あくまで冒険者やってます   作:よっしゅん

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何か文章書いてて自分でも何書いてるかわかんなくなってもうた…とりあえず投稿はしたけどぶっちゃけ後書きに書いてある4つのことを頭に入れとけば次の話はわかるのでこの話はなかったことにしてもまったく問題ありませんですはい…文章書くの下手で申し訳ないです


第1章 不死者の王
第4話


月と星の光がよく輝いて見える夜に岩場を歩く女の姿がある。

二本の剣を背負い長い銀髪を後ろで束ねてポニーテールにしている。

剣を背負っている姿から見ると誰もが剣士だと思うだろう。しかし、剣士にしては着ている防具がそれらしくはなかった。

鎧……と言うより普通の服に鎖帷子などを仕込んでいるだけの軽装である。レンジャーや盗賊などが好んで装備するものに近かった。オマケに下に関してはただのスカートに革でできたロングブーツを履いているだけであった。

剣で斬り付けられたらすぐに怪我をしてしまいそうだ。

だが剣士と言っても全身を鎧で固めるだけが能ではない。中には軽装を好み、受けを取るよりも回避に専念することだってある。

何も知らない者が見れば「戦いをバカにしてる」「ふざけている」などと言うだろう。

ともかくそんな格好をした女が一人夜の岩場を歩いていたのだ。

 

「………」

 

急に女はその場で屈み込み岩の表面に付着していた物を指で摘みそれを観察する。

一言で表すならそれは……鱗であった。何かの動物の鱗である。

確認したあとはその鱗を投げ捨てる。そして上を見上げる。

見上げた先には巨大な岩でできた壁があった。ただ上の方の壁にはぽっかり穴ができていて洞窟のような所になっている場所が確認できた。

すると女は魔法を唱える。そしてふわりと女の体が浮いた。

そしてそのまま洞窟まで浮かび始めた……が急にピタリと止まる。しばらく空中で停止したあと何故か女は浮くのをやめ足を地面につけた。

そしてこう言う。

 

「……登っていくのも悪くないかな」

 

そして今度は岩の壁の出っ張りなどを利用して上の洞窟目指して登り始める。要はロッククライミングだ。

ちなみに下から見上げればスカートの中身が見えるのだがそれを確認する者はここにはいない。

そして順調に登り2分ほどで洞窟についてしまった。

 

「ふぃー……」

 

女は汗もかいてないし息も途切れてはいないにも拘らず、腕で汗を拭い疲れた仕草をしたあと、そのまま洞窟の中へと歩き始めた。

洞窟の中はそれほど広くはなく、すぐに最深部らしき少し開けた場所にでた。

 

「………」

 

見た感じ何もいない……だが、女は何かしらの気配を感じていた。

足音を立てないように歩き出し周りを見渡しながら少しずつ開けた場所の中央に近づいていく。

そしてようやく中央にたどり着きそこからグルッと周りを見渡す。相変わらず特に変わったことはないただの洞窟だ。

だが女は背負っている二本の剣の内一本だけを右手で抜剣し構える。

 

「………」

 

だが何も起きない。それでも女は警戒を解かない

 

「………?」

 

ふと上から小さい何かが女の肩に当たる。……それは小石だった。

おそらく洞窟の天井の部分から落ちてきたのだろう。

 

「!!」

 

女は天井を見上げる……そこには。

 

「シャァァァァァァァァァ!!」

 

そこには巨大な蛇が天井に張り付いていて、口を大きく開けこちらを威嚇してきた。

そして蛇は天井から身体を離す。当然重力に従い女目掛けて落ちてくる。

蛇は女なんて余裕で一口で丸呑み出来るほどの大きさだ。当然そんな蛇に潰されでもしたらひとたまりもないだろう。

女は綺麗な前転を決めその場から回避する。

 

ドスン

と大きな音と共に洞窟全体が揺れる。蛇の下敷きにされた小石などが粉々になり砂埃を上げる。

 

「シャァァァァァァ!」

 

再び威嚇の声を上げた蛇は自分の長い尻尾の方で女を貫こうとする勢いで攻撃する。

戦うすべを知らない者だったらこの攻撃で命を落とすだろう。女はそんな攻撃を剣一つで捌いたり回避することで受け流していく。

蛇は尻尾を鞭のように振り回す。女はそれを受け流す。

そんな攻防をしばらく続けたあと、埒があかないと踏んだのか蛇は今度は女を丸呑みにしようと大きな口を開け突っ込んでいく。

 

「シャァァァァァァ!」

 

そのまま女をペロリと丸呑み……というわけにはいかなかった。

女は蛇が己の口の中に収めようとする前にジャンプをし、蛇の頭を踏んづけそのまま大きく跳躍して蛇の後ろの方に着地する。

ちなみにスカートでこんな動きをすると当然中が見えるのだが、あいにく中身は蛇しか知らない。

 

「アァァァァァァァァァ!」

 

すぐさま尻尾で再び攻撃をするが今度は受け流されることはなく、女の剣により尻尾の先を切り飛ばされてしまった。

 

「ギャアアアアアアアア!」

 

相当痛いのか悲鳴をあげてのたうち回る蛇。女の方はというと何故か微妙な顔をしていた。

 

「……思わず斬っちゃったけど大丈夫かな?…まぁ大丈夫だよね多分」

 

何故か蛇の心配をしていた。

 

「オァァァァァァァァァァ!!」

 

先ほどの威嚇の声とは比べものにならないほど殺意が篭った声をあげる。

そして女の方にすごいスピードで迫ってくる。もはや完全に頭にきているようで、食べようとはせずに殺すことだけを考えているようだ。

そのままの勢いで体当たりを仕掛けてくるが当然のように女はヒラリと身をかわしまた後ろに回りこむ。

蛇はというと思いっきり壁に激突したせいか少し弱って見える。

だがすぐに振り向き女を確認するとまた体当たりを仕掛けようとしている。

 

「そろそろ頃合いかな……《魔糸の拘束》」

 

女は魔法を唱える。すると体当たりを仕掛けていた蛇の周りに無数の糸が蛇に絡みつき始める。糸と言っても普通の糸ではなく魔法の糸だ。

この魔法は相手にバインド効果を与える魔法だ。相手がレジストに失敗したら術者が意図的に魔法を解くか、他の物に解いてもらうか、もしくは一度攻撃を受けるまで魔法から抜け出すことはできない。

もちろんこの場に女と蛇以外は誰もいない。そして女も剣を鞘に収めてもう攻撃を行うつもりはもうない様子。

つまり女が意図的に魔法を解かなければ蛇はずっとバインドされている状態というわけだ。

 

「ァァァァァァ…」

 

最初は拘束を解こうともがいていたが、無理だと察したのか大人しくなる蛇。

 

「さてさて……と」

 

女は腰に着けてたポーチから本と白い棒のような物……いわゆるチョークだ。その二つを取り出して本の付箋が貼られているページを開く。

ちなみにその本の表紙には「呪いに関する解き方と考察」とでかでかと書いてあった。この本は女がある呪術師の友人から譲り受けた物だが、本に書いてある内容はタイトル通りあらゆる呪いの解き方などが記されていた。そうとう使い古されてるのか結構ボロボロだが普通に読める。

ちなみに呪術師とは、呪いに関することに右に出るものはいないとされてる存在だ。

そんな本のあるページをしばらく凝視して、ようやく動き始めた。

手に持っていたチョークで蛇の周りをぐるーっと囲むように円を洞窟の地面に描き始めた。

 

「で……ここは……こんな感じか?」

 

本を見ながら円の中に次々と変な文字や形をチョークで描いていく。

要するに魔法陣を描いているのだ。

 

「よし、できた……と。あとはしばらく待つだけか」

 

本を閉じポーチにしまう。そしてその場で正座をし、目を瞑る。

眠っているように見えるが実際は瞑想をしてるだけだ。

何があるかわからないときはすぐに対処できるように瞑想しながら待つのが一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けるともう朝になってるらしく、洞窟の入口から太陽の光が差し込んでいた。

そして一番の変化は蛇だ。あんなにでかい蛇が跡形もなく消えていた。別に拘束魔法を解かれたわけではない。

ただ、蛇の代わりに魔法陣の上に裸で10代後半くらいの女の子が倒れていた。

実はあの蛇の正体はこの女の子であったのだ。

 

「良かった……ちゃんと五体満足で」

 

近寄って女の子の安否を確かめる。あの時蛇の尻尾を切り飛ばしたとき焦っていたのはこれだ。だがどこも怪我はなくしっかりと息をしていたのでその心配する必要はなくなった。

そして空中に手を伸ばし、手が消えたかと思うと今度は空中からシーツと共に手が現れた。

そのシーツを女の子に被せて巻く。これで裸よりはマシだろう。

 

「よいしょっと」

 

そのままお姫様だっこのように持ち上げ、来た道を戻り始めた。

ふと、女は何故こんなことになったのか思い返してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは日がそろそろ沈み始めた頃の夕暮れ時。女は当てもない旅をしている旅人だった。正確には目的はあるのだが旅をすることがその目的にも繋がるので旅をしているのである。

旅をしていると様々な出来事に会う。モンスターに襲われたり、金品目当ての盗賊に襲われたり、色んな人にあったり、新しい発見があったり色々だ。

女はそんな旅を嫌々してるわけではなくむしろ好んで旅をしていた。

そんな旅をしていると、小さな村が少し遠くの方に見えた。

だが、見えたのはそれだけじゃなかった。村の入口らしきところから何人かの人がぞろぞろと出てきたのだ。別に村からいつ誰が出ようが女には関係ないのだが……。

 

「もうすぐ日が暮れるというのに何事だ?」

 

日が暮れるということは夜が来るということだ。夜が来れば辺りは暗くなり怪物に襲われる危険性が増す。村のすぐ近くならまだ安全かもしれないが、今かすかに見える人たちはどんどん村から離れていく……しかも見つけてくださいと言わんばかりに火がついた松明を持って。

 

「まさか夜の危険性を知らないなんてことはないだろうし……一応忠告はしといてやるかな」

 

どの道この先に向かって進んでたのだ。何の問題もない。

やがて草むらで松明片手に何かを探している集団の下にたどり着き声をかける。

 

「やぁこんばんは。何をしているかは知らないが、そろそろ夜になるぞ……怪物や盗賊に酷い目に遭わせられる前に村に帰った方がいいと思うが?」

 

「あ、あんたは?」

 

話しかけられた村人らしき人が当然の疑問を聞いてくる。

 

「私はただの旅人さ。それよりお節介かもしれないが早く村に帰った方がいいぞ。それとも今この時間にこうして松明片手に草むらを掻き分けなければいけない理由でもあるのか?」

 

「あ、あぁ実は人探しをしてるんだ……」

 

「人探し……?」

 

「そうだ人探しさ。村の若い娘の1人が今日の朝急に居なくなっちまってね……黙って何処かに行くような子じゃないからこうしてみんなで心配して探してるのさ」

 

と、ご丁寧に説明してくれた。

 

「だが、まだ1日も経ってないのだろう? 確かに行方がわからないとなると不安かもしれないが……年頃の女の子なら色々事情があるのかもしれんぞ?」

 

朝からと言ってたのでまだ1日経ってないはずだ。それなのにこんな人数でこの時間帯に探してるとなると、その娘はよほど村にとって大事なのかもしれない。だが次の村人の言葉でそうではないと知った。

 

「確かにそうだが……今日の朝大きな音がしたから何事かとその娘の父親が娘の部屋を覗いたら誰もいなくて、部屋が滅茶苦茶になってたそうだ。これで何もないという訳にはいかないだろう?」

 

「……確かにただ事ではなさそうだな……だが、今日の捜索はそのへんにしておけ、本当に夜は危険だぞ」

 

「まぁ……昼から村の周りや村の中を探し回ったが見つからなかったからな……そうだな今日はこのへんにしておくか。おーい皆! いったん引きあげるぞ!」

 

その言葉に他の人も村に向かいはじめた。

 

「はぁ……これは冒険者組合にも依頼しないとダメそうだな……」

 

「……なぁ」

 

「ん?どうしたんだい美しい旅人さん」

 

「私も捜索手伝ってやろうか?」

 

「……え? そ、そりゃまたなんで」

 

「人手は多い方がいいだろう? それに困ってる時はお互い助け合うのが人間だと思わないかい?」

 

「間違ってはいないが……そこまで言うなら手伝って貰おうかな」

 

「決まりだな。まずその行方不明の娘の父親に会わせてくれないか?彼と話をしたい」

 

「あぁあいつなら村の中で探してるぞ。案内してやろう」

 

そしてその村人についていって村の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい。ギスト、お前にお客さんだ」

 

案内された先にいたのは大柄の男だった。

 

「……なんだ? こんな時に俺に客……? 一体誰なんだ?」

 

若干不機嫌そうに、そして疲れたような顔と声で出迎えてくれたのは件の父親だろう。

 

「やぁ初めまして。私は旅をしてるものだがどうやらお困りのご様子で……」

 

「あぁそうだよ……たった1人の娘が行方不明なんだ。これで困らなかったら親じゃねぇっての。妻なんかショックのあまり寝込んじまったよ」

 

「それは気の毒だな……」

 

「で? 俺になんか用かい? 嬢ちゃん」

 

「あぁ。その行方不明の娘さんの捜索を私も手伝おうかと思ってね」

 

「……ほんとか? それは助かるが何で見も知らぬ俺を助けてくれる?」

 

「案内してくれた奴にも言ったが、困ったらお互い助け合うのが人間だろう? ……まぁ実は言うとそれだけじゃないんだがな……」

 

「他にも理由があるのか?」

 

「簡単に言うとタダ働きはしない主義なんだ……だから娘さんを私が見つけたら少しばかり報酬をだな……」

 

意地汚いとか思われるが仕方がないことだ。旅をするのにもお金が要る。

 

「……嬢ちゃんは冒険者……ではなさそうだな」

 

父親…ギストが女の首元らへんを見つめる。この世界での冒険者は首からプレートを下げているためプレートの有無を確認したのだろう。

女はプレートがないため冒険者ではないと判断したのだ。

 

「冒険者じゃなきゃ報酬をねだってはいけないかな?」

 

「いやいや。そんなことはねぇけどよ……冒険者組合に依頼した時のために用意しといた依頼金で良ければそれを払うことはできるが……」

 

「それで構わない」

 

「そうか。ならよろしく頼むよ」

 

「あぁ。では早速情報を得たいから娘さんの部屋を見せてもらっても?」

 

「あぁいいぞ。俺の家はすぐそこだ」

 

指を刺した先にあるのは一見普通の民家だ。

 

「入口から入って左手にある部屋が娘の部屋だ。あと妻が寝てるが起こさないでやってくれ……俺はもう少しこの辺を探してから家に戻るよ」

 

「あぁわかった。ではまたあとで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは確かに酷いな」

 

例の行方不明の娘の部屋にやってきたわけだが、確かに酷い有様だった。木でできた椅子や机などの家具はバラバラに壊され、床にも壁にも新しくできたであろう穴や傷だらけだった。極め付けに壁の一部の面が跡形も無くなっていて大きな穴が開いていた。

 

「これは……何か巨大な物が壁をぶち破ったのか?しかも外から壊して部屋に入ったのではなく、中からぶち破って外にでてるな。壁の破片が外に飛んでいるから間違いないだろう」

 

大きな穴からは外が丸見えだった。

そして女は部屋の周りを歩きながら辺りを見回し始めた。

 

「妙だな……争った形跡がないな」

 

この状況からするに、何者かが娘を部屋から攫っていった……ということが推測できるが妙なことに血痕や抜け落ちた髪の毛、はたまた衣服の切れ端といった物がまったく部屋にはなかった。

 

「争ったならそういったものが普通残っているものなんだがな……娘は眠っているところを攫われた……もしくは抵抗せずに自分から付いてった……いや、そんなわけあるまい」

 

もし何者かが娘を攫う目的で来たのなら、こんな大きな証拠を残すはずがない。そもそもどうやって誰にも気づかれずに娘の部屋まで侵入したというのだろうか。仮に侵入が成功したというのならわざわざ壁をぶち破ってまで逃げていくことはしないだろう。

 

「もし誰かに気づかれて慌てて逃げたとしたら……いやそれもおかしいな……村人の話だと大きな音がしたあと娘が居なくなったというのなら、大きな音の原因は壁をぶち破った音だろうな」

 

そしてその音でようやく娘が部屋に居ないと気づいたのなら侵入者は何に慌てて逃げたというのだろうか。

 

「……矛盾だらけだな……もう少し調べてみるか」

 

そして再度部屋を調べ始めた。

そして部屋の隅で気になるものがあった。

 

「……? これはなんだ」

 

部屋の隅に木の破片が落ちていたがその下に何か紙が挟まっていた。

木の破片をどかして紙を取り出してみる。

 

「……驚いたな、これは呪いをかける為の魔法陣を描いたものだ。村娘が持つにしては奇妙な物だな」

 

紙に描かれていたのは魔法陣だった。しかも呪いをかける為には、呪いをかける対象の名前を魔法陣の中心に書いて、その魔法陣の中心に自分の血を垂らすだけで相手を呪えるという簡単な方法で厄介な呪いをかけられる類のものだった。

呪いと言っても様々な手口でかけることができるので、この魔法陣の呪いは簡単かつ厄介な呪いとして知られてる物だった。知られてると言っても呪術師の間でだ……少なくともこんな小さな村の娘が知っていることはないはずだが知る方法は幾らでもある。

例えば呪術師にやり方を聞く。もしくは呪いのことに関する書物などを読み知識を得ることだ。

 

「娘はどちらかの方法で呪いの方法を知ったのだろうな……」

 

魔法陣の紙のすぐ近くにメモのような物も見つけた。ざっと目を通したところ案の定呪いの方法が書いてあった。ご丁寧に呪いの効果まで書かれてあった。

 

「相手を蛇にする呪い……か」

 

どうやってこのメモを娘が手に入れたのかは流石にわからないが、これでようやく真相がわかった

 

「娘は誰かを呪おうと儀式を始めた。だが呪いをかけるのに失敗したのだな……魔法陣のスペルに間違ってるところがある」

 

呪いとは単純なところもあるが複雑なこともある。例えば呪いをかける手順を少しでも間違えるだけで呪いは効果を示さないことがある。または自分に呪いがかかってしまうこともある。

 

「どうやら娘は呪いをかけるのに失敗したようだな……しかもこの有様からするに呪いが自分に跳ね返ってしまったか」

 

娘は自分に呪いがかかり蛇になってしまい、恐らく理性を失ってしまいその場で暴れ出して壁をぶち破ってどこかへ行ってしまった。

それが女の推測だった。

 

「しかし…よほど相手を憎んでいたのか?随分大きいサイズになったらしいが」

 

こういう手の呪いは、呪いをかける相手にどう思ってるかで効果が変わる。憎しみが大きければ大きいほど呪いは強力かつ複雑になるのだ。

娘は相当でかいサイズの蛇になったのだろう。しかも理性を失うほど……つまりよほど大きな憎しみを持っていたということになる。

ともかく真相はわかったのでそれを父親に知らせようと部屋を出たところちょうど帰ってきたらしい。

 

「やぁお嬢さん。何かわかったか?」

 

「あぁ……実はだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というわけだ。まぁ必ずそうとは限らないが私からするとそうとしか思えないな」

 

「なんてこった……娘が蛇に……?」

 

「あぁしかも理性を失ってそこらにいる怪物と大差ないだろうな。このまま放っておいたら確実に悪さをするだろう」

 

「な、なら早く見つけてやらないと……! あ、でも……呪いなんて解けるのか?」

 

「安心しろ。私はその呪いを解くことができる」

 

「本当か!? なら必ず娘を救ってくれ! 頼む!」

 

「もちろんそのつもりだ……だがまずは見つけないことには始まらないな……」

 

蛇に足がついていたら足跡を追えばすぐに見つかるのだが、足がついていたら文字通り蛇足だろう。

大きい蛇なら地面を引きずった跡などが残ってればそれでも追えないことはないが、生憎この辺の土地は岩肌ばかりで跡すらも残っていなかった。

 

「いや待てよ……蛇なら鱗があるはずだ。運が良ければ岩肌に擦れて取れた鱗がくっついてるかもな……」

 

「じ、じゃあ明日の朝岩場の方をみんなで探そう!」

 

ギストがそう提案する。もう既に夜になっており今から探すのは無理であろう……だが、女はそういうわけにはいかなかった。

 

「できるならそうしたかったが、呪いが原因となるとそうはいかなくなったな。できるだけ早く呪いを解かないと呪いが定着して解除するのが難しくなるんだ……呪いにもよるが1日以上経つだけで悪化するようなこともあるからな」

 

「そ……そんな」

 

ギストの声が明らかに落胆した。

 

「そう気を落とすな。私が今から探してきてやる」

 

「え……でも、もう夜だぞ嬢ちゃん」

 

「少なくともあんた達よりは自己防衛の手段は知ってるさ。それに私は十数年間旅をしているが、怪物などに襲われたことは数え切れないほどある。だがこうして私は今ここにいるのだからそこらへんの雑魚にやられる程弱くはないさ」

 

「その剣は飾りじゃないってか嬢ちゃん……よし、なら俺も……」

 

「いや。親父さんは残っててくれ。正直言うと邪魔なんだ。怪物に襲われて絶対に守り抜く保証はないからな……それに」

 

「それに?」

 

「本当に娘さんが蛇になっていたとして、その娘さんに武器を向けられるか? あっちは遠慮なくこちらに襲いかかってくるぞ?」

 

「………」

 

言い返せないのか何も言わない。

 

「まぁそういうわけだ……親父さんは私と娘さんの無事を祈って待っててくれ」

 

「あぁ……そうさせてもらうよ」

 

「じゃあ私はそろそろ行くよ……もし私が明日の夕刻までに戻らなかったら予定通り冒険者組合に依頼を出しに行け。気の毒だがその時は娘さんを失うことも考えとくんだ」

 

「わかった……気をつけてな嬢ちゃん」

 

そのあとは岩場の方に出向き、幸運にも岩肌に鱗がくっついていたので後を追うことができたのだ。あとは冒頭の通りであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとう……この恩は絶対に忘れない……」

 

「こちらも無事に助けられてよかったよ。今は呪いの反動で気を失ってるがじき目を覚ますさ」

 

「ああ……嬢ちゃんが来てくれなかったらどうなってたことか。これも神のお導きかもしれないな」

 

「生憎私は神なんて信じない主義だが……まぁそういうことにしておこうか。さて、娘さんのことだが起きたらちゃんと話を聞いてやれ……呪いに手を出すほど苦しんでたんだからな」

 

「わかってるさ……多分だがこの前別れたって言ってた男が原因だろう……」

 

「そうか。では私は旅の続きをするとしよう」

 

もはやここにいる意味は既にないので女は村を出ようとする。

 

「あっ……嬢ちゃん!報酬忘れてるぞ!」

 

ギストが報酬の入った袋を手に持ち渡そうとしてくる。

 

「……実は気が変わってしまってな。たまにはタダ働きもいいかなと……その金は娘さんのために使うといい」

 

「えっ。で、でも……いや。そうだな……改めてありがとな嬢ちゃん」

 

「気にするな……では元気でな」

 

今度こそ村を出ようと再び歩を進めるがそれままたすぐに止められた……いや止まってしまったのだ

 

「……ああ! もしかしてあんた……あんたはあの有名な“銀狼”のレジス・エンリ・フォートレスじゃないか!?」

 

「!!」

 

村人の1人がそんな事を言い出す。その瞬間女の足が止まった

 

「い……いや。人違いでは……? わ、私はただの旅人で……」

 

「いや間違いない! 噂で聞いた通りだ! 銀色の長い髪に背中には二本の剣……そして美人!」

 

その言葉に他の人も喋り出す。

 

へーあれが噂に名高い銀狼……

俺筋肉ムキムキの男って聞いたんだが……

思ったより背が低いんだな……

でも胸はでかいな……

彼氏とかいるのかな?……

 

などと言った声が周りから聞こえる。

 

「っ! で、ではさらば!」

 

女はものすごいスピードで村を出て行ってしまった。

 

「おぉ……凄い速さで行っちまったな」

 

「にしても銀狼に助けてもらえたなんて幸運だったなギストよ」

 

「まさかあんな嬢ちゃんが……」

 

「なぁ? なんで銀狼なんて呼ばれてるんだ?」

 

「なんだ知らないのかお前? ……何年か前にエ・ランテルという街で怪物が突然大量発生したっていう事件があっただろう?」

 

「あぁあの原因が未だに不明の事件な。不思議と何人か怪我人も出たが死者は一切出なかったっていうやつだろ?」

 

「そうだ…そしてその事件をほとんど1人で解決したのが、なんとたまたまエ・ランテルにその時一時期滞在していた旅人らしいんだ」

 

「じ、じゃあその旅人ってもしかして……」

 

「レジス・エンリ・フォートレスという旅人さ…女の身でありながら驚異的な強さで街のあちこちを駆け回りながら怪物をほとんど1人で片付けちまったんだ。街を剣と魔法を駆使しながら怪物を倒すため駆け回る銀色の髪を持つ女をその内街のやつらは「エ・ランテルの英雄」「銀狼」と崇めたそうだ」

 

「剣と魔法……? 剣士でありながら魔法詠唱者なのか!?」

 

「そんな人がこの世の中にいるなんてな……もしかして神人だったりするんじゃねぇか?」

 

「ありえなくはないな……驚異的な強さにこの世のものとは思えないほどの美しさ……」

 

「なんかやけに男っぽい口調だったけどな……英雄ってみんなそうなのかな」

 

と、こんな会話が女が去った後の村で行われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……銀狼とかなんだよ……要らないよそんな厨二っぽい名前」

 

ため息を吐きながら歩いている女……その正体は村人の言った通りレジスであった。

 

「まぁ自業自得でもあるんだけどね……ははは」

 

エ・ランテルで起きた怪物大量発生事件……確かに解決したのはレジスだが、そもそも何故そんな事件が起きたのか……その原因はレジスにあった。

レジスはエ・ランテルで旅の疲れを取ろうととある宿屋で部屋を借りてのんびりしてたのだが、じっとしてるのも暇だったのでアイテムボックスの中身を整理でもするかと思ったのだ……この時こんな事を思わず、エ・ランテルで散歩でもしてればあんな事にはならなかったはずだった……。

 

「まさかアイテムを暴発させてしまうだなんて……」

 

アイテムボックスを整理していたらあるアイテムが目に留まったのだ。

そのアイテムとはレベル30程度しかないモンスターを発動した場所から無差別に100体ほど周りに召喚するといった課金ガチャのハズレアイテムの一つだった。

確かその月の生活費を殆ど使い込んで結局ハズレアイテムしか出なかった時に出たハズレアイテムだったのでよく覚えていた。

こんな使えないアイテムが500円……と過去の自分の愚行を思い出して、なんだか嫌な気分になったので無意識的にそのアイテムをぽいっと投げたのだ。そしたらなんとアイテムが床とぶつかったと同時にスイッチらしき物を押してしまったのかアイテムが発動してしまったのだ。

そこからはもう大変だった。

別に知らないやつが死んだりしても何とも思わないが、理由もなく大量虐殺をする趣味はないので仕方なしに自分でモンスター達を街を駆け回って全部倒したのだ。

そしたらいつの間にか英雄として崇められてしまった……大体こんな感じだった。

完全に自業自得であった。

 

「大体レベル30程度を100体倒しただけで英雄とか……ほんとこの世界のレベル低すぎだよ」

 

レジスがこの世界に来てカルネ村を助けてから実に15年ほどの年月が経っていた。その間殆ど旅などをしていてこの世界のことは大体わかってきてはいた。

まず当初思ってた通りこの世界の平均レベルは低かった。冒険者の例で表すと、1番強い冒険者はアダマンタイト級と呼ばれるが、そんな奴らでもレベル30行ってるか行ってないかぐらいの低さである。正確に相手のレベルを知る方法はないので憶測ではあるが……ごく稀にレベル80ほどのモンスターなどにも出くわしたことはあったが、レベル100のレジスにとっては強敵ではなかった。

そして一番の収穫は、この世界にも自分以外のプレイヤーがいるということだ。

この世界にまつわる話に13英雄の話などがあるが、おそらく英雄の正体はレジスと同じくユグドラシルのプレイヤーである可能性が高かった。確実な証拠はなく断言はできないが……。

だが、何年か前にある知り合いから「お前はもしかしたらぷれいやーの血を引いてるのかもな」と言われた事がある。血を引いてるも何もプレイヤー自身なんだが、その時は適当に相槌を打ってごまかした。

少なくともこの言葉で自分以外のプレイヤーがいた……もしくは今現在もいるということに確証が持てた。

 

「自分以外にもプレイヤーがこの世界に来ている……つまり」

 

つまり……レジスが所属していたギルドのギルド長であるモモンガもこの世界に来ているかもしれない。そんな仮説がレジスの中で生まれた。

今の所確かな情報はないが、それでもレジスはモモンガの情報が何かないかと旅をしながら何年もあちこちを探し回っていた。

 

「モモンガさん……俺はちゃんと貴方に、貴方に謝りたいです」

 

あの日モモンガとの約束を破ってしまったことをレジスはずっと後悔していた。もしモモンガがこの世界に来ているなら、どこにいようと必ず見つけ出して、土下座をして謝りたい……そんな気持ちがレジスを何年も旅を続けさせる活力になっていた。

レジスの旅の終点はモモンガを見つけ出すこと……ただそれだけであった。

 

「でも本当にモモンガさんいるのかな……この15年間他のプレイヤーに出くわした事はないから自信持てないし……」

 

他のプレイヤーの存在があるということはわかったが、実際に他のプレイヤーに出会ったことはなかった。もしかしたらこちらが気づいてなかっただけということもありえなくはないが、少なくともレジスには会った自覚は1度もなかった。

 

「まぁ他のプレイヤーなんてどうでもいいけどね……」

 

別に他のプレイヤーを見つけたところで、モモンガの居場所を知ってたりしない限りレジスにとってはどうでもいいのである。

 

「モモンガさん……はやく会いたいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どういうことだ!」

 

数百人が入っても余るような広さを持つまるで神殿の最深部と思わせるような場所にそんな声が響く。

声の出処は大きな玉座の前に立っている骸骨であった。

その骸骨はどうやら怒っているのか憤怒の込めた声をあげたがすぐに反響して消える。

そして今度はそんな骸骨の声に反応する別の声がした。

 

「どうかなさいましたか? ……モモンガ様」




なんか自分でも書いてて何を伝えたいのかよくわからなくなってきたから後書きに簡潔に書きます

⚪︎レジスはこの世界に来てから15年
⚪︎レジスはモモンガを探している
⚪︎モモンガを探しつつあちこちで困っている人を助けているレジス
⚪︎モモンガ様ようやく転移してきた

この4つさえ頭に入れとけば大丈夫なはずです多分…
それとこの話の最初にレジスが戦闘してるシーンから始まってますけど、それはレジスが、この世界ではモモンガを探す旅をしながら困っている人達を助けているという設定にしていることを知ってもらうために書いただけなのであまり気にしなくていいです。毎回やるわけではないのでご安心を

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この世界の強さの基準をレベルで表してる所を少し修正しました

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