転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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17:第2戦 ~ 第4戦

「がおおおぉぉっっっつ!!」

 

「イヤーーーッっっ!!」

「……ふっ!………しぃっっ!!」

 

「ひっ…ひいぃぃぃっ!!」

 

 

 

続く第2戦。

 

 

 

ヒーローチーム Hチーム 鱗・庄田ペア

ヴィランチーム Bチーム 宍田・円場ペア

 

 

 

先程の戦いとは打って変わって正面からの全力戦闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

宍田獣郎太(ししだじゅうろうた)

上は「タンクトップ」下は「迷彩柄ボトム」で、普段の眼鏡を「特注のゴーグル」にしただけの彼は戦場で暴風雨の如く暴れていた。

 

“個性:ビースト”

野生の猛獣の因子を色濃く受け継いだ彼の“個性”は腕力・脚力のみならず、嗅覚・聴覚・反射神経迄もが常人のラインを逸脱している。

その、人並み外れた身体能力でヒーローチームを暴力的に攻め立てる。

 

 

 

それをヒーローチームは二人がかりで切り崩す。

 

 

 

鱗飛竜(りんひりゅう)

中国の民族衣装に煌びやかな刺繍の施された戦闘服が戦場を舞う。

 

“個性:ウロコ”

全身を爬虫類の鱗で覆う彼は、空を飛び跳ね、地面を転がる。

 

 

幼少期中国で過ごしていた彼は、幼い頃から武術を習っていた。

 

『地功拳』…いや『酔拳』と言った方が伝わりやすいだろうか?

 

書いて字の如く「所作が酔っ払いの動きに似ている」ことから付いた名前だが…決して酔っ払いの人が繰り出す徒手空拳のことではない。

彼が学んだ『酔酒八仙神拳』は本来、足場の悪い環境で地面を背にして戦うことを想定して洗練されてきた拳法であるが、適度な柔軟性と剛性を合わせ持つ“個性”との相性が非常に良い。特に拳の鱗を「下ろし金」の様にして繰り出す急所への攻撃はそれ自体が致命傷を与えかねない。

 

 

 

庄田二連撃(しょうだにれんげき)

急所をしっかり保護する「プロテクター」に「グローブ」「ボクサーパンツ」。プロボクサーの格好の彼。普段は穏和な表情の彼は現在、鋭い眼光で強敵と対峙していた。

 

“個性:ツインインパクト”

「自らの発生させた衝撃を倍に増幅する」と言うシンプルな“個性”は柔軟な運用を可能にする。

軽いステップを高速回避に、全力疾走を高い高速機動に、牽制を強打に、全力攻撃を必殺の一撃へと押し上る。

 

 

 

彼の趣味から吸収したボクシングの技術がそれを更に実戦的な物へと育て上げた。

 

 

 

宍田の理不尽なまでの身体能力に鱗・庄田は研鑚を重ねた技術で追随する。

そんな、鮮血と打撃音、咆哮と戦意の飛び交う戦場に円場はすっかり萎縮している。

 

 

そんな戦闘の僅かな隙を縫って庄田が仕掛ける。庄田は足の衝撃を増幅。爆発的な加速中に地面を蹴り更に加速。自身が巨大な弾丸にでもなったかのように攻勢にでる。宍田の脇をすり抜け、狙うは核兵器。

 

 

 

「くっ…!来るなーっ!!」

 

 

 

円場硬成(つぶらばこうせい)

全身をアーマータイプの戦闘服で覆う彼。怯えていた彼もヒーローを志す者の端くれ。しっかりとその役割をこなす。

 

“個性:空気凝固”

全力で息を吸い込み、吐き出されることで生み出される空気の盾。

 

 

 

突如生まれた見えない壁に阻まれ、庄田の足が止まる。慌てて体勢を立て直すが僅かに遅い。

宍田が庄田に接近。その引き裂いた獲物をバラバラにする鋭い爪が庄田に迫る。

 

急いで駆け込んだ鱗がその斬撃を受け止める。彼の表皮が柔軟な鎧と化し、鱗が爪を押しとどめる。

偶然に偶然が重なった隙に再び庄田が攻める。鱗によってガラ空きとなった宍田の脇に渾身のボディーブローを叩き込む。

 

二重の衝撃に「ぐっ…!」と言うくぐもった声を漏らすも気合いで飲み込む宍田。雄叫びを上げ、全力で庄田を殴り飛ばす。

 

続いて、宍田は鱗に狙いを定めて拳を振るう。

 

鱗は回避を試みるが、不測の事態に足が突如止まる。

 

原因は円場。彼は“個性”で鱗の足元の空気を固定。即席の枷を作る。拳のみでは飛ばず、宍田はその丸太程の足で鱗を更に吹き飛ばす。

 

 

息をあらげる宍田。

大打撃を受けながらも立ち上がる鱗・庄田。

三人の気迫に飲まれ、今にも心が折れそうな円場。

 

 

そんな四人の戦いは時間いっぱいまで続いた。

 

 

 

結果発表

タイムアップ ヴィランチームの勝利

 

 

 

______________

 

 

第3戦。

 

 

 

ヒーローチーム Dチーム 骨抜・小森ペア

ヴィランチーム Jチーム 回原・塩崎ペア

 

 

 

ヴィランチームはヒーローチームとの戦いを万全の体制で待ち構えていた。

 

 

 

塩崎茨(しおざきいばら)

修道女の様な衣装に腰に付いた武骨なガンベルト。彼女は“個性”を有利に使う為、予め用意したお手製の栄養剤を半分ほど飲み、残りの入ったドリンクボトルをガンベルトに備わったホルスターへと納める。

 

“個性:ツル”

自由に伸縮可能な頭髪のツル。束ねれば力は強くなり、切り離して壁やトラップにも出来る。

 

 

塩崎は核兵器を匿った部屋に徹底的にツルを張り巡らせた。床に、壁に、天井に、網目の様に矢鱈目鱈に縫いつける。更には床から壁、壁から天井、天井から床に、まるで蜘蛛の巣の様に徹底的に空間を自分のテリトリーに変化させる。

 

戦場を作り上げると一度ツルを切り離し、改めてツルを伸ばす。

 

塩崎がツルを2回に分けたのには理由が有る。塩崎のツルは数が多いほど、高い集中力を求められ、複雑な動きをするほど消耗が激しくなる。

『木を隠すなら森の中』…。「陣地として予め、ツルを張り巡らせ」その中に「コントロール可能なツルを隠蔽することで」自分が使用するツルの量を減らしながら、相手に「何処からツルが襲ってくるか判別がつかない」状況を作る。

 

 

更にもう一人の相棒が状況に備える。

 

 

回原旋(かいばらせん)

西部劇の保安官の様な服装の彼は。塩崎がツルで作った高台に待機していた。

 

彼はポケットから愛用の武器を取り出す。

 

“個性:旋回”

彼の能力は分かりやすい。「対象にした物を自分を軸に自由に廻すことが出来る」それだけだ。

 

彼の手の平のからこぼれ落ちた「ビー玉」は幼少の頃から訓練で使用してきた「手に馴染んだ」代物だ。そのビー玉は地面に落ちること無く空中を走り出す。

ヒュン…ヒュン…と言う空を切る音が鳴り、ビー玉は遠心力を蓄積させていく。最高速度から打ち出されるビー玉はもはや銃弾と化すことだろう。

 

 

万全の準備を整えた二人の勝負は一瞬で決まる。

 

 

突如天井が破られ、ヒーローチームの一人が奇襲を仕掛ける。

 

 

骨抜柔造(ほねぬきじゅうぞう)

全身をパンクロックな格好にシャレコウベのヘルメットと言う奇抜なスタイルの彼は上からの奇襲を選んだ。

 

“個性:柔化”

触れた物を柔らかくする彼の“個性”。実は展開速度・射程距離・精密性を高い水準に鍛え上げていた。

 

 

所定の配置に付いた彼は一つ上の階層の足場を一気に柔化。「天井をぶち抜いて」一気に核兵器へと肉薄する。

 

空中に待機していた回原がこれに対処。手持ちの弾丸を骨抜に向けて放つ。するとどうだろうか。ビー玉は骨抜に触れた所から水飴の様に弾け散る。

 

ビー玉が蓄積させた衝撃が体を叩いても、質量の大半を喪失させられたそれでは骨抜を押し戻せない。

 

回原は跳んだ。自分の足を“個性”の対象にし、体を軸に旋回させる。暴れ回る独楽のような回転蹴りは骨抜を地面に叩き付けた。

 

それを塩崎が素早く拘束。動きを封じる。

 

 

 

しかし、骨抜の攻勢は終わっていない。

 

 

 

骨抜は今度は「床全てを柔化させる」。足場を突如失った骨抜・回原・塩崎…そして核兵器が落下する。

 

下に控えていたのはヒーローチームもう一人の相棒。

 

 

小森希乃子(こもりきのこ)

戦闘服と言うよりワンダーフォーゲルでもしに来たのかと勘違いしてしまう装備の彼女もまたテリトリーを作って待ち構える。

 

“個性:キノコ”

頭から発生させた胞子から作られるキノコを活用することが彼女の能力。

 

 

彼女は部屋一面をキノコで埋め尽くし、避難救助のマットを作り上げていた。

 

このままでは核兵器を回収される。塩崎は自らのツルを伸ばし核兵器をつかみ取る。

 

それを見た小森は動き出す。腕に装備した特殊武器を地面に向けて放つ。

 

「急速スチーマー」…彼女が被服控除で用意した武装。自らの胞子に水蒸気を当てて成長を促す。成長に必要な湿度・温度を得たキノコは大きな傘を広げる。

 

小森はこれに跳び乗り一気に跳躍。核兵器を押さえに掛かる。

 

させるものかと塩崎は再びツルを伸ばす。しかし、突如力が抜けツルがコントロールを失う。

 

まあ、仕方ないだろう。何せ彼女は「骨抜を拘束している」のだから…。

 

 

 

結果発表

核兵器確保 ヒーローチームの勝利

 

 

 

_______________

 

 

第4戦

 

 

ヒーローチーム Fチーム 柳・吹出ペア

ヴィランチーム Eチーム 凡戸・黒色ペア

 

 

戦闘手段に乏しいヴィランチームは籠城戦を強いられる。

 

 

凡戸固次郎(ぼんどこじろう)

その巨体を堅める様に更に重厚な鎧を纏い、威風堂々たる古城の様な風格を醸し出す彼は行動を起こす。

 

“個性:セメダイン”

体内で接着剤を精製、放出する個性である。

 

 

彼は作り出した接着剤でドアを窓を全て封鎖。先の戦いを見て、床・壁・天井を何層もの接着剤で塗り固め、ぶ厚い層を造る。これにより衝撃を分散させる堅牢な城を作り出した。

 

しかし、それももう保たない。先程のからドアを破壊する音が鳴り響く。

 

 

 

ドッカーン!!

 

大袈裟な効果音を伴い牙城は崩れる。

 

 

 

 

吹出漫我(ふきだしまんが)

まるでSFコミックの様な非現実的なアーマーに身を包んだ彼こそが城に攻め入る曲者。

 

“個性:コミック”

様々な漫画的技法を顕現させる能力は奇想天外としかいいようがない。

 

 

今回彼は「オノマトペ」を自分の拳に使用した。「ドッカーン」と言う効果音を付加された拳は想像を絶する破壊力を伴い遂には道を切り開いた。

 

 

ヒーローチームは雪崩れ込むように攻撃を仕掛ける。

 

 

(やなぎ)レイ子』

花で例えるならば「曼珠沙華」の様に毒々しい紅色に染まった和装に華の簪。下駄を打ち鳴らす彼女は声を上げる。

 

“個性:ポルターガイスト”

精神が高揚し、一種のトランス状態になった彼女が放つ音波は周囲に非科学的な現象を呼び起こす。

 

 

音波を浴びて不意に宙に浮く瓦礫。それらがヴィランチームに向けて放たれる。

 

 

しかし、攻撃は失敗に終わる。

 

 

黒色支配(くろいろしはい)

全身を漆黒に彩られた軍服の彼が“個性”を発動する。

 

“個性:(ブラック)

彼の黒とは…謂わば概念的な表現である。

 

例えば、光彩での黒色とは「光の三原色を全て飲み込んだ状態」である。

例えば、色彩での黒色とは「色の三原色を全て飲み込んだ状態」である。

 

つまり何が言いたいかというと…

「対象一つを全て飲み込む能力」である。

 

 

彼は“個性”を発動、「音を黒く染め上げる」。「音が消え」効果を失った瓦礫が力無く地面に落ちる。

 

吹出は判断した。彼女と彼は相性が最悪だ。吹出は直ぐさま攻撃を繰り出す。「ビリビリ」と言うオノマトペを付加した拳は激しい音と電撃を纏って黒色へ向かう。

 

黒色は再び“個性”で「音を染め上げる」。

 

確かに音は消えるが…。しかし、オノマトペは「擬音語」だ、あくまでも「文字」である、電撃は消えない。スタンガンとなった拳が黒色の意識を刈り取る。

 

好機を待つ凡戸はその隙を逃さない。彼は接着剤で吹出を拘束する。

 

戦いは凡戸と柳の一騎討ちになった。

 

 

 

結果発表

核兵器確保 ヒーローチームの勝利

 

 

 

 




※注意
B組生徒の“個性”及び戦闘服は作者独自の妄想になります。公式情報が更新されたら多分修正します。

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