転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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22:第5戦 Cチーム with joker vs Gチーム 5

「…とは言ってみたものの、ちとばかしキツいかな?ここは一時撤退しようか…」

 

 

ザ・負け惜しみ!

 

うへぇ…かっこ悪い。あんな鮮やかに「ラディカル・グッド・スピード」とおニューの武器のコンボが嵌まったのに最後の最後にギャク漫画みたいなやられかたして…。

 

 

おかげで重傷だよ!?俺!!?

 

 

多分、脳内アヘン・ドラッグめいた何かがドバドバ出てるってこれ!一周回ってなんかすぅっと冴えてきたし…。

 

とは言っても撤退は撤回しないよ?さっきから通信聞いていると物間君の戦況が不味い。さっきから苦戦する声を聞こえる。これは救援に回らないとアカン。

 

こんなボロボロで1 vs 3で渡り合えとか何それ無理ゲー。

 

いいか!これは敗走ではないっ!戦略的撤退だ!サラダバーっ!!

 

 

 

 

「行かせると思うかよ!」

 

 

…デスヨネ-。そりゃ泡瀬君と取蔭さんが揃ってるもん。オマケに満身創痍の俺を取っ捕まえれば、もれなく勝利も着いてくる。Mr.カモネギこと俺を逃がすと言う選択肢は有るわけが無い。

 

 

「もう止めようよっ!大入っち!!それ絶対ヤバい奴だって!!」

「そうはいかないね!物間君が頑張ってるんだ!一発蹴られたくらいでドロップアウトなんて論外っ!!俺はまだ半分の力も出していないぞぉっ!!俺を止めたかったら力尽くで止めて見せろ!ヒーローっ!!」

「遠慮なくっ!」

 

 

泡瀬君が仕掛けてくる。させるものか!

俺は前方に〈揺らぎ〉で突風を作り出す。最大風速の力で二人を一気に壁まで叩き込む!

 

 

「うぐっ!」「きゃっ!!」

「…ここで一つ。切り札を切らせて貰うっ!」

 

 

こっちも余裕は無いんだ。頼むから死なないでくれよっ!

発生させている〈突風の揺らぎ〉に更に〈揺らぎ〉を重ねる。

 

 

「…〈合成砲(コンポジットアーティラリー)〉!最大風速速射砲!!」

 

 

〈揺らぎ〉の中からジャリジャリ…ジャリジャリ!と歪な音を鳴り響かせ!とっておきを吐き出す!

 

 

「…砂風機関銃(サブマシンガン)!!」

 

 

〈揺らぎ〉から吐き出されたのはBB弾。只のオモチャの弾丸と侮るなかれ、バネを違法改造したエアガンでさえ、簡単に人を傷つけるものだ。そんな代物が「台風の様な速度で秒間300発もばらまかれたらどうなるだろうか?」

 

答えは一方的な面制圧。壁を、瓦礫を、窓ガラスを!叩き、砕き、削っていく!

 

泡瀬君の反応は早かった。手持ちの「ハンマーロープ?」で俺が捨てた盾と取蔭さんを回収し、物陰へと隠れる。銃撃戦の基本だな、分厚い壁をしっかり選んでる。

しかも、あそこだけどうにも穿てそうにない。恐らく裏手で泡瀬君が溶接で補強しまくってんだろうな…。

 

けど、問題ない。逃走の布石は整った。さっさと逃げよう!

 

 

_______________

 

 

(なんだよこれ!?ふざけんなっ!!)

 

 

泡瀬は遮蔽物の陰で歯噛みした。最初の拘束、取蔭のラッキーパンチ。二度もチャンスを与えられながら大入福朗へは届かない。それどころか、反対に追い込まれている。今はさっき拾った盾を溶接して壁を補強している。

いつになったら止むのか?まるで嵐が去るのを祈るかのように補強を繰り返す泡瀬の懸念はすぐに終わる。

 

カランカラン…

 

嵐が止み、突然鳴り響く缶の転がる音。

あっという間に辺り一面は白煙に包まれた!

 

 

煙幕弾(スモークグレネード)!?取蔭!すぐに索敵!」

「わかったし!」

 

 

ヒーローチーム二人は追撃に備える。しかし、どうだろうか?攻撃はやって来ない。

煙が晴れて辺りを見回すと自分達が二度も大入の策に嵌められた事を悟る。

 

 

「クソっ!?やられた!」

 

 

そこには地面を埋め尽くす様に散乱したBB弾。オマケに鋭く尖る撒き菱が散らばっていた。扉を塞いでいたドラム缶や扉は跡形も無く消え去っている。

 

 

「大入っち居ないし!」

「きっと鎌切の所だ急いで向かうぞ!」

 

 

ヒーローチームは大入福朗に引っ掻き回されていた。彼の妨害がたった一手で終わる筈が無い。

 

何とかベアリング絨毯+撒き菱のコンボを突破し、二階への階段へとさしかかる。

 

 

「なんじゃこりゃ!?」

 

 

階段の踊り場にはガラクタの山、山、山。天井まで積み上げたそれらは、大入の二つ目の置き土産。

 

 

「泡瀬っち!アタシ外から先に向かうっ!そっちはなんとか突破して!」

「分かった!気を付けろよ!」

 

 

取蔭の力では泡瀬を担いで壁面を登れない。時間は足りない。結局、再び分断を選択するはめになった。

 

 

(大入っ!一体何処まで計算尽くなんだよっ!)

 

 

泡瀬は再び歯噛みする。

 

 

________________

 

 

クソっ!ホントにギリッギリ!!だった!!暗いマックスじゃねぇか!!ふざけんなっ!あんなもん見たらトラウマ増えるわっ!

 

なんとかレイプ目物間君にトドメを刺そうとした鎌切君を妨害した。結構いいかんじに入ったが、これで終わるようなら苦労はしないんだけどな…。

 

 

「無粋じゃ無いか…横槍とはさ」

「はっ!道化師相手に何を言う!化かしてナンボ!(おど)けてマンボ!馬鹿が馬鹿見る空騒ぎだっての!」

「それだけの腕があって道化か…いいだろう!全力で打倒する!」

「お断りだね!誰がやられるものかっ!」 

 

 

鎌切君と俺は一気に接近戦。俺は今一度取り出した蛮刀で切り合う。

斬りかかり、いなし、突いて、躱し、互いに斬撃を交わしていく。

 

 

「悪くない!やっぱり悪くないなぁ!大入ぃっ!」

「そうかい!こっちは最悪だよっ!飛べ!雲耀の彼方までっ!」

 

 

一瞬の隙を付いて俺は跳躍。高所から一気に唐竹割りをする。

 

 

「参式!雲耀の太刀!!チェストぉぉっ!」

 

 

剛風刀・零式(ブレイドハイウィンドウ・ゼロ)

俺の秘密道具。強度最優先の模擬刀。但し、峰の部分にはパイプが通っていて、そこに〈エアスラスター〉を流し込むことで加速。破壊的な威力を繰り出す事が出来る。

 

 

高所から自重に加え風力の加速が乗った一太刀を鎌切君は後ろに後退して回避する。距離は取らせないっ!

 

 

「零式っ!疾風迅雷っ!」

「温いなぁっ!完全武装っ!尖刃走破っ!!」

 

 

重撃を正面から受け止める鎌切君。めちゃくちゃ漢らしい…。しかし、時間が無い!そろそろ足止めも終わる。決めないと!

 

 

「これならどうだ!参式っ!大!車!!りいいいいん!!!」

「んなっ!!」

 

 

俺は一度距離をとって、鎌切君に刀をぶん投げた。完全に虚を突かれた鎌切君は慌てて回避する。チャンスだ!!ストリングガントレットを使い鎌切君の真上に跳躍、そして〈揺らぎ〉からある武器を取り出す。

 

 

「くらえっ!」

「うおっ!投網だと!?」

「鋼鉄ワイヤーの特別製だっ!流石に切れないだろっ!」

「こんな物すぐに脱出…」

「抵抗するなっ!召喚魔法を発動するっ!助けて~!グングニルの槍っ!」

 

 

鎌切の上方に取り出した数々の重槍は自重で落下し、投網を絡めながら地面に深く突き刺さる。

 

 

「物間君っ!テープっ!早く!!」

「…あっ!うん、分かった!!」

「畜生!離せよっ!」

 

『鎌切少年、捕獲!アウトだっ!』

 

 

…何とかヒーローチームの最高戦力の鎌切君を捕獲した。当初の予定とは違う…何ともままならないな。

 

 

「物間君っ!ごめん!遅くなって!」

「いや、こっちこ…っ!!危ないっ!」

「うおっ!」

 

「あーもうっ!外したっ!」

 

 

後ろには隙を突いて捕獲を試みた取蔭さんが居た。物間君っ!超ファインプレー!完全に気の緩んだとこ狙われてたよっ!取蔭さん!恐ろしい子っ!

俺はすぐに迎撃にかかる。先ほど泡瀬君から一つ拝借した「ハンマーロープ(仮)」を取り出して回転を加え、放つ。但し、ロープには捕獲テープが絡みつけてある。

 

秘技!飛来する捕獲テープっ!

 

テープは咄嗟に庇った取蔭さんの腕に巻き付く!

 

 

「甘いよ!大入っち!」

 

 

取蔭さんは“個性”で腕を切り離し、捕獲テープを回避する。

そんなのは予想済みだ、そのために仕掛けたんだからな!

俺は急いで接近。取蔭さんの片方になった腕と襟首を掴み、柔道のように「体落とし」で投げる。地面に叩きつける勢いのまま、直ぐさま連絡。首元と腕をしっかり極め、相手の上半身を封じる「袈裟固め」を繰り出す。男子の腕力と片腕だけになった女子とじゃ勝負にならないはずっ!

 

 

「ちょ!?大入っち!血なまぐさい!血生臭いよっ!」

「ごめん!もうちょい我慢っ!物間君手伝って!テープ巻いてっ!」

「あっ、ああ!」

「あーもうっ!離してってば!!」

 

 

俺は最後の捕獲テープを取り出し、物間君と二人がかりでジタバタと足掻く取蔭さんを首にテープを巻いていく。流石にここは切れないだろ。

…と言うよりも女の子一人に野郎二人で襲いかかるとか?何この光景?ヤバ過ぎる…絵面的に!

 

 

『取蔭少女、捕獲!残念だったね!』

 

「もうっ!悔しいっ!」

 

 

首尾良く二人を捕縛できた。さて、残るは…。

 

 

「っ!!クソっ!間に合わなかったっ!」

 

 

…君だ、泡瀬君。

 

 

 


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