雪国だけあって、秋口に立ったばかりだというのに、もう冬が駆け足でこちらに来ようとしている。

 前に来た時は夏の終わり前でまだまだ暑かったけど、本当にあの寒さで序の口だったみたい。

 

「ああ、そうなんですか、ありがとうございます」

 コートの雪を払う私に彼女は代表して礼を言った。

 

「気にしないで。それより、皆困った顔をしてどうしたの?」

「実は、その、団長さんが……」

「団長さんがどうかしたの?」

 リンゴちゃんは言いにくそうにして、仲間たちへと視線を向けた。

 

「初めまして、サクラさん。

 私、プルメリアと申します。こちらの部隊に配属になりましたので、どうぞよろしくお願いします」

「あ、これはどうも、サクラです。よろしくお願いします」

 身長差のある二人は律儀にあいさつを交わした。

 

「それでですね、実は団長さんは今、傷心の余りすこし後ろ向きと言いますか、目的を見失っていると言いますか……」

「傷心? 何かあったんですか?」

「ええ、まあ、私から言いづらいのですけど」

「構うものか、どうせみんな知っている」

 ロビーの端の壁に寄りかかっていたクロユリが、椅子の上にあった荷物から、数枚の手紙を取り出した。

 

「読んでみろ、女々しい男の情けなさが垣間見える」

「そんな言い方は無いと思いますけど……」

「あれに付き合わされる身にもなってみろ。

 いつまでも腑抜けててもらっても困るんだ」

 と、彼女はペポちゃんの声を切って捨て、手紙の束を私に預けた。

 

「読んでも大丈夫なの?」

「ええ、彼は一時期自棄になっていて、やむなく私も読んだので」

「同罪、いえ共犯かしら?」

「それならみんな同じですよ」

 私はいたずらっぽく言ってみたが、皆は滅入っているようだった。

 私はそれ以上会話をせずに、手紙の内容を確認した。

 

 

「うわぁ……」

 そして読み終え、最初に出た言葉がそれだった。

 その悲痛な内容に、居た堪れない気持ちになってしまった。

 決して軽々しく見ていい内容ではなかった。

 

「その、もしかして、この手紙の子って」

「ええ、彼女が活躍した新聞を読んでしまって、更に……」

「このランタナが一緒にお風呂入ろうってゆーわくしても、ちっとも面白い反応しないんだもん。

 だんちょ……彼はもう、終わりですね」

 いつも元気なランタナちゃんも、肩を落として溜息を吐く有様だった。

 

 

「具体的に、どんなふうになっているの?」

「団長が、ロリコンじゃなくなってるんです」

「……それはそれでいいんじゃないのかしら?」

「何を言ってるんですか!!

 ロリコンじゃない団長は、ルーとごはんの無い究極カレーみたいなものなんですよ!!」

「概念だけしか残ってないわね……」

 彼がロリコンであるということが占める割合が多すぎるような気もするが、誰も反論しない辺り彼がどう思われているのか分かるというものだった。

 そうなのね、団長からロリコンを取ったら体ごと消えちゃうのね。

 

 

「それに、今ちょっと荒れていて……」

「荒れている?」

 私が復唱すると、リンゴちゃんは病室の方に視線を向けた。

 私は歩いて病室に近づくと、中から怒声のようなものが聞こえた。

 

 男の声と女性の声。

 男の声は団長だとして、もう一人は?

 

「団長さんのお母さまです」

「あぁ……」

 リンゴちゃんの説明に、私は呻いた。

 何とも最悪のタイミングである。

 

 ここから先は聞くに堪えないので、音声をカットして説明する。

 

 団長さんの声は、頼むから帰ってくれと言った若干悲痛な声音だった。

 彼のお母さまはそれを気にした様子も無く軽く流し、これから出立する彼の荷物を勝手にまとめているようだった。

 それどころか、ちゃんとご飯は食べているの、とか、部下の子たちに優しくしているの、とか話しかけていた。

 

 団長は関係ないだろ、と言い、わかったからさっさと帰ってくれ、と懇願していた。

 一方、お母さまはもう少しで終わるから、とマイペースを崩さない。

 

 私は、距離感が噛み合っていないと感じた。

 親子にだってプライベートな時間や場所はある。お母さまはそれを親子だからと土足で踏みにじっているのだ。

 団長さんからしたらもうとっくに自立していて、母親からしたら子供はいつまでも子供で、だからこそ両者の間合いが異なっていた。

 

 普段なら、団長も世話を焼く母親に渋々と従ったかもしれない。親子とはそう言うものだ。

 だが、今は不味かった。団長さんは一人になりたい時間を、無残に踏み荒らされていた。

 

 私は頭を抱えて血走った眼をした団長さんの姿が目に浮かぶようだった。

 だから私は、意を決して病室のドアを開けた。

 

 驚くリンゴちゃん、驚き私の名前を呼ぶ団長、そしてこちらに目を向け笑みを浮かべる彼のお母さま。

 私も笑みを浮かべて、即座に彼女をこの部屋から追い出すよう会話のシミュレートをした。

 

 

 

 

 

 私は、息子を頼みますよ、と笑顔で帰っていく彼のお母さまを見送り、病室に戻った。

 

「ありがとう、サクラ」

 団長は憔悴しきった声で言った。

 決して好ましいとは思っていない母親が同じ部屋にいるというのは、相当な苦痛だったようだった。

 

 話してみて分かったが、彼女は間違いなく普通の善人だった。

 百人中九十人以上が良い人だ、と言うような人当たりの良い善良な人だった。

 自分の善良さを疑おうともしない人だった。

 

 団長さんが私に嫌悪感を抱いたのは、正しい認識だったのだろうと、私は思った。

 

 

「なんで一人にして欲しいって言っているのに一人にしてくれないんだ。

 なんで黙っていてって言っているのに話しかけてくるんだ。

 なんで来なくていいって言っているのに来るんだ。

 なんでたったそれだけのことができないんだ、してくれないんだ。

 自分勝手に、してほしくも無いことばかりするくせに」

「もう安心してお帰りになりましたよ。

 私も部屋から出ていきましょうか?」

 私は優しく彼に声を掛けた。

 

「いや、いい、少し話を聞いてくれ」

「分かりました」

 私は椅子に座って、黙って聞く姿勢を取った。

 たったそれだけの動作に、彼は安堵のため息を漏らした。

 

 

「あのな、ブロッサムヒルに戻ったら、引き継ぎを何とかして引退でもしようかと考えているんだ。

 それで孤児院でも開いて、身寄りの無い子供たちの世話をして余生でも過ごそうかと思ってる」

 その言葉だけで、相当に重症なのは理解できた。

 

「良いと思いますよ、団長さんは小さな子が好きですからね」

「はは、もう小さな子とか、そういうのいいや。

 欲望とか全部捨てて、牧師の勉強でもしながら教会でも建てて、一生神に懺悔しながら暮らすんだ」

 なるほどこれは気が滅入る。

 死んだ目と乾いた笑みで枯れた将来の展望を語る彼を、私は相槌をしながらこの後どうするか考えを巡らせた。

 

 

 

 

 彼の気が済むまで約一時間ほど話を聞いて、私はロビーに戻った。

 

「どうでしたか?」

「あれは重症ねぇ」

「そうでしょう?」

 心底困った様子のリンゴちゃん。

 確かにあれはもぬけの殻だった。

 団長の形をした抜け殻だった。

 

「やはり、これを使うしかないか」

 溜息を一つ、クロユリは自分の荷物から数点の小物を取り出した。

 ペンダントやペン、布切れのようなものまである。

 

「それは何ですか?」

「奴の教導部隊時代の部下たちの遺品だ」

 それを聞いた全員の顔が強張った。

 

「これを見れば、奴も己のうちの憎悪を思い出すだろう。

 そして牧師になって懺悔して過ごすなんて馬鹿げたことも言うまい」

「それはちょっと可哀そうでは……」

 ペポちゃんが恐る恐るそう言った。

 荒療治なんてものじゃなかった。

 傷口を焼いた鉄で塞ぐようなものだ。

 

「クロユリさん、恐ろしい子ッ!?」

 容赦のない言葉にランタナちゃんも震える。

 

「では時間が傷を癒すのを待つか?

 丁度近いうちにいつ止むか分からない吹雪が来るようだからな。

 それもいいかもしれん」

 彼女はあくまで最終手段を提示しただけで、本気ではなかったようだ。

 

 

「こうなったら、気は進まないけど、“あれ”を使うしかないわね……」

 私は“あれ”の存在を思い出して、すこし憂鬱な気持ちになった。

 

「あれ、ですか?」

「え、まさかあれを使うつもりなんですか!!」

「あれってなんだじょ?」

 意図を察したのはリンゴちゃんだけだったが、彼女だけで十分だった。

 

「それでは、こちらをどうぞ」

「ええ、彼の想いが本物なら、これで何とかなるはず」

 私はリンゴから大切に包装された小瓶を受け取った。

 それを解くと、中には赤い丸薬が詰まっていた。

 そしてたくさんの注意書きがラベルに赤字で書かれていた。

 

 用法:一度に三粒、少量の水と共に飲むこと。

 効力は約20時間を目安にしてください。

 服用は18歳以上の者に限り、小児への使用を固く禁ずる。

 連続して服用する場合、最低でも必ず5日から一週間を空けること。

 これらを破った場合、命の保証は致しかねません。この薬品の過剰摂取による死亡は、当局は関知いたしません。

 服用時、体に痛みが発生する場合があります。服用後、効力が消えた後に違和感がある場合、当局の医師にご相談ください。

 ※この薬品の効果は個人差があります。

 ※この薬品は、決して魔法の薬品ではございません。かつての自分を思い出し、楽しむために使用してください。この薬品に依存、または中毒になる様な使用はお控え願います。

 ※この薬品を使用した暴行、また誘拐など犯罪は通常より重い刑罰が科せられ、主に以下の法律が適用されます。

 ………

 ……

 

 

 私が注意書きを読み込んでいると、その説明文の長さに周囲もそれがただならぬ薬品であることは察したようだった。

 

「お水をどうぞ」

「ありがとう」

 リンゴちゃんからコップに入った水を受け取り、小瓶の中から三粒取り出し口に含み、水で飲みこんだ。

 

 変化はすぐにやってきた。

 周囲の驚愕の声が、ロビーを満たした。

 

 

 

 

「団長さん、入ってもよろしいでしょうか?」

 虚ろな目で聖書を読んでいた団長はその声に、反応しドアへと視線を向けた。

 

「……サクラか、どうぞ」

 普段の彼ならば、その声に違和感を感じたかもしれない。

 だから、彼女が入ってきた時、心底彼は驚愕した。

 

「さ、サクラ、そ、その姿は!!」

 彼が驚くのも無理は無かった。

 

 身長170㎝近い長身の部類に入るはずのサクラは、約145㎝ほどまで縮んでいた。

 髪の毛の長さはそのままに、手足もそれ相応に縮尺され、優美な曲線を描いていた腰のくびれは限りなく縦に近い。

 特に、豊満であった胸部は見る影も無く、僅かな膨らみを残すばかりだった。

 年齢にしておよそ十代前半ほどのサクラが、そこにはいた。

 服装も女の子らしいひらひらとしたものだった。

 

「おお、おお、おおおお!!」

 気付けば団長はベッドから転げ落ち、彼女の前に這いつくばっていた。

 

「これは、これは夢か!! 神の奇跡かッ!!!」

 彼は涙を流しながら、目の前の顕現にした芸術的美少女に打ち震えた。

 

 

「夢じゃありませんよ、団長さん。あの薬を飲んだんです」

 記憶より幼い声音のサクラは、優しく微笑んでそう言った。

 

「ま、まさか、飲んだのか、チューリップ団長がくれたイエローチューリップと同志ローズマリー氏と共同開発したという、薬学と錬金術の粋を集めた秘薬、“幼児化薬~あの頃の思い出を~”を!!」

 やたら説明的な口調で団長は慄いた。

 つっこみどころは多いが、とりあえずここは同志扱いにされているローズマリーの名誉を守ろう。

 彼は個人的に彼女の研究を援助しており、その過程で若返りの薬ができたら教えてね、ぐらいの意味でしかない。

 

 貴重な材料を使う為に限定生産で数は少なく、ひと瓶数百万円という法外な値段にも関わらず予約開始十分で完売した伝説の代物だった。

 

 以前彼は休みを取らずに他人の為に働くサクラに対してこれを使えばどうにもならないな、なんてゲス顏で迫ったのだが、使っても関係ないですよ、試してみますか、と言われて使用を断念したのである。

 

「団長さんが元気なさそうだったので、特別にですよ?」

 にこりと笑みを浮かべてロリサクラは言った。

 彼女のオッドアイも相まってか、余計に神秘的だった。

 

「て、天使、天使だ……」

 涙と、ついでに鼻水も垂れ流しながら彼は目の前の奇跡に、己の中で消えていた何かに火が点いたのを感じていた。

 多分、涙で前がよく見えないから補正も掛かっているのだろう。

 

 

「団長さん」

「はい!!!」

「騎士団長を辞めるなんて言わないでください。

 また、この薬を使ってあげますから。辞めたら、もう使ってあげられませんよ?」

「うん!! そうする!!! 俺、団長続ける!!」

 傷心とはなんだったのか。

 あっさりと復活した団長を前にして、サクラは思った。

 

 確かにこの人からロリコンを取ったら何も残らないわね、と。

 

 

 

 

「よし、みんな、準備は整ったか、さあ行こう!!」

 すっかり元気を取り戻した団長は退院手続きを終えて、ロビーに待機していた面々にさわやかな笑顔でそう言った。

 

 その表情を見た面々は、無性に腹が立ったのか、特に理由のある暴力が彼を襲った!!

 具体的にはクロユリとペポだった。

 

「あ、ちょ、何すんだお前ら、痛い、痛いって!!」

「うおぉー、すげぇ、サクラさんってばマジでロリっ子になってるー!!

 私も負けられねぇ、これ私も使ってみたらどうなるのかなぁ!!」

「これは高いんですから、勝手に使ったらダメですよ」

 いたずらっ子に使われる前に大事にしまいこむリンゴ。

 

 

「まあ、とにかく、団長さんが元気になって良かったです」

「ええ、そうですねぇ」

 プルメリアとサクラはそう言ってお互いに笑った。

 

 こうして、ブラックサレナ部隊の最大の危機は去ったのだ。

 

 

 

 

 




害虫にウサミミをはやせんなら、幼児化の薬くらいできるだろうイエチュさん!!
イベントでの彼女は作者の想像以上に荒唐無稽でしたわ。

ということで、突如閃いたロリサクラでした。
大人のキャラをロリ化するなんて冒涜だ当の批判は一切受け付けておりません。

運営さん、ロリサクラ実装してもええのよ?(にっこり

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