転生者「転生したんでヒーロー目指します」   作:セイントス

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6/18加筆修正しました。


9:試験終了3

「実技総合成績出ました」

 

 

試験官の一人がそう告げると、巨大スクリーンに本日行われた市街地演習のリザルトが一斉に表示される。

その情報に一同が一通り目を通した後、今度は手元のタブレットを操作する。画面が切り替わり、戦闘記録映像が流れ出す。

 

そして一つの映像に審査員の目が留まる。

逆立った金髪に赤い瞳の三白眼。獰猛な笑みと高笑いを上げながらロボットを無双ゲームのように破壊して回る少年だった。

 

 

「まずはこいつだな!まさか、救助活動(レスキュー)p0で1位とはなあ!!」

「「1p」「2p」は標的を捕捉し、近寄ってくる。後半戦他が鈍っていく中、派手な“個性”で寄せつけ、迎撃し続けた」

「…ひとえにタフネスの賜物だ」

 

 

審査員の一人が画面を切り替える。緑色の縮れ髪、大きめの瞳にソバカス。少し頼りない印象の少年が演習場を駆け回る。そして、最後に巨大なロボットを一撃で殴り飛ばした。

 

 

「対照的に(ヴィラン)p0で7位…」

「あぁ、その子な。アレに立ち向かったのは他にもいたけど…ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

「そうそう!思わず『YEAH!』って言っちゃったからな」

「しかし、自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ」

「ほんと妙な奴だよ!あそこ以外はずっと典型的な不合格者だったんだよな」

「細けえことはいんだよ!俺はあいつ気に入ったよ!」

「『YEAH!』って言っちゃったしな」

 

 

次に映ったのは三人組、人影は二つだが三人組だ。全身白銀の少年が吼えながらロボットを殴り、光る物体が飛び回り、鉄パイプが浮遊してロボットを滅多打ちにしていた。

 

 

「こっちの三人組も面白いね」

「そうですね。ここまでのチームプレイは初めて見ました」

「これって試験の趣旨に沿っているのか?」

「戦闘に不向きな“個性”の受験者もいるんだ。共闘は反則にはならない」

「結果を見たらポイントは高得点(ハイスコア)なんだよな~ほんとに急造チーム?」

「プロフィールを確認しても接点は無し。完全に即席のパーティーだね」

「即席でここまでやれるなら優秀じゃないか?」

 

 

そして、問題の映像に話は移る。黒のツンツン髪の少年が巨大なロボットの周りをちょこまか動き回り、瞬く間に破壊していた。

 

 

「…こっちはどう思う?一応同着1位(・・・・)の奴だけどさ…」

 

「あぁ、もう一人の『エグゼキューター(あれ)』に立ち向かった奴?…何というか変わった奴だな…」

「そうだね、戦闘そっちのけで「フィールドを虱潰しに駆け巡って」たし、アレが乱入するのに合わせて移動してたし」

「大方0p(ヴィラン)の場所探したんだろうさ…」

「このデカブツを?まずあり得ないって!受験者からしたらアレを倒すメリットが無い!」

「けど、この子。なんの躊躇いもなくあの0pに初撃かましてましな~」

「あれは目の前に他の受験者いたからだろ。救助活動(レスキュー)p確定だな」

「それか?ただの戦闘狂(バトルジャンキー)なんかね?」

「ないないないない。戦闘狂(バトルジャンキー)にしても命掛け過ぎでしょ。力の差も理解してない馬鹿なんじゃない?」

「…いや、何か勝算が有ったんじゃ無いでしょうか?実際に彼は、0pを半壊以上に追い込んでいる」

 

 

議論を交わしていると試験官の一人が手を上げた。

 

 

「あー…そのことなんだけどな…?」

「…?どうした?」

「試験会場Eの事後処理で、0pの片付けしたんだが…部品の一部が見あたらないんだよ」

「どっかに落としたんじゃないの?」

「それがさ?そのパーツの破片すら出て来ない」

「…彼のプロフィール出してくれないか?」

「「「…」」」

「…これってあれか?この“個性”でパーツをブッコ抜いたっつーことか?」

「あぁ、不足していたのは両肩の関節系及び周辺のパーツだ」

「なんつぅクレイジーな使い方だよ!一周回ってビックリだわ」

「でも確かに、機械系相手なら使えなく無い手だな…」

「でも本気でやるとか」

 

「馬鹿だ…コイツ絶対馬鹿だ」

 

「…あの爆発的な加速も応用技なんだな…」

「そりゃあそうでしょうよ。実際に空気を操っているわけじゃないしな。“個性”情報で手の内は分かったけど…こんな使い方、ぶっちゃけ反則だろ!」

 

「変態だ…コイツ絶対変態だ」

 

 

「…しかし、実力は本物だ」

 

 

審査員の一同が戦慄していた。

 

 

「あっ、ちょい待ったコイツのプロフィール…ほら、ここっ!」

 

 

審査員の一人が慌てた様子で話題の人物『大入福朗』のプロフィールを公開する。

 

 

「こいつはぁ…なんとまぁ…」

「…なぁ、今年の1年の担任って」

「イレイザーヘッドとブラドキングだな…」

「相澤くんかぁ…」

「…なんだ、こっち見んな」

「あぁ、この子はブラドキングに任せよう、そうしよう」

「オイ待て、どういう意味だ…」

「お前に任せたら即効で「見込み無し」だろうが…任せらんねえよ」

 

 

審査員の一人が顎に手を当て思案する。そして口を開いた。

 

 

「そうだね…ブラド?頼めるかい?」

「えぇ、任せて下さい…彼は私がしっかりと導きます」

 

 

そう処理すると、審査員達は次の審査に取り掛かった…。

 

 

 

_______________

 

 

「つ、疲れた…」

 

 

俺は現在ボロボロになりながら帰宅途中の道を歩いている。

雄英の試験を受けてから早一週間、今日は先輩の元へ赴き、稽古を付けて貰った。先輩は雄英高校の学生であり、中学時代も生徒会でお世話になった方のため、基本的に俺は頭が上がらない。本日は武器の扱い方を学ぶ訓練で、互いに木刀を手に戦った…見事に負けたが。

 

 

「…む?」

 

 

自宅に帰ると一通の手紙がポストに投函されている。送り主は「国立雄英高校」

 

 

「来たっ!」

 

 

俺は手紙を手にし、直ぐさま部屋に入る。慎重に便箋を開け、中身を取り出すと、機械の塊が顔を出す。原作にもあった「あの投映機」だ。

 

 

『私が投映された!!!』

 

 

オォォォルマイトオォォォ!!!

来た!オールマイトだっ!生だ!映像だけど生のオールマイトだっ!(意味不明)

 

興奮のし過ぎでトリップしかけている俺を余所にオールマイトの話は続く。

 

 

『まあまあ、落ち着きたまえ!大入少年!そんなに興奮しては身体が持たないぞ?』

「はい!オールマイト!!」

 

『さて、映像で済まないが改めて自己紹介しよう!私の名前は『オールマイト』!!世間ではNo.1ヒーローと呼ばれている』

「はい!存じておりますっ!!」

 

『何故私が投映されたかというと…雄英高校に勤める事になったからさ!』

「後継者作りの為ですね!分かりますっ!」

 

『…あの?いい加減落ち着いてね?大入少年?』

「はい!オールマイト!」

 

 

映像越しでも完璧な気遣い、流石で御座います。

 

 

『先ずは筆記試験!危なげも無く安全マージンまで確保出来ていたぞ!』

 

『次に実技試験!(ヴィラン)pは40p…しかしながら君の戦いには無駄が多かった!』

『まず、敵の倒し方!何故数体放置したまま移動したんだい!?目の前に暴れている敵が居たのに!どうしてそれを他の受験者に押しつけたんだっ!』

『次に移動手段!もっとあの“個性”を利用すれば迅速に行動出来たのに、何を出し惜しみしている!?時間は待ってくれないんだぞ!』

『極め付けは0p(ヴィラン)!何故君はアイツに特攻した!?挙げ句の果てには半身重傷!気絶して倒れる始末だっ!他の受験者にどれだけ迷惑を掛けたと思っている!?』

『何故ベストを尽くさないのか!Why don't you do your best!!これではpも足りないぞ!』

 

 

…そうだよな言い訳しか出来ない。(ヴィラン)だって俺がもっと強ければ、全滅させてからの移動も出来た。その移動でさえも、俺がもっと“個性”を使いこなせれば迅速に行動できた。

 

最後には0p(ヴィラン)だ。

「行動不能になって誰かに救けてもらうつもりだったか?」

「どういうつもりでも周りはそうせざるえなくなる」

「同じ蛮勇でも…おまえのは一人救けて木偶の坊になるだけ」

相澤先生が緑谷君に向けて放った言葉。それはそっくりそのまま俺にも投げかけられる。未だ俺は未熟だから…未だ力が足りないから…。悔しいが俺はヒーローの器ではなかったようだ。

 

あ~あ。このままだと見込み無しで不合格か…。一佳になんて言い訳しよう。後、先輩の顔にも泥を塗ってしまったな。一応併願した普通科…通ってるといいなぁ。あぁ、後期試験の準備しないといけないな…面接練習先生に頼まないと…。

 

 

『まあまあ大入少年!そう気を落とすな!!』

 

 

…は?

 

 

 

『ゴホン!…しかし、少年よ!君の無駄は無駄ではなかった!』

(ヴィラン)を一部残してはいたが、それらは他の受験者が全て排除した!残りの戦力なら自然と終息すると、君は判断したのだろう!』

『次に移動手段!さっきはああ言ってはみたモノのフィールドを虱潰しに探索する前提の行動なら「体力温存」という点で理解は出来なくも無い!甘い判定ではあるがね!』

『そして0p(ヴィラン)!君は結果として3人の受験者の窮地を救って見せた!』

『人命を助けたのに不合格?実にナンセンス!!何故正しいことをした者を不合格にしなければならないのか!?』

『そう!先の入試!!!見ていたのは(ヴィラン)pのみにあらず!!!』

救助活動(レスキュー)p!!しかも審査制!!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!!』

 

 

『大入福朗 救助活動(レスキュー)p 37p 合計77p!!!』

 

 

『文句なしの一位通過だ!何故ベストを尽くしたのか!』

『来いよ大入少年! 雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

込み上げる激情をぐっと飲み込み、俺は力強く答えた。

 

 

「はいっ!オールマイト!!」

 

 




救助活動(レスキュー)p が低いのは、彼の行動に不可解な部分が多く、審査員の不信をかったからです。

追記
「プロローグ編」ここまでお付き合い頂いた皆様、ありがとうございます。私の様な素人の作品に沢山のUA及びお気に入りを頂いき、自身驚いております。この場を借りて御礼申し上げます。これからも、私の妄想を吐き出して行きたいと思います。(え)
次回から「雄英高校編」へと突入します。待ちに待った原作キャラとの邂逅です。少しずつ更新して参りますので宜しかったらおつきあい下さい。

蛇足失礼しました。

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