転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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アニメも騎馬戦が始まりました。

やはり物間君、君は声もイケメンだったな。爆豪に爆殺されて正解だ。

\イケメン爆発しろ/

続きです。




52:昼休み 2

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!

あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!

本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん?アリャ!?どーしたA組!!?』

 

 

会場に再度集合すると奇妙な物を見た。チアガールのコスチュームに身を包み、ポンポンを手に持つA組女性メンバーだ。その表情は死んでいる。

 

 

「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

 

激怒する八百万の視線の先でサムズアップするエロ小僧二人。女性メンバーはこいつらの口八丁に誑かされたのだ。

その光景を白い目で見るB組一同…。しかし、視線が向いているのは彼女たちでは無い。

 

 

「すみませーん写真いいですか?」

 

 

携帯のカメラ機能を立ち上げながら歩み寄る大入福朗だった。

 

 

「ちょっと待てって大入!いきなり失礼だろ!」

「止めるな回原君…俺は行かなければならない。折角皆が可愛い衣装に身を包んでいるんだ!記念に納めずにどうするっ!」

「お前はどんなキャラを押していきたいんだよっ!」

「君になら分かるはずだ回原君。想像してみろ…もし塩崎さんがチアガールの姿に着替えて、長い髪をツインテールにして、「頑張って下さい」って言ってきたら…どうする?」

「…ヤバい、世界だって救えちゃうわ……」

「だろ?そういう事だ。では行って来るっ!!」

 

 

その後、大入は持てるネゴシエート能力を全力で発揮するべく、A組女性メンバーに突貫する。

 

 

「ヤッホー麗日さんと僕ロリ」

 

「「「「ボクロリ!!?」」」」

「大入くん」「あっ!おにーさん ヾ(´︶`*)ノ♬」

 

「素敵な姿だな」

「そうでしょ~?見て下さい!これで男共を悩殺です (*´˘`*)♡」

 

 

そういいながらウフン(ハート)と「せくしーぽーず」を披露する東雲。いろいろ未発達な容姿も相俟って色気よりも安心感がある何とも微笑ましい絵面だ。

 

 

「悩殺は無理だな、色気が足りん。可愛い系か愛くるしい系で攻めた方が効果あるぞ」

「あう…(๑´>᎑<)っ゛」

 

 

そういいながら大入は頭をなでる。すると東雲が借りてきた猫の如く大人しくなった。

大入は不思議に思った。僕っ娘ロリっ娘の彼女なら「女の色気が無い」と言われれば突っかかって来ると考えていたのだが…まさか「可愛い」の方に反応を示すとは思いもしなかった。

「あれ?こんなチョロい奴だっけ?」と言う疑問を一先ず片隅に置いて話を続ける。

 

 

「そんな可愛い皆を是非!記念のフィルムに納めたいんだけど、どうですか?」

 

「そんな…こんなはしたない格好でなんて…」

 

(ヤオモモさん…貴女の戦闘服の方がヤバいと思われるのですが…)

 

「私はちょっと恥ずかしい…かな?」

「えぇー?いいじゃん!楽しそうだよ!」

「そうだよ折角なんだしさぁ」

「二人ともこういうの好きね」

 

「ちょっと待って…アンタさあ、そもそもウチらの写真なんて撮ってどうする気?」

 

 

そう言いながら女子を庇うように大入の前に立ちはだかる耳郎。イヤホンの先端をこちらに向けて既に臨戦態勢に入っている。

しかし、チアガール(そんな)姿で凄まれても、ただただ可愛いだけなのだ。

 

 

「それこそ大切な記念の一枚として…かな?美人が綺麗な衣装に身を包んでいるのは写真映えしてとてもいいんだ。

…もしかして、俺が写真を変なことに使うんじゃ無いかって警戒されてる?だったら、そちらからカメラ貸してくれれば、それで撮影するよ。俺としては検閲掛けて問題ない集合写真を数枚貰えるなら充分だしね。

それと、ここで写真に納めるメリットもあると思うんだ?」

 

「…メリット?」

 

「ここでキュートなチア写真を携帯に保存してさ…気になるあの子に送りつけるの!そしたら彼はドキドキして貴女の事を意識すること間違いなし…」

「いい加減にしろ馬鹿っ!!」

「あばっきおっ!!」

 

 

大入が女性陣との交渉の最中。少し遅れて会場入りした拳藤の痛烈な一撃が大入を沈める。“個性”である巨大な手の平から繰り出された手刀は、ゴシャァッ!という音を轟かせ、大入を物理的に地面に沈めたのだ。

 

 

「し、失礼しました~っ!」

 

「「「「「…」」」」」

 

 

斃れた大入を回収し、一目散に撤退する拳藤。それを呆然と眺めるA組女性メンバー。

しばし視線を交わすと何やら無言で頷き合った。

 

その後、女性陣の撮影会が秘密裏に執り行われ、数名の男子生徒にチア写真が贈られたとか贈られないとか…。

 

 

 

 

「…一佳よ、酷いんではないかい?」

「このお馬鹿界のニューウェーブっ!少し目を離したと思ったら何やってんだっ!!」

「いや~余りによかったんでつい…卒アル(・・・)映え間違い無しだったのに、実に惜しいことをした…」

「あぁ、そう言う奴だったよアンタは…」

 

 

ガックリと項垂れる拳藤。

 

 

「仕方ないな、来年に期待しよう。来年はAB合同でチアガール着て、男は応援団の白学ランでな!集合写真撮ったら楽しいぞ!」

「そんなにチアガールが見たいのか?」

「あぁ、勿論。…きっと一佳も似合うぞ」

 

 

「…うるさい、ばか」

 

 

 

_______________

 

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目!

進出4チーム16名からなるトーナメント形式!!』

 

『一対一のガチバトルだ!!』

 

 

会場に全ての選手と観客が集まりプログラムが進行する。『ミッドナイト』の指示により最終種目の厳正なる抽選会が行われる矢先、事件は起こった。

 

 

「あの…!すみません。俺、辞退します」

 

 

手を上げて最終種目を辞退する旨を1-A『尾白猿夫』は伝えた。

この最終種目は体育祭の正に花形。全生徒が喉から手が出るほどに望むその権利を、彼は放棄したのだ。

 

 

「尾白くん!何で…!?」

「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」

 

「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分奴の“個性”で…。

チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だってのも…!

でもさ!皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな…こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて…俺は出来ないっ!」

 

 

必要以上に気負いする尾白。しかし、彼の考え方に賛同する者も居た。

 

 

「君の気持ちはよく分かるよ尾白くん☆」

 

 

賛同者は同じく1-Aの『青山優雅』だった。

 

 

「誠に申し訳ないマドモワゼル。僕も彼と同じ理由で棄権させていただきたい。

僕も騎馬戦での記憶が殆ど無いんだ…。この最終種目への権利は「自ら掴み取った物」では無く「誰かから不躾に与えられた物」だ。そんな物に縋って最終種目へ進むのは…美しくない。

願わくば、僕よりも「勝つために全力を尽くした」者にこの権利を譲り渡してはくれないかい?」

 

 

「ちょっと二人とも気にしすぎだよ!本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」

「そんなんいったら私だって全然だよ!?」

 

「違うんだ…!俺のプライドの話さ…俺が嫌なんだ」

「気遣いは嬉しいよ?でも駄目☆これは僕の美学の話。僕が僕としてヒーローを目指すのに必要な事なのさ…」

 

「「あと何で君らチアの恰好をしてるんだ(い)…!」」

「「ゴメン、それについては触れないで!」」

 

 

困惑する会場の面々。主審の『ミッドナイト』はこの要求を承認した。彼等の青臭い考え方が彼女の心を強く打ったのだ。

 

 

「…あっ、私はやりますからね?」

 

 

尚、最後の一人『発目明』は最終種目に参加するようだ。

 

_______________

 

 

『…とは言ったものの…繰り上がりはどうしようかしら?他チームは全員0pなのよね…。

よし、ではこうしましょう!第二種目騎馬戦、最後の一瞬までハチマキをキープしていた『鉄哲チーム』!君たちを最終種目に繰り上げます!

さぁ、誰が出るか決めなさい!』

 

 

 

「オ、オイ…どうするんだよ?」

「困りました…」

 

 

突如降って湧いたチャンス。第二種目で落選した鉄哲チームに最終種目への権利が舞い込んできた。

それ自体は喜ばしい。しかし、出られるのは…二人だけ。二人だけしかこの先に進めないのだ。

 

 

「よーし、鉄哲!塩崎!行ってこい!!」

「なっ!?」「泡瀬さん!?」

 

 

戸惑いを破ったのは泡瀬の提案だった。選ばれた鉄哲と塩崎は驚きを露わにした。

 

 

「お待ち下さい泡瀬さん!鉄哲さんはともかく、私は興奮してしまい、皆さんの足を引っ張ってしまいました。私よりも周りに気を配ってくれた、泡瀬さんや骨抜さんの方が相応しいのではないですかっ!」

「そうだぜ!塩崎はともかく、俺は騎手で有りながら活躍できなかった…。追加で獲った小大のハチマキだって、泡瀬と骨抜がチャンスを作ってくれたから出来たんだぞ。どう考えてもお前らの方が相応しいじゃねぇか!」

 

「カッカッカ!冷静な評価ありがとよ!」

「でもな…最終種目はお前らの方が勝算が有るんだよ」

 

 

泡瀬と骨抜の“個性”は触れた物の性質を変化させる能力だ。つまり、“個性”の使用には「物を媒介する必要」がある。

最終種目の内容は不明。しかしフィールド次第で、二人はその力を充分に発揮出来ないのだ。

対して鉄哲と塩崎は自発的に“個性”を使っていける。より高い勝算があるのはこちらなのだ。

 

 

「しかし、でも…」

「…いいのか?お前らは?」

 

「確かにな。最終種目に行けるなら行きてぇ…」

「だが!それ以上にやって貰いてぇことがあるのさ!」

 

「「…それは?」」

 

「大入をギャフンと言わせることだ…っ!」

 

「「…っ!?」」

 

「大入は唯一B組から最終種目に進出した…。

俺らはよぉ。まだアイツを見返してやってないわけよ」

「俺はな。この中で一番勝算があるのはお前らだと思うんだよ。…だからさ、アイツの顔面を思いっきりぶん殴ってこいっ!」

 

「「…っ!…おうっ(はいっ)!!」」

 

 

そう言葉を閉めると拳を前に突き出す。合わせるように骨抜も拳を前に出した。

二人が託してくれた物に思わず目頭が熱くなる。鉄哲と塩崎はその心意気を直と受け取り、拳を突き合わせた。

 

そして、誓う「打倒大入」を…。

 

 

こうして最終種目出場選手16名が決定し、その時を待つばかりとなった…。

 

_______________

 

 

「なぁ、本当にこっちなのか?」

「んだんだ。オレの鼻もこっちだって言ってる」

「間違いないって一佳っち!アタシは男を嗅ぎ分けるのは得意なんだよっ!」

「ん。取蔭さん、その言い方はいやらしい…」

「…こういう所で動物由来の“個性”は便利だよね。捜索が凄い楽だ…」

 

 

拳藤・宍田・取蔭・小大・物間はレクリエーション種目の合間を抜けて、大入福朗の探索に繰り出していた。

レクリエーション種目は最終種目に出場する選手には参加義務が無い。レクリエーション種目開始と共に会場から忽然と姿を消した大入の様子を見に、「嗅覚による探索能力」に長けた取蔭と宍田、あとついでに能力をコピー出来る物間を引き連れて行動していた。

 

 

「それにしても大入っちなぁ。女の子を引っかける(・・・・・)なんて隅に置けないなぁ…ねっ!一佳っち」

「いや、私に振らないでよ…」

「ねぇ、本当に大入が他の女生徒を口説いていたの?俄には信じられないんだけど…」

「それについては多分間違いねぇべさ。さっきから大入の匂いと一緒に同じ女の匂いもセットでずっとしてるがらな」

「…ん。大入くん不潔」

 

 

大入が姿を消す直前を取蔭・小大が目撃していた。大入はこっそりと見知らぬ女生徒に耳打ちをしており、女は花の咲くような満面の笑顔を見せ、大入と強く手を握り合っていたのだ…。

 

 

こ…これは何かあるっ!

 

 

取蔭切奈の「女の勘」が二人の並々ならぬ深い関係を察知した。

 

取蔭は面白半分で拳藤に声を掛け、そこから捜索を始めた。

大入の痕跡を辿って、彼等は校舎の裏手に差し掛かった所でその声を聞いた。

 

 

「あぁっ!いいですっ!素敵ですっ!!最高ですっ!!!」

「ほら、もっと静かにしないと周りに気付かれちゃうよ」

「駄目ですっ!無理ですっ!こんなに凄いの我慢できるわけ無いじゃないですかっ!!ああっ見てっ、見て下さいっ!ここもこんなになっちゃってます!!!」

 

 

突如鳴り響く女の嬌声。その声は歓喜に彩られ、興奮の坩堝(るつぼ)は全てを融かしてしまうかのような迸る情熱を帯びていた。

 

 

まさか、こんな所でおっぱじめやがったのか!?

 

 

五名は驚愕した。こんな人の寄りつかない校舎の片隅で、男女二人でこっそりとナニをやっているのか?

彼等は慎重に歩みを進める。この突き当たりを曲がった先…そこに大入は居る。

 

そして、その現場を目撃した!

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、発目さん?次は何処のパーツ外そっか?」

「そうですね~。手足は分解(バラ)しましたし、今度は胸部装甲いっちゃいましょうか!」

「オッケー!」

 

 

「 大 入 っ ち に は ガ ッ カ リ だ よっ ! ! 」

 

「えっ!?ちょっ、何っ!!?」

 

 

校舎の陰。そこでこっそりと秘密の時間を共有していた大入とサポート科の『発目明』がいた。

大入が鹵獲したロボインフェルノ産の『エグゼキューター』のスクラップを「解体(おたのしみ)」していたのだ。

 

目眩(めくるめ)く愛の密会。重ね合わせられる情事。そう言うのを想像した取蔭の期待を見事に裏切る大入。

そこに拳藤を放り込むことで波紋を広げるだろう修羅場…そう言う昼ドラの様なドロリとした展開を期待していた取蔭が思わず怒りながら現場に乱入する。

どうせ、こんなことだろうと察していた拳藤が後に続き、残りのメンバーもその場に現れる。

 

 

「こりゃ、驚いたべな…こんなモンまだ隠し持ってたんだなぁ」

「あぁ、見つかっちゃったか…本戦の秘密兵器なのに」

「ん。大入くんもしかして…これが武器?」

「あぁ、こいつを分解して武器にすんの!」

 

 

そういいながら大入はロボから抜き取った鉄パイプを刀剣の様に構え素振りもする。数回振るった後に〈揺らぎ〉の中に格納する。

 

 

「さて、次はスプリングが欲しいな…何処かに無い?」

「そうですね~…。下半身のパーツなら衝撃吸収用のサスペンションが内蔵されてるはずです。それを探しましょう!」

「アイアイサー!」

 

 

発目のアドバイスを受けて大入が残骸の山に潜り込む。ガシャガシャと音を鳴らし、必要なパーツを捜索する。

 

 

「貴女は…確かサポート科の生徒だったよね?」

「はい!発目って言います!子沢山さんには私のベイビー達のお世話をして貰ってます」

「「子沢山さん!?」」「「「ベイビー!!?」」」

「あぁ、発目さんは自作したサポートアイテムを「ベイビー」って呼ぶの。んでサポートアイテムを大量に使う俺は「子沢山」って呼ぶらしい。

つまるところ、「ベイビーのお世話」は「サポートアイテムのテストプレーヤー」って事だな」

「何処までもガッカリだよ大入っち!」

 

 

発目の意味深な発言も注釈していく大入。期待した修羅場ルートに全く移行しないと憤慨する取蔭。

 

 

「けどさ、良いの大入?彼女って最終種目出場選手でしょ?手の内晒して大丈夫?」

「問題なし。発目さんとは決勝まで当たらないし。取引も済んでるから」

「取引?」

「はい!子沢山さんには「『エグゼキューター』の分解の協力」と「もしも対戦相手になった暁には勝利を譲る」ことを約束しています」

「どう見ても裏取引だべさ」

「しかも八百長宣言…」

「ん?ちょっと待って。大入くんからの条件は?」

「「生の『エグゼキューター』の分解権利」と「発目さんの対戦相手の戦闘傾向の情報」と「俺が発目さんと戦う際、サポートアイテムのプレゼンテーションの全面協力」の3件」

 

「…は?」

 

「要は俺と発目さんで決勝戦になったら『発目明のサポートアイテム大博覧会』が開催されるって事だ」

 

「こいつら体育祭で暴挙(テロ)でも起こす気だし!?」

 

 

驚くべき事に大入と発目は神聖なる雄英体育祭で前代未聞の『売り込み(デモンストレーション)』を計画していたのだ。大会趣旨を完全に無視した、なんとも言い難い結末になること間違いなしだ。

実は大入の根回しは三週間も前に遡る。大入はこの時、発目と接触し、その後ビジネスライクな関係を構築することで、自分の要求もある程度通るようにしていた。

 

 

「ちょっと待って福朗!アンタはそんな勝ち方で優勝して良いの?」

「普通にやったって発目さんには負けないだけならなんとかなるよ。でも、発目さんは大会での勝利よりサポートアイテムの紹介がメインなんだ。

彼女のアイテムに賭ける情熱は素晴らしい…。テストプレーヤーとしては是非とも協力したくなる」

「そうです!私は私のドッ可愛いベイビー達が活躍して目立って、大企業の目に留まれば!それって大企業の目に私のドッ可愛いベイビー達が留まるってことなんですよ!!

そこで!子沢山さんの“個性”ならば、より多くのベイビー達をステージに持ち込めると言う訳なんですよ!!あぁっ、今から興奮が止まりません!」

 

「でも良いの大入?裏取引なんてバレたら最悪失格になるんじゃ…」

 

「まぁ、俺としてはA組の爆豪の優勝を阻止できれば…。それだけで俺の選手宣誓は達成されるしな」

 

「君の宣誓を達成するために尽力した僕の苦労はなんだったんだ…」

「随分とハードルの低い、選手宣誓の内容だべ」

 

「そんなことないよー。正々堂々戦うことだけを誓う宣誓よりもずっとハードルは高いよー」

 

 

大入の発言は強ち間違いでは無い。何せ優勝候補筆頭で原作優勝者の爆豪勝己をその表彰台から引きずり下ろさなければならない。故にこの位はしないと厳しいだろう。

 

 

「子沢山さん!時間も少ないですよ!」

 

「あぁ、そうだな。そろそろ皆は戻ったら?競技の途中でしょ?」

「あぁ、分かったよ」

「じゃあね~大入っち!」

「ん」「だべ」

 

「…」

 

 

大入に促されて会場に戻る一同。しかし、拳藤だけはその場を去ろうとしない。

 

 

「…なぁ、福朗」

「なに?」

 

「がんばれ…」

 

「…おう」

 

 

拳藤は握り締めた拳を前に突き出す。

大入はそれに驚いた後、少し恥ずかしそうにしながら拳藤のそばに歩み寄る。

そして、拳を握り、突き出された拳藤の拳にコツンと軽くぶつけた。

 

なんとも説明できない気恥ずかしさに耐えきれなくなった大入は、頭をガシガシ掻いて、ロボの残骸に戻っていく。

拳藤はそれを見届けた後、少しだけ笑って、その場を去っていった。

 

 


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