ーーーーーー無事に筆記試験が終了した。
もともと勉強は出来る方だったから心配はしていない。
一佳も「バッチリ!大丈夫だったさ」と笑顔満開で言っていたから問題ないだろう。実際に俺よりも一佳の方が頭が良かったしな。
さて、次は鬼門となる実技試験である。
『今日は俺のライブにようこそ!!! エヴィバディセイヘイ!!!』
講堂に訪れる静寂。そう、ここは試験会場。ここには今後の人生を左右する重要な岐路に立たされている少年少女が有に一万人以上いるのだ。そうなれば講堂内を包み込む緊張感は言うまでも無い。誰が彼のヒーロー『プレゼント・マイク』のお祭りムードに乗ることが出来るだろうか?いや、出来ない(反語)
『こいつぁシヴィーーー!!! 受験生のリスナー!
実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!! アーユーレディ!?』
『YHAAA!!!』
再び訪れる静寂。こんな場違いな雰囲気を出しているというのに一切気後れしないプレゼント・マイクはかなり胆力のある人物の様な気がしてきた。少なくとも俺には無理だ。
「『プレゼント・マイク』初めて見たけど…。何というかすごいな」
「確かに、この空気の中であのノリで話せる辺りは流石としか言いようがないね。ヒーローとしての胆力でもあるのかな」
「あっ、それ言っちゃうんだ」
わざわざ、濁してきた一佳の言葉に俺が思っていることを率直に返す。すると、「うへぇ」と感じるような微妙な表情になった。
それはさておき『プレゼント・マイク』がノリノリで試験内容を説明していく。
と言っても、転生したことで予備知識がある俺には余り意味がない。
実技試験の課題は…言わば広大なフィールドを利用した模擬戦闘だ。
試験会場の市街地には仮想
1p
比較的小型のロボット。一輪走行で非常に機動力が高い。サイズの分、馬力・強度共に低め。
2p
恐竜を彷彿させるフォルム。装甲面を強化したロボット。形状からして尻尾を利用した広範囲の攻撃や首からの高角度の攻撃が予想される。
3p
自走砲の様なロボット。銃火器を搭載しており、遠隔攻撃をしてくる。防御面も強化され、まるで針鼠のようだ。
そして…
『質問よろしいでしょうか!?』
遠くを見やると高身長、制服の上からでも感じ取ることが出来る鍛えられた体躯、眼鏡の少年『
と言うよりも飯田君だよ!飯田君!!生声だよ飯田君!うぉぉぉっ!アニメの時同様の真面目そうな口調といい、堂々とした姿勢といい、既に委員長気質なオーラが出ているぅぅっ!
原作キャラとの出会いはいつでも興奮冷めやらぬ気持ちになる。一佳と初めて会った時は表情を隠すのに必死だったのを今でも覚えている。
閑話休題
『プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!』
そして、ついでとばかりに近くの席に居る『
この四種目の敵がこの試験の最大のキーポイントだ。
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規格外のロボット。デカイ・カタイ・ツヨイと三拍子揃っている。はっきり言って倒すメリットは無い。回避推奨の妨害ギミックである。
しかし、この試験には隠された採点基準がある。
『
実技試験の最中、敵によって窮地に立たされた他の受験者を助けた際に発生するポイント。採点は試験官たるヒーローの審査制で『
…とは言っても『
そんなことを考えていると試験内容の説明を終えた『プレゼント・マイク』は〆の言葉にこう告げた。
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!』
『それでは皆良い受難を!!』
試験官『プレゼント・マイク』の説明が終了し、受験者達が割り振られたそれぞれの戦場へと移動を始める。さて、俺達も移動しないと…。
「一佳俺達も移動しないと遅れるぞ?」
「…。なぁ、福朗?アンタの試験会場ってどこだ?」
「…?試験会場Eだけど?」
「ふぅ、やっぱり違う会場か…」
「そりゃ仕方ないって。同じ学校の奴が同じ試験会場に居たら効率重視して共闘するからな。もし、俺が一佳と同じ試験会場だったら間違いなく共闘するね」
「まぁ、アンタなら間違いなくそうするよね。…でもさ、私は多分協力しないと思うよ。」
「え?何、俺そんなにお荷物…?」
「ふふっ。…そうじゃ無いんだ。むしろ福朗が手伝ってくれたんなら、きっと凄いことも出来る。けど、私にとってアンタは最も目の前にいる目標なんだ。だから…。だから私はアンタと正々堂々戦いたい。勝ってアンタを見返してやりたい!」
いつもなら「そうか、でも簡単には負けてやらないぞ」なんて軽口の一つや二つ返してやる所だった。でも、この瞬間だけはそれが出来なかった。
一佳から向けられた真剣な眼差し。強く、真っ直ぐで、綺麗に澄んだ瞳の奥に、熱い物を宿している様に感じた。
そんな一佳の言葉に呆気にとられていると。「言いたいことはそれだけだから…。それじゃ、先に行くわ」と告げて足早に去ってしまった。
気が付くとまわりの受験者も殆ど居ない。俺も早く移動しないと…。