ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。   作:投稿参謀

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聖杯問答が、始まらない件。


急に押しかけたあげく、勝手に飲み会を開く征服王

 アイツベルンの城の上空に居座るインペリアル級スター・デストイヤー、『デヴァステーター』の艦橋で、とある帝国軍人は己の任務について思いを馳せていた。

 

 何故、仮にも帝国軍の精鋭たる自分たちが、こんな銀河の端も端の蛮境の地にまでやってこなければならなかったのか?

 豊かな生態系は驚くべき物があるが、産出される鉱物もありふれた物ばかり。

 文明や科学は未発達で、自力で星系の外にも出ることが出来ないばかりか、星単位で統一された政府も無く馬鹿みたいな数の国に分かれている原始的な星に。

 

 もちろんシスの暗黒卿ダース・ヴェイダーの息子を救出するためである。

 

 それは分かっている。だが、何故死の小艦隊総出で来なけりゃならなかったのか?

 無論、彼とて模範的な一軍人として拉致された子供を助けることに異論は無い。

 

 しかし、いくらなんでもオーバー過ぎやしないか?

 

 そもそも、こんな未開の星の住人が、どうやって『あの』ダース・ヴェイダーの目を盗んでコルサントから人一人を拉致したのか?

 

 皇帝やヴェイダーの考えが読めないのはいつものことだが、今回は飛び切りだ。

 

 そして今現在、何よりも彼を悩ませているのは……。

 

「おおおお! こいつは凄い! のうヴェイダーよ、この戦船を貰うワケにはいかんか! 是非欲しい!」

「ライダーよ、それはいくらなんでも不躾が過ぎるぞ。しかし、確かに凄まじいものだ……」

「ふん! やはり雑種よな! この程度の船に大喜びとは、程度が知れる」

「おう、アーチャーよ! そこまで言うからには、この戦船に匹敵する船を持っておるのだろうな!」

「……近い物なら持っている」

 

 軍人には理解できないことを言い合う、赤いマントの偉丈夫に、青い衣装の金髪美女。そして眩しい黄金の鎧の青年という仮装行列のような恰好の三人。

 

「こんな質量が空に浮かんで光より速く飛ぶだと? 火力に至っては世界を焼き尽くすだと!? 馬鹿げてる! ……いや、魔術でも理屈の上では同じことが可能だ。……果たして、どれだけの才覚を持った魔術師が、どれだけの研鑽を積み、どれだけの時間と労力をつぎ込めば可能かは、予想も付かないが……とにかく、可能なはずだ」

「それは実質不可能と言っているような物じゃないか!! その上、これと同じ船が何百隻もあるなんて……」

「…………」

 

 何やらショックを受けているらしい、青い服で金髪をオールバックにした男と、オカッパ頭の女顔の少年。

 

 ……現在、帝国の軍人を悩ませているのは、何で誉れあるこの艦にこんなワケの分からない連中が乗り込んでいるのかということだった。

 

  *  *  *

 

 それを説明するために、時間はいくらか遡る。

 

 ヴェイダーとオビ=ワンがアインツベルンの城の城門前まで行くと、そこにいたのは二頭の牛に引かれた豪奢な戦車だった。

 あのライダー……イスカンダルの宝具だ。

 

 案の定、赤い髪の偉丈夫と、オドオドとしている少年が乗っていた。

 しかしながらライダーは鎧ではなく、ゲームのロゴがプリントされたTシャツとジーンズというラフな格好の上、酒樽を担いでいる。

 

 その周りをすでにストームトルーパーやAT-STが取り囲み、銃口を向けている。

 しかしながらライダーはニッと笑うとヴェイダーに向けて手を挙げた。

 

「よっ! ヴェイダー!」

「貴様か……」

「城を構えておると聞いて来てみれば……まさか軍勢までいるとはな!」

 

 豪放に笑うライダー。

 しかし、マスターの少年、ウェイバー・ベルベットはそうはいかない。

 無数の銃口に怯えつつ、相方の無茶にツッコむことも忘れて叫ぶ。

 

「何だよコレぇ、何なんだよコイツ等ぁ! て言うか『アレ』はいったい何なんだよぉ!!」

 

 城の上空にデェェェェェンと鎮座しているスター・デストロイヤーを見て、ウェイバーは混乱しているようだ。まあ仕方がない。

 

「落ち着け坊主」

 

 そんなマスターを諌め、ライダーはヴェイダーに問う。

 

「ま、確かに気にはなる。あの船にしてもこの軍勢にしても、明らかに聖杯戦争の域を超えておる」

「それは私も気になるな」

 

 と、森の中から二つの影が現れた。

 青い衣装に白銀の鎧と金髪碧眼の女神の如き美貌の女騎士、ランサーと、そのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトだ。

 怪訝そうなヴェイダーたちにライダーが笑いながら説明する。

 

「余が誘ったのだ! 剣を交えるばかりが戦ではあるまい。これだけの英霊が揃っておるのだ、聖杯にいかなる望みを託すのか、それが分かれば自ずと英霊としての格も分かろうというもの! 酒でも飲み交わしながら聖杯問答と洒落込もうではないか!」

「だからと言って何故、この城に……」

 

 呆れるヴェイダー。

 今度はケイネスがしかめ面のまま説明を始めた。

 

「聖杯問答とやらはともかく、貴様らには色々と聞きたいことがあるからな」

 

 まあそれも当然かとヴェイダーは考える。

 色々と派手に動きすぎた。

 しかし答える義理はない。

 

「無論、ことわ……」

「いや、いいじゃないか。一つ、問答といこう」

 

 ライトセイバーを抜こうとするヴェイダーの手を静観していたオビ=ワンが押さえた。

 

「オビ=ワン?」

「……そもそもキリツグたちを無事に連れて帰るのなら、戦いを回避するのが最善手だ。そのためには話し合いが必要だとは思わないか?」

『正気か!? 敵をわざわざ自分の陣地に入れるなんて、どうかしてる!!』

 

 往年のジェダイらしい意見のオビ=ワン。一方、何処かでこちらを監視しているらしい切嗣は承服しかねるようで念話を飛ばしてくる。

 ヴェイダーは少し考えた後で客人たちの方を見た。

 

「…………よかろう。だが、このオビ=ワンも同席させたい」

「別に構わんが、その男は?」

「私の師だ」

 

 ヴェイダーの答えに、ライダーは少し驚いたような顔をする。

 

「師? ううむ、やはり貴様は色々と規格外らしいな」

「それはこちらの台詞だ。で、招待客はこれで全部か?」

「いや、後は……」

「ハッ! いかにも害虫と雑種の巣らしい、汚らわしい場所よ!」

 

 突然、眩い黄金の光が顕現する。

 あの黄金のサーヴァント……アーチャーだ。

 

「こいつも貴様が誘ったのか?」

「おう! 町で見かけたのでな!」

 

 思わず息を吐くヴェイダー。

 何処まで勝手なのか、この征服王。

 

「おうおうアーチャーよ! 貴様のマスターはこなかったのか?」

「アレは穴熊を決め込んでいる。まったく、面白みの無いことよ」

 

 征服王が問うと、アーチャーはつまらなそうに鼻を鳴らした。

 オビ=ワンは黄金の王から感じる、この面子の中でも頭一つ抜けているフォースに驚愕していた。

 

「あれが例の金ピカか……確かに凄まじいな」

「人格の方も、相応に凄まじいので気を付けて」

 

 小さな声で話すオビ=ワンとヴェイダー。

 それに気付いているのかいないのか、アーチャーは終始不機嫌そうな顔を崩さない。

 と、新たな影が姿を現した。

 

「その問答、我々も参加しても?」

 

 それは、白地に赤いラインの入った装甲服にT字型バイザーの目立つヘルメット、コートの裾のような物が付いた腰巻という恰好の兵士だった。

 

 アサシンことクローン・トルーパーだ。

 その中でも精鋭ARC・トルーパーのコマンダーであることを、その装備品からヴェイダーとオビ=ワンは察していた。

 

 新たな来訪者に最初に反応したのはランサーだ。

 

「貴公はアサシンか。暗殺者が堂々と姿を現すとは……」

「そうは申しますが、私も一応は英霊の末席に名を連ねる身。是非とも問答に参加させていただきたく存じます」

 

 慇懃な調子で頭を下げるトルーパーだが、もちろん、こうして現れたのは遠坂時臣と言峰璃正の策である。

 先刻のハイアットホテルでの一件でアインツベルン陣営を警戒している彼らだが、そうなるとやはり情報が欲しい。

 しかし自分たちが直に接触するのはリスクが高い。

 そこに英雄王からライダーに誘われた旨を告げられ、これ幸いにとトルーパーを紛れ込ませることにしたのだ。

 ここまでは時臣の計画通りだ。

 

 ……城の外に師の待機命令を無視して潜んでいる言峰綺礼を除いては、だが。

 

「とりあえず、移動するぞ。城の中の部屋ででも……」

「いや待て、ヴェイダー。その前に、どうしても聞いておかねばならぬことがある」

 

 さしあたっては客人をもてなそうとするヴェイダーだったが、そこでライダーがらしくもない真面目くさった顔で言った。

 

「まず、あの船に乗せてはもらえんか?」

 

  *  *  *

 

 そして時間は現在。

 

 ヴェイダーの案内でデヴァステーターを案内された一同の反応は様々だ。

 

 ひたすら楽しそうなライダー。

 

 何やら考え込んでいるランサーとケイネス、ウェイバー。

 

 分かり辛いが動揺しているらしいアサシン。

 

 そして嫌悪感を隠そうともしないアーチャー。

 

 彼らを艦に連れ込んだのは、こちらの科学技術や戦力の一端を見せることで、敵の戦意を削ぐと言う狙いがあったのだが、果たしてどこまで上手くいったものやら……。

 

 そして、彼等は改めて城の中庭に集まっていた。

 城の中の適当な部屋に通そうかと思ったが、ライダーが庭でいいと言ったからだ。

 

 ライダー、アーチャー、ランサーの三人の王が輪になるように地面に座り、ヴェイダーとオビ=ワンがそこから一歩引いた場所に並んで腰掛ける。

 アサシンことクローンコマンダーのフォードーはさらに少し下がった場所に立っていた。

 アイリスフィールとウェイバー、ケイネスはさらに離れた場所に思い思いの座り方をしている。

 中庭の外周にはストームトルーパーたちがブラスターを手に並んでいた。

 ちなみにルークは寝かし付けられ、切嗣、舞弥は城の中に潜んでいる。

 

 ……そして言峰綺礼は、城外で侵入の機会をうかがっていた。

 

「さてと……」

 

 ドッカリと胡坐をかいたライダーが、持参した酒樽の蓋を拳で叩き割り、柄杓で中の酒をすくう。

 

「では、まずは一献!」

 

 こうして、英雄たちが語り合う聖杯問答が始まった。

 




何か、参加者が増えました。

各陣営の思惑

ケイネス:「アインツベルン陣営の情報が超欲しい!」→「聖杯問答? 渡りに舟だがランサーに腹芸が出来るかは微妙だし、自分の目でも見ておきたいから私も行くか」

時臣  :「アインツベルン陣営の情報が超欲しい!」→「聖杯問答? 英雄王が情報持って帰ってくれるとは思えないし、アサシンに行ってもらおう!」

臓硯  :「アインツベルン陣営の情報が超欲しい!」→「聖杯問答? でもバーサーカーが暴走して他のサーヴァントに袋叩きにあったらアレだし、雁夜に腹芸は出来ないだろうし、今回は見送りじゃ畜生!」

綺礼  :「アインツベルン陣営の情報とか、正直どうでもいいから衛宮切嗣に会いたい」

切嗣  :「聖杯問答とか、馬鹿じゃないの? 話し合いじゃ何も解決しないよ」

こんな感じ。

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