ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。   作:投稿参謀

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前回、入れるのを忘れてたこと。

綺礼「令呪を持って命ず。(私のいる)この場で全力で戦い、勝て」

ワクサー「了解。(自分たちのいる)この場で全力で戦って、勝ちます。ちなみに勝利条件は第一目標が遠坂凛の救出、第二目標が子供たちの救出です」

……ってな感じで、ワクサー隊は時臣に付き合ってました。

※ちょっとミスしてたので直しました。
具体的にはピエット提督を、デヴァステイターの艦長に。


おやすみなさい、衛宮切嗣

 長かった聖杯問答の夜が明けて。

 朝日がアイツベルンの城……の上空にデエエエエンッ!と居座るスター・デストロイヤーを照らす。

 

 その一室でダース・ヴェイダーが瞑想室に入って休息していた。

 この上下に割れるカプセル型の瞑想室には空気の成分と気圧の調整を含めた様々な機能が備え付けられており、ヴェイダーはマスクとヘルメットを外して快適に過ごすことが出来た。

 

「パパー! パーパー!」

 

 と、そこへ息子のルークが部屋に転がりこんできた。

 ヴェイダーはマスクを着けないまま、カプセルを開ける。

 

「ルーク、どうしたんだ? ……おや?」

 

 息子の姿を見とめたところで、ヴェイダーは首を傾げた。

 ルークの後ろに、久宇舞弥が立っていたからだ。

 

「ねえパパ! マイヤといっしょに遊びにいってもいいでしょ!」

 

 無邪気に言う息子から舞弥に視線を移せば、舞弥は相変わらずの無表情だった。ヴェイダーの異様な顔にも動じる様子はない。

 

「息子さんが城の中では退屈だと言うので。無論、R2は連れていきますので御安心を」

 

 そこまで言われて、ヴェイダーはどうしようかと悩む。

 昨日の今日で、この聖杯戦争のさなか、それも他の参加者にルークのことが知られてしまった以上、外に出すのは得策とは言えない。

 

「ねえパパ、おねがーい!」

「……駄目だ、ルーク。今は危険だ」

「ちぇッ! パパのケチ!!」

 

 おねだりしてくる息子に言い含めれば、そんな言葉が返ってきた。

 意外にも、それに舞弥が同調する。

 

「息子さんの安全は、私が守りますので」

「……それよりもルーク。お前は昨日夜更かししただろう? まだ眠いのでは?」

「眠くないよ!! お出かけしてもいいでしょー! ねえぇー!」

 

 元気いっぱいと体全体でアピールするルークに、さてどうしたもんかと考える。こうなった息子を宥めるのは、とてもとても手間がかかるのだ。

 

「だ、め、だ! 寝なさい!」

「やだー! マイヤといっしょに遊ぶー!」

 

 駄々をコネまくる息子に、ハアっと息を吐くヴェイダー。

 銀河を震撼させるシスの暗黒卿も、息子には弱い。

 

「ならば、ルーク。今日は森で私と遊びましょう。レックスやR2もいっしょというのはどうです?」

 

 そこで舞弥が屈んで視線を下げ、対案を出す。

 森ならアインツベルンの結界内だし、レックスやR2もいれば敵襲があっても早々に遅れを取ることはないだろう。

 父子は、揃って同じ角度に首を傾ける。

 

「う~ん、マイヤといっしょにあそべるなら、それでいいや!」

「……レックスの他に、彼が選んだ兵を何人かつけるなら」

 

 そして、揃って舞弥の案を受け入れた。

 

「では、これで……」

「それじゃあ、いってきまーす!」

 

 二人が仲良さげに去っていくのを眺めながら、ヴェイダーはふと思う。

 

 なんかうちの息子、マイヤに懐いてない? ひょっとして初恋? どうもうちの家系は年上に弱い気がするし……。

 

 そのことを考えつつ瞑想室を閉じると、見知らぬ土地で戦ってきた疲れが出たのかウトウトしてくる。

 

「艦長」

『はい閣下。ご用でしょうか?』

「いや、私は少し仮眠を取る。その間のことは任せるので、何かあったら起こしてくれ」

『はい、お任せください』

 

 ほんの1~2時間ほど仮眠を取ることにしたヴェイダーは、デヴァステイターの艦長にその旨を伝えると、目を閉じて眠気に身を任せるのだった。

 

  *  *  *

 

「…………」

「…………」

 

 一方で、城の一室では切嗣とアイリスフィールが対面する形で座っていた。

 しかし切嗣はムッツリとした顔で、アイリスフィールは顔を伏せて、一言も発していない。

 

「あ、あの、切嗣……」

 

 オズオズとアイリスフィールが夫に声をかける。

 しかし、切嗣は答えない。

 

「切嗣、あのね。私、思ったのだけれど……彼らの言うことにも一理あるんじゃないかって」

 

 彼らとは言うまでもなく、昨晩集ったサーヴァントたちのことだ。

 切嗣はピクリと眉を上げた。

 

「……アイリ、あいつらに感化されたのかい?」

「そういうワケじゃあ……とは言わないけど。切嗣、あなたも少しは皆の話を聞いてもいいんじゃないかと思って」

「…………」

 

 すると、切嗣はプイと顔を逸らした。

 切嗣にとって、英霊たちの言葉を受け入れるのは、これまでの自分を否定することに繋がる。

 その上で、妻とクローン・トルーパーの生い立ちを考えれば、影響を受けるのも仕方ないと思えるのだが……。

 

 切嗣が選んだ対応は、『一時的な無視』だった。

 

 その姿があまりに子供っぽいので、アイリスフィールは何となく笑ってしまう。

 大人気ない部分がある人だとは思っていたが、これでは丸っきり子供だ……。

 

 いや、もしかしたらこの『子供』な部分こそが切嗣の本質なのかもしれない。

 

「切嗣……英雄の言葉を聞きたくないのは分かったわ。なら、こちらの味方ともう少し話し合ってもいいんじゃないかしら」

「……ヴェイダーとかい? 彼は聖杯戦争に掛ける願いなんかない。純粋な利害関係だ」

「だからこそ、相手の利と害を把握しておいて損はないと思うのだけど? 言っておくけど、ルークを人質にするのは止めておきましょう。怒らせるだけだわ」

「……それは、君がルークに感情移入しているだけだろう」

「それもあるわ。でも、ヴェイダーを怒らせると帝国軍を敵に回しかねない。そうなったら、もう聖杯戦争どころじゃないでしょう?」

 

 疲れ切った声の切嗣に、アイリスフィールは駄々をこねるイリヤスフィールを相手にしている時のような声を出す。

 それを聞いて、切嗣は内心で深く溜め息を吐く。

 

 かつて、自分と触れ合って急速に自我を確立したアイリだ。他の人間と触れ合えば当然さらなる成長というか変化を見せるのは当たり前だ。

 それを素直に喜べない自分に、切嗣は息を吐くのだった。

 

「それと、その……あなたの、目的についてだけど」

「目的は変わらない。聖杯を使っての、世界の救済。人類の変革。……これだけは譲れない」

「でも、アーチャーやライダーの言うことにも、一理あるんじゃ……」

「……だとしても!」

 

 触れ難い所に触れてくる妻に、思わず切嗣は怒鳴ってしまう。

 

「だとしても……! ここで諦めてしまったら、投げ出してしまったら、僕が殺してきた人々は何のために死んだんだ!! 彼らの死を無駄には出来ない!!」

 

 夫の剣幕に、アイリスフィールは少し恐怖してしまう。

 

 その顔が怒っているというよりは、泣きそうに見えたから。

 

 妻を怖がらせてしまったことに気付き、切嗣はハッとなって取り繕う。

 

「すまない。大きな声を出して。……仮眠を取らせてくれないかな? 今日は少し疲れたよ」

「……ええ、分かったわ」

 

 話を無理やり打ち切られたことを理解しながらも、夫が疲れているのも分かるので、アイリスフィールはゆったりと部屋を後にした。

 切嗣は日の当たらない位置まで椅子を移動させると、深く腰掛けて目を瞑る。

 そして、自己催眠を懸けて意識を分断していく。

 

『精神の解体清掃』

 

 自身の意識をバラバラに解体ることでストレス諸共吹き飛ばし、自然再生させるという荒療治だ。

 二時間ほどの睡眠で、疲労もストレスも解消できるというこの技法を、切嗣は多用していた。

 短時間で効率よく回復できるし、何より夢を見ない。

 

 無力だったころの悪夢も見ずに済むし、忌々しい英霊たちの過去をパスを通じて垣間見ることもない。

 

 ……そのはずだった。

 

「失礼、ミスター・キリツグ。話が……」

 

 そこへ、オビ=ワンが部屋に入ってきた。

 聖杯問答で出来た溝を自発的に埋めるべく、切嗣と話し合おうとしていたのだ。

 しかし、椅子に腰かけて寝息を立てている切嗣を見て、すぐに場を後にしようとする。寝ている人間を起こすのは忍びない。

 

 そこでオビ=ワンは、フォースを通じて切嗣の意識の状態を察知した。

 細かい断片に別れた精神は、彼から見て異常に見えた。

 

「ふむ……これはいけないな」

 

 だから、オビ=ワンは切嗣の頭に手を翳し、フォースと純粋な善意で持ってバラバラだった意識を一つに纏めてやる。

 隠居後に覚えた技の一つだ。

 

 切嗣の精神を完全に自然な状態に戻したオビ=ワンは、優しい笑みを浮かべ、部屋を後にした。

 色々あったとはいえ、他人を憎み切れないのが彼の長所であり短所でもあった。

 

「お休み、キリツグ……よい夢を」

 

 そう言って、オビ=ワンは音を立てないように扉を閉めた。

 

  *  *  *

 

 衛宮切嗣は夢を見ていた。

 夢といっても、妙にリアルな質感があった。

 

 周りは奇妙な機械や見たことも無い道具に溢れている。

 

 しかし妙に視点が低い。

 これではまるで子供の……。

 

「ルーク、ここにいたのか」

 

 自身のサーヴァントであるセイヴァーの名を呼ばれて見上げれば、黒い髑髏めいたマスクと黒衣があった。ダース・ヴェイダーだ。

 普通なら威圧感を覚えるだろう、その姿は彼……ルークにとっては絶対的な安心感を齎す姿だった。

 

「ああー! 見つかっちゃったー!」

「ルーク、かくれんぼは終わりだ。部屋の片付けは終わったのか?」

「う、うん……」

 

 返事をすれば、ヴェイダーは腰に手を当てて威圧的に言う。

 どうも、ルークが部屋の掃除をさぼってここに隠れていたらしい。

 

「そうは思えんな。……ルーク、言いつけを守らないなら、週末に遊園地に行く約束は取り消しだ」

「ええー!」

「嫌なら、ちゃんと片付けをするのだ」

「はーい……」

 

 父の言葉に、ルークはトボトボと自室に戻ろうとする。

 と、ヴェイダーのマントの後ろから、ルークと同サイズの影がヒョッコリと顔を出した。

 ルークとよく似た面立ちの女の子で、茶髪を……何と言うかお団子のようなメロンパンのような独特の形に纏めている。

 

「もう、ルークったら! いけないんだ!」

「なんだよー! レイアは片付けしたの?」

「私はいいの! 女の子なんだから!」

「なんだよそれー!」

 

 子供らしく言い合うルークとレイアを見下ろし、ヴェイダーは溜め息混じりに言葉を吐く。

 

「レイア、お前も手伝ってやりなさい」

「ええー!?」

「お前たちは兄妹なのだから、助け合うのだ。ほら、今度遊園地に行った時に、好きなアイスを食べていいから」

 

 父に言い含められてやっとルークとレイアは揃って部屋に向かうのだった。

 

 切嗣はやっと理解した。

 ああこれは、ルークの記憶か。

 

 切嗣は思う。

 ああ、何て幸せなのだろうか。

 自身の境遇との落差に鬱になってくるが、さすがにルークを恨む気にはなれない。

 

 その後も、他愛無い記憶が続く。

 ハン=ソロなる悪餓鬼と遊ぼうとして父に止められ、そのことに腹を立てて家出したり。

 家出した先で泣いていたら、父が迎えにきてくれたり。

 妹と他愛無い喧嘩をしては仲直り、ということを繰り返したり。

 

 普通の……舞台が宇宙で父が暗黒卿であることを除けば、余りに普通の親子の記憶が続く。

 

 だが、やがて……幸せな記憶は唐突に終わりを告げた。

 

 上手く説明できないが、何か、何か別の精神の波のような物が押し寄せてきて、切嗣の視界を闇が包む。

 

 何処かから、ゆっくりとした足音と共に独特の呼吸音……ヴェイダーの息遣いが聞こえてくる。

 

 それを聞いて、切嗣は理解した。

 切嗣とルークがパスで繋がり、ルークとヴェイダーはサーヴァントと宝具という形で繋がっているのだから、これからやってくる物はつまり……。

 

 やがて足音が止まり、闇の中に呼吸音だけが響く。

 そして……。

 

 赤い光……ヴェイダーのライトセイバーの光刃が唸ると、視界一杯にヴェイダーの顔が浮かび上がった。

 自分が酷く恐怖しているのを自覚しながら、切嗣の意識は闇に包まれていった……。

 

 

 

 こうして、切嗣は追体験することになった。

 

 シスの暗黒卿ダース・ヴェイダー……あるいはジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカー。その、波乱と苦悩に満ちた半生を。

 

 




そんなワケで、唐突に過去編へ。

何でダース・ヴェイダーがヴェイダーパパになったのかを書いていきます。
……つまり、しばらくFate成分/Zeroになります。ごめんなさい。

切嗣が作中でやってる精神の解体清掃は公式設定……の、はず。
違ってたらご指摘ください。直します。

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