転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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作者「あっ、言い忘れたけど。君らトリの予定だから最後ね」

大・物「「…は?」」

※この予告詐欺である。





14:第1戦 Aチーム vs Iチーム 1

ヴィランアジト第五階層。屋上から一つ下の階層。そのフロアの中央、一番広いエリアのど真ん中に「核兵器(ターゲット)」を設置する。ついでに邪魔なテーブルやソファー、ドラム缶等は全て寄せて、遮蔽物の少ない状況を作る。

一階から五階までの部屋の所々にある窓の一部にカーテンを引き。中の様子を窺えない様にする。…仕上げにとある細工(・・)を施す。

戦いの舞台を整えた二人は最後のミーティングに入る。

一人は『小大唯』。「ノースリーブ」に「アームカバー」と「指貫グローブ」、「ショートパンツ」に「ハイニーソ」と「登山靴」と一見ちぐはぐに見えるパーツを最後にヘットギアの様に顔の各所を保護する「鬼の鉄仮面」がまとめ上げる。くノ一装束を改造したかのような出で立ちの少女。

もう一人は『角取(つのとり)ポニー』。体のラインが強調された「タイツスーツ」に「サンバイザー」と「ゴーグル」。カラーリングと各種アクセサリーが組み合わさって何処かマラソンランナーを連想する姿をしている。

 

 

「…ん。…じゃ、よろしく」

「ハイ!お願いしマース!」

「狙いはどうしよう…か?」

「Hmm~ソウデスネ。やはり…………デスか?ワタシ相性、良くアリマセン」

「…ん、了解。…一緒に頑張るよ?」

「Yes!頑張りマショウ!」

 

 

_______________

 

 

「よろしく頼むな鉄哲!」

「オウ!任せとけ!」

 

 

私の相棒はこの男『鉄哲徹鐵』だ。

 

体の関節部分に必要最低限のプロテクターのみのシンプルな戦闘服に身を包んだ彼。彼の“個性”は優秀だった。

 

 

“個性:スティール”

全身を鋼に変える能力。最強の矛にも盾にもなる。

 

 

肉体の強度が上がるって言うのはそれだけ打たれ強いし、殴った際の攻撃力も悪くない…。

なるほど確かに攻防一体の良い“個性”だ。私の“個性”が頼りなく感じてしまう。

 

 

“個性:大拳”

手のひらを巨大化させる。サイズは変幻自在。大きいほどパワーが強くなる。

 

 

しかし、こんな“個性”だけど、私はこの“個性”を気に入っている。むしろこの“個性”じゃないといけないとさえ思う。

 

 

「なぁ?今回の相手…小大と角取だったか?二人の“個性”って分かるか?」

「…お前、この間の個性把握テストで周り見てなかったのか?」

「いや、その…スマン。自分のことで頭一杯だった」

「…はぁ。まず、角取は遠距離攻撃が可能な“個性”だ。頭の角から…恐らくビームみたいな物を出す」

「おっ!もう一人の方なら分かるぜ!あの巨大化する奴だろっ!」

「…そうだな。あの巨体と近接戦闘になったら苦しいかもね」

(うっ…冷たい視線が突き刺さる)

 

「次に「核兵器(ターゲット)」の位置だけど…。多分あの何処か、だよな…?」

「次々と建物のカーテン引いてるもんな…アレじゃどこに「核兵器(ターゲット)」を隠してんのか外から分かんねぇぞ」

「多分、虱潰しに探させて時間を稼ぐつもりだな。場合によってはトラップを仕掛けてる可能性もある」

「クソっ!罠満載のアジトとかやりにくいな」

「まぁ、実際そんな時間的余裕も無いし、数は少ないだろうよ」

 

「生憎私らには索敵能力は無いからな。一階から順番に探すか…」

「だったら手分けして探すか?」

「…いや、却下だな。相手側が一人、遊撃に出て来た場合危険だ、下手をすればヘルプに入れなくなる」

「そうか…仕方ねぇから固まって動くか。なら俺が前に出る。俺ならある程度の攻撃でも耐えられる」

「あぁ、頼りにしているよ鉄哲。じゃあ、私は後方警戒だな。…よし、そろそろ時間だ!」

「オッシッ!!じゃあ、勝つぞ拳藤っ!」

 

 

 

_______________

 

 

ヴィランアジト内に正面から侵入すると、中には薄暗い闇が広がっていた。照明が落とされ、視界不良となった廊下を鉄哲と警戒しながら進む。一番近い扉に手を掛けゆっくりと開ける。

 

 

(うっ…眩しい)

 

 

部屋から差し込む昼白色の蛍光。一瞬瞼を閉じるもすぐに中を確認する。…どうやら、「(ヴィラン)」も「核兵器(ターゲット)」もないようだ。ドアを閉めると再び闇に包まれる。急いで探索に戻る。

 

同じ作業を1回、また1回と繰り返し。一層、二層、三層、四層とひたすら探索を繰り返す。

 

 

「やっぱ何処にも無ぇな…」

「ということは最上階、やっぱり「核兵器(ターゲット)」の前で待ち構えているって事か…」

「正面からのガチンコ勝負か!臨むところだっ」

 

 

 

最後の階層、第五階層。今までとは光景が一変していた。薄暗い廊下も光の差し込む部屋も変わらない。変わったのは只一カ所。

 

 

(…床が…濡れてる?)

 

 

そう、廊下一面余す所無くまき散らされた水。只床を湿らせているだけではなく、所々に大きな水溜まりまで作っている。

 

 

「なんじゃこりゃ!?」

「気持ちは分かるが落ち着け鉄哲…。やられた「鶯張り」だ…これ」

「ウグイスバリ?」

「昔の木造建築に使われていた仕掛けだ。歴史の授業で聞いたこと無いか?床がギシギシ鳴ることで人が居ることを知らせる仕組み。庭の玉砂利なんかも同じ効果があるんだけど…」

「つまり、この水浸しの廊下を歩くと…」

「水溜まりを歩く音で私たちが直ぐ近くに居ることがバレる…即席の警報装置だなこれは」

「クソッ!結局の所、警戒してたトラップじゃねぇか…」

「にしても上手いな。きっと私たちの“個性”が探索や隠蔽向きじゃ無いのを完全に読み切ってこの仕掛けを用意したんだ。下の階層のカーテンは中の様子をわからないようにして、私たちに虱潰しに調べさせる事を狙った時間稼ぎ…」

 

 

どうする?これまでの様に慎重にいくか?いや、結局足音でバレる…。最悪、耳が良いなら位置情報まで捕捉されかねない。

じゃあ、迅速に探索しての短期決戦?いや、トラップの可能性を捨てきれない。この足場じゃ直ぐに位置が把握されるから、出会い頭に最大火力の攻撃で迎撃もあり得る。

 

 

「…いくぞ拳藤」

「え?」

「考えたって埒が明かねぇぞ。…この先、相手に直ぐバレるってぇ言うなら仕方ねぇ。時間も既に半分近くを使っちまってる。モタモタしてる暇もねぇ」

 

 

一呼吸置いて彼は提案をしてきた。

 

 

「だったらここからは速攻だ。一気に「核兵器(ターゲット)」の位置を特定して、「押さえる」。…これしかねぇだろう」

「でも…それはっ」

「分かってる。きっと敵が二人揃って待ち構えてんだろう?でも俺らはどちらも近接戦闘型だ。結局の所、近づかないと何も始まらねぇ」

 

 

戦意に満ちた笑み。その表情には不敵さを感じた。…ごめん、お前の事少し直情的な奴って思ったよ。でも、それは自分に正直ってことで「こうだ」と決めた物を貫き通す強さでもある。こういう迷ったときに決断を下す、思いっ切りの良さは素直に見習いたいと思った。

 

 

「大丈夫だって。俺の“個性(スティール)”は生半可な攻撃じゃビクともしねぇよ!…任せろ、必ず突破口作ってやるから!」

「…分かった。でも、不意打ちには気を付けて」

「オウっ!」

「なら、目標はこのフロアの一番広い部屋だ!正面からの戦闘を想定しているなら多分そこを利用しているだろうからな。…さて、心して掛かるぞ鉄哲!」

 

 

 

私たちは直ぐに行動に出た。陣形はそのまま鉄哲が前衛、私が後方警戒。先程までとは違い速やかに移動する。歩き方に注意してもやはり、水溜まりを歩く音が出てしまう。もう、後戻りは出来ない、決戦は近い。

私達は決戦場(ラストステージ)に立った。待ち構えていたのは『角取ポニー』。

 

 

「Oh!思ったよりも早いデースっ!」

 

「はっ?一人だけ?」

「それでは…女子会(・・・)を始めマショウ!」

「っ!?鉄て…」

 

 

突如上から落ちて来た何か。それは、一瞬の出来事だった。

 

 

 

『鉄哲少年、捕獲!残念、アウトだっ!』

 

 

 


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