英雄の境界   作:みゅう

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第20話 煌めく瞳で◆

 山岳救助を主に得意とする四人一組のヒーロ-ユニット、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのメンバーである二人に捕まった俺たち。巡理くんによる解説を聞かされながらヒーローたちの待機所の内の一つ、プレハブ小屋へと向かい、中へと誘導された。

 

「休憩中で時間ないでしょ。食べながらでいいよ。私たちは先に食事済ませてるから気にせずにね」

「それじゃあ遠慮なく」

「お心遣いありがとうございます」

 

 金髪の女性の方、ピクシー・ボブにそう言われ、巡理くんはオレンジジュースに口をつける。そして巡理くんは箸を俺に渡したこ焼きを食べるよう促した。箸が一つしかないから交代で食べるしかない。ここは迅速に食べなければ。

 

「頂きます――――つっ?!」

 

 予想以上の熱さに思わず吹き出しそうになるのを、手で抑えて何とか堪える。おそらく出汁が効いていて美味しいのだと思うのだが、熱さが何よりも前へ前へと主張して来るため、俺はたこ焼きの味を正しく感じることができなかった。

 

「急ぎ過ぎだって。もう、火傷してない? ジュースで流したら?」

 

 ジュースを差し出して来る巡理くんを箸を持った手を前に出して拒否する。あのご主人が丹精込めて作ったたこ焼きをオレンジジュースの味で有耶無耶にしてしまうのは余りにも失礼だ。

 

 覆った手で隠すように口を開き、換気によって口内の冷却を試みる。すると鰹の香りと昆布の深みがじんわりと感じられるようになってきた。卵の味や具材の食感を邪魔しない絶妙な出汁のバランスはまさに傑作だ。うむ、確かに美味いな。あの店を選んで良かった。この味ならさっきの巡理くんもきっと満足してくれたはずだろう。

 

「交代では遅くなるだろうから、これを使うが良い」

「ありがとうございます」

 

 がっしりとした黒髪の方である虎に待機所に置いてあった割り箸を渡され、巡理くんも新たなたこ焼きに箸をつける。そして半分に割ってから、ふーふーと冷ました上で慎重に口に運んだ。目元の変化だけでも彼女が喜んでいることは充分にわかった。

 

「キティたち、食べながらで良いからそのまま聞いてね。今回の入場検査にウチのラグドールとマンダレイもメインで関わっているんだけど、会場の外に居る聖輪会(メビウス)が厄介みたいなのよ」

 

 先程の巡理くんの解説によれば確か、見た者の居場所も個性もまるわかりにしてしまうのがラグドール、テレパスで情報を一斉送信できる方がマンダレイ、だったか。成る程、これ以上の人選はないと言えるほどに入場検査の警備要員として最適な二人だ。それだけ雄英も厳戒態勢だという証明だろう。

 

 だが、厄介ごととは何事だろうか。巡理くんの眉がハの字になり、普段あまり見せない顔になる。しかしこの話題になると稀に見せる顔だ。彼女自身がこの話題を明らかに好まないことから避けがちだったため、この団体について持っている俺の知識はそう深いものではない。 

 

 宗教法人聖輪会、日本以外ではメビウスの名で知られているこの団体は巡理くんの母の異名であるエンドレスから名付けられている。無限にループするメビウスの輪は元来永遠の生命の象徴でもあるが、表も裏もないという輪の特性から連想させるもう一つの側面がある。

 

 

 

 『分け隔てなく人々は救われるべきであり、救うべきである』

 

 

 

 超常以前の時代からありがちな宗教観ではあるが、新興宗教団体の中でもその主張に特化しているのが聖輪会(メビウス)だ。相手の国籍、宗教、個性、社会的立場、そして過去の犯罪歴も含め、如何なる理由による差別もせず、裏も表も含めて人は救われるべきであり、救うべきであるというのがこの宗教の最大の主張だ。

 

 神のためではなく、自身が受けた恩、繋いでもらった生命に報いるために他者に尽くすべきであるというのが基本理念らしい。エンドレスが神と同一視されることもあるが、巡理くん曰く、全ての生命そのものを信仰の対象とする一派が優勢だそうだ。殺人と煙草は禁忌であるものの、その他の戒律は基本的に緩く、他宗教にもかなり寛容なのが特徴だ。

 

 災害時やホームレスへの炊き出し、貧民、元犯罪者やその家族への医療行為や福祉活動、医学生や孤児院への援助などが主な活動であり、その慈善事業に傾ける比率の歪さが度々取り上げられる宗教団体でもある。

 

 こういったことから聖輪会(メビウス)の主な支持母体は貧民街や犯罪歴のある者が多い治安の悪い地域や国に集中しており、比較的社会の安定している日本では発祥の地でありながらもかなり少ない。日本ではエンドレスの悪評が大きく、13年前の事件を起に、日本での治療行為がほとんど行われなかったのも影響していることもある。

 

 一部の医学関係者や元敵の権力者を除けば、政治力及び財力に乏しいこともこの団体の特徴でもある。その上で日本は世論の逆風と信者数の少なさという要素が重なって、巡理くんは肩身の狭い思いをせざるを得なかったようだ。

 

 こうして脳内で整理してみれば、主張にしても実際の行動にしてもかなり善良な宗教団体な気もするのだが、世間と俺との感覚はどうやら乖離しているらしい。でなければこの入試のときのような騒ぎも起こらなかっただろう。

 

 巡理くん自身があまり宗教と関わりたがっていない節が見受けられたので、信者たちと上手く行っていないのは充分察することができたが、一体外では何が起こっており、巡理くんにどのようなことこのプロヒーローたちは求められるてくるつもりなのだろうか。スタジアムで見た信者らしき人々はただ巡理くんを熱心に応援していているだけであり、特に何か問題を起こしていたわけではなかったようだが。

 

「身内がすみません。その……具体的には何をやらかしちゃってるんでしょうか?」

 

 軽く会釈した巡理くんが恐々と尋ねる。

 

「大問題ってほどじゃないんだけどねぇ。外で署名活動っぽいのしているみたいなのよ」

「これだけの賑わいであるからな。メビウスに限った話ではないが、ロビー活動の場とする輩は毎年居るが特に今年は、な」

「これだけ注目が集まっていますからね。入場検査に引っかった人々を相手にするだけでも例年以上の効果があるということですか」

「……すみません」 

 

 入場検査にかける時間も長いはずであり、マスコミの数も多いはずだ。確かに宣伝活動するには持って来いの状況なのだろう。

 

「君が謝ることじゃないよ。運営に直接関わっているわけじゃないんでしょ?」

「まぁ、そうなんですが」

「何も責めている訳ではない。スタッフたちへの差し入れからで申し訳ないが、冷めぬうちにこの焼き鳥も食すが良い。せっかくの縁日を回る時間を潰したのだ遠慮は要らぬ」

 

 巡理くんから発せられる言葉にいつものキレがない。憧れのヒーローを前に平身低頭で居なければならないのは辛いだろう。

 

 彼女はお礼を言って、差し出された牛串に手を付けた。俺も同じように礼を述べて豚バラの塩を口にした。胡椒がかなり効いていて冷めかけてはいるが、悪くはない味、率直に言えば普通の味だ。隣で牛肉を咀嚼する彼女を見る。巡理くんは「美味しいです」と言うが、どこかギコチない。

 

「ただ我らに助力して貰えると非常に助かるという、それだけの話だ。食べ終わってからで良い、少し時間をもらえないだろうか」

「先に言っておくけど、外の人たちも別に悪いことやっている訳じゃなさそうだから安心して。ただ、場所的にちょっとね。入場が滞っているところにメビウスとかのロビー活動組とそれ目当ての報道陣とか集まっちゃっててね。誘導とか手伝って貰えるとラグドールたちが楽になるってわけ。うーん、この鶏皮ブニブニのまんまだ。外れね。要る?」

「自分で食せ」

 

 ピクシーボブが食べかけの串を虎に渡すが、拒絶されたようだ。虎は黙々とササミ串を何本か続けて食べている。筋肉の維持のために淡白なものを好んでいるのだろうか。

 

「君は鶏皮好き?」

「好みというわけではありませんが、残すのも悪いですしそれなら俺が――」

「私、鶏皮大好きなんです。安くてコラーゲンたっぷりだからいつも買ってて! 頂きます!」

 

 呆気に取られたのも束の間。彼女はわずか二口で半分以上残っていた鶏皮を食べてしまった。

 

「ごちそう様でした!」

 

 ほぼ毎日自炊を頑張っている巡理くんは、安さ故によく購入する胸肉と鶏皮は食べ飽きたと言っていたはずだが、やはりプッシーキャッツから勧められたからなのだろう、少し無理している気がする。

 

 俺も豚バラを食べ終えると、巡理くんの真似をしてたこ焼きを一度半分に割って冷ましてから口に含む。大丈夫だ。今度はゆっくり味わおうとしていたとき、ポケットに入れていたスマートホンがバイブレーションする。この長さだと電話か。

 

「うわぁ、何?! き、君、急に震えてどうしたの?! お腹壊した?!」

「いえ、電話が鳴っていたもので」

「ぷ、電話って」

 

 画面を見れば八百万くんの名が表示されていた。伺いを立てて少々外に出るべきだろうか。

 

「天哉はいつもこうなんです。ヴヴヴヴーって、体ごと震えちゃって。ビックリしますよね」

「ねこねこねこ。うん、久々に受けた。面白いね、彼」

「電話ならここで出ても構わぬぞ」

「すみません、それでは失礼します」

 

 了解を得たのでその場で通話ボタンを押す。

 

「もしもし、八百万くん何かあったのか」

『何かって、飯田さん。今、猪地さんとお二人で外にいらっしゃいますよね』

 

 どうやら心配させてしまっていたらしい。リストバンドから発信されている位置情報で八百万くんが、俺たち二人が皆と違う場所にいることに気づいたのだろう。

 

「ああ、そうだ。八百万くんすまない、一言でも君に伝えておくべきだった。今、巡理くんや警備のプロヒーローの方々と一緒に昼食を摂っているところだ」

『そうですわ。副委員長なのですからしっかりしてくださいね。ですが、それよりもなぜそんなところにいらっしゃるのですか?』

「大きな問題ではなさそうなんだが、メビウス関連で巡理くんに協力してもらいたいことがあるらしくてな。相澤先生の許可を貰って縁日ゾーンに出ていた所だ。この後少しの間、入場検査の手伝いに行くことになっている」

『わかりましたわ。気をつけて下さいね。それでは私は応援合戦の準備がありますので失礼しますね。猪地さんに宜しくお伝えください』

「それではまた後で」

 

 声が途切れたのを確認した後、通話ボタンを切る。

 

「お待たせしました。どうやらクラスメイトが俺たち二人が外に居ることに気づいて心配したらしく、電話をしてくれたみたいです」

 

 プッシーキャッツの二人に事情を説明していると、急に真っ青な顔色になった巡理くんが大きな声を上げた。

 

「あー! そぎゃんだった。リストバンド! でも受信機ば持っとるとは――――――――もしもし、百ちゃん!」

 

 そして電光石火の勢いで、彼女は電話しながら部屋の外へと飛び出していった。

 

「キティ、言葉変わってない?」

「地元の言葉に戻るなんて。珍しいですね」

 

 最近の救助活動の体験談を聞きつつ、たこ焼きと焼き鳥を食べながら待つ。虎から勧められたササミは冷めてもふっくらしていて中々に美味だった。同じ焼鳥屋でも当たりハズレがあるものだな。

 

 そして待つこと三分弱、息を切らしながら巡理くんが部屋に戻ってきた。

 

「とりあえずジュースでもどうだ?」

「うん、ありがと」

 

 缶に残っていた分を仰ぐように一気飲みした彼女は乱雑に空き缶をテーブルに置いた。

 

「さっきは急にどうしたんだ?」

「ホントはちょっとした野暮用だけだったんだけど、峰田の馬鹿野郎が百ちゃんに良からぬことを吹き込んでてね。きっちり阻止して来たところ」

「峰田くんの名前が出てきた次点で嫌な予感しかしないのだが、彼の欲望関連だろうか」

 

 雄英の品位に関わる問題のため、この場では性欲という言葉は避けて発言する。それに大げさに頷いた彼女は言葉を続けた。

 

「そう。百ちゃんったらガードが甘いんだから。あの丸め込まれやすさはどうにかしないとね。いやその前にアイツを……」

「お疲れ様だったな。喋り疲れただろう。俺の分も飲むか?」

「うん、ちょーだい。あー生き返る」

 

 何やら不穏な言葉を呟き出した彼女に飲みさしのジュースを差し出す。今度はちびちびとゆっくり味わうようにして、巡理くんはオレンジジュースに口を付けた。

 

「あー、これが若さか」

「大丈夫か? 二人は我が誘導しておく間、休んではどうか?」

「いや、むしろ燃え上がってきた。これだけ人がいっぱい来ているんだもの、どこかにきっと素敵な出会いがあるはず! さぁそろそろ行くわよキティたち! 入場整理を華麗に決めるよ!」

 

 

 

 

 

           ×           ×

 

 

 

 

 入場口の人だかりはもの凄いことになっていた。体格の良い虎が先導してくれなかったら、ラグドールとマンダレイから最も空いているルートを教えてもらえなければ、警備用の腕章を借りただけの俺たちではすんなりと外に出ることは難しかっただろう。

 

「禁煙条例の強化の署名よろしくお願いしまーす!」

「死刑制度廃止に是非一筆を!」

「過労死を出したマルペケ食品産業に対しての再審要求の署名を!」

「医学生への奨学金へカンパお願いしまーす!」

 

 入場待ちで並んでいる人々へ積極的に声をかけている集団が多数いるのが見受けられた。

 

「入場口から離れたアッチでやってねとか、許可書貰ってからやってねとは言ってるんだけど、こうも次々湧いてきたら収集が付かなくてね。聖輪会(メビウス)だけが問題じゃないけれど、小さな市民団体とは話が違うしね」

 

 喜んで署名している人もいれば、迷惑そうにしている人、暇だからまぁいいかとビラを受け取る者など反応は様々だ。そして活動している側を見れば聖輪会所属の証であるメビウスの輪をモチーフにしたアクセサリーなどを身につけている人が、チラホラといた。

 

「ロビー活動は凄いことになっているが、少し俺の思っていた状況とは違うな」

「ウチの団体は実践ありきだからね。布教する暇と人手があるならボランティアやら募金活動に精を出せって感じだから」

 

 もっと直接的な布教活動、巡理くんやエンドレス関係に関する署名活動だと思っていたが、健康関連や福祉関連に力を注いでいるようだ。

 

「この感じだと、聖輪会(メビウス)本体だけじゃないね。他の団体が結構便乗してきてる。ほら、あそこはボードを持っているのはウチだけど声を掛けている男の人は“境界なき世界(ノーボーダー)”だ。人権屋ってこういう機会、絶対逃さないよね」

聖輪会(メビウス)の教義と人権団体、環境団体との親和性はかなり高いからな。声の大きさで争う連中にとっては格好の踏み台なのだろう」

「そうなんですよ。だから他のところにやらかされたときの巻き添えで悪評が絶えなくて……頭が痛い」

「巡理くんの責任ではないのだろう。君が落ち込む必要はないと思うぞ」

 

 何か励ましてやりたいが適切な言葉が見つからなくてもどかしい。当たり障りのない一言しか出てこなかった。

 

「そうそう。落ち込むことはないって――――そうだ!」

 

 ポンと手を合わせ、何かをひらめいた様子のピクシーボブが虎にコソコソ話をする。そして虎がサムズアップで快く返事をしていた。

 

 そしてその名案というのは、入場検査そのもので多忙なマンダレイとラグドールに代わって重要任務を俺たち二人にも任せるというものだ。ヒーローとしての仕事の内、個性に関わらないため免許も不要で俺たちが行っても問題のないものではあるが、現代ヒーローの象徴というべき仕事の一つ。まさか職業体験よりも早く、こんな機会が訪れるとは夢にも思っていなかった。

 

「その、本当に俺たちがやっていいんでしょうか?」

「怖じ気ついたか?」

「いいえ」

「ならばこれも何かの縁だ、前に立つ者としての在り方を我らから学び取れ!」

 

 首を横に振って否定する。そんな俺の肩を叩いて虎は先達としてのアドバイスをくれた。

 

「誘導業務なら、まずは聞いてもらえる環境作りからだもんね。だからまずは目立つのが第一ってわけ!」

「なるほど。俺たちにこうして実践教育して頂けると、ありがとうございます! 精一杯やらせて頂きます!」

「うむ、素直で大変よろしい」

「頑張ろうね。天哉!」

「勿論だ」

「さぁ、行くぞキティたち!」

「はいっ!」

 

 先陣を切って進む虎の後を追いかけ、入場列のちょうど中央部分あたりのスペースに陣取る。そしてピクシーボブに促された巡理くんが、大きく深呼吸した後、高らかに声を上げた。

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

 人々の視線が俺たちに集まる。次は俺だ!

 

「猫の手、手助けやって来る!!」

 

 背筋を真っ直ぐに。腹の底から声を出しきる。

 

「どこからともなくやって来る……」

 

 地の底から轟くような虎の声。これがヒーロー、これがカリスマか。

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

 プクシーボブの声を合図に、両手を伸ばした状態で腰をどっしりと下ろし、体側を右に曲げる。そして呼吸を合わせる。

 

「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!! (with T&M)」

 

 上手くポーズは決まっただろうか。体勢を維持したままの数秒間がやけに長く感じる。だがそんな不安は降り注いだ万雷の拍手によってかき消された。フラッシュが点滅し、シャッター音が次々と聞こえる。これは大変な仕事だな。

 

「初めてにしては上出来だ」

「さぁ、今だよ!」

 

 プロ二人に促された巡理くんが口元に両手をあてて大きな声を発した。

 

「みなさーん、聞いて下さい!」

 

 

 

 

 

 

           ×           ×

 

 

 

 

 巡理くんの誘導に素直に従いメビウスのメンバーたちが移動し出したことにより、他の団体も倣うように動き出した。こうして無事に入場整理が一旦の収集を見せた。

 

 予定より長引いてしまったため、プッシーキャッツを通して相澤先生に連絡をとり、昼休憩後にある最終種目のトーナメントの発表は欠席する運びになった。その後はトーナメントが開始する前にレクリエーションを挟むため、試合前には到着が間に合いそうだ。入試の日に助けた妊婦さんのご家族が客席に来ているらしく、しばしそちらに寄ったとしても充分に余裕があるだろう。

 

 プッシーキャッツの面々と別れ、遅刻のお詫びを兼ねて差し入れのジュースを縁日で仕入れながら巡理くんと共に会場に向かう。

 

 その途中、緑谷くんからトーナメントの写真が送られてきたのを巡理くんと二人で確認することになった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「私が第五試合、梅雨ちゃんとか」

「俺が第七で八百万くんとだな」

 

 八百万くんは強力な個性の持ち主だが、創造スピードがネックである彼女と俺の相性は悪くない。油断はできないが、勝てない相手ではないだろう。

 

「俺はどうにかなりそうだが、そっちはどうだ?」 

「純粋な白兵戦勝負になるね。跳躍力も舌の力も凄いけれど、まぁ戦いようはあるよ。轟くんか上鳴くんだと詰んでたから、ブロック単位で見ても分は悪くないかな。ただ緑谷くん側のブロックはえげつないことになってるみたいだね」

 

 確かに反対側のブロックでは先ほど例に挙げられた二人に加え、常闇くんや爆豪くん、塩崎くんなど俺たちとは少し相性的に厳しいことが予想される相手が多い。

 

「中・遠距離技の豊富なメンバーが固まっている分、苛烈な戦いになるだろうな。そして順当に行けば君と戦うのは準決勝か」

「だね。ちゃんと上がってきてよ? さっきの騎馬戦のリベンジするんだから」

 

 俺の胸元へ突き出された右拳。

 

「望むところだ。一対一で正々堂々とやろう」

 

 押し返すように、俺も右拳を重ね合わせた。

 

「うん!」

 

 

 

 




メビウス絡みは三章から掘り下げます。



【挿絵表示】

1-A チアーズ!
峰田の居ないところで皆で着ました。

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