貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

110 / 113
約ひと月振りの更新。遅くなってすみません。
ちょっと以前お知らせした新作の連載の方を頑張ってたので遅れました。
そちらの方も読んでくださるとうれしいです(マ



短編連作 VS水影編その3

『 本当の始まり 』

 

 

 予定の襲撃開始時刻より十分、リリィウッドの森の中にて。

 

「あれだけ大口を叩いておいて、戦いもせずに逃げてきたんですか!!」

「いやぁ、悪い悪い」

 リンゴたちから逃げ帰ってきた偽リンゴ団長は合流した偽ナズナから叱責を受けていた。

 

「チューリップ団長は失敗作なのに単身敵中に入り込み、捨て駒の役割を担った!!

 キンギョソウ団長は内部からのかく乱には失敗したものの、こうして最低限相手の指揮を下げるのに貢献したと言うのに、あなたと言う人は!!」

「そう怒るなよぉ~、あっちもこれで俺たちが毒を使って攻撃するってプレッシャーを与えられたんだ。いくらかの兵力の分散は余儀なくされただろう。

 俺達の作戦は失敗しようが成功しようが、どう転んだところで最低限の効果を発揮するように考えられてたはずだ。それは事前にちゃんと説明しただろ?」

 怒る偽ナズナに、慌てて偽リンゴ団長はそう弁解した。

 

「(や、やっぱり、花騎士とは全然、考え方が違います……)」

 その光景を、木に縛り付けられ拘束されているナズナは見ていた。

 そしてアクアシャドウの花騎士と団長の違いは、こうした戦略的な考え方での戦術の構築にあるのだと思い知らされた。

 超効果的で成功困難な作戦はせず、作戦の成否に関わらず一定の効果と心理的な圧力で相手を制限しようとする。

 まさに人間と花騎士を知り尽くした者たちの策謀だった。

 

「ところで、ナズナよ。彼を叱るのも良いが見て貰いたい物が有る」

「なんです?」

「これだよ」

 偽キンギョソウ団長が指を鳴らすと、水たまりから“それ”は現れた。

 

「人類に終わりを齎す究極の兵器。

 その名も、水影害虫……と言うには安直か?」

 彼が示したそれは、まさしく害虫のアクアシャドウだった。

 その存在に本物偽物問わずナズナは驚愕した。

 

「なんですか、それは!!」

「これは我らという存在を独自に解析した我が産み出した、害虫に変わる我らの新しい戦力だよ。

 害虫など当てにならないと言ったのは君ではないかね。

 こいつは害虫などよりも生産性、カスタム性に優れ、何より我々に忠実に働き痛みも恐怖も存在しない」

「そんなことを言っているんじゃありません!!」

 それを見て、紹介された偽ナズナは激昂してそう怒鳴った。

 

「我々がなぜ人の似姿をしているか忘れたんですか!!

 我らが主の偉業を知らしめる為です!! 人間たちを滅ぼすのもその一環!!

 こいつらが人間を蹂躙し尽くしたとして、凄いのは主ではなく害虫だってことになるじゃないですか!!」

「……小さいな。賢者の名を地に落としただけはある。

 滅ぼしてしまうのなら、結局同じではないか。一体我ら以外の誰が主を褒め称える」

「なんですって!!」

 自分たちの造物主への侮蔑を隠そうとしない偽キンギョソウ団長に、偽ナズナはついに殺意を見せた。

 

「おー、完成したんだな。待ってたぜ」

「リンゴ団長、あなた知ってたんですか!!」

「これを使えば、あいつらに勝てるんですね?」

「ハナモモ団長もこんなのを使うと言うんですか!?」

 他の二人の偽団長も自分の意にそぐわぬと悟り、怒りを通り越して偽ナズナは溜息を吐いた。

 

「所詮、最初から期待していなかった実験作に過ぎなかったわけですか。

 もういいです、後は私がやっておきますから」

 そうして、彼女は彼らから意志を剥奪しようとした。

 

「ところで」

 にたにた、と笑みを浮かべる偽キンギョソウ団長が言った。

 

「我らは最初、指揮系統の混乱を目的に、自分たちの似姿である本物を呪い行動不能にしたな」

 体が動かない。偽ナズナはその一言が口から出せなかった。

 

「ならなぜ、逆があるとは思わなかったのだ?

 本物を介して、偽物を呪い封じると」

 彼は縛り付けられている本物のナズナの拘束を解いた。

 彼女の背には、禍々しい光を放つ呪符が張りつけられていた。

 

「貴様の悪手は、最初に彼女を連れてきた時、処分を命じなかったことだ。

 まあその時はまだ使い道が有るなどと、さっきと同じ説明をしたであろうが」

 声を出せず、体も動かず、水面の波紋のように震えることしかできない偽ナズナに、偽キンギョソウは近づいて行く。

 恐怖に震え、偽ナズナは絶望の表情で彼を見上げた。

 

「我らは創造主に逆らうことは出来ぬ。そう創られているが故に。

 だが、知性無き津波ならばどうだ? 我は、我ら四人は、この暴虐を以って我らが創造主を、世界を滅ぼそう。

 貴様はこの水影害虫を生み出す苗床となって自らの存在を皮肉なものとして共に反逆の囃子を奏でよう」

 その手が、彼女の体を貫く。

 その直後、偽ナズナはヒトの姿を無くし、小さな青い球体のような核へと生まれ変わった。

 

「ぶっはははは、ざまぁないなぁ監視役!!

 ああ、くそ、後味悪ぃ。本物が居なかったらやっぱり止めてたかもしれん……」

 散々態度が悪かったりして叱られた偽リンゴ団長がその核を指差し笑ったが、すぐに肩を落として意気消沈した。

 

「よし、これで我もやりたい事リストが一つ埋まった。誰かを異形生物の苗床エンドにするの欄にチェックを入れねば。

 ちょっと理想とは遠いが、まあ時間も無いので妥協しておこう」

「あなたはもう少し惜しんだらどうです?」

「言ったであろう、時間が無い」

 そうですね、と偽ハナモモ団長はマイペースな偽キンギョソウ団長にそう呟いた。

 

「あのー、これで私の用は済んだってことですよね?

 それじゃあ私はこれで……」

「まあ待てよ、ナズナちゃん」

 帰ろうとするナズナの周囲に、水影害虫が湧いて出てきて取り囲む。

 ひい!! とそれに恐れ戦き尻餅をつくナズナ。

 

「キンギョソウ団長、あんたまだやりたいことが有ったよな?」

「うむ。とりあえず洗脳して悪堕ちさせ我らの尖兵としたり、と言うのはどうだ?」

「それは時間が無いからちょっと予定を変更しようぜ」

「ふむふむ、なるほど」

 アクアシャドウになってもアホな二人に、ハナモモ団長はひとり溜息を吐いた。

 

 

 

『VS偽チューリップ団長その2 問答 』

 

 

「さて、何の話をしようかなぁ」

 偽チューリップ団長は、にこにことまるで初恋の親戚や近所のお姉さんと話しをする子供のように、どの話題で話をしようかと悩んでいた。

 基本的に彼の本物との会話では受け手に回る癖がついてしまったからか、プロテアは彼が何を話すのか静かに待った。

 

「あ、そうだ、これにしよう。

 ――プロテアさん、スプリングガーデンをあげるって言ってくれせんか?」

「え、いきなりどういうことです?」

 本物の彼が突拍子の無いことを言うのは今に始まったことでは無いが、それでもこれは上位に入る部類なので思わず彼女も聞き返した。

 

「俺に、この世界をあげると言ってくれないか、と言ったんです」

「ダメですよ、この世界をあなたにあげるなんて。

 そもそも、そんなこと私の一存で決められるわけありませんよ」

 プロテアはそのように普通に受け答えをしたのだが、そのやり取りそのものを偽団長は楽しそうにしていた。

 

「俺だってこの世界なんて別に欲しくなんてないですよ。でもちょっとやってみたくなって。

 でもこの解答の答えは二通りあるんですよ」

「それってやはり、はい、といいえなんですか?」

「ええ。お芝居の話ですけど、これはある侵略者の投げかけた質問です」

「侵略者の、質問ですか。

 変な話ですね。侵略者がそんな質問をするなんて。外交の際に言った言葉とかですか?」

「いいえ、その辺で攫ってきた子供にした質問です」

「え? 子供にですか?」

「そう、子供ですよ」

 偽団長はぴちゃんと手を叩いて笑う。

 

「その侵略者は宇宙人……いや、こっちなら異世界人の方がいいかな。

 その異世界人は暴力を嫌う紳士で、礼儀正しいことを美徳としているんです。だから侵略先の住人であるその子供に了解を取ろうとしたんです。自分にこの世界を上げると言ってくれないか、ってね」

「だからって、なんで子供にしたんでしょう……」

「子供じゃなくても、いや子供でも十分だったんじゃないんですか?

 その異世界人はだいぶ人間より頭が良いみたいでしたし。偉い立場があろうがなかろうが、言質さえ取れれば誰でも。

 だからこそ、その異世界人は甘い言葉で子供を誘惑するんです。モデルになった悪魔のように*1

「と言うことは、その子供はあげるとは言わなかったんですね」

「ええ、永遠の命を与えると言われても、今より豊かに暮らせると言われても、自分一人じゃ嬉しくなんて無いと」

 肯定する偽団長に、プロテアは安堵した。

 

 お芝居の話だからと言って、彼女にとって他人事ではなかった。

 この世界の惨状は、千年前に現れた異世界人にあげると言ってしまったが故に引き起こされたようなものだから。

 

「そして、はい、と答えたのは年を取った世捨て人でした」

「はい、って言ったんですね」

「まあ世捨て人がそう返すの話が作られたのは今の奴よりだいぶ後なんで、コミカルな面が強かったんですが、はい、というニュアンスで言いましたね」

「その世捨て人はなぜ、あげると言ってしまったんですか?」

「自分の現住所はこの世界だから、お前も好きなところに住めばいいって。いやコメディだったんですけどね」

「好きなところに住めばいい、ですか……」

 その想像とは違う内容に、プロテアの目も遠くなった。

 

「千年前の侵略者たちも、侵略ではなく移住と言う穏当な手段をなぜ取らなかったのでしょうね」

「さあ、移民の受け入れ問題は難しいですからね。

 向こうはそれこそ侵略をするって手段を選ぶくらい切羽詰ってたって話ですし、交渉なんて成立しなかったんじゃないでしょうか? 姿形や言語も違ったかもしれませんし」

 千年前、何故に異世界の侵略者がこの世界にやってきたのかは、諸説存在する。

 昔の話なんてだいたいがそんなものだ。

 

「そうそう、移民とは違いますが、かつてのロータスレイクの人々も同じだったんじゃないんですかね」

「ロータスレイクの人たちが、ですか?」

「なんでも戦うための存在は有ってはならない、とかで水影の騎士たちを封じたらしいじゃないですか。

 程度が低い民衆性だとは思いませんか? 俺たちが戦う為だけの道具だとして、道具に憐みや同情を向けるなんて笑えますね。

 ならば最初から、意思など、感情など、人の姿など与えるなと言う話です。

 自分たちが傷ついたわけでもないくせに、……俺は本当は恐ろしかったんじゃないかって思うんです」

「恐ろしかった、ですか?」

「プロテアさんも見たんでしょう? 自分の水影の騎士を。

 本物の花騎士の強さを反映する為に相手の心を読む力が有り、姿形もそっくりで、戦闘力もある。

 彼女らはいつか自分たちに取って代わられるんじゃないかって。

 こいつらは、いつか自分たちに反旗を翻すんじゃないかって。憐みや同情を向けたのだって、それを悟られない為じゃないのかって。

 あなたは、怖くはなかったんですか?」

 彼の問いかけに、プロテアは即答しなかった。

 そして彼女は慎重に言葉を選んでこう答えた。

 

「……怖いですよ、恐ろしかった。

 でも理解しえない事の方がもっと怖かったと思います。

 結果的に、相容れないとしたとしても。だからあなたの言い分は分かりますが、会ったことも無い人たちを悪く言うのは止めましょう。

 その蔑みの言葉は、あなたの価値を引き下げる」

「価値、価値と言いましたか。

 そんなもの、最初から俺達には無いんですよ。他ならぬ、人々がそう決めたんですから」

「それは違う、違いますよ。

 私たちは理解し合い、認め合うことが出来るはずです。

 私はそうして本物や偽物の垣根を両者が超えたと言う話を幾つも聞きました」

「その本物だとか偽物だとかって区別が、俺は一番ムカつくんですよ!!」

 ばちゃん、とテーブルを叩いて偽団長が吠えた。

 

「誰が生めと頼んだ? 誰が作ってくれと願った?

 俺は、俺を生んだこの世界の全てを恨む!!

 だから俺は、俺達は決めたんだ。攻撃でもなく宣戦布告でもなく、俺達を生んだこの世界への逆襲をだ!!*2

「それでも私は確信してます。あなたはオリジナルではないけれど、でも決してコピーでもなかった。*3

 教えてください、あなた達が何をしようとしているのかを!!」

「もう遅い、俺の仲間たちがもうすべてを終わらせているでしょう」

 偽団長は怒りを収めると、くすくすと笑った。

 そしてもはや必要なくなった小道具を床に捨てた。

 異なる場所を移していた水の手鏡がバチャンとただの水たまりとなった。

 

「戦いってのは始めるまでに九割が終わってるものです。

 だから戦いが始まる時点で俺たちの策略は殆ど終わってる、もうやりたい事に没頭するくらいしかやることがないくらいに。

 ……一緒に見届けましょうよプロテアさん。この世界の命運を、ね」

 彼の笑い声と同時に、外の喧騒がプロテア達にも聞こえてくる。

 大きな、何か大きなことが起ころうとしているのを、プロテアは感じていた。

 

 

 

『VS偽団長軍団 決戦開始直前 』

 

 

「弓兵隊、砲兵隊、所定の位置に配置完了しました」

 アイリスは対空砲火の準備が完了したことをナズナ団長に告げた。

 彼は静かに頷き、ナズナの捜索状況について尋ねた。

 

「それが、捜索隊が森で奇妙な害虫に遭遇したとの報告が。

 周辺の害虫を排除している部隊も同様に」

 奇妙な害虫? と尋ねるナズナ団長に、アイリスもええと頷く。

 害虫なんて大体が奇妙な風体をしている。わざわざ報告するほどのなのだから、それはもう奇妙なのだろう。

 

「なんでも、まるでアクアシャドウのように水のような体を持った害虫だとか。

 この近辺に生息する害虫よりも多く遭遇したらしく、それで――」

「花騎士たち諸君、待たせたな!!」

 その時だった、襲撃予定時刻より三十分も遅れて、残り二人の偽団長を連れた偽リンゴ団長が大型害虫に乗って、大勢の害虫を引き連れやってきた。

 

「思ったより航空戦力は居ないですね」

 リンゴ団長なら航空戦力に力を割くだろうと予想していたアイリスだったが、どうも敵軍の主力は歩兵ばかりだった。

 

「殺し合いの前にみんなには見て貰いたい物が有る、これを見なぁ!!」

「ううー……」

 偽リンゴ団長が後ろから何かを引っ張り出す。

 それは、十字の木の棒に磔にされたナズナだった。

 

 ナズナッ、と彼女の姿を認めたナズナ団長が身を乗り出した。

 前線を構築している花騎士たちも息を呑んだ。

 

「はーっはっはっは!! 見ているかナズナ団長!!

 この短時間で、ナズナちゃんの体はすっかり俺の虜よ!!

 見るが良い、聖域に守られたナビキャラが快楽堕ちする村人展開*4を!!」

「や、やめて、止めてくださいー!!」

 悲鳴を上げるナズナに、偽リンゴ団長の魔の手が伸びる!!

 やめてくれ、とナズナ団長が叫ぶがもう遅かった。

 

「ははははは、どうだ、体は正直だろう、気持ちいいか、おらおら!!」

「く、ぅ、ひんやりしてふにゅふにゅぷるぷるで、き、きもちぃ……」

 偽リンゴ団長の顔面マッサージに、ナズナはあられもない声で喘ぐ。

 魅惑の水影ボディに陥落するナズナの姿に、花騎士たちはずっこけた。

 

「……なあ、これでいいのか? 俺は楽しいからいいんだが」

「ちょっと趣は異なるが、まあ我も面白いから良し!!

 これで次のチェック項目に移れるぞ」

「大丈夫なのかなぁ、この人たち」

 まじめにふざけている二人を見て、何だか不安になる偽ハナモモ団長だった。

 

「さて、お遊びはこれくらいにしようや。

 VS偽団長軍団って謳ってるのに俺が一回も戦わんわけにはいかんだろうしな」

 ひょい、と大型害虫の上から飛び降り、偽リンゴ団長が笑みを浮かべた。

 

「だがまあ、その前に一つ聞いてくれよ。

 俺達、水影団長は一つの感情によって制御され、抑圧され、糧としていた。

 その感情こそが、恐怖だ。俺たちは全員、ある種の恐怖が原動力として存在に刻み込まれている。

 例えば俺なら、害虫に対する恐怖、そして連中によって誰かが死ぬ事に対する恐怖……。

 だから俺は成功作にはなれなかった。矛盾の塊みたいなもんだからな。だから、俺はお前たちと戦うことと害虫を運用することに対して折り合いを付けるかと考えた」

 彼は笑う、にぃっと、イタズラをする子供のように、無邪気に、残酷に。

 

「それで、俺はこうすることにしたんだ。

 さあ、みんな、存分に戦いを楽しもうぜ!!」

 偽団長の号令と共に、イモムシ型害虫が列を成し転がって突進を開始した。

 すぐさまナズナ団長の迎撃命令が飛ぶ。

 

 遠距離から飛び道具が、魔法が、害虫の列を滅多打ちにする。

 イモムシ型害虫は力尽き、倒れた。

 が、次の瞬間――――。

 

 どがん!!!

 

 と、爆発四散した。

 その威力は一メートル程度のクレーターが出来るほどだった。

 

「害虫の体内の魔力を弄って暴走状態にして、つっこませることによって、生きた爆弾として運用することが出来るらしいんだわ。

 と言うわけで、第二陣行ってみよー!!」

 偽団長の号令で、次の害虫たちが一心不乱に突っ込んでいく。

 ペース配分も何もない、自壊する為だけに、敵を道連れにしようと飛び掛かっていく。

 

「ははははは!! 死ね、死ね、害虫ども!!

 花騎士たちに殺されて、爆竹を咥えたカエルのように死ね!! ついでに花騎士も巻き込まれるといいなぁ~」

 爆弾と化した害虫の進撃に、彼の解説を聞いた前線の花騎士たちも一心不乱だった。

 害虫の自爆に巻き添えになったら、それこそ半身が吹き飛ぶのだから。

 

 そしていやらしいのは、全てが爆弾害虫ではないということだった。

 花騎士たちは爆弾害虫に対処を追われながら、通常の害虫の混成部隊を相手にしなければならない。

 

「おおー、がんばってるねー、それじゃ次の遊び相手だ。かもーん!!」

 偽団長が手を叩くと、チョウ型害虫が爆弾害虫を抱えて空からポイッと敵陣に向けて放り投げはじめたのだ。

 

「やはり航空戦力を隠してましたか!!

 撃て撃て、とにかく空中で撃ち落とすんです!!」

 花騎士たちの陣営から、圧倒的な対空射撃や砲撃が放たれる。

 戦場は爆音と火薬の臭いで包まれ始めた。

 

「えげつないですね……」

「はい、これでこの戦線は混乱するだろ。

 あとは適当に水影害虫で押し込めば後退する。後は任せた」

 型破りすぎる戦い方に偽ハナモモ団長が呆気に取られていると、彼はやる気のないまま戦線を離脱しようとふらふらと歩き出す。

 

「リンゴ団長、どこに?」

「決まってるだろ、待ち人だ。お前も、上手くやれよ」

「ここまでお膳立てされて何もできない何て言えませんよ」

「そうか、じゃあな」

 そう言って、偽リンゴ団長は去った。

 彼と、残る二人の偽団長との今生の別れは実にあっさりだった。

 

「団長ぉーー!!」

 何も言わず同胞と別れた偽キンギョソウ団長の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「来たか。ナズナ団長め、消耗戦を避けたか。良い判断だ。

 我もそろそろ、己が宿業を迎え入れる時が来たようだ」

「キンギョソウ団長も、ですか」

「悪は己の成した悪行を懇切丁寧に説明してから散る義務がある故にな。

 どのような偉業を成そうとも、それを語り継ぐ者が居なければ虚しいだけだ。ではな」

 そう言って、偽キンギョソウ団長も歩み出す。

 本物が手塩に掛けた部隊と対峙する為に。

 

「僕もこの混戦を維持しないと。

 ……終わるまでに、あの子は来てくれるかな」

 独り残った偽ハナモモ団長は待つことにした。

 そうしていれば、己の因縁は絡まった糸のように手繰り寄せられると信じて。

 

 戦いは始まってすぐ、最終局面へと移行しつつあった。

 

 

 

 

 

*1
この話の元はウルトラマンに登場する、侵略者メフィラス星人。そして彼が登場する33話「禁じられた言葉」である。悪質宇宙人の異名通り、絡め手を得意とする。紳士的だが割と沸点は低い。卑怯もらっきょもあるか!!

*2
ここは映画ポケットモンスター「ミュウツーの逆襲」より。ミュウツーの台詞のパロディ。

*3
私が現在連載中である新作の原作「ざくざくアクターズ」のある少女の台詞。好きな台詞だったからどうしても入れたかった。

*4
村人:DMM界隈で女性キャラに主人公以外でのR18な展開があることに対する造語。名前欄の表示が主に村人なことから。実際には村人以外でも、合意の上だろうと無かろうとそう呼ばれる。主人公以外だと感情移入が難しい為、人を選ぶ。しかしサービス開始当初からこの村人展開が減ると運営は人気が出たからひよったと言われ、増えたり多かったりすると処女好きや寝取られ耐性が無い人たちが騒ぐ。作者はどっちも大好きです!!




アンゲロニアちゃん、着痩せすごいね(涙
イベントの方は大変なことになってますねー、ここでもそのうち監獄島のイベントやりたいです。
水影団長編は次回で終わりの予定です。
全四話、予定通りになりそう。いつもは長引いて六話、十話と行くのですがねww

前書きでも言いましたが、先月は私の新作を我慢できず書いてました。水影団長編終わってからにしようと思ったのに。

私の新作はあの名作フリーゲーム「ざくざくアクターズ」の二次創作。
『アナザー・アクターズ』となります。感想くれると嬉しいです。嬉しいです(切実

宣伝もこれくらいにして、それではまた次回!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。