ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。 作:投稿参謀
タイトルに特に意味はありません。
濃密な魔力が、空間を包み、景色が変わっていく。
何処まで続く砂の大地、そして空。
その中で、征服王は両腕を大きく広げ立っていた。
「固有結界! そんな、こんなことって……!」
「何と言う……心象風景の具現化だと!」
一様に驚愕しているアイリスフィールとケイネス。
ウェイバーも驚愕しているが、それは魔術師としてだけではなかった。
「ここはかつて我が軍勢が駆けぬけた大地。余と苦楽を共にした勇者たちが等しく心に焼き付けた景色だ!」
ライダー……その名も高き征服王イスカンダルが、堂々と宣言する。
「この景観を形に出来るのは、これが我ら全員の心象だからさ! ……見よ、我が無双の軍勢を! 肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち。時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち」
その声に応えるが如く、地平線の向こうから現れる者たちがいた。
古代マケドニアの戦装束に身を包んだ兵士たちだ。中には騎兵もいる。
それもただの兵士ではない。
それぞれが名を知られる勇者であり、あるいは部族を率いる長であり、あるいは無双の豪傑であった。
「こいつら……一人一人がサーヴァント!?」
「彼らとの絆こそ我が至宝! 我が王道! イスカンダルたる余が誇る最強宝具……
圧倒される一同だがヴェイダーはそれ以上にこの光景に郷愁を覚えていた。
どこまで続く熱砂は、生まれ故郷タトゥーインを思い出させた。
「久し振りだな、相棒」
ライダーは軍勢の中から走り出し、自らの傍らに並んだ見事な黒馬の顎を撫でる。
ランサーのドゥン・スタリオンとはある意味対照的な、力強く大柄な馬だ。
これぞ征服王イスカンダルの愛馬、ブケファラスである。
再会した戦友に跨り、征服王は剣を抜いて高く掲げる。
「王とはッ……誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!」
『然り! 然り! 然り!』
自らの王の声に合わせ、兵たちが唱和する。
「すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、王! ……故に! 王は孤高にあらず。その偉志は、すべての臣民の志の総算たるが故に!」
『然り! 然り! 然り!』
視線を合わせずとも先程まで意見をぶつけあっていたランサーとアーチャーに向け、ライダーは吼える。
「これは……何と言う、常識外だ」
オビ=ワンは、初めて見る魔術に肝を抜かれて茫然と呟いた。
いかなジェダイマスターと言えど、こんな光景は見たことはなかった。
「ん~……パパ? どうしたの?」
と、レックスに抱っこされていたルークが目を覚ました。
「あれ~? ここタトゥーイン? じゃあラーズおじさんたちのお家に来たの?」
「……ルーク、もう少し眠っていなさい」
ヴェイダーは手を軽く振るってフォースを操作し、ルークを眠らせようとする。
少し自身のフォースで抵抗したルークだが、練度の差はいかんともしがたく目を閉じた。
「アナキン、少し過保護じゃないか?」
「これから何が起こるにせよ、それは子供の教育にはよくないことです」
少し非難するような調子のオビ=ワンにヴェイダーは軽く言い返すと改めてクローン・トルーパーたちの方を見た。
せっかく得た地の利を無くし、さらには数でも……おそらく質でも、ライダーの軍勢には負けている。
しかし、それで諦めるような者たちでないことを、ヴェイダーは良く知っていた。
そしてレックスもまた。
「501大隊、201突撃大隊、ショックトルーパー……勢揃いだな。レックス、知己と会ってこなくていいのか?」
「……出来ることなら。しかし、今は敵です」
静かに答えるレックス。
この割り切りのよさは兵士ならではだ。
オビ=ワンは難しい顔でレックスに声をかける。
「それで、彼らは諦めるだろうか?」
「有り得ませんね。坐して死を待つならば、戦って死ぬことを選ぶでしょう。……まして、この状況、むしろ興奮しますね」
レックスがマスクの下で獰猛に笑むのが見えたようで、ヴェイダーもマスクの下で笑み返す。
そんな二人に、一つ息を吐くオビ=ワン。
何となく、いつもの空気の三人だが、そこに声をかける者がいた。
「……まったく、とんだロマンチズムだ。……反吐が出る」
「……キリツグ?」
それは衛宮切嗣だった。
いつもの如くムッツリした顔によれたスーツとコートだが、この砂漠では目立ってしようがない。
さらに狙撃銃を肩に担いでいるのだから、もう言うこと無しだ。
「キリツグ。貴様、狙撃しようとしてこの結界とやらに巻き込まれたな」
「……正解だ。クソ、砂漠用の装備なんか用意してないぞ」
平静を保とうとしているキリツグだが、心の底から不機嫌であることがフォースで分かる。
幾らなんでもこの状況で孤立していたら命が危ないので、皆の注意がライダーの軍勢とクローン・トルーパーに 向いている間にこちらに合流しておこうという判断だろう。
「キリツグ!」
「アイリ、無事なようだね」
駆け寄ってきた愛妻を抱き留めつつ、切嗣は集結するクローンたちを眺めていた。
「アインツベルン、その男は?」
それを目ざとく見つけたケイネスが二人を睨み付ける。
特に、狙撃銃を忌々しげに見ている。
「僕はアインツベルンに雇われた傭兵さ。彼女のサポートが役目だ」
「ッ! 魔術師の戦いにそんな物を持ち込む輩を、アインツベルンが引き入れたと言うのか? ……いや、今更か。どうやら聖杯戦争は私が思っていた物とはまるで違うらしい」
一応本当ではあるが、大切な部分に触れない言葉を吐く切嗣に激昂しかけるケイネスだが、すでに状況は自分の理解の範疇を超えていると理解し、すぐに冷静になる。
切嗣としては、この場でケイネスらを射殺したいところだが、ヴェイダーがどう出るか未知数だ。
歯がゆいが成り行きに任せるしかないと割り切ろうとする。
「……それで、ヴェイダー。彼らは戦うと言うの? ……死ぬために?」
そう問うアイリスフィールが見つめる先では、クローン・トルーパーたちが集結していた。
「死ぬため、というのは語弊があります。……我々にとって、戦うことは生きることと同義です。つまり、生きるために戦うのです」
「……そう、そうかもね」
クローンなりの信義を語るレックスに、アイリスフィールは彼女なりに納得したようだった。
何故なら、彼女もまた聖杯になるために生み出されたのだから。
切嗣は変わらぬ無表情だったが、その心の内で激しい怒りが渦巻いているのをジェダイたちは感じ取っていた。
「この光景、ジオノーシスを思い出すな。今にも虫どもの羽音が聞こえてきそうだぜ」
「俺はライロスだな、メイス・ウインドウの下で戦ったんだ。見ろよ、アイツら! マジで動物に乗ってやがるぜ! まるでトワイレックだ!」
「敵が10で、こっちが1、いつもの通りだな! ブリキ野郎どもと古代の英雄様、何が違うか見てやろうぜ!」
「無駄話はお終いだ、お嬢さんたち! 総員、隊列を組め!」
レックスの言葉を証明するように、集結したクローン・トルーパーたちは戦意を衰えさせてはおらず、フォードーの号令に合わせて一つの生き物のように展開していく。
「意見具申! コマンダー、おそらくこちらに勝ち目はありません!」
「ではどうする? 尻尾巻いて逃げるか?」
「いいえ! 宝具の使用を求めます!」
フォードーのそばに並んだ兵士が、そう言うとフォードーは仕方がないと頷く。
マスターたる言峰綺礼からは、『あらゆる手段』を使って勝てと命令された。
『あらゆる』の中には宝具も含まれる。
「では、誰が『犠牲』になるかだが……」
「言いだしっぺの私が。覚悟はできています」
「自分も! 兄弟のために散れるなら本望です!」
そう言ってきたのは、『スリック』『ドグマ』と呼ばれるクローンたちだ。
さらに何人かのクローンたちが二人の周りに集まる。
「……分かった。また会おう、兄弟たち!」
「……今度は裏切らずに済みました。では、ご武運を!」
「命令に従うのが良い兵士。……しかしこれは自分の意志です!」
短く敬礼し合ってから、フォードーは宝具を発動する。
「
すると、スリックやドグマたちが光に分解されたかと思えば、光が二つに集まって大きく膨らむ。
そして、二機の乗り物へと姿を変えた。
一つは、巨大な昆虫を思わせる六本足と上部の砲台が特徴的な戦車のような物。
もう一つは、ずんぐりとしていて無骨だが、翼がある空飛ぶ乗り物。
全地形対応戦術攻撃兵器ことAT-TEと、低空強襲トランスポートことガンシップと呼ばれる、いずれもクローン大戦で兵士たちが乗り込んでいた兵器である。
これこそが、クローン・トルーパーの共用宝具にして奥の手、
数名のクローンの代わりに、この二機を呼び出す宝具である。
何人かの兵士たちが素早く兵器に乗り込み起動する。
この二機があってなお、戦局は極めて厳しいが、クローンたちに諦めはない。
その姿を見て、馬上のライダーは惜しそうな顔をする。
「ふむ、そのような手も持っていたか。どうだ? 今からでも余の軍門に下らんか?」
「答えは分かっているはず」
「そうか」
短いフォードーの答えに、ライダーも頷く。
もはや言葉は不要。
「蹂躙せよ!!」
征服王の咆哮に、兵たちは雄叫びを上げて突撃を開始する。
フォードーは、かつて仕えたジェダイの真似をして部下たちに檄を飛ばす。
「我らはその他大勢、ジェダイの添え物。しかし名も無く名誉も無くとも、我らにも誇りがあり魂がある!! フォースと共にあらんことを!! ……攻撃開始!!」
歴史に名を残す英雄たちと、銀河の名も無き英雄たちの戦いが始まった。
AT-TEとガンシップは、いわば戦車と戦闘ヘリ、普通なら歩兵キラーなんですが相手が英霊集団なのでそう簡単にはいきません。
しかし、話が進まない。