転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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15:第1戦 Aチーム vs Iチーム 2

『青天の霹靂』とは、正にこの様な状況のことを言うのでは無いだろうか?

 

 

突如落ちて来た何か。

 

鳴り響く『捕獲判定』のコール。

 

鉄哲の首に巻き付けられた「捕獲テープ」。

 

 

そして…。

 

 

そのテープにぶら下がる体長5cmの『小大唯』。

 

 

(やられたっ!?一杯食わされたっ!まさか、“巨大化”だけじゃ無く“小型化”まで出来るのか!?)

拳藤は己の失策を悔いた。

 

 

拳藤の推察は正解である。

 

『小大唯』

“個性:サイズ”

自らの身体の大きさ、及び身に着けた物のサイズを自由に変化させる“個性”である。変身には少しばかり時間が掛かる。

 

小大は個性を使い、小さい身体のまま天井に待機。そこからの奇襲により、一撃で鉄哲を封殺した。

 

もちろん、攻撃としては何の火力も持たない。現に鉄哲の体には傷一つ無い。しかし、「これはルール有りきの戦いだ」。もし、無視して戦闘を続行したらゾンビ行為として反則負けの判定を受ける恐れすら有る。それを理解した鉄哲は動けない。

状況は最悪だ。盾役として機能するはずの鉄哲が戦線を離脱。ヒーローチームは拳藤一人で挑まないといけない。

 

 

もし…。もしの話だが「拳藤が鉄哲の捕獲テープを剥がした場合」、『救出フラグ』が発生し、戦線に復帰出来る…かも知れない。

 

 

 

 

もちろん、そんな余裕が有ればの話だが。

 

 

 

 

「Aaaaaっ!!Fireeeee!!!」

 

 

状況はもう動き出している。一秒たりとも余裕は無い。

 

 

『角取ポニー』

“個性:角砲(ホーンホウ)

角からレーザーを放つ。その熱線は強力だ!

 

 

彼女の外観で特に目立つ対を成す二本の角。

 

その間から光を伴った高エネルギーが発生する。

 

束ねて…そして放つ。

 

 

角の向きに合わせ、高密度で放出されたエネルギーは空気を灼きながら、一直線に拳藤を目掛け駆け抜ける。

それを咄嗟に横に跳び回避する。

鉄哲の横を通り抜け、壁に衝突して壁を焼く。

 

 

「Hey!Hey!!Hey!!!ドーシマシタかぁ!?Partyは始まったばかりデスよーっ!!」

「っ!」

 

 

角取は照準を拳藤に合わせ、砲撃を乱射。激しい熱線が空間を支配する。拳藤は柱を盾にしながら回避に専念する。

 

 

(一気に接近して「核兵器」を抑えたいのにそれが出来ないっ!全く、何だってこんなに策を張り巡らせてくるんだっ!)

 

 

そう、それこそがヴィランチーム角取・小大ペアが仕掛けた最後の策。

 

 

 

 

思い出して頂きたい。この決戦場(ラストステージ)

 

 

 

 

邪魔なガラクタ達(テーブル・ソファー・ドラム缶など)は何処へ消えたのか?

 

 

 

 

答えは単純明快。決戦場(ラストステージ)の中に有る。但し、「核兵器を埋め尽くす様に」だ。これこそが最後の砦。「核兵器全体を障害物で囲い、直接触れることが出来ないようにする」ことである。

 

このバリケードを取り除こうとすれば角取から狙い撃ちにされる。

核兵器を確保するには、妨害する敵の排除が必要だ。

つまり、強制的な二対一の状況に持ち込まれたのだ。

 

 

「随分小賢しい手を使ってくるじゃないか。…まるで福朗みたいだ」

「ノン!そんなことアリマセン!ALLMIGHT先生カラのOKを頂いてイマス!但し、Penaltyとして「タイムアウトの時はヒーローチームの勝利」の条件が付いていマス!…ソレに核兵器を盗られたくないなら工夫するしかナイでショウ。モシ、POWERROADER先生なら地面に埋めて隠すでショウ。CEMENTS先生ならコンクリートの柱に隠蔽するのも悪くナイ…。私タチのバリケードなんてSo cuteな物デス!」

「親切に御説明どうも…。でも良いのか?最悪私は逃げ切れば私達の勝ちに出来るけど?」

「No Problem!私タチの目標は「二人を捕まえての完全勝利(パーフェクトゲーム)」デス!折角の戦闘訓練なのに目標(ターゲット)を手に入れて終了なんてNonsenseっ!コンナのもったいナイっ!戦闘の訓練ならば相手を倒すコトに全力を注ぐべきデス!」

「いいね!気に入ったっ!そういう姿勢大好きだ!」

「んふふ~♪アリガトウゴザイマース!…デモいいんデスか?」

 

 

 

「もう、二分経ちマスよ?」

 

 

 

「なぁっ!?くっ!」

「んっ!外した…」

「ソコっ!?貰いマース!!」

(あ゛づ)っ!!?」

 

「小型化」していた小大が今度は「巨大化」。直接的な殴り合いを申し込んできた。慌てて回避するが、角取の砲撃が逃げ道を潰す。やむを得ず手を巨大化して、手の平で受け止める。

ジュッ!!と言う焼け音がして拳藤の表情が歪む。

 

 

「今度こそ外さないっ!」

 

 

拳藤を捉えるべく、小大が再び手を伸ばす。

次の瞬間、拳藤は跳んだ。

 

 

「んっ!!」

 

 

拳藤は宙を舞う。伸ばされた小大の腕を足場に更に跳躍。小大の頭上に到達する。拳藤はすかさず自らの手の平を「巨大化」、その掌底で小大を押し潰す。

しかし、小大も負けてはいない。「小さな巨人」となった小大の力はその程度の攻撃を押し返す。

されど、拳藤は追撃を止めない。更にもう一方の手も「巨大化」、その両手を使い「面」で圧倒する。

遂に、拳藤は小大を地面に叩き込んだ。

 

拳藤は追い討ちを掛けない。角取の援護射撃を警戒して一度距離を取る。油断せずに構えを取る。そして、笑顔で言い放ってやる。

 

 

「アンタ達の考えはよく分かった…。だったら私も応えるよ。そうだよな…、戦闘訓練なのに戦闘回避なんてナンセンスだよな。今決めたよ!「二人を捕獲する」!ついでに「核兵器も回収する」!それが私達の完全勝利(パーフェクトゲーム)だっ!」

 

 

威勢良く啖呵を切った拳藤は駆け出す。

狙いは角取。彼女が放つ砲撃はこちらの攻撃チャンスに尽く割り込んでくる。これを叩かない事には話にならない。

 

 

「ん!させないよ!」

 

 

その間に小大が割って入る。

 

 

「だあぁぁぁっ!」

 

 

ならば押し通ると拳藤は拳打を繰り出す。ラッシュに継ぐラッシュの嵐で小大を防戦一方に追い込む。

 

 

「ワタシを忘れちゃNoデスよっ!」

 

 

僅か数秒、側面へと回り込んだ角取がヘルプに入る。死角からの射撃を横に跳んで回避する。

 

 

「捕まえたっ!」

「コレでFinishデス!」

「…っ!」

 

 

咄嗟の回避に体勢を崩した所を小大に捕まる。チョークスリーパーホールドの様に羽交い締めにされ身動きが出来ない。

動きを封じた拳藤にトドメを刺すべく角取は最大出力の角砲を発射した。

 

 

「キャァァァァッ!」

 

 

角取は勝利を確信した。この手応え、間違いなく直撃だ。直ぐさま顔を上げ確認すると熱線に焼かれ、気を失った人が一人。その人は『小大唯』。

 

拳藤は角取が砲撃を行う瞬間、羽交い締めにしていた腕の隙間に手を滑り込ませ、直ぐさま手の平を「巨大化」。大きくすることでこじ開けた空間を利用して、拘束に脱出の隙を作る。首尾良く拘束を逃れ、小大を盾にすることで角取の攻撃を退けたのだ。

 

なぜ、角取はこの一連の流れに気付けなかったのか?それは角取の“角砲”の性質に秘密がある。実は角取の“角砲”は「角の伸びている方向に直線でしか撃てない」つまり、砲撃する度に頭を下げる必要がある。

拳藤はその問題点を利用して、反撃の一手にした。

 

 

「What's happend!?小大サーン!!大丈夫デスかっ!?」

「隙有りだっ!」

「Ouch!!」

 

 

動揺した一瞬の隙を突いて拳藤は角取を拘束した。巨大化した手の平で彼女の上半身全てを押さえ込み、空いた方の手で捕獲テープをグルグルと巻き付ける。

 

 

『角取少女捕獲!アウトだ!』

 

「…Oops」

 

 

拳藤は捕獲を確認すると同様に小大にも捕獲テープを巻き付ける。その後に置物と化した鉄哲の捕獲テープを引き剥がし、核兵器へと向かう。

バリケードの隙間に手を伸ばし、中で「巨大化」することでバリケードを一気に取り払う。大きな手で標的を引っこ抜き、拳藤は不敵に笑う。

 

 

『小大少女捕獲!核兵器確保!ヒーローチームの勝利だっ!』

 

 

 

 


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