貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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お久しぶりです、最近は虹レアがロリ系ばかりで辛いです。
先日の虹チケでムラサキハナナちゃんと、虹メダル溜まったのでクルミちゃんはゲットしました。

スマホ版記念の金チケでは念願の嫁ネリネちゃんを取り、あと一枚は誰にしようかと温存中であります。
ネタ集めの為にセダムちゃんとかにしてみましょうか。
え、忍者ローちゃん? 復刻まで待ちますよ。そして出なかったら、ええ、分かってますよ(ニヤリ

スマホ版と言えば、デートイベが皆可愛くて悶えさせてもらってます。
あのレベルは無理ですが、こっちでもデート編とかやってみたいと思います。


短編連作 追憶編その13

『新入りへの薫陶』

 

 今年の初頭、一月に入って正月に団長がやらかした後の話である。

 

「エピデンドラムちゃん、何かプレゼントしてほしいものとかありますか?」

「え、どうしたの、突然」

 朝食の時間に食堂に集まった頃合に、そんなことを急にプルメリアに言われたエピデンドラムは首を傾げた。

 

「突然も何も、エピデンドラムちゃんは今月で元の部隊に戻るんじゃありませんか」

「あッ」

 その話で、すっかりそのことを忘れていたと彼女は思い出した。

 

「そっかー、今月で終わりだったかー」

 これまでのこの部隊での苦労を思い出し、自然と達成感から笑みが浮かんだ。

 しょっぱなから害虫に囲まれ半泣きで戦ったり、コダイバナへと遠征したり。

 常人なら百回死んでも足りないくらいの無茶をした。

 

 訓練も大変だった。毎日毎日訓練漬けで、それが無い日は害虫討伐。

 害虫が出れば鉄砲玉のように害虫を皆殺しにし、それが終わってようやく休みが取れる。

 一ヶ月に休みが一日二日という月もあった。

 雨の中、数時間も害虫を待ち伏せして、泥まみれになりながら銃撃した時もあった。

 

 害虫討伐で不規則な生活を余儀なくされる分、それが無い日は徹底して規則正しい生活を強いられた。

 おかげでエピデンドラムは二度寝ができなくなった。

 危険で大変な分、給料も手当ても抜群だった。

 お金を使う暇が無かったのもあるが、この部隊に来て稼いだお金はこれまでの彼女の花騎士生活で稼いだお金を軽々と凌駕した。

 稼げるだけ稼いで、長い余生をぐうたら過ごすのがエピデンドラムの野望だった。

 

 何とか過酷な日々を耐え抜き、後は自分を甘やかしてくれる団長の下でゆっくり残りの人生の分のお金を稼ぐだけだと思うと、彼女の目尻に涙が浮かんだ。

 

「おめでとう!!」

 ぱちぱち、と周囲の仲間たちが拍手を送る。

 

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう!!」

 なぜか彼女を中心にして、皆が彼女に拍手を送る謎の空間が出来ていた。

 

「あー、それなんだがな……」

 そこに、実に言いにくそうに我らが団長がこう言った。

 

「実は向こうの団長からお達しがあってな。

 お前が戻ってきたら副団長にしたいから、中位騎士の資格を取らせてやってほしいって頼まれたのだ。

 うちの部隊に戻ると甘やかしちゃうからって」

「そんなぁ、酷いよ団長!!

 訓練のほかにお勉強もしろってこと!?」

「安心しろ、中位騎士になるまでうちに居ていいからよ。

 それに中位騎士の給料は良いぞ。引退まで頑張れば自分の一生どころか自分の子供の養育費分ぐらいは稼げる」

「そんなぁ」

 がっくりとうなだれるエピデンドラムに、周囲はくすくすと苦笑を漏らすのだった。

 

 

 

「と、言うわけでエビテンの奴がいつ抜けるかわからないので、先日声を掛けておいた人員を我が隊にまねくことにした」

「でるでるでるでるで~~ん!!

 どうも、皆さん、デルちゃんことデルフィニウムです!!」

 先の話から数日後、つい先日仲良くなったらしい彼女を引き抜き、それをみなの前で団長は告げるのだった。

 

「あのねあのね、デルフィ、前の部隊の団長にリンゴ団長からお誘いを受けたって話したの。

 そしたら、皆、デルフィとの思い出は忘れないよって、喜んで送り出してくれたわけ。

 それで、ふと、忘れ物をしちゃったから戻って皆に会うと、あれ、ここは子供が入っていい場所じゃないよって、もう忘れてるんかい!!

 それと誰が子供やねん!! 小さくて悪かったな!! こっちは気にしてるんだぞ!!

 ラナンキュラスも、デルフィの勇姿は忘れないよって、戦死前提かい!!」

 そんなデルフィニウムの漫談に、ぷっ、と何人かが噴出した。

 

「よしッ、掴みは上々!! どうもありがとうございましたー」

 そして皆に一礼して、去っていくデルフィニウムだった。

 

「さて、今週の大まかな予定だが」

「ちょっとちょっと、引き止めてくれたっていいじゃない!!」

 何事も無くミーティングを勧めようとする団長に、デルフィニウムが駆け足で戻ってきた。

 

「あ、どうも芸人さん。おつかれさまでーす」

「はーい、お疲れ様でしたー。って、誰が芸人じゃあ!!」

「契約書を読まなかったのか? あそこには芸人として雇用しますって書いてあるはずだが」

「あ、そうだった。忘れてたわー。って、んなわけあるかい!!

 私を芸人として雇いたいなら、ラナンキュラスも連れて来て貰おうか!!」

 と言った感じで、団長とデルフィニウムな短時間で仲良くなったらしかった。

 

 

 

「えー、我が隊の流儀を新入りに教えてやろう。

 すなわち、一に訓練、二に訓練、三四が訓練で五が害虫討伐!!

 人間は練習したことしか出来ない、つまり訓練の数だけ想定外の状況が減るのだ。

 流した汗の分だけ流れる血が減るのだ、それ駆け足!!」

 そして毎回恒例の走りこみだった。

 

「美しい春庭守るため~、FKGの出動だ~!!」

 先頭を走るランタナが声を上げる。

 

「きらめけ勝利のソーラードライブ!!」

 その後ろを走るキウイがそう叫ぶ。

 

「害虫どもを殲滅だ!!」

 更に後ろのリシアンサスがそう続けた。

 

 

「緑の春庭危ないぞ~、FKGの出動だ~!!」

 各々が木製の剣や槍などで稽古を始める。

 

「春庭を守護する花騎士たち~!!」

 こぶしで打ち合うプルメリアが歌う。

 

「害虫たちをやっつけろ!!」

 同じく組み手をしていたキルタンサスが続きを歌った。

 

 

「異世界の果てよりやってきた~、古代害虫倒すため~!!」

 エピデンドラムが息も絶え絶えになりながらも、更なる走り込みをしながら歌を引き継ぐ。

 

「戦え、正義の花騎士たち~!!」

 ふらふらになって転びそうになった彼女の肩を近くに居たイヌタデが支えた。

 

「森林山中お手の物!!」

 彼女だけではバランスが悪かったため、あわててニシキギが反対側を支えた。

 

 

「花騎士は害虫より少ないぞ~、物資弾薬有限だ~!!」

 午後は手短なところに害虫が出たので、軽めに討伐の仕事が舞い降りた。

 

「装備も予算も足りてない~」

 害虫を殲滅する味方を見ながら、リンゴが団長に続けて愚痴っぽく歌う。

 

「それでも闘志は負けてない~、決して最後まで諦めない♪」

 最後にすべての害虫を撃退したサクラがそう締めた。

 

 

「どうだった、新入り。うちの部隊は」

 夜に、ぐったりと食堂のテーブルに体を投げ出しているデルフィニウムの対面の椅子に座り団長が声を投げかけた。

 

「想像以上にハードだったぁ」

「まあ、訓練の最中に害虫討伐の仕事が来るのは稀だが、花騎士として常在戦場の覚悟は必要だろう」

 しかし団長は優しげな笑みを浮かべたまま彼女に更にこう言った。

 

「騎士学校時代の成績は見せて貰った。

 壊滅的だな。俺が教員なら留年させてただろうな」

「でへへ…………」

 デルフィニウムは舌をぺろりと出しておどけた調子を見せたが、成績の話をされてあからさまに気落ちした様子だった。

 

「身体を動かすことなら大丈夫だったんだけどね~」

「確かにそれが無かったら卒業なんて無理だっただろう。

 お前は花騎士の候補としては間違いなく落ちこぼれだった、それは事実だ。

 だがお前はこうして花騎士として戦い、仲間から笑顔で送り出されている。

 それはなぜか? お前が花騎士として必要な物を持っているからに他ならない」

「花騎士として必要な物?」

「ああ、何だと思う?」

 団長にそう問われ、彼女は頭を働かせるが。

 

「うーん、わからん!!

 でもデルちゃんの長所は分かる!!

 それは笑顔!! どんな時も明るい事!! それだけ!!」

「なんだ、分かってるじゃないか」

「正解なんかーい!!」

 思わずツッコミを入れるデルフィニウムだった。

 

「仮にだ、サクラの奴が戦闘前に深刻そうな表情で思いつめていて、悲壮感を出してたらどう思う?」

「マジヤベェって思う!!」

「だろう? 花騎士の役割とは人々の守護だ。

 だと言うのにそんな連中が辛気臭い表情をしていたら、守られている人々も不安になる。

 花騎士という職業は、少なくとも一般人からすれば特別でヒーローでなければならないのだ」

 俺はそう後輩に教えている、と団長は語った。

 

「普通の軍隊のように、あの花騎士は他国のだから、とはならないだろう?

 国家と言う枠組みを超えて花騎士は人々の希望なのだ。

 常に明るく笑顔で元気であれ、それが真の花騎士であり、サクラが花騎士の中の花騎士である所以だ」

「あんまり持ち上げないでくださいよ~」

 と、厨房で夕食作りをしているサクラが照れたような声が聞こえた。

 

「それに、害虫を前にして引け腰にならず戦える、というのは案外稀有な才能なんだな。

 俺は実戦未経験の花騎士の候補に、害虫を別の何かに例える時は鋼鉄の二メートル四方のコンテナが突っこんでくるようなもんだと教える。

 実際に力自慢の花騎士に持ち上げて貰って、候補生たちにぶん投げて貰ったこともある」

「ま、マジ?」

「マジだ。少なくともそれに立ち向かおうとした候補生は俺も見たことも無い。皆、血相を変えて散り散りに逃げる。

 実際にどうにかできる能力があるとしても、だ」

「いやぁ、それは逃げるよ、普通」

 一切冗談を含めていないようなトーンで話す団長に、流石のデルフィニウムもマジレスだった。

 

「だから、俺たち団長は花騎士たちが十全以上の力を発揮できるように、弱い害虫で自信を付けさせ、段々と強い害虫と戦えるようにしていくわけだ。

 こいつらなら突然鋼鉄のコンテナが飛んできても平然と迎撃できるぜ」

 と豪語する団長だが、夕食を待っている彼の部下たちの大半が首を左右にぶんぶんと振っていた。

 

「その最初の害虫との戦いで、躊躇いや恐れで命を落とす准騎士も多い。

 先天的に他者を傷付けることに躊躇いの無い人間というのは、およそ2%しかないと言う。

 その2%が花騎士になる確率は非常に低い。害虫と戦うことに疑問を持つ花騎士もごくまれに見かけるしな」

 そう言って、彼は脳裏にあの幼げな少女を思い浮かべた。

 

「お前も何年も戦ってこれたのなら、過去の業績など関係無い。

 戦い、生き残り続けた者こそ、一流と呼ぶべき花騎士なのだ。

 その上で、笑顔を忘れてはいけない。これが本当に大変なんだぞ?」

 気付けば、デルフィニウムは神妙に団長の話を聞いていた。

 団長がそれに気づいて思わずギョッとしていた。

 

「ま、まあ、だからお前も自信を持て。

 戦いの最中で己を疑うのは指揮官だけで十分だ。

 俺の手足となって戦う限り、お前を勝たせてやるよ」

「団長、また口説いてるよ」

「小さい子見たらすぐこれだもんね」

「本当に懲りないよなー」

「ねー」

 せっかく良い事を言っているのに、普段の行いが悪いとご覧の有様である。

 

「てめぇら、人が真面目に助言をしてるのにだな」

「団長マジかっけー!! マジリスペクト!!」

「お前もお前で単純だなぁ!!」

 そして目をキラキラさせて尊敬の眼差しを向けてくるデルフィニウムに、結局何だかんだでデレデレし始める団長なのだった。

 

 

 翌日。

 部隊の面々は朝礼の為、一堂に会していた。

 

「えー、本日の予定だが、リンゴちゃん」

「はい、今日はウィンターローズへ馬車での移動です。

 ナズナ団長が雪合戦大会の警護に地元出身の団長さんの意見と手を借りたいとか」

 メモ帳を捲りながら確認の為にリンゴが今日の予定を伝えていく。

 

「まあ、以前通達した通り、今回は警備だ。気楽にいくぞ。

 ついでに雪合戦大会だが、うちの部隊からも刺客として1チーム送り込む予定だ。

 参加したい者は事前に名乗り出ておけ。

 あとサクラ、例の準備はしてあるな?」

「は~い、勿論です」

「よしよし」

 いかにも悪だくみをしてますよ、という笑みを浮かべる団長だったが、面倒なので誰もそれに触れなかった。

 

「いやぁ、楽しみだなぁ雪合戦。

 どうせ盛り上げるなら雪像とか作る祭りとかにすればよかったと思ったが、あれはもう終わってるしすでに大人気だしな。

 どうせやるなら盛大にしないとな、盛大に、な」

「団長さん楽しそうですねー」

 邪悪に笑う団長の真意を知るのは、今のところリンゴとサクラだけだった。

 

「さて、まず出発前に景気づけに俺からサプライズと行こう」

 だが、この悪だくみを事前に知っている者は団長以外居なかった。

 

「え、ちょ、あれなに!?」

 遠くから黒い物体がこちらに向かって飛んでくるのに気付いたキウイが、指を指してそう叫ぶ。

 

「こ、コンテナだぁ、鉄のコンテナだぁ!?」

 まさに昨日聞いた話のことだったので、いち早くデルフィニウムが気付いた。

 そしてその着弾地点はまさにここだった。

 

「に、逃げろー!!」

 皆が悲鳴を上げて散り散りになる中、冷静に対処する者が居た。

 

「クロユリ合わせて」

「全く、なんでこんな」

 サクラとクロユリだった。

 サクラの魔銃がコンテナを撃ち落とし、クロユリがそれを真っ二つにしたのである。

 

 ごとん、ごとん、と重量感たっぷりの音を立てて落ちる空の鉄コンテナ。

 

「団長さん、イタズラにしても過ぎると思うんですけど」

 微塵も優雅さを失わずに対処して見せたサクラが、団長の背にしがみついているリンゴを一瞥して彼に苦言を呈した。

 

「まったく、お前ら情けないぞ。

 花騎士の候補生どもと全く同じ反応じゃないか。お前らそれでも俺が育てた精鋭か?

 冷静だったのサクラとクロユリだけだったじゃねぇか」

「おーい、団長、言われた通り投げたよー」

「おお、よしよし、約束の骨付き肉だ」

「わぁーい」

 団長は向こうからやってきたイカリソウに骨付き肉を渡すと、すぐに戻ってきた。

 

「おら、警備の仕事が終わったらもう一度鍛え直してやる!!

 コンテナにビビってんじゃねぇ、それでも花騎士か、ああん!!

 本物の害虫だったら悲鳴あげて逃げるのか? あ”あ”ッ!!」

 団長に怒鳴られながら、何か言いたげにしつつも全員黙ってコンテナの残骸を脇に片付け始めた。

 この程度の無茶振りには慣れてるとでも言うように

 

 デルフィニウムは思った。

 団長、マジヤベェと。

 

「お前らもっと精鋭って自覚もたんか!! 

 ほら、今日も元気に害虫をぶっ殺しに行くぞ!!」

 彼の部下たちは何事も無かったかのように整列して、先行する団長に付いて行く。

 

 この先の波乱に満ちた生活を、デルフィニウムは予感せざるを得なかったのだった。

 

 

 

 

『怪盗ナイトシェード、正義の鉄槌!! 恐るべき吸血鬼の罠!?』

 

 

「ささ、ワルナスビ様、今日のお洋服ですぱ!!」

「つーん」

 

「ワルナスビ様、今日の朝食のヨーグルト、どうぞですぱ!!」

「つーんだ」

 

「ワルナスビ様、訓練お疲れですぱ、冷たい飲み物持ってきたですぱ!!」

「八十万ゴールド」

 朝から甲斐甲斐しくお世話していたラークスパーだったが、ワルナスビの冷たい一言で凍りついた。

 

「う”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!”!”!”

 ワルナスビ様ぁ、そろそろ許してほしいですぱぁ!!!」

「ぷい」

 ワルナスビが不機嫌なのも当然だった。

 ラークスパーが団長に買収されたのが昨日の今日なのだから。

 

「ラークちゃんなんて知らないもん。

 団長のところでマインなんとかのレラなんとかでもやってればいいじゃない」

「そ、そんなぁ……。

 あれは一時の気の迷いですぱ。私はワルナスビ様一筋ですぱぁ!!」

「ホントかなぁ」

 ワルナスビはそっぽ向いて必死に謝罪する彼女に冷たく言い放つ。

 

「あのね、ラークちゃん。

 あたしが一番傷ついたのはね、ラークちゃんが裏切ったことじゃないんだ」

「へッ?」

「あたしが一番傷ついたのは、怪盗としてのプライド。

 団長に大切な我がスクワイアを一時でも奪われたことなんだよ」

「わ、ワルナスビ様ぁ」

 その言葉に、ラークスパーは感激した。

 自分が尊敬する人物は、根っからの怪盗なのだと。

 

「この借りは必ず返すぞ、我がスクワイア!!

 先の汚点は次の働きで挽回して貰うぞ!!」

「ハイですぱ、ワルナスビ様!!」

 そんな感じで、何だかんだでいつも通りの二人であった。

 

 

 

「と言うわけで、早速昨日の報復だ!!

 怪盗は夜中に現れるとは限らないッ!!!

 とりあえず団長さんが大切にしてるものを奪ってギャフンと言わせてやるんだから!!」

「お供しますですぱ、ワルナスビ様!!」

 と言うわけで、団長の部屋の窓の外に隠れ潜む二人だった。

 

「ところで、ワルナスビ様。

 ムナールから一体なにを盗むですぱ?」

「くっくっく、実は今日、ムナールが何やらリボンで包装されたプレゼント箱を大事そうに持って、『これだけは絶対に盗まれぬようにせねば』と言っていたのを見かけたのだ。

 これは盗んでくれ、と言っているようなモノだろう?」

「敵の弱点をあっさり見破るとは流石ワルナスビ様、恐ろしいですぱ!?」

「でしょでしょう」

 ふんす、とドヤ顏で笑うワルナスビを、ラークスパーは褒め称える。

 

「ムナールはさっきキンギョソウさんと一緒に食堂で昼食を取っていたですぱ。

 今なら簡単に盗み出せて、ムナールのぎゃふんと言った表情も見れるですぱ!!」

「それは良い考えだ、スクワイアよ!!」

 そうして二人はあっさりと窓から団長の執務室に侵入し、机の引き出しにしまってあった手に乗る程度の大きさのプレゼントボックスを盗み出したのだった。

 

「よし、後は犯行声明のカードを置いてと」

『お宝は頂きました。 怪盗ナイトシェード』と書かれたカードを怪盗らしく置いて、二人は颯爽と窓の外へと逃げ去った。

 それから十分程度経った頃だった。

 

「へぇ、団長が私にプレゼントって、どういう風の吹き回し?」

「ヒバリの囁きが聞こえたのだ。我が眷属に褒美を取らせよとな」

「ふーん、つまり自分からプレゼントをあげようって発想は無かったんだね」

「あ、いや、それはだな……」

 と言った会話をしながら、団長とキンギョソウが戻ってきた。

 

「これ、キンギョソウさんへのプレゼントだったすぱね……」

「ふんだ、ラークちゃんに手を出したお返しだからそんなの知らないもんね!!

 でも、後で返しに行こう……」

 ちょっとテンションが下がったワルスパコンピだった。

 

「なぬ!? どういうことだ、せっかく用意したプレゼントが無いだと!?」

「えー、本当は用意して無かったんじゃないのー」

「違う!! 確かに今朝、ここに!!」

 困惑した団長の声と、キンギョソウの落胆した声が聞こえる。

 

「…………」

「……」

 それを聞いてそこはかとなく罪悪感に苛まれる二人だった。

 

「もういいよ、どうせ団長の用意したプレゼントなんて微妙に私の趣味に合わないだろうし。

 今度買い物に行って、その時に何か買ってよ」

「すまない、我が眷属よ。無くすはずないのだが。

 ……よし、今度と言わず、今から行こう。仕事など、いつでもできる」

「え、でも……」

「良いのだ、ほら、行くぞ」

 そうして、二人は執務室から出て行ってしまった。

 

 二人の気配が完全に消えた後、怪盗二人は無言で窓から再び侵入し、プレゼントの置いてあった引き出しにそれを戻した。

 

「それにしても、団長は何で盗まれたって言わなかったんですぱ?」

「あ、確かにそうだよね」

 プレゼントを机の奥にしまって、他の物にかぶせるなどして小細工をしているワルナスビは疑問に思いながらも、メッセージカードを回収する。

 

「あれ、裏に何か書いてあるよ?」

「どれどれ、ですぱ」

 カードの裏には『中身を見てみよ』と書かれていた。

 二人は顔を見合わせて、プレゼントボックスのリボンを解いて、蓋を開けた。

 

 びよーん、とデフォルメされたコランバインの人形がバネと共に飛び出してきた。

 彼女の人形は、てへぺろ、と舌を出しながら『ハズレでしゅ~』と書かれたプラカードを持っていた。

 

「び、びっくり箱?」

 予想外の中身に放心した二人だったが、やがてその意味を理解して顔が真っ赤になる。

 

「遊ばれたですぱ!!」

「キンギョソウさんを買い物に連れてく口実に使われたんだ!!

 昨日の今日でプレゼントなんて用意できるはずないし!!」

 この日、二人は誓った。

 あの男に絶対目にもの見せてやる、と。

 

 

 

「……何とか成功したか」

「何か言った?」

「いや、何でもない。暗黒の狭間から闇の囁きが聞こえたのだろう」

「なにそれ」

 リリィウッド城下町の商業区を歩く二人は、店を探して練り歩いていた。

 

「(我が眷属にサプライズなど通用しない。

 事前にプレゼントを用意したところで、大して驚かれぬ。

 かと言って本当に何も用意しない訳にもいかない。こやつは勘が良いからな。

 故に、ベストな選択は買い物に誘って彼女に選ばせる、だ!!)」

 その為にわざわざこんなまどろっこしい真似をしたのである。

 普通に買い物に誘っても良かったかもしれないが、それでは特別感が出ないと言うことで却下となった。

 何かプレゼントしたいから一緒に買い物に行こうと言えない、不器用な男の苦肉の策だった。

 

「あッ、このドクロ型のアロマキャンドルとか良さそう」

 雑貨屋の店頭で良さげなものを見つけたのか、手に取ってみているキンギョソウを見て、団長はホッと溜息を吐く。

 たまにはこういうのも悪くないな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここからは近状報告なので、興味ない人は読まなくても大丈夫です。

今までフリーターで不規則な生活をしてきましたが、昼間の仕事も存外に辛いです。
一応二週間やって、契約更新を企業から頂きました。
何度か更新を繰り返して、正社員になれるそうです。
やはり安定した収入と定期的な休みに勝るものはありませんよね。手に職が無いと風当たり強いですし。

キツイ、汚い、ちょっと危険という肉体労働ですが、至ってホワイトな職場なのでこれからも仕事を頑張りながら、細々と更新していきたいと思います。
それでは、これからもよろしくお願いします。では!!


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