貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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最近の良かったこと
巫女ナデシコちゃんが出たこと
それ以外爆死したけど。

これはナデシコちゃん出せと言う天のお告げ・・
それにしても巫女ナデシコちゃんのあの衣装、一瞬白スク水に見えたのは俺だけじゃないはず・・・







雪原にて

 ナルドホグル雪原を覆うまっさらな白雪を、複数の足音が踏みしめる。

 この美しい景観を足跡で汚すのは一種の冒涜と感じる一方で、新雪を侵す快感にも似た感覚を得られることだろう。

 無論、一時間もこの雪原を歩けばそんな新鮮な感覚は消え、大抵の人間は辟易するのだが。

 

 そして雪原に降る雪が数時間もすればその足跡など、何事も無かったかのように覆い隠すのだ。

 

 

「寒い……」

「歩きにくいよぉ」

「わ、きゃぁ!!」

 いつまでも続くように思える雪景色に、リンゴ団長率いる部隊の面々もぶつくさと不満を漏らし始めた。

 彼らは新たな任務の為、ウインターローズを目指して歩いていた。

 

「おい、大丈夫か?」

 ボサッ、という音がしたので団長が振り返ると、足を取られて雪の中に大の字の跡を残す部下の姿があった。

 

「ほれ、よいしょっと」

「ううう、ありがとうございます……」

 全身雪まみれの部下を起き上がらせ、軽く雪を払ってやると団長は再び先頭を歩み始めた。

 

「団長さん、なんでこんなに雪降ってるんですかぁ、今って確かまだ夏ですよねぇ……」

「残念ながらウインターローズ出身にはこんなの寒いうちに入らないぞ。

 俺ならこのくらい裸で歩ける。マイナス20度以下からが本番だな」

 団長がそう答えると、言葉を投げかけた花騎士は信じられないようなものを見る顔つきになった。

 

「なんだお前ら、ウインターローズは初めてか?

 そう言えばうちの部隊に俺と同郷のやつは居なかったな」

 彼がそう言うと、任務で何度か来たというのが数名手を上げる程度だった。

 

「どうしたお前ら、こっちに来る前はようやくあの暑さから解放されるって喜んでたじゃねーか」

 と、出身国だからか、どこか活き活きしている団長は寒そうにしている部下たちを見て笑った。

 ちなみにその喜んでいた面子は、先ほど手を上げた者の中には居なかった。

 

「寒くてどうしようもなくなったら言えよ、冗談じゃなく死ぬからな。

 俺が抱きしめて温めてやるよ」

 団長の物言いはそれこそ冗談っぽかったが、それが冗談ではないのは明白だった。

 

「あ、ただし、貧乳限定な。

 巨乳は自前の脂肪で何とかしろ」

 と、そんな咄嗟に思いついたセクハラ発言をぶちかますと、部隊で一番の胸囲の持ち主(B92)が思いっきり固く握った雪玉を作って団長の後頭部にぶち当てた。

 

「あぎゃ!?

 おい、今の投げた奴誰だ!! めっちゃ痛かったぞ!!」

 彼が振り返って声を張り上げるが、全員そっぽを向いて知らんぷりだった。

 

「くっそ、どいつも大してデカくないくせに」

 団長がそう吐き捨てた直後、十を超える雪玉が彼を襲った。

 

「いい度胸だお前ら、ガキの頃に雪合戦王と呼ばれたこの俺に挑むとは。

 見せてやろう、この俺の腕前を!! ちなみに俺に付いたら温泉無料券をやろう」

「あなた達!! 団長に向かって雪玉を投げるなんて失礼よ!!」

「そうよ、とっちめてあげるわ!!」

「汚いわよ、裏切ったわね!!」

「物に釣られる様な裏切者は粛清よ!!」

 そんな感じで、部隊総出で二つの陣営に分かれ、突如として雪合戦大会が始まった。

 

 

 

「これでよく分かっただろう、お前ら。

 雪原のど真ん中で、無駄に体力を使う愚かさが」

 団長は体力を使い果たして死屍累々の面々にそう言った。

 ちなみに一番ムキになっていたのは彼であるのは言うまでもない。

 

「ではお前たちに、この混浴温泉無料券を進呈しよう」

「ちょ!?」

「団長、騙したわね!!」

「ぐえっへっへ、なんなら一緒に入ってやってもいいんだぞぉ~」

 味方をしてくれた花騎士たちまで敵に回す団長だったが、彼女らの雪玉攻撃をひょいひょいと躱してセクハラ発言していく。

 ホームグランドだからか、妙に機敏な動きだった。

 

 

「自分の故郷だからか、団長さんテンション高いですねぇ」

「いつもあんな感じじゃないですか」

 リンゴとペポはそんな風にはしゃぎまわる皆を見守っていた。

 

「偶にはこういうのもいいわね~。

 皆、私も加勢するわぁ!!」

 と、童心に帰っているサクラも第二回戦へと参戦した。

 

「げッ、サクラまで敵に回るか!!

 仕方がない、ランタナ、ニニシギ!! お前たちに決めた!!」

「うおっしゃああぁぁ!!

 ランタナはまだまだやれる、やらせはせん、やらせはせんぞぉ!!」

「えへへ、団長さんの方が劣勢……雪玉に狙われる感覚、ぞくぞくしちゃいます」

 団長側も負けじと味方を召喚し、応戦し始めた。

 

 が、多勢に無勢。サクラが直接指揮した花騎士たちに勝てるわけも無く。

 

 

「ランタナ、今こそ真の力を発揮するんだ!!」

「いよっしゃぁああ!! ランタナ進化ぁああ!!!

 超絶パワーアップ!! ――――スーパーランタナッ!!」

「品種が変わっただけじゃねぇか!!

 ―――げほぉ!?」

「あぐぅ、やっぱりサクラさんには勝てなかったよ……」

「あ、そうだ、このままどれくらいまで雪に埋まってられるかチャレンジしましょう」

 雪まみれになって倒れる三人だった。

 

「たちけてクロユリぃ」

「団長は故郷の雪の味が恋しいと見えるな」

 近くにいたクロユリに手を伸ばす団長だったが、彼女はそっけなく向こうを向いた。

 

「くっそ、お前も雪玉ぶち当てられて結構熱くなっていたくせに」

「はい、団長さん、お手をこちらに」

「おお、同士リンゴちゃんマジ天使……。

 町に着いたら一緒に混浴温泉入ろうな」

「ええ、約束ですよ」

 あまり微笑ましくない男女の友情によって、団長は何とか立ち上がった。

 

「ほれ、ランタナもニシキギも起きろ。

 ランタナにはアイス沢山奢ってやるよ、ここの温泉はアイス食べ放題なんだ。一緒に行くか?」

「え、マジで、行く行く!! お腹いっぱいになるまで食べるよ!!」

「もう、ランタナちゃんったら、またお腹壊しちゃうよ」

 呆れるペポをよそに、ランタナは元気にぴょんぴょん跳び回る。

 

「あう、もうちょっとギリギリまで行けそうだったんですけど……」

「じゃあ混浴で男の人が入ってくるのをドキドキしながら温まるはいいのな」

「あ、寒いのそろそろ限界なのでそっちにします」

 そうしてニニシギも雪の中から引っ張り上げられる。

 

 このようにひと騒動終えた面々だったが、みんな道半ばだと言うのに疲れ果てた表情だった。

 あれだけ雪合戦をすれば当然の結果である。

 

「ちなみにここから次の宿場町までどれくらいですか?」

「ざっと三時間は掛かるな。

 お前たちは雪道に慣れてないから、最悪もう一時間ってところか」

 それを聞いた花騎士たちは絶望的な表情になった。

 無駄に体力を消耗した状態で、あと四時間も雪道を歩けとか、拷問である。

 

「仕方がない、最終手段だが……」

 と言って団長は荷物から信号弾を取り出すと、空高くへと打ち上げた。

 

 甲高い音と濃い色の付いた煙が立ち上る。

 すると、少ししてから何かの鳴き声が聞こえた。

 

「お、運が良いな、近くだ」

 それは、無数の犬の鳴き声だった。

 

 

「わん!!」

「ワンッ、わんわん!!」

「よーしよーし、ストップストップ!! みんな、大丈夫-!!」

 十匹近い犬に曳かれ、犬ぞりに乗った周辺を警備中の花騎士がやってきた。

 この不定期に吹雪くナルドホグル雪原では馬車も使えないので、雪原でも機動性の高い犬ぞりの方が重宝されるのだ。

 

 

「いやぁ、悪いな、立ち往生しちまってって、おお!!」

 やってきた花騎士を見て、団長は喜色を浮かべた。

 どうやら知り合いのようだった。

 

「ポインセチアじゃないか!!」

「わぁ、団長さん、おひさしぶり~!!」

 この季節感など知ったことじゃないと言わんばかりのミニスカサンタルックロリは、花騎士ポインセチア。

 季節は夏だが犬ぞりでやってくる姿は凄まじく堂に入っていた。

 

 ぴょん、と犬ぞりから飛び降りたポインセチアと、団長が妙なスローモーションと共にお互いに向かって行き、感動の再開を演出されそうになった瞬間だった。

 

「ふん!! ポインセチアに近づくなこのロリコン!!」

「げふぅ!」

 寸前で、横合いから横槍が入った。

 団長に見事なドロップキックをかましたトナカイ少女は、花騎士ホーリーだった。

 彼女もポインセチアに続いて犬ぞりでやってきたのである。

 

 

「出たな、成長してしまった方め!!

 いつもいつも俺とポインセチアのランデブーを邪魔しやがる。

 少し前まで可愛げがあったのに、胸がおっきくなってから生意気に成りやがって!!」

「何が成長してしまった方よ!!

 こんなのまだ普通でしょ、このロリペド変態ドスケベ魔神!! こっちによるな!!」

「てめぇ、ロリコンドスケベ変態魔神は本当だから良いとして、よりにもよってペドだと!!

 あいにくだがそのくらいの年齢には勃たないんだよ。そしてデカくなったお前なんかに微塵も興味なんか無いわ、この今どきの小娘が!!

 最低でも三割その胸削って出直してこい!!」

 雪の中から復帰した団長はホーリーと睨みあう。

 

「お前とはそろそろ決着を付けねばならないようだな。

 いよいよ見せる時が来たか、ナデシコちゃんの道場に酔いつぶれて運び込まれた際に習得した愛染流団長式抜刀剣術奥義、その名も“路離咬多(ロリィーター)”を!!」

「愛染流の凄まじい風評被害を見たわ……」

 至極真面目に腰の剣に手を掛ける団長を見て、この人酔ってるのか、とキルタンサスは真剣に思うのだった。

 

 

「もう、二人とも、喧嘩しちゃダメっていつも言ってるでしょ!!」

「止めるなポインセチア、これは男のプライドを掛けた戦いなんだよ」

 仲裁に入るポインセチアだったが、団長は首を振ってそれを退けた……ように見えたが、ちらちらと彼女の方を窺っている。

 

「団長さん、めッ、だよ!!」

「う、ふぅ……そうだな、争い事なんて不毛だもんな」

 男のプライドとはなんだったのか。

 ロリコンはあっさり幼女に屈した。

 

「私もやってあげようか? 滅ッ!!」

「うおっ!?」

 ホーリーの殺意の籠った蹴りが団長の脛に向けて放たれたが、寸でのところで彼は回避した。

 

「ちょ、おま、今の本気だっただろ!!」

「だから何さ!!」

「こっちにも考えがあるってことだ……ふッ」

 素早く団長はホーリーの背後に回り込むと、あっさりと羽交い絞めに成功した。

 

「ちょ、止めてってば、この変態!!」

「今だランタナ、やっちまえ」

「よーし、くらえー!!」

 まるで示し合せたかのようにランタナは動いた。

 そしてその冷たくなった手を、ホーリーの服の中に突っ込んだ。

 

「うひゃぁ!? 冷たい!!」

「こっちは温かい、ぬくぬく~」

「くんくん、お、ホーリーのくせに良い洗剤使ってるな……」

「やめろー、匂いを嗅ぐなー!!」

「臭いじゃなくて、匂いっていう辺り……だんちょ、こいつまだまだ余裕ありますぜ」

「よーし、くすぐってやれ」

「こちょこちょー」

「やめれ、やめれー!!!」

 結局、キルタンサスにいい加減にしろと言われるまで二人の責め苦は続いたのである。

 

 

 

「うう、ひっぐ、ポインセチア……私、変態に汚されちゃったよぉ」

「よしよし、大丈夫だよホーリーちゃん。

 団長さんは私に酷いことなんてしないから」

「そう言う問題じゃないんだけれど……」

 一種の確信を持って言うポインセチアに慰められながら、ホーリーは彼女の背に隠れた。

 

「ふ、勝ったぜ」

「年の差は倍近くあるのに、流石だんちょだ!!

 大人げない、いよッ、鬼畜!!」

「おい、それじゃ俺の年が三十代後半になるじゃねーか。

 俺はまだ三十路に入って少しだからな、そこんとこ間違えるなよ」

「あ、そうそう」

 ランタナはなぜかカメラ目線になった。

 

「この小説・及び原作に登場する人物は全員18歳以上です。

 ……まさか大きなお友達以外がここに来ていないよね?」

「おい止めろ、いくらお前でも言っていいこととダメなことはあるんだ」

 これ以上のメタ発言は世界観的にアウトなのでここで終了である。

 

 

「とりあえずお前は一週間ペポかじるの禁止な」

「がーん、横暴だ!!

 ランタナは激怒した。必ず、この邪知暴虐のだんちょを除かねばならぬと決意した」

「酷いと言う意味では合っているな。

 さっさと話を進めるぞ」

 団長のことをよく知っているランタナには勝てず、あっさり負けている情けない男を一瞥して、クロユリは警備の二人に目を向けた。

 

「この通り、うちの部隊は立ち往生している。

 悪いが乗せてくれないか」

「うん、そのつもりだよ。この子たちはすっごいから、十人以上乗っても平気だよ」

 ポインセチアは犬の頭を撫でながら頷いた。

 

「立ち往生してるの、雪の所為じゃなくてこいつの所為なんじゃないの?」

 あながち間違いでもなかったので、クロユリはホーリーの猜疑に満ちた言葉に目を逸らした。

 

「まったく、お前たちは辻馬車じゃないっていうのにねー」

 ホーリーが犬たちの頭を撫でていると、彼らは彼女に群がり、甘えたり舐めたりし始めた。

 

「あ、もう、くすぐったいってば!!」

「犬にペロペロされる少女……閃いた!!」

「通報しますね」

 すっかりペポも、がばり、と復活した団長の扱いは慣れたものだった。

 

 

 

 

 十人以上を乗せているとは思えぬ軽快な滑りで最寄りの町まで向かって行く。

 団長たちは比較的大型のそりにすし詰めになり運ばれていた。

 

 犬ぞりの運べる重量は、それを曳く犬たちの体重と同程度だとされる。

 幾ら彼らが凄くても、装備だらけの人間を十数名ずつ乗せるのは不可能なので、恐らくそりにも魔法が掛かっているのだろう。

 

 

「ねぇねぇ団長さん、実際のところホーリーさんも射程圏内でしょう?」

 ホーリーの曳くそりに乗るリンゴは、こそこそと横に座る団長に小声でそう言った。

 ちなみにポインセチアの方に乗ろうとした彼だが、ホーリーに犬たちを(けしか)けられそうになったので断念した。

 流石の団長も、害虫も恐れぬ勇猛な名犬たちには敵わないようだった。

 

「そうだな。ああは言ったがあれくらいならまだ普通の範囲だしな。

 四つん這いにして後ろからズッコンバッコンしてみたいもんだ」

「流石団長さんですね!!

 それにしても昔からの知り合いみたいですけど、随分扱いが雑ですよね。

 もしかして何かあったんですか?」

「いいや別に、ただあいつには遠慮なく接してほしいってポインセチアに頼まれたんだ。

 言われてから気づいたよ、あいつは俺と似てるんだ」

 彼はそう言って、ホーリーの背中を見やった。

 

「同時に俺は母親の影も見た。

 それはつまり、俺と母親は似てるってことなんだろう。

 そう思うと、なんだか放っておけなくてな」

「お母さまのこと、お嫌いなんですか?」

「愛してはいるよ。憎んでもいない。

 別に全てにおいて常に欠点だらけってわけでもないしな。……ただ、嫌なだけだ」

 そう呟く団長は、哀愁に満ちていた。

 それは言葉にしにくい、思春期の反抗期にも似た感情だった。

 

 

「もうこの話は止めましょう。

 そうだ、ウインターローズのいいところ教えてくださいよ。

 私、あまりこの辺に来る機会とかなかったもので」

「そう言われてもなぁ、ウインターローズって他の国より遅れている方だし。

 工芸が盛んで観光資源が豊富と言えば聞こえがいいが、それだけとも言えるし」

「じゃあ、おいしい食べ物とかはどうでしょう?」

「食べ物は美味いぞ?

 ただ、バリエーションがな。保存性とか大事だし、生活圏が限られるから生産も少ない。

 外国の輸入に頼ってる物も多いし、だから物価も少し高めだ」

「良いところを言ってくださいよ……」

「住めば都ってことだろ。

 長年住めば不便なの所ばかり見えてくるだけで」

 世知辛い話である。

 

「でもこの国の花騎士って可愛い子多いじゃないですか!!」

「ああ、それは分かるわ。うちの国はレベル高い」

 団長は腕を組んで大きくリンゴに頷いた。

 彼の言葉は去年のフォスフォレシアの結果が物語っていた。

 

「ツバキちゃんとか、よく活躍聞くよな。

 ナデシコちゃんとどちらが強いのか」

「二刀流VS一刀流ですか、バナナオーシャンの小島のどこかで決闘してくれたら最高ですねぇ」

「それってツバキちゃんが遅れてくるパターンだろ?

 あの子が遅刻するとか想像できないんだが」

 そんなことを話していると、そう言えば、と団長は話題を変えた。

 

 

「最近、他国でも同郷の花騎士を見かけるなぁ。

 少し前まで殆ど見なかったのに」

「何か理由でもあるんですか?」

「まあな。うちの国ってさ、配属を嫌がる子多いんだわ。

 暑いのなら対処は比較的安くて簡単だが、寒さ対策は設備もお金も掛かるし、大雪時は外も出れん。

 だから自国の花騎士が警備の大半を担ってたんだが」

 と、団長はリンゴにそんな裏事情を語った。

 

「実際、他国の花騎士が雪の事故で死なれても困るしな。

 昔からこの国に住んでる花騎士にやってもらった方が良いだろう?

 だけどそれって国家間の交流的に健全じゃあない。

 だから最近、うちの国は他国から所属ごと移籍とか頻繁にしてるんだわ」

 まさに雪国に慣れないのなら雪国に住まわせて慣れさせろと言わんばかりの政策だった。

 

「ああ、バナナオーシャンからウインターローズに移籍したって話、聞いたことあります」

「ハツユキソウちゃんとかな。

 バナナオーシャン出身の花騎士ってホント多いからな。実に良いことだが。

 それで最近、各国の花騎士が大分均等になってきたとかで、うちの所の花騎士が他国にも出てくるようになったわけよ」

「へぇ~、そうだったんですか。

 ……あ、そろそろ町も見えてきましたね」

 徒歩だと数時間の距離も、犬ぞりだと数十分も掛からなかった。

 

 

 

「いやぁ、ホント助かったわ。

 あとで、こんなでっかいクマのぬいぐるみ買ってやるからな」

「え、ホント!? わぁい!!」

 町の前まで送ってもらうと、団長は二人に感謝の言葉を述べた。

 

「あ、ホーリーもありがとうな。

 お前は……このバナナオーシャン土産でもやろう」

 と言って、荷物から未開の原住民の呪術師が使っていそうなお面の民芸品を取り出した。

 

「いらない……」

「なんだと、異国情緒あふれるインテリアに最適だというのに」

 別にからかっているわけではなく、本気で彼はそう言っているようだった。

 

 

「それじゃ、仕事が終わったら、な?」

「うん、楽しみにしてるからね!!」

 ぱちりとポインセチアにウインクをかます団長。

 

「ちょっと、もちろん私も行くからね!!」

「なんだよ、お前もぬいぐるみ欲しいのか?」

「そうじゃなくて!!」

 ホーリーも突っかかってきて、また言い争いが始まった。

 

 

「仲良いんですね、二人とも」

「ねぇねぇ、あなたが団長さんの補佐の人だよね?」

「あ、はいそうですけど」

 二人の言い争いからいつの間にか抜け出してきたポインセチアが、リンゴの前で一礼した。

 

「団長さんのこと、よろしくお願いします。

 ああ見えてすごく寂しがり屋さんだから」

「……ええ、大丈夫ですよ。私と団長さんはマブダチなので」

「はいはーい、私もだんちょとはズッ友だから心配しなくていいよ!!」

 リンゴと、その後ろでぴょんぴょんジャンプするランタナはそう言った。

 

「そっか、よかった」

 それを聞いたポインセチアは天使のような笑みを浮かべた。

 

 

 

「お前ホーリーなんて名前辞めてブラックって名乗ったらどうだ?

 腹の下真っ黒のブラックってな!!」

「言ったなこのロリコン!!」

「この貧乳教の聖典によると、人は世俗に(まみ)れると胸がぶくぶく膨らむそうだ。

 全くお前に当てはまるとは思わないか!!」

「ちょっと変質者が出たって町に通報してくるわ」

「おい、待て、止めろ、それだけは止めろ!!」

 未だ団長とホーリーの言い争いは終わらない。

 

「ホーリーちゃんも、団長さんと一緒の時みたいに無理に笑わなくていい時間が増えるといいなぁ」

 本人が聞けば憤慨するだろうが、ポインセチアは笑顔のまま二人のやり取りを見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




サブタイトル、故郷にてはしゃぐ団長さん。
ホーリーちゃんってこんなキャラじゃねぇって人も居るでしょうが、自分は素はあんな感じだと思っています。ポインセチアを守るためなら尚更。
そしてポインちゃんマジ天使。

花騎士は母性溢れるロリが多くてダメになりそうです。



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