ジェダイの騎士が第四次聖杯戦争に現れたようですが……。   作:投稿参謀

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明けましておめでとうございます。


ドロイド式、蛸の丸焼き

 今や地獄と化した冬木ハイアットホテル。そのパーティーホール。

 何とか海魔から逃れた人々は、ここに集まっていた。

 

 実際にはランサーをおびき寄せる餌とするために、意図的にキャスターがここに誘導したのだが。

 

 その中に、奇妙な一団がいた。

 クールな印象の黒髪の美女が、意識を失っている金髪と青い目の四歳くらいの男の子を抱え、青くて丸っこい機械が傍にいる。

 

 言わずと知れた久宇舞弥、ルーク・スカイウォーカー、そしてドロイドのR2-D2だ。

 

 二人と一体は、舞弥のお気に入りのケーキバイキングを堪能するためにここに来て、事件に巻き込まれたのである。

 

 異常を察知するや、舞弥はルークに薬品を嗅がせて意識を失わせ、抱えてここまでやってきたのだ。

 泣き叫ばれると困ると言う他に、ルークにトラウマを与えたくなかったからだ。

 残念ながら海魔の展開が早く脱出することは出来なかったが、舞弥はそこまで悲観していなかった。

 この場で最優先すべきはルークの安全、ただ一つ。

 そして、切嗣がこの状況を知れば、令呪を使ってルークを転移させるだろう。

 

 それまで、彼を守ればいい。

 自分は死ぬかもしれないが、それだけだ。この場では最小の被害だろう。

 ……他の人々の生死は、最初から考えていない。

 

 冷徹とも言える思考を回す舞弥に対し、R2は部屋の机を押して部屋の出入り口である扉の前まで持っていく。

 

「R2、何をしているのです?」

 

 思わず、舞弥は問うてしまう。

 ピキャピキャと、電子音で答えるR2。

 もちろん、舞弥にその内容は分からない。

 いや、おそらくバリケードを作ろうとしているのは分かるのだが。

 

「……あなたは、ここにいる人間たちを守ろうとでも言うのですか?」

 

 思わず出た言葉に、R2は肯定するように電子音を鳴らす。

 

「………………」

 

 ルークを守るため、なら分かる。

 だが、この小さなアストロメイクドロイドは、この状況でも他者の生命を守ることを諦めてはいなかった。

 それを単に機械のプログラムに従っているだけと断じることは簡単だが、それだけとは舞弥には思えなかった。

 

「いや、この場で考えるべきことではありませんね」

 

 一人ごちてから、ルークを床に寝かせR2を手伝って家具を扉の前に置く舞弥。

 そのまま、後ろの一般人たちに声を懸ける。

 

「申し訳ありませんが、誰か手伝ってはくれないでしょうか? 生き残りたいでしょう?」

 

  *  *  *

 

 

 衛宮切嗣は、ハイアットホテル近くのビルの屋上にいた。

 切嗣はキャスターによる冬木ハイアットホテル襲撃を知ってとき、幸運だと考えた。

 ホテルにはランサー陣営を撃破するための仕掛けが施してあり、上手くすればキャスターとランサーを纏めて片付けられる。

 

 各陣営の動きが鈍いのは、この真昼間の衆人環視の中で下手を打てば、神秘の秘匿を怠ったとしてキャスター共々討伐対象にされかねないからというのもあるが、切嗣の策は単純な爆弾によるもの、その心配はない。

 

 しかし、そこにルークたちが巻き込まれたと知ると、少々の計画変更をすることにした。

 もったいないが、令呪を使いルークを転移させ、しかる後にホテルを爆破する。

 

 舞弥を失うことになるが、仕方がない。

 葛藤がないワケではないが、幸か不幸か切嗣は自分の感情と行動を切り離すことが出来た。

 少なくとも、この時の切嗣はそう考えていた。

 

 が。

 

「キリツグ、令呪はまだ使うな」

 

 いつの間にか現れていたシスの暗黒卿がそれを止めた。

 息子を溺愛している彼らしくない言葉に、僅かに切嗣は顔をしかめる。

 だが、話すことなどないと令呪を使おうとしたところで……喉元にライトセイバーが突きつけられた。

 

「令呪を使えば、ルークを呼べるのだろう。しかしそうなれば、R2とマイヤを失うことになる」

「……舞弥には自力で脱出してもらう」

「嘘を吐くな。貴様がホテルに施した仕掛けに気付かんとでも思ったか」

 

 切嗣はさらに顔を厳しくする。

 

「この場での最適解だ。それとも息子を見捨てる気か?」

「いいや。だが、まずは生存者全員を救出する策を練り、万策尽きてから令呪を使うのが道理だ」

「甘いな……」

 

 ヴェイダーは、切嗣の襟首を掴んで自分に引き寄せる。

 

「たった二画しかない令呪をここで使うか? そうなれば、後はルークを自害させることしか出来なくなるぞ?」

「何のことだ?」

「惚けるな。願いを叶えるためには、聖杯にサーヴァント七騎分の魂を捧げなければならんのだろう? ……無論、ルークの魂も。しかし私がそれをさせない。つまり、貴様が聖杯を使うためには、二画目の令呪を使って私を始末し、さらに三画目でルークを自害させなければならない」

「ッ……!」

 

 どこまで知っているのか、この男は。

 内心で歯噛みする切嗣だが、ヴェイダーの言う通り、もう令呪の一角も無駄には出来ない。

 キャスターを討伐し、追加の礼呪をもらえれば話しは別だが、確実性には欠ける。

 

「何故そうまで令呪を使わせようとしない? 君にとって息子は何としてでも助け出したい存在のはずだ」

「息子に、R2やマイヤを犠牲にして自分だけ助かった、などと言う重荷を背負わせたくないからだ」

 

 切嗣の言葉に、ヴェイダーは平時と変わらぬ低い声で答えた。

 あまりにも甘っちょろい答えに、切嗣は怒りを禁じえない。

 

「なら、どうするつもりだ? 君が行って暴れるつもりか?」

「それもいい、だがそれだけではない」

 

 ヴェイダーが空を見上げる。

 つられて切嗣も見上げれば、空の彼方から何かが飛んでくる。

 

 飛行機のような……しかし、切嗣の知るどの飛行機とも違うシルエット。それが数機飛んでくる。

 さらにその後ろから、まるでSF映画に出てくる宇宙船のような飛行物体が、下に二本の足を持った奇妙な機械をぶら下げて続く。

 

「何だ、アレは……?」

「援軍だ」

 

 正体不明の機体の内の一機が二人のいるビルに近づいてきたかと思うと空中に静止し、コクピットと思われる部分の下にあるハッチを開いた。

 まるで、迎えに来たとでも言う風に。

 

「ではキリツグ、私は行く。令呪は最後の手段にしておけ」

 

 それだけ言うと、ヴェイダーはハッチに飛び乗る。

 

「待てヴェイダー! お前は……お前たちはいったい何なんだ!」

 

 叫ぶ切嗣。さすがに、これがヴェイダーの宝具だなどとは思わない。

 ヴェイダーは少しだけ振り向いた。

 マスクの下の顔が、皮肉っぽく笑っているように切嗣には見えた。

 

「最初から言っているではないか。私はシスの暗黒卿、ダース・ヴェイダーだと」

 

  *  *  *

 

 扉の向こうで、海魔たちが蠢く音がする。

 バリケードを築いたとはいえ、長くは持たないだろう。

 舞弥はテーブルの影に隠れて銃を構える。もう、銃を隠す必要はないだろう。

 

「入ってくる……入ってくる……」

「お、終わりだ……」

「死にたくない、死にたくない……」

 

 部屋の端に集まった生存者たちは、ガタガタと震えている。

 舞弥は彼らを情けないとは思わない。

 こんな状況で冷静さを保っている自分の方が異常なのだ。

 

 しかし、彼らよりも全身からスタンガンやら何やら展開しているR2-D2の方が頼りになる。

 

 舞弥は自分の後ろで相変わらず眠っているルークに視線をやる。

 どんな夢を見ているのか、幸せそうな寝顔をしていた。

 地獄のようなこの状況で、あまりに呑気な顔なので舞弥は我知らず笑んでいた。

 

「大丈夫、あなたは私が守ります」

 

 切嗣が令呪を使うまでなら、自分一人の命で何とかなるだろう。

 と、外が騒がしくなる。

 

 多くの人間の声と……発砲音、だろうか?

 

 それがしばらく続いた後、おもむろに外か扉を叩く音と声が聞こえた。

 

「大丈夫か! 助けに来たぞ!!」

「た、助け……」

 

 助けと聞いて民間人の一人が立ち上がろうとするが、舞弥は警戒を崩さない。

 この状況で、救助など信用出来ない。

 情報を引出そうとした舞弥だが、その瞬間、天井が崩れた。

 

「な……!?」

 

 瓦礫と共に落ちてきたのは、今まで見たのよりも大きな海魔だった。

 大型海魔は触手をうねらせ、悲鳴を上げる人々を捕食しようとする。

 

 その時、R2-D2がジェット噴射して飛び上がり、大型海魔に体当たりをする。

 単純な攻撃ではあるが、結構な重さのあるR2のジェットでの突撃は効果があったらしく、海魔は悲鳴を上げて後ずさる。

 そのまま安全圏まで後退しようとするR2だが、海魔の触手が鋭く伸び、アストロメイクドロイドの丸っこい体に巻きついた。

 R2はスタンガンを触手に押し当てるも、効果は薄い。

 海魔はR2を飲み込もうと大口を開く。

 電子音の悲鳴を上げるR2を助けるべく、舞弥は拳銃で海魔の口を撃つ。

 対人用の拳銃では威力が足りないらしいが、全く効いていないワケではないようで、海魔は悲鳴を上げてR2を放してしまう。

 すかさずR2は内蔵された燃料を海魔に吹きかけ、さらにジェットの炎で引火させてやる。

 たちまち、炎に包まれる海魔。

 のた打ち回った末に動かなく海魔だが、天井に開いた穴からさらに別の海魔が現れ、舞弥に向け触手を伸ばした。

 咄嗟に逃げようとする舞弥だが……。

 気が付けば、後ろで寝ているルークを抱き抱えるようにして庇っていた。

 

 触手が、舞弥の背に迫る。

 

 その時、爆音と共にバリケードごと扉が吹き飛んだ。

 何らかの爆発物を使って扉を破壊したのだろう。

 

「攻撃開始! 野郎ども! あの、ダイアノーガの出来損ないをフライにしちまえ!!」

 

 煙の向こうから、無数の光弾が飛んできたかと思うと海魔に次々と命中する。

 悲鳴を上げて海魔は動かなくなり、やがて消滅していった。

 

 吹き飛んだ扉を潜って部屋に入ってきたのは、白い装甲服の兵士たちだった。

 

 舞弥は、その一団を見てアサシンを思い出す。

 しかし、サーヴァントではないようだ。

 

「敵影なし! クリア!」

「周囲を警戒しろ! 油断するな!」

「生存者確認!」

 

 兵士たちは統率のとれた動きで周囲を警戒している。

 

「皆さん! 助けにきました!」

「怪我人はいませんか? 気分の悪い人は?」

 

 何人かの兵士がそう言って、民間人たちを助けに向かう。

 人々はまるでSF映画か漫画に登場するような恰好の兵士たちに懐疑的な視線を向けるが、藁にも縋る思いで彼らに従う。

 舞弥は油断せずにルークを抱きしめていると、兵士たちの中から一人の男が近づいてきた。

 他の兵士たちと違う、青いラインの入った装甲服とT字型バイザーが余計にアサシンを思わせ、舞弥は警戒心を強める。

 

「ルーク坊ちゃん、R2、無事で良かった」

「……あなたは?」

「失礼、自分は帝国軍501大隊、コマンダーのレックス。スカイウォ……いやヴェイダー卿の部下です」

 

 綺麗な敬礼をする男……レックス。

 声からして、兵士たちに指示を飛ばしていたのは彼だろう。

 R2は嬉しそうにピキャピキャと電子音を鳴らす。

 

「R2、彼は味方なんですね?」

 

 何故だか、R2がそう言っているような気がして、舞弥はようやく警戒を解く。

 レックスは舞弥に向かって手を差し出す。

 

「坊ちゃんたちを守ってくれて、礼を言います」

「こちらこそ、助かりました」

 

 素直に礼を言い返し、舞弥はレックスの手を取るのだった。

 




去年末ですが、やっとローグ・ワン見ました。

ネタバレは避けますが、すごく良かったです。

って言うか去年末は、
人理焼却とかビーストとか、やっぱりFate勢ヤバいな。これSW勢勝てないんじゃねえ?
      ↓
ローグ・ワン視聴
      ↓
やっぱり帝国軍とヴェイダー卿ヤバいな。これなら戦えそうだ。

と、意識がコロコロ変わっておりました。

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