転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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最新話読みながら課外活動編の考案中。今のプロットだと大変な事になりそう…。




43:騎馬戦 1

「ここにいるほとんどがA組にばかり注目している…何でだ?」

 

 

物間は仲間達に声をかける。皆はその声に聞き入っていた。

 

 

「そして鉄哲が言った通りA組連中も調子づいている……おかしいよね…」

 

 

今一度不満の声を上げる。同調するように鼓動が強くなる。

 

 

「彼らと僕らの違いは?“会敵(かいてき)”しただけだぜ?」

 

 

言葉は、熱は、味方に伝播し、気持ちが一つになる。

 

 

ヒーロー科B組(ぼくら)が予選で何故中下位に甘んじたか、調子づいたA組に知らしめてやろう、皆」

 

 

此処こそが戦いの時だと宣言した。

 

 

B組協同戦線───

 

 

今、脅威が牙を剥く。

 

 

_______________

 

 

第二種目「騎馬戦」。予選通過者44名から各2~4名の騎馬を編成し、互いのハチマキを奪い合う。

選手には予選通過順位ごとにポイントが割り振られており、下から5の倍数づつ充てられている。このポイントを合計した数が騎馬の得点になり、ハチマキの総合得点をより獲得したものが次のステージに駒を進める。

 

つまり、優秀な人材でチームを組めば、当然ハチマキの得点は高くなり、狙われやすくなる。

その最たるものとして、予選を1位で抜けた者にはボーナスポイント1000万点が与えられている。

 

 

(どうしよう!どうしよう!!)

「どうするのだ緑谷よ?」

「デクくん…」

 

 

予選1位通過者『緑谷出久』は危機に瀕していた。

 

理不尽な高得点に孤立した彼。余りにもリスキー過ぎるポイントにチーム編成さえも難航していた。

それでも彼を信じてチームに参加した『麗日お茶子』。彼の呼びかけに応じた『常闇踏陰(とこやみふみかげ)』。彼の元にも協力者が集まった。

 

しかし、まだ足りない。

 

緑谷と親しかった『飯田天哉』の離反。彼が想定した機動力の要を失い、当初の逃げ切りが困難となった。

 

計画の立て直しを余儀なくされる緑谷。しかし、勝利の鍵は予想外な所から湧いてきた。

 

 

「はえ?」

 

 

突如、麗日の手が取られる。一人の男子生徒が声をかけてきた。

 

 

「麗日さん。君が欲しい」

 

 

彼女に懇願する男『大入福朗』が居た。

 

いきなりの告白に驚く緑谷、唖然とする常闇。

肝心の彼女は呆気にとられた顔からみるみるうちに頬を赤く染め…。

 

 

「~~~~~~~~っ!!!」

「ひでぶっ!」

 

 

声にならない悲鳴を上げ、大入を投げ飛ばし、地面に口吻をさせた。

かつて対人戦闘訓練にて、緑谷が爆豪を投げ飛ばしたときの様な鮮やかな手合いだった。

 

 

「な、な、なんなん!!なんなんいきなり!!ふざけとる場合っ!」

「大入くん!?」

「確か貴様は勝利の誓いを立てし者(ゲイン・テイカー)…」

 

「何?その革命家の様な通り名は…」

 

 

その動揺を抑えるように髪を掻き乱し、罵声を浴びせる麗日。予想すらしてなかった人物の来訪に驚きの連続の緑谷。記憶から選手宣誓にて爆豪に啖呵を切っていたのを思い出した常闇。

反応は三者三様である。

 

 

「…よっ。…おっとっと。…ふむ、見立て通り」

 

 

地面に倒れた大入は身体を起こす。全身のバネを使った跳ね起きで一気に立ち上がる。しかし、いつもとは異なる体の感覚に思わずよろける。

原因は麗日の“個性”にある。

 

『麗日お茶子』

“個性:無重力(ゼロ・グラビティ)

触れたものの重さをゼロにする。

 

軽すぎる足取りの感覚を確かめながら、大入は話しかける。

 

 

「期待どおり…いや、期待以上だ。声をかけた甲斐があった」

「どういうこと…?」

「麗日さん。改めてチーム組んでくれない?君の“個性”が必要なんだ」

「…あっ、そういう」

 

 

言葉が足りなかった故の不慮の事故。盛大な勘違いに赤くなる麗日。そんな彼女を無視して話を進める。

 

 

「麗日さん。君の“個性”は重さを無くする事だよね?」

「う、うんそうやけど?それがどうしたの?」

「俺の“個性”って覚えてる?」

「えっと、“物を自在に取り出せる個性”だよね?」

「そうだ。でもね、こういうこともできるんだよ」

「わっぷ!」

 

 

大入が小さく指を鳴らすと、目の前に〈揺らぎ〉が生まれ、その中から風が吹き出す。いきなりの風に緑谷が目を塞ぐ。手早く解除すると大入は話を続けた。

 

 

「俺の“個性”、生物以外なら何でもいけるんだよ。勿論気体も液体もね」

「もしかして…大入くん、飛べるの?」

「察しがいいな。その気になれば毬栗…いや爆豪君だったな?彼のように0pロボットを飛び越えることも出来る」

「ほう、それは凄いな」

「けど、持続力はない。俺のコスト(・・・)の問題でな…。でも麗日さんがいればそれが一気に解決するんだよ」

 

 

大入は息を吸い込んで、意を決したように話した。

 

 

「なぁ、1000万点(それ)を俺に賭けてみてはくれないか?」

 

 

 

_______________

 

 

 

「オイ…どういうことだよ?」

 

 

B組一同は困惑した。

「B組協同戦線」はこの第二種目を好機と考えていた。

第一種目の障害物競争でA組の大半が上位でゴールした。連携の取りやすいクラスメイト同士で騎馬を組めば、自然とハチマキのポイントも高くなる。

 

 

 

だったらA組のポイントを根こそぎ奪ってしまえ。

 

 

 

B組全員の共通認識だったそれは予想外な自体に覆される。

 

 

「常闇君!初めてだけどよろしく!」

「…あぁ」

 

「麗日さん!頼りにしてるよ!」

「任せてっ!」

 

「そして…緑谷君。俺に賭けてくれてありがとう。全力で応えるよ」

「…う、うん」

 

「さぁ!皆よろしくっ!」

 

 

頭に1000万点のハチマキを巻いた騎手。大入が居た。

 

 

 

 

「オイ…どういうことだよ?何で大入はあそこにいるっ!?」

「落ち着け、鉄哲。突飛な行動をするのがあの大入だろ?」

「しかし、何故1000万点を手にしたのでしょう?集中砲火を受ける激戦区ですのに…」

「カッ!関係ねぇよ!敵だと言うなら倒せばいい!」

「…だな。よし!第一目標は予定通り1000万点、狙うぞっ!」

 

 

『鉄哲轍鐵』『泡瀬洋雪』『塩崎茨』『骨抜柔造』の四名は大入と同じく「B組協同戦線」を離脱したメンバーである。彼らの考えは大入とほぼ同一で「闘うなら正々堂々。徒党を組んでA組を落とすやり方は論外」という理由を持っていた。

大入に対して、ある種の仲間意識の様な物を持っていたが、それも大入がA組と馴れ合う姿を見て消し飛んだ。

彼らにとって大入は獲物となった。

 

 

 

 

「…おい、どうすんだよっ物間ァ!お前の相方A組に居るんだけどっ!」

「あいつがモロに敵なんてなー。ぶっちゃけあそこ行くのヤダぞー物間ー。あれから1000万点奪える気がしねー」

「その意見に反論する。チャンスがあるなら積極的に奪うべきだ。手心加える必要は無い」

「…いや、大入は放置だ。彼なら、とても美味い釣り餌(・・・)を演じるだろうからね」

 

 

『回原旋』『円場硬成』『黒色支配』『物間寧人』は動揺していた。しかし、物間の統制により混乱は最小限に抑えられている。

その上で戦術を構築し直す。全てはあのA組に目に物見せてやるために。

 

 

 

 

「まったく、福朗ってば居ないと思ったらあんなとこに…」

「いや~見てて飽きないね大入っちって!」

「いや、笑い事じゃないわ取蔭ちゃん。あの大入くんからハチマキを奪うのは至難の業よ」

「…でも、今回は…騎馬戦。大入…くんはA組の人たちと足並みを…揃える必要が…ある。思うようには動けない…はず。狙えるチャンスは…あるよ」

「あ~やめとけやめとけ。福朗が訳わかんない事してるときは大概手が着けらんないから」

「とか言っちゃって~本当は大入っち引き入れたかったんでしょ、一佳っち?」

「まぁ、そうなんだけどさ…アレってば時々掴み所の無い動きをするしね」

 

 

『拳藤一佳』『取陰切奈』『小森希乃子』『柳レイ子』は大入の奇手にも対した動揺を見せては居ない。彼を知る拳藤が動揺を一切見せていないためだ。

結果、彼女達は大入チームを狙わない方針のようだ。

 

 

 

 

「あ゛ぁん゛!!クソデクの上に居る奴ぁ誰だっ!」

「B組の奴だよ!選手宣誓でお前の隣にいたっ!」

「てゆーか爆豪!どんだけ周りに興味がないんだよ!」

「入試1位なんだよね?手強いんじゃないの?」

「関係ねぇ!!まとめてブッ潰すっ!!」

「お前は本当にブレねーな!」

 

 

『爆豪勝己』『瀬呂範太(せろはんた)』『切島鋭児郎(きりしまえいじろう)』『芦戸三奈(あしどみな)』は元より大入の存在なんて気にも止めない。皆殺し、ただただそれだけだ。

 

 

 

 

「そうかアレが入試で0pを破壊したもう一人の生徒…」

「あぁ、“物を自由に取り出す個性”だ」

「まぁ、では私と同じスタイルでしょうか?」

「ちょっと待てよ!あのデカブツぶっ壊すなんてただ事じゃねぇぜ?」

「…そうだな。彼には何かしらの「裏技」があるんだと思う」

「…分かった。ひとまず序盤は様子見だな」

 

 

『轟焦凍』『八百万百』『上鳴電気(かみなりでんき)』は『飯田天哉』から得られた情報を元に大入の能力を暴きに掛かっていた。完璧な情報、完璧な布陣。負ける道理はない。

 

 

 

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!!』

 

かくして戦いの幕は上がる。

 

 

鉄哲チーム

・鉄哲 175P

・骨抜 200P

・塩崎 205P

・泡瀬 165P

TOTAL 745P

 

 

『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!』

 

ある者は誇りを賭けて。

 

 

物間チーム

・物間  40P

・円場 105P

・黒色  70P

・回原 110P

TOTAL 325P

 

 

『いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

 

ある者は野望を賭けて。

 

 

拳藤チーム

・拳藤  80P

・柳   90P

・小森  50P

・取蔭  20P

TOTAL 240P

 

 

『3!!』

 

ある者は信念を賭けて。

 

 

爆豪チーム

・爆豪 210P

・切島 180P

・芦戸 130P

・瀬呂 185P

TOTAL 705P

 

 

『2!!』

 

上を行く者には更なる受難を。

 

 

轟チーム

・轟  215P

・飯田 195P

・八百万140P

・上鳴 100P

TOTAL 650P

 

 

『1…!』

 

“Plus Ultra!”

 

 

大入チーム

・大入  25P

・常闇 190P

・麗日 145P

 

 

  ・

  ・

  ・

 

 

・緑谷 1000万P

TOTAL 10,000,360P

 

 

 

 

『S T A R T ! 』

 

更に向こうへ────

 

 


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