転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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全力で色々ブッ込む話




71:運命が切り替わる音がする

「オレは決めたぜっ!『フォースカインド事務所』だっ!」

「任侠ヒーローか…いいんじゃネェカ?」

「地方都市部で荒事も多いと聞く。元の成り立ちも特殊であるから最適だろう」

 

「えぇ!?『シンリンカムイ』の所に行くのっ!唯っち!?」

「ん…」

「塩崎…さんは…いいの?同系統の“個性”…学ぶこと…多いよ?」

「いえ…私は指名頂いてますから。それに山岳救助をメインとした所に行きますので…」

「あー茨っちはモリモリしてる方がいいのか?」

「モリモリっ!?」

 

 

放課後の教室。B組の生徒達が集まりやいのやいのと談義を続ける。

議題は勿論『職場体験』。その行き先だ。

多数の選択肢を与えられた鉄哲・塩崎の両名は意外なことに希望先をアッサリと決めた。元々自分の得意分野を活かす事に重点を置いた二人は目的がハッキリとしていた。

 

鉄哲は己の頑強な肉体を活かした武闘派のヒーロー事務所。フォースカインドの事務所を選択したのは、彼が希望する都市部での荒事が多いエリアであることもそうだが、何よりも腕っぷしだけで無く、元々は暴力団組織からのヒーロー事務所への転身と言う特殊なケースから、当人自身相当な切れ者で、その戦術眼の深さは一部から評価を集めるほどだった。

近接戦闘に引きずり込むためのプロセス。近接以外のアプローチを持たない鉄哲にとって貴重な学習体験になることは間違いないだろう。

 

塩崎の利点は、その無尽蔵に等しいリソースにこそ有る。しかし、それは水と太陽光、更なる促進のために潤沢な栄養が必要だ。大地に根を張ることで、それを実現させているが、都市部で“個性”使用の度に地面のアスファルトやらコンクリートやらを叩き割る訳にもいかない。だからこそ郊外の自然豊かな地域…山岳救助や遭難事故等を行うレンジャー系のヒーロー事務所を探した。

 

方針が決まっている以上、後は意向にあった事務所を調べるだけ。となれば、それ以上に気になるのは、他のクラスメイト…指名の無い面子の行き先となる。

 

 

「しっかしなー、大入すげーなー。行き先選びたいほーだいじゃねーか…」

「同意だ。流石は総合2位…文字通り桁違いだったな」

「けんど?一周回って大変でねぇべが?だって、3000件あるんだど?」

「だよな…」

 

 

そんな中で、やはり自然と話題に上がるのは大入、彼の存在だ。

先の雄英体育祭の立て役者、B組の評価を上げた…いやA組の印象を下げたのは間違いなく彼の活躍に他ない。そうして手にした3000にも登る選択肢の数々。気にならないわけは無かった。

 

 

「ただいまー」

「おっ!大入っ!帰ってきたなっ!…にしても随分遅かったな?」

「ちょっと野暮用でさ…。あっ!もしよかったら俺の指名リスト見るか?俺はもう決めたし…」

『早っ!?』

 

 

大入が手にしたリストをクラスメイトに手渡すと、それに興味を持った人々が群がった。人とは好奇心に勝てない生き物のようだ。

 

 

「うおっ!?『ギャングオルカ』に『ベストジーニスト』!?」

「えっ!?ちょ!マジかっ!?超有名所じゃねえかっ!?」

「いやっ待てっ!他にも番付けで100入りしてる所のがチラホラ有るぞっ!!」

「やっべーなっ!3000の指名やっべーなっ!!」

 

 

大入の受けた指名リストを覗き込むとその量ばかりで無く、質にまで舌を巻く。何しろ、誰しもが聞いたことのある有名事務所からの指名も入っており、大入の評価の高さを物語っていた。

海馬副担任が言っていたことだが、事務所が即戦力として見るのは、経験と実力を重ねた二・三年になってからの話で有り、現段階では興味レベルでの評価でしか無い。先方が高く評価するかどうかは実地研修をして初めて…と言った所だろう。

どちらにせよ、大入は大きなアドバンテージが出来た。ここで有名事務所とのコネクションが確立すれば、そのままコネ入社も夢ではない。

 

 

「そんで、お前は何処に行くんだ?」

 

 

そんな中、泡瀬は本題を大入にぶつける。ズバリ、彼の職場体験の行き先だ。

やはり、有名事務所を選ぶのが鉄板だろうか?いやしかし、大入の“個性”を活かした支援物資を届ける後方支援系のヒーロー事務所、オールラウンドな立ち回りの探索系ヒーロー事務所等の線も有りうる。

兎に角、興味が有る者どもで溢れていた。

 

 

「まぁ、隠すモンでも無いし…。これ、俺の行き先な…」

 

 

そう言うと大入は1枚の紙を出す。そこには彼の研修先のヒーロー事務所の名が書かれていた。

 

 

「「「「「………これ、どこ?」」」」」

 

 

──────────────

 

 

時は数十分前まで遡る。

大入は海馬と共に職員室に向かって歩いていた。

理由は彼女が用意し忘れた職場体験の大入専用リストを受け取るためだ。

事務仕事まで万能に熟す彼女が、こんな珍しくミスをするとは意外だなと感心しながら、大入はその後ろを着いていく。

 

 

「……ごめんなさい。実は先生、君に嘘をつきました」

「…はい?」

 

 

廊下の途中、海馬が足を止めると、彼女は大入に向き直り、腰を折って頭を下げた。

突然の事態に大入は唖然といった様子で彼女を見ていた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい。嘘をついたって、何で?どうして?」

「その…職員室に連れて行くと言う口実を使って、君を連れて行きたい場所が有ったんです」

「…それが…ここですか?」

「…えぇ…」

 

 

大入が横にある扉を見ると、扉の上の方に「校長室」と書かれた表札が掲げられていた。

 

 

「失礼します!1-B海馬副担任です!大入福朗くんをお連れしました!」

 

「どうぞ…」

 

 

海馬がドアを開くとその先には二人の人物が居た。

 

 

「やあ、呼び出してすまなかったね。今お茶を淹れるから、適当に座ってくれたまえ」

 

 

一人はこの部屋の主、学園の最高責任者の根津校長だ。彼は客人に茶を振る舞うべく、茶器を手にしていた。

 

 

「………おにーさん ( ´ー`)」

「僕ろ…東雲黄昏さん?」

「ちょいまって下さい、僕の名前ちゃんと言えるじゃないですかっ (๑ơ˘᎔ ơ)33」

 

 

もう一人は、昨日も顔を合わせたばかりの同級生の東雲黄昏だった。

 

先生に促され、大入と東雲が並ぶように席に座り、その対面に根津と海馬が腰を下ろした。

淹れたての紅茶が湯気を立て、上品な香りが鼻腔をくすぐった。

 

 

「すみません校長…本当は私が淹れるべきですのに…」

「構わないよ。お茶を淹れる事は私のささやかな趣味でもあるからね。

さぁ、遠慮することは無いよ。どうぞ召し上がれ」

「ありがとう御座います。お茶頂きます…(うわっ!ナニコレ、紅茶うまっ!?)」

「はい、どうぞ。御茶請けも食べて良いからね」

「わあっ!イタダキマス (*˘ ˘*)」

 

 

大入が紅茶を手にし、一口飲むと、目を見開いた。

丁寧に入れられた紅茶。根津校長が趣味と言うだけあって、高い茶葉が使われているのだろう事が伺える。しかし、それ以上に校長の腕前に驚いた。

適切な温度と時間によって開かれた茶葉は、紅茶本来の持つ苦みと渋み…その奥に潜む仄かな甘みまで引き立てていた。

洗練された技術に感嘆の念を抱く大入の横で、東雲は茶菓子を手に取り大口で頬張った。

 

 

「……それで?ご用件はなんでしょう?」

「…ふむ、長話も悪いから、サクサク終わらせようか?」

 

紅茶を堪能すると大入は話の続きを聞くために、水を向けた。

校長が少しばかり思案すると大入の誘いに乗り、本題へと入った。

 

 

「さて、始めに二人とも雄英体育祭お疲れ様。

特に大入くん、記録映像を見せて貰ったけど、君は凄いね。制限の付いた環境下でよく戦った!感動したよっ…!」

「はぁ…どうも…」

「君に届いたドラフト指名はなんと3000以上!中には君も知る有名事務所も数多く存在する」

「ほえ~すごいですね、おにーさん (*´∀`*)」

「そんな君に折り入ってお願いが有るんだ」

「お願い?」

 

 

根津校長から出たのは一つの要望だった。

 

 

「君の職場体験先…こちらで指定(・・)させて貰えないかな?」

「…っ!」

「…………はい?」

 

 

根津の提案に大入が呆気に取られた。根津の言葉を聞いた瞬間、海馬が唇を噛んだ。

 

 

「実は君にオファーをしてきた事務所の中に特殊(・・)な事務所が一カ所あってね…。普段は職場体験の受け入れをしていない事務所なんだけど…、どういう訳か『君達』のことを大層気に入ったらしくてね?是非にと請われてしまったんだよ…」

「つまり、将来性を見出して今からツバをつけておきたい…と。

けど、それがどうしたのでしょうか?

もし先方が熱烈なオファーを持ちかけていると言うなら、他のヒーロー事務所と同じ条件で、正規の手順を踏んで要請するべきでは無いですか?

何故、このような『差し押さえ行為紛い』をしてまで、私がその事務所に行くように指定されるのでしょうか?」

「紛いでは無いんだよ…。

情けない話でね。このヒーロー事務所…いや組織(・・)はヒーロー事務所の経営のみならず、自ら技術開発事業を展開する大企業でもあり、その収益が多くのサポート会社へと流れている。

つまりは我々ヒーローの業務を支える屋台骨…いや基礎と言っていい組織でね?その気になれば「支援の手を止める」ことだって出来るんだ…」

「それって…つまり…」

「今回に限って何故か『君達』に対して強引(・・)なアプローチをしてきてね…。我々も困っているんだよ」

「……ちょっと待って下さい。

…それってズルじゃないですか?」

「そうですよっ!しょっけんらんよーデス ヾ(*`Д´*)ノ」

 

 

根津校長の意図が読めてきた。

 

国一番のヒーロー養成学校、雄英高校。国立とは言う物の、その存在は一枚岩では無い。行政、教育機関、警察組織、防衛設備の設置やヒーロー戦闘服の作成・サポートアイテムを開発、入試ロボットを導入する数多くのサポート会社。

最高峰たるこの場所では、多くの利権や金、そして人が動く。

 

今回の一件。つまりは大入と東雲を囲い込みたいという、露骨で強引な勧誘だったと言うわけだ。

 

 

「それになんで東雲さんまで?少なくとも俺はまだ分かります。これでもそこそこ結果を出したつもりですから…」

 

 

しかし、不可解な事がある。『大入』と『東雲』…何故この二名なのか?

 

大入福朗は分かる。雄英体育祭総合2位。期待溢れるA組軍勢を見事に蹴散らして、もぎ取った成績。目を見張る物があったと言われたなら納得できる。

加えて、『AVENGER計画』の第一被験体と言う立場だ。かつて世間を震撼させた悪名高き(ヴィラン)の忘れ形見。雄英高校に対し、此処までの強引なアプローチを可能に出来る程の権利があるならば、その情報を所有していてもなんらおかしくは無い。

つまりは『大入福朗』はそれだけ周りから目を付けられるだけの理由を持っている。

 

しかし、『東雲黄昏』はどうだ?彼女には目覚ましい成績は無い。可も無く不可も無い雄英のヒーロー科一般生徒だ。

もしや、知らないだけで重要な秘密があるのだろうか?

 

 

「それは分からないね…。君はともかく、何故東雲くんを勧誘するのかはさっぱりだ…」

「うー…本人目の前にして言わないで下さい ( ー̀ωー́ )」

 

 

根津が首を傾げウンウンと唸るが、答えは見つからない。隣の海馬も同様だ。

 

 

「…一つお伺いしても宜しいですか?」

「何かね?」

「その行き先、ヒーロー事務所は何処ですか?」

「あぁ、それはこちらの資料になります」

 

 

海馬が手元に持っていたファイルから、この度強引な手に出た不届き者のヒーロー事務所が公開された。

大入が資料に目を通すと少しばかり考え込むと、根津へと問いかけた。

 

 

「このヒーロー事務所…評判はどうですか?裏で悪どい事してるとか?」

「ず、随分包み隠さずに聞くね…」

「特権使ってまで強引な手段を取るような所です。懸念しない方がおかしいでしょう?」

「…ヒーローとしての業績はさほど高くは有りませんが、所属ヒーローの実力は一級品、加えてサポート会社並の開発力を有しています。

これと言った悪い噂も聞きません…しかし…」

「そんな所が今回に限り、こんな手を使っている…。それは何故か?…と言う疑問点に帰ってきてしまうんだよ」

 

 

こればかりはお手上げだと言わんばかりに根津が頭を抱えた。隣の海馬も申し訳なさそうな顔をしている。

 

 

「…まぁ、分かりました。この話、受けましょう」

「おにーさんっ (´・ω・`;)!?」

「…受けてもいいのかい?」

「えぇ、海馬先生の資料をもう一度自分で確認して調べ直してからですが…。構いませんよ?」

「…あの、良いんですか?もっと君になら選択肢はあるんですよ?」

「まぁ、これ断ったら学校にどんな不利益が出るか分かったモンじゃ有りませんし。それに、ここにはここのメリットも多いので…。

それより東雲さんはどうなの?言っちゃ悪いけど、どうにもキナ臭いよ?」

「いえ、そもそも僕はここからしか指名貰ってませんから、実質的には一択ですし… (›´A`‹ )」

「さいですか…」

 

 

ここで大入がこの怪しいヒーロー事務所に研修に行くことを容認した。普通であれば忌避したい状況では有るが、大入は学校の為にも行く以外の選択肢は無かった。

 

 

「本当に申し訳ない。感謝するよ」

 

 

そう言うと根津は生徒二人に深く頭を下げた。

余りにも畏まる態度に二人は目を見開いた。学校の最高責任者が一介の生徒に頭を下げているのだから当然だ。

 

 

「校長先生っ!頭を上げて下さい!」

「そうですよ!何ものそこまでしなくても… ( •́ㅿ•̀ )」

 

「いや、教育者として君達の自由意志を妨げる行いになってしまったことを申し訳なく思う…」

 

 

心苦しそうにする根津校長。

それを見た大入は有ることを閃いた。自分の欲を満たすいい考えをだ。

 

 

「……そうですね。確かにそうです。

今回私は、数多くの選択肢を全て放棄して、校長の依頼を受けることにしました。

しかし、この裏取引…とでも言いましょうか?兎に角、この行いは他のヒーロー事務所を蔑ろにする行為に他なりません。何せ件の事務所の要望を通すために学校が『不正を働いた証拠』となるのですから…」

 

 

そう言って大入は悪どい笑みを浮かべた。それを見た根津と海馬の表情に警戒の色が浮かんだ。

 

 

「そんな事実を知った生徒には『口止め料』が必要じゃ有りませんか?」

「ちょっとおにーさん (*゚ロ゚*)!?」

「待ちなさいっ!大入くん、君は学校を脅そうとでもしているの!?」

「いえいえ、まさか!

でも、皆さんが私のために送ってくれた3000という膨大なドラフト指名。これだけで、私の事を高く評価し、力を貸す逸材になって欲しいという期待が込められていた証です。

しかし、それら全てを吟味することさえ出来ずに、どこからともなく現れた第三者に選択権をただ掠め取られるのは…どうにも損をした気分になるのです。

私はもう少し自分の利益(・・)が欲しいのですよ…」

「…つまり、君は見返りとして何を求めるのかな?」

「別段難しい事ではありません…」

 

 

大入はテーブルに置いたティーカップを手にして、こう告げた。

 

 

「今度、おいしいお茶の淹れ方を教えて下さい」

 

 

その顔は朗らかな笑顔だった。

 

 

──────────────

 

 

「『ネイチャーカンパニー』…聞いた事無ぇヒーロー事務所だな…」

 

 

そういった経緯を経て決定した研修先。

大入が差し出したプリントを見た泡瀬が怪訝な顔でそう言った。

 

『ネイチャーカンパニー』…名前に会社(カンパニー)と入っているが、法的に見ても立派なヒーロー事務所である。

より厳密に言うと『ネイチャーカンパニー』には経理、営業、研究開発等の部署と同列に『ヒーロー課』なるものが存在する。

『第三種ヒーロー事務所』と呼ばれる運営形式で、スネークヒーロー『ウワバミ』のヒーロー事務所もこれに該当する。

 

実はこの分類というのが、ヒーロー収入と副業収入のバランスで振り分けられる物である。

ヒーロー収入一筋の物を『第一種』。

ヒーロー収入と副業収入のバランスがヒーロー収入に傾倒している物を『第二種』。

反対に副業収入に傾倒している物を『第三種』と呼んでいる。

 

 

「まぁ…特殊なヒーロー事務所だからな…」

 

 

ヒーローと言う職種はヒーロー活動のみならず、副業が許可されている。

有名な所だと『プレゼントマイク』が司会を務めるラジオ番組。

『ミッドナイト』『Mt.レディ』『ウワバミ』等の女性ヒーローによる化粧品のキャンペーンガール。

又は大食いヒーローや肉体派ヒーローによる食品関連のコマーシャル出演。

『ギャングオルカ』『Ms.ジョーク』等のイベントでのショーのオファー。

 

そんな中、件のネイチャーカンパニーの副業は「アイテムの開発」なのだ。

ヒーロー活動の際に使われる戦闘装備や、救命道具、又被災者への救援物資に小型発電機や簡易浄化槽等、様々な分野で技術開発を進めている技術屋でもあった。

 

体育祭では廃材から武器を作成していた大入は、サポートアイテムの分野にも興味がある。数多くのサポートアイテムを操る大入にとって、アイテムに対する理解と言うのは自分の命綱とも言える。

いづれはサポート科との交流を深め、そちらの方面のノウハウも学びたいと考えていた。

 

そう言った点では、この職場体験先は最適と言える。

ヒーロー活動とサポート業務の両方の面を見ることが出来るのは一粒で2度美味しい条件に見えた。

加えて、利点をもう一つ挙げるなら…。

 

 

(所在地が保須市(・・・)なんだよな……)

 

 

東京都保須市…。

 

それは先日、重傷を負ったインゲンニウムが見つかった場所、現在英雄殺し『ステイン』が活動している現場だ。

 

であれば、職場体験中に盛大な祭り(・・)が開催される事を大入は知っている。

最悪、大入は職場体験を抜け出して、自作の非合法装備で武装して、自警団として飛び入り参加も夢ではないと考えていた。

 

 

 

「…ふっふっふっふ………」

 

 

そんな計画を立案していると、突如笑い声が聞こえた。一同が声のする方を見ると、窓際の席、そこに座る物間が笑っていた。

 

 

「まぁ、いいんじゃないかなぁ?大入は大入の好きな所に行けばさぁ?」

 

 

先程まで気配を消して静かにしていたクラスメイトが立ち上がると、そのまま実に愉快に高らかに笑い声を上げた。

それを見た瞬間、一同の心は一つになった。

 

 

(((((…あぁ、あれは気が触れているときの物間だ)))))

 

 

物間寧人という少年は調子に乗れば乗るほど舌が回って、煽り症になる。普段クラスメイトにそれが向くことは少ないが、あくまでも少ないだけである。

対抗意識が強くなるほど、その側面が目立つ。特にクラス内でチームアップした訓練の際は、例え仲の良い大入であろうと、情け容赦無く口擊を仕掛けてくる。

 

 

「おう、なんだい物間君?珍しくも俺の考えを尊重してくれるのかい?」

「いやいや、正直羨ましいよ。そんなにいっぱいオファーがある中で、そんな中途半端(・・・・)なヒーロー事務所に行くなんて…。

やっぱり、総合2位様は違うねぇ?余裕があって…」

「……中途半端?」

「あぁそうさ!その『ネイチャーカンパニー』ってヒーロー活動だけじゃ無く、サポート会社紛いの仕事もするんでしょ?確かにそれは立派な事さ…。

でもね?それって「どっちつかず」って事じゃ無い?それを中途半端と言って何が悪いの?」

「…ほぅ、物間君はヒーローの副業に随分と否定的な見解なのかな?」

「そりゃあそうさ!そもそもヒーローの仕事は人助けだろ?そんな人気取りや金儲けに現を抜かすなんて、僕はどうかと思うね?」

「でもさ…俺の行くところの副業はサポートアイテムや救援物資、インフラ設備なんかの研究開発だよ?サポートアイテムはヒーロー活動と切っても切れない関係だし、救援物資やインフラ整備も人助けには必要な役割だ」

「そんなもの専門家に任せるべきだろう?ほら、『餅は餅屋』って言うじゃない?」

「分かってないな~。その道の人に丸投げは無責任が過ぎるだろう。

自分達の使っている道具に理解を深めれば、その分不測の事態へのケアに繋がる。専門外の知識ってのは、無駄にはならないさ」

「むぅ…」

 

 

道化の大入だって負けては居ない。伊達にこの性格ねじ曲がった少年の相方を務めては居ない。彼に引けを取らないほどに頭も舌も回る。

 

 

「……ん?そういや物間ァ…お前の指名って何処だったんだ?」

 

 

ふと思い出したように鉄哲が物間に尋ねる。

 

そう、物間も指名を貰った生徒の一人だ。最終種目に出てはいない物の、騎馬戦では終盤瞬く間に騎馬三騎を行動不能にし、更には総合1位のあの爆豪を後一手の所まで追い詰めたのだ。その指揮能力、土壇場の戦闘センス、戦術眼等評価に値する働きを見せたのだ。

 

 

「あぁ、僕の指名かい?」

 

 

よくぞ聞いてくれたっ!と云わんばかりの顔をして答える物間。その口角が吊り上がり、笑いを堪えるのも既に限界の様子だった。

 

 

「僕は思うんだよ…。ヒーロー事務所のオファーは量なんかじゃ無く質だと!

幾ら指名が何千と有ろうと二流三流の事務所じゃ話にならないっ!一流のヒーロー事務所に指名を貰ってこそっ!自身の最大級の評価に繋がるんじゃ無いかなぁ!?」

 

「んなゴタクはいいって…んで?何処よ?」

 

 

絶好調にご機嫌な物間を軽くスルーして泡瀬が先を促す。

そうすると物間はクツクツと笑った。

 

 

「知りたいかい?知りたいよねぇ?じゃあ、教えてあげるよ。

 

僕を指名してきたのは………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エンデヴァー事務所』」

 

もう1回(ワンモア)

 

 

物間の口から予想もしていない言葉か出た。あまりの衝撃的な発言に大入が反射的に聞き返した。

しかし、物間の笑みは消えない。

 

 

「何度でも言ってあげるよ大入ぃ?

僕の研修先はあの『エンデヴァー事務所』だ…」

 

「まじかよっ!…まじだよ……」

 

 

得意げに物間が自分に届いた専用のリストを差し出す。それを鉄哲が横から掻っ攫うとマジマジと見つめた。

 

そこにはA4プリントの真っ白な紙。その上の方に一件だけポツリと記載されたヒーロー事務所…エンデヴァー事務所が記入されていた。

 

鉄哲がそれを認めた瞬間にクラス内がどよめく、ある者は鉄哲が持ったプリントに密集し、ある者はヒソヒソと話し声で騒ぎ立てる。

 

大入は目を白黒とさせて動揺を露わにした。

 

 

「あーっはっはっはっーっ!!!

どうだい!3000という膨大な指名を貰って悦に入って居るところ悪いけれど、僕が指名を貰ったのはあのNo.2ヒーロー!!エンデヴァーなんだからさぁ!?

No.1ヒーローのオールマイトは職場体験してないだろうし!実質、最上級かつ最高峰の研修先じゃなぁい?

つまりさぁ!!総合2位の君なんかより、最終種目に出ても居ない僕の方をエンデヴァーは評価したって事さ!!

ねぇ?どんなきもち?

自分より格下だと思ってた相手が自分よりも凄いヒーローに評価貰ってさぁ!サラッと追い抜かれたきもち?

ねぇ?どんなきもちぃ?」

 

 

正に愉悦。

物間が散々堪えていた高笑いを解放し、それが教室に響き渡る。

 

あのエンデヴァーからの指名が物間に来たなら、大入はそれよりも格上のヒーロー事務所から指名は来る筈は無い。

だからこそ物間は勝利を確信したかのように余裕を見せていたのだ…。

 

 

「…………」

「…オイ、大入?」

 

 

大入は顔を伏せたまま、ただならぬ様子で沈黙を保つ。鉄哲は心配したように声を掛けた。

それを受けたかのように大入が立ち上がる。物間に歩み寄り、彼の両肩を掴んだ。

 

そして深刻そうに口を開いた。

 

 

 

「悪いことは言わん。辞めとけ」

 

 

 

その眼光は底冷えする程に冷たかった…。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「テンさーん «٩(*´∀`*)۶»!」

 

「…むっ?東雲クンか?如何したのかね?」

 

 

職場体験当日、駅のホーム。ヒーロー科1年A組の生徒達が各々の職場へと足を向ける。ある者は北海道・東北、ある者は九州・沖縄へと旅立って行く。

A組の委員長『飯田天哉』。彼も又、彼の職場体験先へと旅立つ。

その足を止めたのは東雲だった。低身長の彼女は自らのコスチュームケースを重たそうに担ぎながら、不安な足取りで彼の元に歩み寄る。

 

 

「僕も行き先、保須市なんですよ~。

一緒に行きませんかっ ☆٩(。•ω<。)و」

「そうだったのか?

…失礼したっ!一緒に行こう!」

「あぁ、待って下さいっ!もう一人居るんです (๑¯∇¯๑)」

「もう一人?」

 

「いや~スマンスマン!待たせた」

 

「おに……おにーさん (º ロ º๑)!?」「大入クン!?」

 

 

そこに両名と同じく保須市へと赴く生徒、1年B組の大入が合流する。

 

 

「ケースデカっ (´⊙ω⊙`)!?」

 

「おうっ!大入’sコスチュームver.1.8って所だなっ!」

 

 

二人が注目したのは、大入のコスチュームケースだった。他の生徒とは一線を画す大容量のケースは、そのサイズ比、実に五倍になる。

大入は入学後、早い時期からサポート科との交流を開始し、アイテムのテストプレーヤーを通じて、装備品の充実を心掛けた。

その労力もあってか、彼のコスチュームケースはここまで大きく育った。

最早アタッシュケースから長旅のトランクケースへと進化を遂げたそれをゴロゴロと引き摺りながら二人の前に現れたのだ。

 

二人の中々の反応に上機嫌な大入がカラカラと笑う。絶対にウケ狙いの確信犯だ。

 

 

「そんじゃ行こうか?」

 

 

大入が二人を驚かすという目標を達成すると、馬鹿でかいコスチュームケースを“個性(ポケット)”に格納する。

 

 

「大入クン!

公共の場での“個性”の無断使用は禁止されて居るぞ!ヒーロー見習いであり、誇り高き雄英生ならば守らなくては駄目だろうっ!!」

 

 

大入が邪魔になる手荷物をしまうと、それを見た飯田が注意をする。

 

 

「まぁ…それはそうなんだけどさ?

俺の荷物そのまま持ち歩いたら邪魔で仕方ないでしょう?このまま新幹線乗るけど、荷物置くスペース限られてるし…。ここはケースバイケースで見逃してくれ、コスチュームケースなだけに…」

「オヤジギャグ…ギルティです (  '-' )ノ)`-' )

それはいいとして、僕のもお願い出来ますか?」

「おう、任された」

「…むう、そう言うことなら仕方ないか…」

 

 

大入が下らない言い訳を述べると、東雲もまた大入に荷物を預けた。それを大入が格納すると、自前の“個性”制限用の革手袋を着け直す。

飯田の方も大入の言い分にやむなしと行った具合に認めたようだ。

 

 

 

 

 

 

「……それで、二人は同じ研修先なんだったな?」

「ですー (ノ*>∀<)ノ♡」

「あぁ、『ネイチャーカンパニー』ってとこ」

「カンパニー…?それはヒーロー事務所なのか?」

「あぁ、ヒーロー活動の傍らで独自にサポートアイテムや救命道具なんかの研究をしている会社でさ…、独自に開発した技術等を他社のサポート会社と共同で製品化をしてるらしい」

「それは凄い場所だな…」

「そうなんだよ!つまりは試作機(プロトタイプ)を作る研究所っ!『世界に一つだけのアイテム(ワンオフアイテム)』…あぁ、浪漫溢れる…」

 

 

3名が新幹線に乗り込むと、移動時間の暇を潰すべく雑談へと洒落込む。話のネタはもちろん研修先についてだ。

 

 

「そ、そうか…。それにしても不思議だな?大入くんなら他にも指名来てただろう…」

「不思議って言ったらテンさんもですよ?『マニュアルヒーロー事務所』なんて僕初めて聞きましたモン… ( ´•ω•` )」

 

 

飯田天哉。彼の研修先は水を自在に操るヒーロー『マニュアル』の事務所だった。

しかし、当然のように気掛かりな点がある。何故このヒーロー事務所なのか?だ。

マニュアルは確かに実力重視の若手ヒーローではあるが、ヒーローランキングを見て見るとかなり下位のランクに位置する。他にも実力重視の事務所は有ったはずだ。少なくとも、東雲は飯田が100件程ヒーロー事務所から指名を貰った事を知っている。

加えてマニュアルというヒーローを選択すること自体もおかしい。マニュアルの“水を操作する個性”は発動型であり、飯田とは“個性”の系統もまるで違う。それだけで得意分野や立ち回りは大きく異なるため、先人を見本に学ぶ点でも利点は少なくなる。

以上の点を纏めると、飯田の選択は旨みが少ないのだ…。

 

 

「…そんなことはないぞっ!マニュアルさんは規律を重視した、正に模範と言うに相応しいヒーローだ。それは俺が調べた彼の今までの功績からも充分に読み取れた…。

だから、俺はこの職場を選択したんだ!」

 

「本当に…?」

 

「…え?」

 

 

なんでも無いような質問に飯田は言葉を詰まらせた。大入りの視線が、刃の様に鋭く、水底の様に深く透明な色で、こちらを見ていた。

 

 

『間もなく~保須~保須~。お降りのお客様はお忘れ物の無いようにお願い致します』

 

 

目的地への到着を知らせる車内アナウンスが流れる。束の間の緊迫は解きほぐされ、大入がいつもの顔になる。

 

 

「これだけは言って置くよ…。何か行動を起こすなら、しっかりと目標を見据えるといい。君に取ってのゴール地点は何処なのか…ちゃんと考えな」

 

 

新幹線が停車したのと同時に大入は席を立つ。そして一足先にと新幹線を降りた。東雲は二人を見やり、飯田に別れを告げ、慌てて大入の後を追った。

 

最後には飯田だけが一人残った。

 

 

「…目標?…ゴール地点?

そんなものは決まっている…。俺は…っ!」

 

 

彼は静かに奥歯を噛み締めた。内に眠る小さな炎を押さえ込むように…。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

「……着いたな」

「ほぇ~…ここがそうなんですね~ (º ロ º๑)」

 

 

駅を出て、バスで数十分、徒歩で数分。俺達は高々と聳え立つビジネスビルを見上げていた。

『ネイチャーカンパニー』…俺達の研修先。学校側から半強制的に指名された曰く付きの物件。

 

 

「立ち往生するわけにも行かないから行こうか…」

「です ( ºωº )」

 

 

意を決して自動ドアを潜る。エントランスホールを進んでいくと、先の方に受け付けカウンターを見つけた。

隣の同行者、僕ロリに目で合図をすると、意図を察したのか、表情を引き締めてうなずく。

俺が一歩先に、その後を彼女が続いて歩く。

 

 

「ようこそ『ネイチャーカンパニー』へ、本日はどのような御用でしょうか?」

「お忙しい所を失礼致します。国立雄英高校ヒーロー科1年、大入と申します。本日から1週間、御社のヒーロー課にて職場体験学習をさせて頂く予定となっております。どうかよろしくお願い致します」

「お、同じく、ヒーロー科1年、東雲と言います。よろしくお願いします」

「…つきましては、ヒーロー課の担当者へのお取り次ぎをお願い致します」

 

「畏まりました。只今担当者をお呼びします。どうぞそちらのソファーの方でお待ち下さい」

 

 

受付嬢の案内でエントランスに設置された待合所へと足を運ぶ。二人は適当な席を確保すると、そこから見える会社全体を観察していた。

するとビジネススーツを着た職員や、白衣姿の職員、ツナギ姿の職員と様々な恰好の社員が忙しそうに動いている。

 

そうしていると、獅子顔の異形の男性が歩み寄って来る。その男は獅子の顔に相応しい程に筋骨隆々の肉体をしていて、全身に軽金属の防具(ライトプレートアーマー)と腰に多目的ポーチを取り付けていた。見るからにヒーローと言う職に着いている人物だった。

 

 

「いやいや、待たせて済まない。私はこのネイチャーカンパニーのヒーロー課で相棒(サイドキック)を務めている『グレイトライガー』と言う。今回君たちの面倒を見ることになった。短い期間だがよろしく頼む」

「……雄英高校1年の大入…ヒーロー名『ジャックサッカー』です。よろしくお願いします」

「同じく1年…し、東雲黄昏。ヒーロー名『コロナ』お、お願い…します…」

「ガッハッハっ…!二人共、言い名前だなっ!」

 

 

豪快な笑い声を上げるグレイトライガーさん。

もうあれだ、勇者王にしか見えん。声といい、見た目といい。

ウッカリ噴き出しそうになったのを堪えようとして、声が上ずった。バレてないことを祈る。

それよりも隣にいる僕ロリが緊張の余り、カチコチになっている。大丈夫だろうか…?

 

 

「早速で悪いがウチのボス。この会社の社長であり、ヒーロー課のトップに挨拶をして貰う。…いいか?」

「はいっ!」「は、はいっ!」

「おうっ!いい返事だ!ガッハッハっ!」

 

 

彼に先導され、俺達はエレベーターに乗り込む。エレベーターは上昇を始め、1階…2階と高度を上げた。

最上階にたどり着くと長い廊下を歩き、目的の場所『社長室』へと辿り着いた。

 

 

「さあ、ここだっ!この先に俺達のボスが居るぞ!くれぐれも粗相(・・)の無いようにな…」

「「はいっ!」」

 

 

俺達の返事を聞いたライガーさんは頷くと社長室の扉をノックした。すぐに返事がして、入室を許可される。

 

 

「………まぁ、無理だと思うがな…」

 

「「…?」」

 

 

小さな声で呟いたライガーさんの声を、俺は聞きとることが出来なかった。

 

社長室に入るとその最奥には、見るからに高級そうな作業机、飾り付けに置かれた調度品や本棚に整頓された膨大な量の資料が、この部屋の独特な空気を作っていた。

そして、作業机の先の大きなイスに腰掛けた人物が背中を向けて窓から外を眺めていた。

 

 

「お待たせしましたボス。本日より職場体験をする雄英生二名が只今到着致しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うむ、ご苦労じゃのう…」

 

 

「っ!!?」

 

 

その声を聞いた瞬間、全身が震えた。呼び起こされる遠い日の記憶、忘れるはずが無い…、忘れられるはずが無い…。

 

 

「実に久しいのう。…あれから15年(・・・)…いや、お主らの感覚では3年(・・)かのう?

まぁ、儂にとっては15年も3年も1年(・・)もなんら変わりはせんわい。

それにしても…随分と遠回りをしたものじゃ…文章に起こせば39万と6千字くらいかのう?」

 

 

そしてその人物…ボスが振り返る。

次の瞬間には、体が勝手に動いていた。

 

 

「おにーさんっ Σ(,,ºΔº,,*)!?」

 

 

後ろで僕ロリの驚愕する声がする。しかし、止まれない。全身を駆け巡る熱い衝動が、体を前に押し出す。

右の拳に〈揺らぎ〉を纏い、更には腕を肩を覆う。

 

 

「衝撃のっ!ファーストブリットぉっ!!!」

 

 

〈揺らぎ〉から突風が噴き出して、最高速度に乗る。そこから躊躇無く、ボスと呼ばれた人物に自慢の拳を叩き込んだ。

激しい衝撃が部屋全体に迸る。作業机を割り、調度品を薙ぎ倒し、本棚の資料を吹き飛ばした。

 

 

「やれやれ、せっかちじゃのう…。これが今流行のキレる若者か?

元気があって大変宜しいっ!!」

 

「…何故だっ!!何故アンタ(・・・)がここに居るっ!!?」

 

 

俺の拳が目の前の少年の目と鼻の先で止まる。抗いようの無い不可思議な力場が働いて、その先への侵入は許されなかった。

俺は吼えた。衝動に身を任せ、力の限り。

 

そして、そいつの名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

ショタ神(・・・・)ぃっ!!!」

 

 

そいつは紛れもなく、俺をこの世界に連れてきた張本人……。

 

 

「ほっほっほっ…。改めて、久しぶりじゃ!

千種一考(ちくさかずたか)』くん!『東条寺陽子(とうじょうじようこ)』くん!」

 

 

あの死の世界で対面した、少年姿の神だった。

 

 

 

 

 

 

「いや、今は『大入福朗(・・・・)』くんと『東雲黄昏(・・・・)』くんだったのう……」

 

 

目の前のこいつが楽しそうに笑った…。

 

 

 


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