転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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状況整理

大入・泡瀬
一階に移動したよ→大入君は磔に→ピンチ!

物間・鎌切
二階でチャンバラ→鎌切君本気出しちゃうゾ→物間君のトラウマスイッチ→物間君ピンチ!→大入君乱入!(何故貴様がそこに居る!?)

取蔭
四階で探索中→仲間が襲撃されたようです→救援に向かっている

それでは続きです。



21:第5戦 Cチーム with joker vs Gチーム 4

…やべえ。…泡瀬君強ぇ。何あれ?“溶接”って触れた物同士じゃないの?何でドライバーがガッツリ「溶接」されちゃってんの?マジで抜けないんだけど…。

 

のんびり考察する暇は無さそうだ。泡瀬君がもうこっちに突っ込んで来てるわ。…と言うよりもトドメが攻撃て…、捕獲テープはどしたんスか?泡瀬君…。

 

仕方ないか…避けれんし、迎撃しかないな。うん。

 

 

________________

 

 

泡瀬が捕獲テープを持っていないのには、ちょっとした訳がある。

この戦闘訓練、ヒーローチームに捕獲テープは二本しか支給されていないのだ。オールマイト曰く、「対戦相手の人数分だけしか捕獲テープは用意しないよ?限り少ないチャンスを有効に活用してねっ!」だそうだ。

そのため捕獲テープは取蔭と鎌切に託し、泡瀬自身は自前の捕縛武器で対応することにした。「相手の動きを封じる」事に関して彼が一番手馴れていると判断したから…。

 

 

しかし、まだ足りない。

 

 

大入のあの狂気の瞳。

戦力を分断した鮮やかな手腕。

逃走を封じて完全に隔離する徹底ぶり。

これらのことをごく僅かな時間で楽々こなしてしまう実力。

 

無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き

 

終始巫山戯ている様に感じる言動の底に「まだ何か」を感じる。

 

 

あれは危険だ。

 

 

泡瀬は直感で判断を下した。壁に縫い付けるだけでは生温いっ!完全に意識を奪うっ!

 

 

「この勝負!貰ったぁぁっ!!」

 

 

泡瀬は吠える。拳を握り込み、大入を寸分違わずに捉える。

しかし、攻撃は阻まれる。大入の反撃の一手だ。

 

突如大入の眼前に〈揺らぎ〉が発生する。「また風かっ!」と身構える泡瀬をあっさりと裏切る。

現れたのは「全身を覆う程の巨大な鋼鉄の盾」。

 

 

「んなっ!!」

「どりゃあっっ!!」

 

 

既に跳びかかっている泡瀬は止まれない。盾にぶつかり、攻撃は防がれる。生じた隙につけ込み、大入は盾ごと泡瀬を全力で蹴り飛ばす。

吹き飛んだ泡瀬は、器用にも体勢を整え、地面に着地。その間に大入は戦闘服を破り、拘束を逃れる。

 

 

「…大入、お前まさか…」

「流石に分かっちゃうかな?…まぁ、別に隠してたわけじゃ無いんだけど。ほら?サプライズって奴だな」

 

 

そう言いながら大入は腕に巻き付いた「ハンマー」に触れる。すると〈揺らぎ〉を纏って「ハンマー」は消えた。ついでとばかりに手にしていた蛮刀も〈揺らぎ〉を纏って消える。

 

 

「“物を取り出せる能力”かっ!!」

「ちょっと言葉が足りないかな?あくまで「格納した物を取り出している」だけだよ。俺は“ポケット”って呼んでいるね」

 

 

これこそが『大入福朗』の力の正体だった。

 

 

“個性:ポケット”

手のひらで取り込んだ物を独自の異空間に入れ、そこから自由に取り出す能力。取り込める対象は「生物以外全て」。格納・展開をする際は蜃気楼の様な〈揺らぎ〉が生まれる。

 

 

この情報から泡瀬はある結論に至った。

 

 

 

「こちら泡瀬っ!大入の“個性”の情報を修正っ!「道具を自在に収納出来る」能力だっ!!核兵器はコイツが持ち歩いて(・・・・・)やがるっ!?」

「正解だっ!俺を捕まえられたらヒーローチームの勝ちだ!!」

 

 

泡瀬の推測は当たりだ。大入は“個性”の中に核兵器を格納。角取・小大ペアの更に上を行く「完全に核兵器を奪われない状況」を作った。しかし、ペナルティーとして「大入福朗が捕獲判定を受けた時点でヒーローチームの勝利」にルールを変更している。

 

 

「大入は一階で俺と交戦中だ!援軍頼む!!」

『取蔭了解っ!超特急で向かうし!!』

『すまない!こちら鎌切っ!只今、物間と交戦中だっ!このまま捕らえるっ!』

 

 

取蔭は援軍に、鎌切は敵の妨害へと回った。このチームの中で一番戦闘に特化した鎌切と渡り合う物間の実力に少しばかり驚きながらも、意識は正面に佇むコイツに切り替える。

 

 

「手の内バレたから俺に集中攻撃か…至極当然だな…」

「逃げなくても良いのか?最も逃げ道は自分で塞いでいるようだが?『策士策に溺れる』とはこのことだな!」

「まぁ、構わないよ。…だって、俺の“個性”は正体が分かってからが本番だからなっ!!」

 

 

「物を自由に出し入れする」…諸君等なら、かの有名な英雄王の「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」はたまた未来ネコ型ロボットの「四次元ポケット」を想像するのでは無いだろうか?

大入の“個性”はどちらかと言うと前者に近いがそこには決定的な差がある。「持っている戦力差が違いすぎる」ことだ。

大入は「天と地を分かつ無名の剣(乖離剣エア)」も「神さえも縛る鎖(天の鎖)」も「光にさえ到達する神速の船(ヴィマーナ)」も「伝説に名を残す数々の武具」のたった一振りさえ持ち合わせては居ない。

 

大入はこの差を自力で埋めなければならなかった。

 

そこで選んだ物が「大気」である。

 

彼は“ポケット”の中に大量の「空気」を格納している。「物の取り出し口」を自分の体に設定し、全力で空気を噴射、爆発的な加速を得ていた。本人が〈エアスラスター〉と命名しているこの技術は多くの技の起点・連絡に働きかけている。

操作に細やかな調整を求められるため発展途上では有るが、古豪の英雄『グラントリノ』の“個性:ジェット”に追随する効果を発揮していた。

 

 

大入は全身に〈揺らぎ〉を纏う。生み出された空気の爆発が体を弾丸の様に前へと弾き出し、疾風の跳び蹴りを繰り出す。

 

 

「衝撃のっ!ファーストブリットぉっ!!」

 

 

 

〈ハードブーツ〉

彼のブーツには足先を保護する鉄板が組み込まれており、防御力だけでなく、攻撃力まで上げていた。

 

 

 

殺意を持った辻風と化した大入の蹴りを泡瀬は横っ飛びに回避する。

それを見た大入は、腕に装着した籠手を近くの柱に向ける。ガシュ!っという音が鳴り響いてアンカーボルトが発射される。

 

 

 

〈ストリングガントレット〉

彼の持つ秘密道具。馬鹿でかい籠手の内部に組み込まれたワイヤーアンカーと〈エアスラスター〉により変幻自在で立体的な変態機動を実現する。

 

 

 

大入は柱を起点にスピードを殺さず大外周り。その勢いで追撃をする。

 

 

「壊滅のぉっ!セカンドブリットぉっ!!」

 

 

低空で地面を斜めに抉り出す様に繰り出した迅雷の回転蹴りは泡瀬を障害物諸共、轢き飛ばす。

 

 

「瞬殺のおぉっっ!ファイナルブリットおぉっっ!!」

 

 

再びワイヤーを使い軌道修正。

無防備を晒した泡瀬を完全に沈めるべく。竜巻と化した回し蹴りが迫る。

 

 

 

 

 

次の瞬間!

 

 

 

 

「アタシ参上っ!!おりゃーっ!!」

 

 

窓ガラスを突き破り、飛び込んできたのは『取蔭切奈』。彼女の蹴りがトップスピードの大入の顔面を打ち抜いた。

 

コントロールを失った大入は、「グシャラボラスっ!」と変な声を上げ、ど派手な音と共に瓦礫を巻き込んで壁に激突。その光景はさながら交通事故現場の様な衝撃を与える。

 

そんな凄惨な光景なんて露知らず、彼女は泡瀬にこう告げる。

 

 

「泡瀬っち生きてる?わっ、大変っ!スゴイ傷っ!」

「ちょ!おまっ!」

「出血酷いっ!ヤバい!大丈夫じゃないってこれ!」

「いやだからっ!」

「ヤバい!ヤバい!さっき拳藤っちの手当てに救急道具使っちゃったんだっ!どうしよう!!」

「俺は平気だから構えろっ!取蔭!戦いの最中だっ!」

 

 

轟音と共に瓦礫が吹き飛ぶ。巻き上がる粉塵の中で蠢く影が一つ。

 

 

「…随分と酷い仕打ちじゃないかな?」

 

 

ユラリ、ユラリと影は揺れる。

 

彼は煙の中から姿を現す。

 

全身は裂傷、衣服は所々がズタズタに破れ。

その奥には流血、ワイシャツをジワジワと赤く赤く染め上げる。

 

 

---重傷

 

 

素人目に見ても決して無事では無い怪我を負いながら。それでいて、足取りは揺るぎなく。体を動かし、己の損傷を確認している。

 

 

「…でも?まだまだ終わらせないよ?」

 

 

割れた仮面…。その奥に闘志の炎を瞳を宿した『大入福朗』が堂々と立っていた。

 

 

 

 




尚、18話の段階で何故か今後の展開を当てたククリ・ルーラー氏には「預言者」の称号と10ポイントを進呈します。(但し、ポイントは利用できません)

判定理由
つか主人公もっとはっちゃけようぜw(爆弾持ってw)←それな

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