貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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ピックアップにリシアンサスが出たので、回したら出ましたヒャホー!!
そのうちこちらにでも出したいです!!

あと、よい子は読んじゃいけないR版も投稿しましたので、読みたい人は活動報告をよく読んだ上で見てくださいね!!





筋金入りのあの娘

「うーん、今日の書類仕事は終わり!!」

 執務室で書類仕事を終えたチューリップ団長は伸びをした。

 

「団長さん、お疲れ様です。

 残念ですけど、これで最後です」

 そこへ事務仕事を手伝っていたホワイトチューリップがやってきて、新たな書類を手渡した。

 最近彼女は部隊の専属医兼団長補佐官みたいな立ち位置で、急患が出た時だけ診療所に戻る様な生活をしていた。

 

 

「ありがとう姉さん。どれどれ……。

 あれ、またあの人かぁ」

「団長さん流石にそろそろお叱りの一つでもするべきだと思うんですけど」

 書類の内容を知っているのか、彼女は少し憤慨してそう言った。

 

 その内容とは、リンゴ団長が起こした男女トラブルの示談金を支払ってくれと言う要請……もとい、懇願の内容だった。

 要するに、個人の借金を会社で肩代わりしてくれ、という事を求めるふざけた内容の書類だった。

 

 普通ならチューリップ団長の裁可を仰ぐまでも無く不可である。

 だが、彼は迷いなく認可の判子を押した。

 

「リンゴ団長さんと仲が良いのは知っていますけど、あまり甘やかさない方が良いと思いますよ」

 苦言を(てい)するホワイトチューリップ。

 これが一度だけなら仕方ない、で済ませたかもしれないが、これで三度目なのだ。

 表面化していないのを数えればもっとあるだろう。

 これでは幾ら彼女が温厚でも文句の一つは言いたくなる。

 

「必要経費だよ、姉さん。

 確かにあの人には世話になってるけどね、それとこれとは別だ」

 二人の団長は年の離れた私的な友人であり、この間も桃源郷に寿司や天ぷらを食べに行っていた。

 リンゴ団長は世界各国を渡り歩いて団長業をしていた為か、各地の名店をよく知っており、彼をよく連れて奢ってくれるのである。

 こんな感じに迷惑を掛けている負い目からかもしれないが。

 

 

「確かにリンゴ団長は問題児だ。

 特に色事に関しては節操無い。戦い方では花騎士倫理委員会で査問会が開かれたほどさ」

 彼が残虐な手法で害虫たちを殺しているのは団長達の間では有名な話だった。

 それに対する反応の多くは、騎士道に反している、人間の所業ではない、と批判的なものだ。

 だが、それはなぜか一般的に周知ではない。

 

「彼、査問会でなんて言ったと思う?

 害虫どもに倫理や騎士道が通じるならそうします、しかしそう言ったものはそもそも同じ価値観の相手にのみ通ずるものではないでしょうか、だってさ」

 彼はそのふてぶてしい物言いに笑っていたが、ホワイトチューリップは眉を(しか)めていた。

 

「幾ら害虫が相手とはいえ、やり方があるとは思います」

「そう? 俺はそうは思わないな」

 姉貴分の優しさに笑みを浮かべたが、彼はそれでも首を横に振った。

 

 

「害虫たちが蛮族、例えば価値観が違うだけの人間なら俺だって苦言くらいはしたさ。

 だけど相手は化け物だろ? しかも俺たちは生存競争の真っ最中だ。

 俺の故郷では衣食住足りて礼節を知るっていうけど、住が満たされていないのに礼節に拘れと言うのは余裕がある方の物言いさ。

 そんな余裕、人類には無いだろ?」

 彼の言うとおり、人類は害虫たちの勢力によって年々最前線が押し戻されている。

 これは年代によって押したり引いたりを繰り返しているが、これは今のところ劣勢と言ってもいい。

 

 

「だからって目に余る行動を許すわけにはいかないでしょ?」

「それだけならね? 俺だってこんな言い方はしないさ。

 だけど彼の対費用効果って凄いんだ。数倍の規模の騎士団で得られる戦果を、少ない人数でやり遂げている。

 同じ戦果を何倍もの人数を危険に晒して行うよりずっと良いじゃないか。

 なにせ、人の命はお金に変えられないからね。

 それに彼の部隊は今年だけで五つの害虫の巣を潰している。

 害虫の巣に突っ込んでくれ、ってお願いして生きて帰ってくると断言できる人を俺は他に知らない」

 ある種の尊敬を持ってチューリップ団長は言った。

 あの男は頼めば笑って害虫の巣に向かうだろうから。

 

 それに騎士団とはその性質上、お役所仕事なのに歩合制みたいなものだ。

 戦って敵を殺せば殺すほど、報奨金が出る。

 リンゴ団長はその報奨金の四割を騎士団の共有財産にプールしているから、結果的に大分プラスなのだ。

 

 それ以外の方法で外貨を得ているチューリップ団長の方が異端で、彼も彼で風当たりは悪い。

 栄えある騎士団が商人の真似事などと、というやっかみに近いものだが、同時に正論でもあった。

 

 

「全くさ、リンゴ団長は事後処理が雑なんだよ。

 もっとナズナ団長みたいに上手くやればいいのに。あの人いったいどうやってあんな人数の相手と関係を維持できるんだろうか……」

「あなたもそういう風になったらすぐ家族会議ですからね」

「ううッ、俺は一途だから心配しないでよ。まだ特定の相手は居ないけどさ」

「そもそも、不特定多数の女性と関係を持つなんて不衛生で……」

 ホワイトチューリップはくどくどと説教じみたことを言い始めた。

 姉たちが話を聞かないので、彼がちゃんと話を聞いてくれて嬉しいのを知っているからチューリップ団長は優しく笑みを浮かべながら相槌を打ち続けるのだった。

 

 

 

 

 

 ベルガモットバレー領内に存在する自治区、桃源郷。

 国に属さぬ歓楽街であるが、国家ではないのでここを出身地とする花騎士は公文書に便宜上はベルガモットバレー出身と記載することが多い。

 

「まったく、なんだよぉ、なんなんだよぉ、なにがどうしたってんだぉ~」

 その一角にある飲み屋でリンゴ団長は酒を飲んだくれていた。

 

「団長さん、飲み過ぎですよ」

「うわっははははははははは、あっははははははははははははは、ううぇっへへへへへッごほッ、ごほッ、ごほごほ……」

「ランタナちゃんもしかしてそれジュースじゃないでしょ!!」

 彼に酌をするリンゴと、奢りということで付いてきたランタナとペポも居た。

 

「んだとぉ、これが飲まずにいられるかってんだぉ」

「そうだ~、飲め飲め~、全部だんちょの奢りだ~、ドンペリ持ってこーい!!」

 悪酔いしている団長と、酒が入って意味不明のテンションのランタナ。

 ペポは来なければよかった、と後悔し始めていた。

 

 

「何でよぉ、今更になってよぉ、終わったはずの関係の女がよぉ、揉め事を持ってくるんだよぉ!!」

「ずっと女遊び我慢してたのに悲しいですよね」

「そぉなんだよぉ、俺ぁただ女の子が大好きなだけなんだよぉ!!

 しかもなんなのあれぇ、なんで親が出てくんのぉ、俺とあの子の問題じゃねーのかよぉ!!

 なんで俺、無理やり迫ったことになってんのぉ、合意の上だったじゃねーか、ふざけんじゃねーぞぉ」

「そうですよね、団長さんは無理やり女の子を襲ったりしませんもんね」

「騎士団にもめーわく、かけちまったし、よぉ、これ、何度めだっけ?」

「多分、三回目だったかと」

「俺チューリップ団長にどんな面下げて会えばいいんだよぉ。

 あいつ笑顔で、今回分は予算から引いときますね、とかいうんだぜ!!

 部隊の皆にまで迷惑かけちまったら、おれ生きてけねーよぉ」

 おいおいと男泣きする団長にリンゴは根気よく付き合っていた。

 これで同じ話が5ループほどしていることになるが。

 

「もう、ダメだよランタナちゃん。お酒なんか飲んじゃ」

「うるさーい、ランタナは合法だぞー!!

 つまりッ、私が法律、私が王様、ゲームの始まりだぁ!! 一番、王様はペポを齧る、がじがじがじ……」

「ひーん!! なんでこうなるのぉ!!」

 こんな感じで居酒屋はカオスに満ちた空間になっていた。

 

 

 

 そんな一行を、物陰から観察している少女がいた。

 

「ドキドキですぅ……ワクワクですぅ……」

 リリィウッドの豊かな自然が生み出したいろんな方向で危険人物である、花騎士ニシキギである。

 今日は夜の歓楽街という危険な雰囲気に惹かれ、遊びを探しにやってきた彼女だったが、軒先で飲んだくれているリンゴ団長たちを発見し、目標を変更した。

 

「……あれが団長界隈で最も危険な団長さん。

 倒した害虫をバーベキューにして食べちゃうっていう……もうちょっと近づけるかなぁ」

 今まで感じたことの無い謎の高揚感を感じながら、ニシキギは一行の観察を続ける。

 

 

「だぁかぁらぁよぉ、あいつの親の前で言ってやったんだよぉ!!

 そんな風に無駄に胸がぶくぶく育った女なんてもう興味ねぇってなぁ、ぎゃっははははは!!」

「まったく、そんなこと言ってないでしょう?

 ほら、そろそろ終わりにしましょう」

 悪酔いしすぎて現実と妄想が区別できていない彼を皆で協力して店から引っ張り出していくようだった。

 慌ててニシキギも別の物陰に隠れた。

 

「なぁにが変態ロリコン野郎だよぉ、そっちから迫ってきて被害者面しやがってぇ」

「だけど団長さんが変態ロリコン野郎なのも、若い子に手を出したのも事実ですよね」

 彼の所業を身をもって知っているペポは思わず毒を吐いてしまった。

 いい加減心の広い彼女でも付き合いきれないかもしれなかった。

 

「うわぁあああああん、ペポが俺をいじめるよぉおお!!」

「ああッ、もう、刺激したらダメですってペポさん!!」

 往来で泣き出す情けない団長の姿に、周囲が何事かと視線が集まる。

 

「よぉし、今ならもっと近づけそうです……」

 人混みに紛れてニシキギは接近を開始する。

 

 

「ペポ、ペポぉ」

「ああもうッ、どうしたのランタナちゃん!!」

 団長に泣きつかれているペポは、油断していた。

 ランタナが異様に大人しいということに気付けなかったのだ。

 

「お腹がゆんゆんします。何だかせり上がってきてヤバイ感じ」

「ああああ!! こんなところで吐かないでぇえ!!」

「ううッ、俺も吐きそう……」

「お願いだから、私に寄りかかって吐こうとしないでぇええ!!」

 真っ青な顔で言う二人に、ペポの悲鳴が桃源郷に響いた。

 

「おお、何やら危険な状況のようです。もっとギリギリを攻められそうです……」

 ニシキギが接近しようとしたが、嘔吐寸前の二人を引き連れたリンゴとペポは急いで脇道へと向かっていった。

 

「ああッ、追跡継続です!!」

 追跡対象を見失わないよう、彼女も付いていく。

 

 彼女が物陰に隠れ、奥を見やると脇道の先にある桃源郷を守る水路に首を突っ込み、おろろろ、と嘔吐している二人の姿があった。

 

 

「大丈夫ですか、団長さん?」

「おろろろ、おろろろろろ……」

 見るに堪えない状況だと言うのに、リンゴは団長の背中を健気に()っていた。

 

「ううう、こ、これ以上はッ、ランタナはジャンプに出てくるヒロインのようにゲロを吐くわけにおろろろろろろ……」

「……よく分からないけどもう手遅れだよ」

 と、言いつつも自分が吐瀉物まみれにならず、ホッと安堵しているペポだった。

 

「あうぅ、残念ながら危機は脱してしまったようです」

 その光景を見ていたニシキギは肩を落とした。

 残念がっているのはこの娘くらいだろう。

 

 

「よし、気を取り直して天ぷらでも食うか!!」

 吐くのと同時に酔いも冷めたのか、すっきりした表情で団長が言った。

 

「良いですね、私あんまり食べれてないですから」

「もう……お酒はダメですからね?」

 何だかんだ付き合いのいいリンゴとペポだった。

 

「うううぅ、美少女にあるまじき失態をしてしまった」

「大丈夫だよランタナちゃん、誰もあなたにそういうのを期待してないから」

「がーん!?」

 普段散々振り回されているペポのささやかな仕返しだった。

 

 

 

 一行は脇道から最も活気がある中央通りへと戻っていった。

 無論、その後ろにはこっそりとニシキギが付いてきている。

 

「おおッ、そこにいるのは大将やないか!!

 あんたいつも別の女連れとるんやなぁ」

 しばらく歩いていると、ハナショウブが経営する旅館「桃源郷」の前で呼び込みをしているカンナが、顔馴染を見つけてそんなことを口にした。

 

「なんだ、カンナか」

 対してリンゴ団長は知り合いを相手に冷めた態度だった。

 

「なんだとはなんや。

 今日は大人数やし、こっちにお金落としてくれてもいいんちゃう?

 可愛い女の子も揃っとるでぇ!!」

「はははは、ナデシコちゃん連れてきてから出直してこい。

 乳がデカければ客を呼び込めると思うなよ」

「はっはっは、死ねッ、この腐れロリコン!!

 ――――あッ、ハナショウブさん、これは違ッ、あひぃいいい!!」

 謎の手が伸びてカンナの襟首を掴むと、彼女は旅館の中へと引っ張られ消えて行った。

 

「いや美味い天ぷらならここでも良いんだがな、海老天出ないのはなぁ……」

 それだけが惜しい、と彼は呟いた。

 

 

「団長さんは良く「桃源郷」にいらっしゃるんですか?」

「飯食いに来るだけだぞ? 

 俺はカネで女を買うなんて趣味じゃないからな。

 いやでも、進退窮まって泣く泣く体を売るってシチュエーションは凄く好みだ、すごく興奮する」

「私も女の人が悲しい目に遭うのはちょっと……。

 あ、それはそれとして私を今度連れてって貰えませんかね」

「よしきた、別に必ずエロい事しなけりゃいけないわけでもないんだし、リンゴちゃんと一緒に入って遊ぶか!!」

「いやっほぅ、流石団長さん!! 女性の味方!! みか、た……?」

「……自分で言って疑問に持つなよ」

 こんな感じで平常運転の二人だったが。

 

「でも結局お金を払うことになってましたよね。今回とか」

 ペポが何気なく言ったその言葉は、真空の刃となって団長を引き裂いた。

 

「がはッ」

「今日のペポはキレてるなぁ」

 精神にクリティカルダメージを受け地面に這いつくばる団長を突っつき、ランタナは呟いた。

 そこでふと、何気なくランタナの視線が一行を見ているニシキギを捉えた。

 

「貴様! 見ているなッ!!」

「ぎゃぴぃ!?」

 ついに見つかったニシキギはマンガみたいに飛び上がった。

 

 釣られてそちらを見た団長の目がニシキギを捉えると、その目がきらりと光った、ように彼女は感じた。

 

「じゅるり……」

「あ、あわわわ、せ、戦略的撤退ですぅ!!」

 全身が総毛立ち、本能が警鐘を鳴らす感覚に極限の悦を覚えながらも、ニシキギは遁走しようと背を向ける。

 だが走り出そうとして、なぜか足腰が動かず転んでしまった。

 

「あふん……」

 すっ転んだニシキギの背に、地面に這いつくばったまま迫りくる団長の影があった。

 

「あ、あ、ああ!!」

 腕だけで後ろに逃げようとする彼女だったが、思うように動かない。

 団長が目前へと迫っていた!!

 

「(つ、捕まったら、ど、ど、どうなっちゃうんだろう!?)」

 ニシキギは暴走しているかのように鼓動する心臓の音を聞きながら、捕まった後の妄想が頭の中を駆け巡る。

 そう、彼女は偶然転んだのではない。

 この極限の状況を体感したいが為に、自らの意思と関係なく追い詰められるよう行動していたのだ!!

 

 

「君……」

「は、はひゃぃ!?」

 がっしりと、肩を掴まれ、ニシキギの動悸は限界寸前まで達した。

 

 そして!!

 

 

 

「一緒に天ぷら食べに行かないか?」

「は、はいぃ」

 普通にナンパされただけだった。

 

 

 後日、その日のことが忘れられずニシキギはリンゴ団長の部隊へと転属願を出した。

 

「わ、私、団長さんに見つめられるだけでドキドキしちゃって……!!

 こ、これが、こ、恋なんですかね!!」

「とりあえず、あなたの危機センサーが正確なのは分かったわ」

 標的を定める目つきの団長を背に受け身悶えるニシキギを見やり、キルタンサスは呆れて溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




リンゴ団長と色んな意味で相性良さそうなニシキギちゃんを投入。
以前のSPチケットで突属性不足してたので彼女を取ったのですが、実に素晴らしかった!!

彼女もエピコレに登場し、ペポも主人公格として小説版に登場するし、運営さんは良いセンスしています。
花騎士は素晴らしいロリっ子が多くてやめられませんわ。


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