移動に費やすこと数分間。試験会場Eとなる「市街地エリア」に来ていた。試験会場には俺と同様に試験を受けるライバルが100人は居るのでは無いだろうか…。
普段の調子なら「一度に同じフィールドに居る大量の受験者を
「私にとってアンタは最も目の前にいる目標なんだ。だから…。だから私はアンタと正々堂々戦いたい。勝ってアンタを見返してやりたい!」
あの言葉が頭から離れない。別れ際に一佳が俺に残した言葉。一佳はこの試験の場に立つために相当の努力を積み重ねて来たことを知っている。俺も同じ雄英を目指す者として、一緒に勉強や鍛錬してきたんだから対抗意識を燃やす事でモチベーションを上げていてもおかしくはない。
けど、あの表情は、あの瞳は……。
いけない、いけない。危うく思考の海に没頭するところだった…。とりあえずは目の前の戦いに備えるべきだろう。
俺は自らの頬を思いっ切り叩いて気合いを入れ直すことにした。
さて、試験に合格するためには…やはり原作知識を利用して戦況を有利することが鍵になるだろう。なにせ、これも転生者の利点だからな。
手始めに準備から始めようか。まずは、手持ちの武器になるメリケンサックと安全靴の調子を確認する…うん、問題ない。
次は位置取り。予め試験会場の中に出来るだけ近い場所を陣取る。
後は、軽く体を解しながら待つことにしよう。
『『『ハイ!スタート!』』』
バンッ!と聞こえて来そうなくらい思いっ切り踏み込んで市街地へと駆けだしていく。後ろで『プレゼント・マイク』が他の受験者たちを急かしている間にぐんぐんと距離を稼ぎ、先手を打てる様にした。
…様にしたはずなんだが…。
受験者が一人、ぴったりと並走している。俺の目線よりかなり低い位置、ショートヘアーを靡かせたちんちくりんな奴が「トトトト」と言う足音を立てながら遅れることなく着いてきている。
(こ、こいつ…デキる!)
思わずネタ見たいな思考をしてしまった。けれどもそれは仕方ないだろう。なんせ、あの完全に不意打ちな試験開始の合図に対応可能な奴なんて殆ど居ない。現に俺も原作知識を持っていたから、完全に他者を出し抜いたんだ。それを、目の前のこいつは自身の判断力で着いてきたらしい。
「いや~。アレって開始の合図でいいんですよね٩(๑>∀<๑)۶ 僕もあの合図にびっくりしました(*´罒`*) にしてもおにーさんもスタートダッシュ決めるなんてやりますね~(*≧艸≦)」
隣のちんちくりんは此方を見て、急に話し掛けて来た。高いトーンの声…こいつ女か!しかも、僕っ娘だと!?
関係ない話だが俺は僕っ娘が苦手だ。「止まない雨は無い」某犬っころ駆逐艦はヤンデレ属性持ちだし、某プログラマーは男の娘だし、某天使は事あるごとにバットで殴り殺しに来るし、某神様はロリで巨乳だけど例の紐と揶揄される貧乏な神だし、某黄色い探偵はFXで全資金溶かすし、エンゼルトランペットは癒し系キャラだと思いきや猛毒使いとかえげつないものだったし。悪平等な彼女に至ってはインフレ大魔王だし…。全部が全部そうでないと分かっていても、僕っ娘に良い思い出は無い。「全国の僕っ娘ゴメンね」心の中で謝っておく。
閑話休題
「そうだな、あんな合図で動ける奴なんてそういないだろう」
「でもでも~、おにーさんはバッチリ決めてるじゃないですか~ヾ(≧∇≦*)/ そんなおにーさんは今回、僕のライバルになりそ~です(`・ω・´)キリッ」
「そうかい!そりゃ光栄だな。じゃ、俺も恥じない戦いしますか!それじゃお先になっ!」
「あぁっ!ちょっΣ(,,ºΔº,,*) 待つです!」
そう言って俺はちんちくりん改めて僕っ娘を振り切る為に“個性”を使う。
“個性”を発現し、自分の両肩に〈揺らぎ〉を作る。その〈揺らぎ〉の中から風が発生し、それは突風となり、体を前へ前へと押し出していく。その加速を使って隣の僕っ娘をあっという間に振り切った。
『『目標発見!ブッ殺ス!』』『ヒャッハー!皆殺シダァ!』
すぐそこの角を曲がると、早速お目当ての標的を発見した。四脚に長い首を持つ2pロボット『ヴェネター』が一体、それを取り巻くように走り回る一輪走行の1pロボット『ヴィクトリー』が二体だ。
俺はそいつらを倒すべく更に加速する。向こう側も此方をターゲットにしたらしく1p
1p
「衝撃のぉ…!ファーストブリットぉぉっ!!」
「疾風」その一言を体現するかのように繰り出した飛び蹴りは、矢が的を射抜く様に2p
今俺が放った技は、かの兄貴が使っていた技「衝撃のファーストブリット」だ。威力は本家に及びはしないが、攻撃を撃つための原理は自分流に再現している。
こういう技を使うときってやっぱりかなり気を遣う…らしい。再現してみたは良いものの、果たして本家に恥じない威力を発揮する事が出来ているか等、様々な悩みが少なからずあるもんだ。しかし、俺からしたら「折角転生して、しかも真似できそうな技があるなら是非ともやりたいじゃないか!」と考えてしまう。かっこいいは正義だ!せめて本家に恥じない様に努力しよう。
「さて、後二体も…んなっ!?」
靴底でアスファルトの表面を削りながら制動を掛け、すぐさま反転。さあ、この調子で残りのロボットも…、と振り返ると巨大な光る物体が二つ此方に迫ってきていた。咄嗟に回避すると、その物体はそのまま1pロボット達を巻き込んで壁へと激突した。光が消えるとそこにはブスブスと煙を上げたロボットが完全に沈黙していた。
「んふっふっふ~( ̄ー+ ̄)ドヤァ どうですおにーさん!僕も中々やるでしょう(๑ơ ₃-)♡」
そこには先程振り切ったはずのちんちくりんな僕っ娘が不敵な笑み…もとい、どや顔で立っていた。
……ちくしょー。だから僕っ娘は嫌いなんだ。