ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。   作:投稿参謀

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虚淵御大がやりそうな展開(白目)

 かくて、アナキンとジェダイの運命は好転したかに見えた。

 

 ……しかし、破滅の予兆はすでにあったのだ。

 

 アナキンは、ジェダイに……そしてオビ=ワンに不信感を抱いていた。故にオビ=ワンが妻を奪うのではないかと心の何処かで疑っていた。

 

 パドメは夫に嘘を吐いた。硬直化しゆくジェダイに不信感を抱く議員たちと密会したことを隠した。

 

 それは小さな行き違い、小さなすれ違い。

 しかしそれこそが、確かな予兆だったのだ。

 

 そして、誰よりもジェダイを愛する彼の行動もまた。

 

 パルパティーン最高議長のオフィスに向かう廊下にて、メイス・ウィンドウはいつもと変わらぬ顔で足早に歩いていた。

 この男の表情が変わるのは、ジャージャー・ビンクスが絡んだ時ぐらいである。

 

 しかし、その内面は怒りに満ちていた。

 

『パルパティーン議長は、シスだった』

 

『議長は共和国とジェダイ・オーダーを終わらせるつもりだ』

 

『ヨーダがそれに組みしている』

 

 酷く混乱した様子のアナキン・スカイウォーカーから何とか聞き出した言葉は、彼をして動揺させるには十分な内容だった。

 特に最後の内容は、信じがたい。

 そして即座に判断した。

 これはシスの罠であると。

 

 ならば、ジェダイの使命に従い、シスを滅ぼすべきであると。

 

 ……ここでヨーダ本人に確認を取らなかったあたり、メイスと言えど本当に動揺していたのだ。

 

 オフィスでは、やはりシーヴ・パルパティーン……いやシスの暗黒卿、ダース・シディアスがゆったりと自分の椅子に座っていた。

 

「アポも取らずに、何用かな? マスター・ウィンドウ」

「議長……貴方を逮捕する」

「アナキンにも説明したがね。それは無理なのだよ。私の悪事の証拠なぞ何もないのだから。シスであると言うことは、共和国の法律上、何の罪にもならないのだよ」

 

 余裕に満ちた態度で説明するパルパティーンに、メイス・ウィンドウは無言でライトセイバーを取り出し起動する。

 

「……それは、自らに死刑を宣告するに等しいぞ。よく考えろ、ジェダイ・オーダーと共和国の終焉は、ジェダイと民主主義の死滅と同義ではないのだ」

 

 さしもに目を鋭くするパルパティーンに対し、メイス・ウィンドウは冷厳と告げた。

 

「いいや、同じことだ。ジェダイとはオーダーであり、民主主義とは共和国その物なのだから」

「……愚かな」

 

 ゆっくりと椅子から立ち上がったパルパティーンは、服の袖に隠してあった自身のライトセイバーを起動する。

 

 一拍置いてから、二人は互いに斬りかかった。

 

 

 

 アナキンが駆けつけた時、メイスとパルパティーンは凄まじい速度で斬り合っていた。

 とてつもないフォースがぶつかり合い、剣技においても二手三手どころか何十手先までも読み合う高度な戦い。アナキンの目をもってしても追うのがやっとだ。割って入ることなどできるはずもない。

 

 だがフォースの使い方ならいざ知らず、純粋な戦闘能力においてはメイスの方に軍配が上がったらしい。

 

 一瞬の隙を突いて腹を蹴り飛ばし、シスの暗黒卿を床に転がす。

 

「ジェダイの使命のため、貴様を裁く!」

「分からず屋めが! 何のためにヨーダがオーダー解散の道を選んだと思っている!!」

 

 ジェダイとシスが吼え合う。

 

「生きるためだ! いやさ、生かすためだ! お前たちを、ジェダイをだ!! 戦えば多くのジェダイが死ぬぞ! それこそ、幼い子供までも!!」

「……ならば、死ぬべきだ!! 貴様に屈するぐらいなら、誇り高く死ぬべきだ!!」

「…………愚か者め!!」

 

 ギラリとパルパティーンの瞳が黄色に輝き、指先から紫の雷が放たれた。

 紫電はメイスに襲い掛かるが、ジェダイ・マスターはライトセイバーを掲げてこれを弾き返す。

 無論、これは見た目よりも遥かに高度な技であり、高い技術と強いフォースがなければ出来ない芸当である。

 

「ぐおおおおッ……!!」

「マスター・ウィンドウ!! 止めてください!!」

 

 悲鳴を上げるパルパティーンを見ていられず、ついにアナキンはメイスを制止しようとする。

 

「邪魔をするな、スカイウォーカー!」

 

 しかしメイスは、フォースライトニングが途切れたのを見計らってライトセイバーの切っ先をもはや容姿すら変わり果てたシスの暗黒卿に突き付ける。

 

「こんなことはヨーダだって望んでいない!!」

「ヨーダは、我々を裏切った!!」

 

 何とか止めようとするアナキンに、メイスは激昂する。

 

「ヨーダはジェダイを裏切った! 共和国を裏切った! 私を裏切った!! もはや彼の言うことは聞くに値しない! グランドマスターの座にも値しない!! 彼を追放し、私がジェダイと共和国を再生させる!!」

「さ、再生だと……ははは」

 

 半ば慟哭するように吼えるメイスに、パルパティーンは失笑を漏らす。

 

「どこまでも愚かよな。もはや、共和国は死んでおる。余が何をするでもなくな……故に、一度壊し、造り直す必要があるのだ……ジェダイもな。ヨーダもそれが分かっているからこそ……」

「そんな必要はない! オーダーこそがジェダイだ!! 共和国こそ唯一の文明だ!! これからも、変わることなく、永遠に!!」

 

 ついに激怒し、いつもの冷静さを完全に捨てたメイスはライトセイバーを大きく振り被ると、老いたシス卿に向けて振り下ろした。

 

 …………その瞬間、アナキンは半ば無意識にライトセイバーを起動してメイスのライトセイバーを持つ右腕を斬り飛ばした。

 

「ッ! スカイウォーカー!!」

 

 驚愕と苦痛と憤怒に顔を歪めるメイスだが、その瞬間にはパルパティーンが指先からフォースライトニングを発し、メイスを窓の外……この場所は高いビルの上だ……に弾き出した。

 

 メイスは悲鳴を上げながら、摩天楼の間に消えていった。

 

 それを見届けてから、パルパティーンは深く息を吐きグッタリと床に寝そべった。

 全力を出した戦いだった。そこに芝居だの何だの仕込む余地はなかった。

 

 アナキンは膝から崩れ落ち、茫然と光り輝く摩天楼を眺めていた。

 

 自分は何をしたのだろうか?

 確かにメイスはパルパティーンを殺そうとしたが、メイスの言う通りジェダイの使命は……しかしヨーダが……ヨーダは裏切って……。

 

「アナキン、少しの間、休みなさい。……そしてムスタファーに向かうのだ。分離主義者たちはそこに逃げ込んだ。彼らを捕らえるのだ……くれぐれも、殺さないように」

 

 衝撃的な展開が続いて混乱しきっているアナキンに、何とか上体を起こしたパルパティーンが囁く。

 それに従う以外に、アナキンの取れる選択肢はなかった。

 

  *  *  *  

 

「皆さん、我々は敵を倒し試練を乗り越えた。しかし、戦争の傷は深く大きく、この銀河に横たわっている」

 

「それを癒し、再び立ち上がるためにはより強力な共同体が必要だ」

 

「富の独占もなく! 権力の腐敗もなく! 自由と平和を守護する!! そんな共同体が!!」

 

「私はここに、第一銀河帝国の建国を宣言する!!」

 

 歓声と共に銀河帝国は誕生した。

 これを指して『万雷の拍手の中で、民主主義は死んだ』と、誰かが言った。

 

「全ジェダイに告ぐ……ジェダイ・オーダーは解散とする」

 

「皆、戸惑っていることと思う。……しかし、これはすでに随分と前に決めたことじゃ」

 

「儂たちは長く執着を禁じてきた。……だが、いつしか儂らはジェダイ・オーダーその物に強く執着していたのじゃ」

 

「これからは、一人一人が、自らのジェダイとしての道を模索してゆくのじゃ。幸運を祈っておる……フォースと共にあらんことを」

 

 この演説を最後に、ジェダイ・オーダーは解散された。

 ある者は粛々と受け入れ、ある者は悔し涙を流し、ある者は肩の荷が下りたようにホッとしていた。

 

 そしてオビ=ワンは……。

 

 

 

 ドロイド軍を指揮していたグリーヴァス将軍を辛くも倒したオビ=ワンであったが、その勝利は紙一重の物だった。

 最後の最後でグリーヴァスが不意打ちも卑怯な手もない一騎打ちを挑んできたのは意外だったが、全力を尽くした死闘の果てに勝利した。

 しかし、オビ=ワンも無傷とはいかず戦いのダメージで昏睡状態に陥ってしまっていた。

 

 コルサントの病院で目が覚めた時、最初に彼に接触したのはクローン・コマンダーのコーディでも共和国軍の将校でもなく、コムリンクが映すメイス・ウィンドウだった。

 

『マスター・ケノービ。君が無事で良かった。……ジェダイは敗北した。アナキン・スカイウォーカーの裏切りによって』

 

 全身に火傷を負い片腕を失ったジェダイ・マスターが何を言っているのか、オビ=ワンは理解できなかった。

 

『それだけではない。マスター・ヨーダまでもが暗黒面に堕ちてしまった。……クローンも信用してはいけない。彼らはシス卿の手先だ』

 

 自分の信じていた何もかもが崩れていく感覚を、オビ=ワンは感じていた。

 アナキンが裏切るだなんて、ヨーダが暗黒面に堕ちるなんて、考えられない。

 これが他の者の言うことなら、信じなかっただろう。

 

 だが、相手は最強最高のジェダイ、メイス・ウィンドウなのだ。

 

「聖堂は……聖堂はどうなったのです?」

『ジェダイ聖堂は落ちた。あそこにいたジェダイたちは子供たちも含め一人残らず殺された』

「そんな……馬鹿な」

 

 絶望に、オビ=ワンは膝から崩れ落ちる

 

 これはメイスが嘘を吐いたわけではない。

 何故なら、メイスにとってジェダイでなくなると言うことは死と同義だからだ。

 正確には『オーダーの提唱する在り方その物のジェダイ』でなくなることがだ。

 故に、ジェダイ・オーダーが解散した時点で、メイスの中では全てのジェダイは殺されたのだ。

 普段なら、もう少し穏当な考え方が出来たのだろうが、彼もまた怪我と精神的な衝撃で弱り、思考が暴走していた。

 

『スカイウォーカーはムスタファーに向かったようだ。君には、彼を追ってほしい』

「……その前に、パドメに会わなければ。彼女なら、ことの全貌を知っているかもしれない」

 

 その後、パドメに会いに行ったオビ=ワンは、混乱する彼女にせがまれてムスタファーに連れていくこととなった。

 

 

 そのことを、オビ=ワンは今でも後悔している。

 

  *  *  *

 

 嗚呼、何故こうなったのだろうか。

 

「アナキン……止めて……!」

「オビ=ワンをここに連れてきたな!!」

 

 理由は多々ある。

 混乱した精神、些細な誤解と行き違い、積もった不信と不満、小さな嘘と真実、相互理解と会話の放棄。

 

「裏切るよう、仕向けたな!!」

「お前が招いたのだ!」

 

 そしてオビ=ワンも、ヨーダも、パルパティーンでさえも見落としていたのだ。

 アナキンの愛の強さを……それが裏返った時、どれほど強い憎しみになるかを。

 

「選ばれし者だったのに! 闇に堕ちるとは!!」

「ジェダイこそ、悪の権化だ!!」

 

 それだけではない。

 アナキンは愛を求めた。

 彼は、『自分が』愛されることを求めた。

 他人に愛を与えることを、知らなかった。

 

 だから……。

 

「アナキン、弟のように思っていた! お前を愛していた!!」

「……あんたが憎い!!」

 

 アナキン・スカイウォーカーの物語には、破滅以外の結末は有り得なかったのだ。

 




まずはメイスファンの片にお詫びをば。
結果的に汚れ役を背負わせちゃったけど、ジェダイとシスが和解するってなったら、だれが一番反対するかって考えたら、こういうことに……。

Q:メイス、どうやって助かったの?

A:そこらへんを飛んでたトランスポーターにブラ・サガリして。

Q:アナキンとオビ=ワンの決戦をダイジェストで済ますとか、馬 鹿 な の ? 死 ぬ の ?

A:原作とほとんど変わらないので、バッサリとカットしました。それに、どうやっても原作と同等のもんは書けないんで……。

本当に、すいません。

次回か次々回で過去編は終わりの予定です。

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