あくまで冒険者やってます   作:よっしゅん

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この前やけに鮮明な夢、それも自分の執筆したオーバーロードの小説の夢を見たので、折角ならその時の内容を小説にしようと思いました。
なので本編とは関係なく、ぷれぷれぷれあです的なノリで見て頂けるのが良いかもです。


番外編
紅茶もいいけど、コーヒーもいいよね


 

 

 

 

 

「……それで消した部分に何か他の設定を入れようとして『モモンガを愛している』って書いちゃったんですか?」

 

「え、えぇまぁ……その、出来心というかですね……」

 

 申し訳なさそうに顔を俯かせるモモンガさん。

 

「……まぁタブラさんなら許してくれますよ、それよりモモンガさん」

 

「なんですか、レジスさん?」

 

 一呼吸置いてから続きを言葉にしていく。

 

「あなたの自宅用のパソコンにある、意味深なフォルダーには『黒髪ロングの巨乳の女の子』のいやらしい画像や動画が沢山入っているのでは?」

 

「えっ!? な、なんで知って……あ」

 

 やらかしたー、みたいな様子をするモモンガさん。

 今のは明らかに決定的な証言だ。

 

「ふっ、つまりはそういうことですよ。モモンガさん、あなたはアルベドの設定を書き換えた時、無意識的にこう思ったんですよ……『あぁ、こんな嫁が欲しいな』と。だから自分を愛してくれるような設定にしたんですよ!」

 

「ぐっ……! 薄々自分でも感じてたけど、改めて他人に言われるとめっちゃ恥ずかしい……!」

 

 骨の手でこれまた骨の顔を覆うモモンガさんだが、どうみてもギャグを通り越してシュールにしか感じない図だ。

 

「あー、どうせ全部消えて無くなるから……なんて思っちゃったけど、弄らなきゃよかったかなぁ……」

 

 愛が重いんだよなぁアルベド、と呟くモモンガさん。

 ……しかしアルベドの元の設定はビッチだったらしいのだが、それはそれでそのままにしといたら色々とマズイのではないかと思う。

 NPC達は自我を持ってこの世界では動いているが、その行動は基本的に設定に基づいた動きをしていることが多い。

 つまりアルベドが仮にビッチのままだったら……

 

「……まぁ良いんじゃないですか? 潔く嫁にでも何でもしちゃえば良いじゃないですか」

 

「えっ……け、けどそれは」

 

「まさか胸を触っただけでなく、揉みしだいたというのに責任を取らないつもりですか?」

 

「うっ……」

 

 そう、何を考えたのかこの骨、この世界にやってきた直後アルベドの胸を鷲掴みしたと言う。

 理由はどうあれ、これはもう責任を取らなければならない事案だ。

 

「というわけで、アルベド呼んできますね」

 

「え!? ち、ちちちょっとまってくださいレジスさん! はやまっちゃダメです!」

 

 席を立つレジスの鎧の装飾を掴みながら慌てて引き止めようとするモモンガ。

 しかしちょっとした動揺ならすぐに収まってしまうモモンガさんがここまで動揺するとは……そんなにアルベドを呼びに行かれるのが不安なのだろうか。

 

「いえ、もしアルベドがここに来たら問答無用で押し倒されそうな気がして……」

 

「ははは、流石にないですよそれは」

 

 お互いに他愛のない雑談をし笑い合う。

 これがどんなに待ち望んでいた光景だったかは言うまでもない。

 

「ふー……なんかお茶が欲しいですね、喉が乾いてるわけではないですが、こうも話が弾むと無性に欲しくなる……」

 

「それならメイドの誰かに持って来させましょうか」

 

「……メイドのNPCが意思を持って動いてるなんて聞いたら、あの三人はどんな反応するんですかね?」

 

「あぁ……多分半狂乱するのでは?」

 

 めちゃくちゃありそうだ。

 

「じゃあちょっと頼んできます」

 

 そう言って部屋の扉へと歩いていくレジス。

 

「魔法で私が呼びましょうか?」

 

「いえ、このくらい自分でやりますよ」

 

 そう言って部屋を出る。

 普段はモモンガの周りを警護している者がいるのだが、二人っきりでこうして雑談に花を咲かせたいという理由で今はこの部屋の一帯に人払いをしてしまっている。

 つまり部屋を出て誰か探さなくてはならないのだが……

 

「お、いたいた」

 

 廊下を曲がった先に誰かいた。

 あの黒髪のポニーテールは……確か戦闘メイドの一人のナーベラル・ガンマだ。

 ちょうど良い、彼女に頼むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナーベラル、少しいいか?」

 

「えっ……あ! レジス・エンリ・フォートレス様!? い、如何なされましたか?」

 

「あぁ……その前にフルネームで言わなくていいからな、レジスでいいから」

 

 ナーベラルはこの時少なからず動揺した。

 つい先日、ご帰還なされたレジス・エンリ・フォートレス様なのだが、なんとその偉大なる名前を省略しても良いという。

 本来なら偉大なる至高の御方のお名前を略すなどあり得ないのだが、アインズ様もまたそのお名前を略すことを許している。

 ということはレジス・エンリ・フォートレス様のお名前も大丈夫……なのだろうか?

 

「ナーベラル?」

 

「あっ、いえ! 畏まりました、レジス様」

 

 悩んだ末、レジス様とお呼びすることにした。

 

「……それで、私めに何かご入り用でしょうか? なんであろうと戦闘メイドとして、レジス様のご意向に恥じぬよう努めさせて頂きます」

 

「いや、そんな畏まらなくてもいいんだけど……まぁいいや、実はお茶が飲みたいんだ」

 

「お茶……でございますか?」

 

「あぁ、今モモ……アインズさんとこみ合った話をしてるんだけど、ちょっと何か飲み物が欲しいなって……だから悪いんだけど、誰でもいいから何か淹れてきてくれないか? 紅茶とかで良いから」

 

 ———瞬間、ナーベラルに電流が走った。

 

「お、お任せください! このナーベラル・ガンマ、命に代えても必ず成し遂げてみせます!」

 

「あ、あぁそうか……じゃあ頼むよ、俺は円卓の間にいるから。淹れ終わったら持ってきてくれ」

 

「はい!」

 

 あのポニーテールどうやって動いてるんだ……と言いながらレジス様は来た道を戻られた。

 

「や、やった……!」

 

 嬉しさのあまり思わず以前アインズ様が開発なされた『魔法詠唱の高速化』が可能になるポージングをしてしまった。

 コツは『よっしゃ! よっしゃ!』である。

 

 さて、何故こんなにも自身が興奮しているのか理解はできている。

 何故なら、至高の御方に自分の淹れた紅茶をお出しできるからだ。

 

 アインズ様は種族上飲食をすることはできないため、今までそういったものをお出しすることはなかった。

 しかしレジス様は違う。

 今日ようやくメイド達の共通の願い……『至高の御方にご奉仕する』の一部が成就されるのだ。

 それも他でもないこの私の手によって!

 

 そうと決まれば早速実行せねば。

 確かこの階層には至高の御方達が設営した『キッサテン』という施設があったはずだ。

 そこなら質の良い茶葉が沢山あるので、最高の紅茶を淹れることができる。

 

「あれ、ナーちゃんなんかご機嫌っすね。何か良いことあったっすか?」

 

 鼻歌交じりで通路を歩いていると、ルプスレギナとばったり会った。

 

「えぇ、実は……」

 

 この時の私はあまりの嬉しさに浮かれていたのだろう。

 ルプスレギナにありのままを伝えた……伝えてしまった。

 

「なっ……レジス・エンリ・フォートレス様に紅茶をっすか!?」

 

「そうよ、そういうわけだから私はそろそろ……」

 

 再び歩みを進めようとする……しかし肩をガシッと掴まれた。

 

「? どうしたのルプー?」

 

「……レジス・エンリ・フォートレス様はこう仰ったのですよね? 『誰でもいいから』と……」

 

「え、えぇ……そうだけど」

 

 それがどうしたというのだろうか……というか口調が変わってる。

 そしてニヤリと口を歪ませるルプスレギナを見て、ようやく私は理解した。

 

「ルプー、あなたまさか!?」

 

「ごめんっすナーちゃん!」

 

 そう言ってルプスレギナは私を軽く押し退け、凄まじいスピードで走り出した!

 

「ま、待ちなさい! まさか私の仕事を横取りする気!?」

 

 正確には、至高の御方に紅茶をお出しする栄誉だが。

 

「早い者勝ちっていう言葉があるっすよー!」

 

「くっ……」

 

 いくら姉妹とはいえ譲れないものはある。

 すぐに体制を立て直すが、スタートダッシュの関係でなかなか追いつけないでいた。

 

「燃えろ! 僕の青春!!」

 

 すると突如背後からそんな声が聞こえてきて、ひゅんっと真横を何かが飛んでいった。

 それはゴンっと鈍い音を立てて、ルプスレギナの頭部にヒットした。

 

「痛いっす!? い、一体何なんす……か」

 

 飛んできた物体……それは生首だった。

 

「うぇぇぇぇ! ゆ、ユリ姉の首が飛んできたっす!」

 

「二人ともそこまでよ」

 

 そして床に転がった生首……ユリの頭が身体に回収され、首をくっつけながらそう言った。

 

「ルプー、抜け駆けはよくないですわよー」

 

「……よくない」

 

 そして気が付けばそこには、エントマとシズもいた。

 どうやらこの三人は、私とルプスレギナの会話を何処かで聞いていたようだ。

 

 そして今ここに、ソリュシャンを除くいつものメンバーが揃ってしまった。

 ちなみにソリュシャンはセバスとともに、任務の為再びナザリックから離れているため欠席である。

 

「いいこと二人とも、あなた達の気持ちもわからないでもない……けれどここは一度落ち着いて別の方法で……」

 

「あの、ユリ姉さん。ルプーが既に走り出して……」

 

 そしてそのまま説教を始めようとするユリだが、あいにくその程度ではあのルプスレギナは止められない。

 いつのまにか体制を立て直したルプスレギナはもう既に走り出していた。

 

「なっ……! エントマ、シズ! ルプスレギナを止めなさい!」

 

「はーい、じゃあポチっとな」

 

「……変形」

 

 エントマがシズの背後に立ち、何やらポチッとした。

 するとどうだろうか、シズの形態がみるみるうちに変わっていく。

 

「シズ・デルタマークIIですわー」

 

「……発進」

 

 左手となったドリルを回転させながら、シズ・デルタマークIIはそのキャタピラを駆使して走り出した。

 目指す目標はルプスレギナ。

 

「そんなのありっすか!?」

 

 流石キャタピラだけあって速い。

 あっという間に追いつきそうだ。

 

「ふっふっふ、しかしながら甘いっすね。そっちがその気ならこっちにだって奥の手というものがあるっすよ! へーんしん!」

 

 ポンと音を立ててルプスレギナの姿が変わる……そしてそこには一匹の狼の姿があった。

 

「こっちの姿ならもっと速く走れるっすよ!」

 

 そう、ルプスレギナの種族は人狼。

 人型にも獣の姿にもなれるのだ。

 

「それなら……こっちも奥の手」

 

「フライングモードですわ、ポチッと」

 

 エントマが何処からか取り出したリモコンのボタンを押すと、再びシズ・デルタマークIIの姿が変わっていく。

 

「う、うぉぉぉぉぉ! シズちゃんちょーかっけーっす!」

 

 何故かルプスレギナが一番最初に感想をこぼす。

 ……まぁ確かに私もあれは素敵だと思う。

 

 フォルムチェンジしたシズ・デルタマークIIは、その真紅に輝く翼とジェットエンジンにより飛行が可能になった。

 そしてあっという間にルプスレギナに追いつき、その上空を並行しながら飛んでいる。

 

「……? ユリ姉さんとエントマ、なんで耳を塞いでるの?」

 

 そして気が付けば共にルプスレギナの後ろを追いかけていた二人が、何故か耳を塞ぐ仕草をしていた。

 そして次の瞬間、その意味を理解した。

 

 シズ・デルタマークIIフライングモードから何やらスピーカーらしきものが出てきた。

 そしてそのスピーカーからは聞き覚えのある声がし始めた。

 

『————したぞ』

 

「……アインズ様のお声?」

 

 どうやらシズ自身が録音したアインズ様のお声を流しているようだ。

 しかし音量の調節ができていないのか音は小さく、途切れ途切れの音声なため、どうやらアインズ様のお声を合成して何やら文章を喋らせようとしていることが読み取れた。

 一体何を、と耳を澄ませる……すると。

 

『ルプスレギナ、おまえには、しつ、ぼう、したぞ!』

 

 突然そこそこの音量でスピーカーからそう流れた。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 するとルプスレギナが突然奇声をあげながら派手にすっ転んだ。

 うん、あれは間違いなく効果抜群だ。

 合成音声とわかっていてもなかなか精神にくる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいかしら二人とも、こういう場合は早い者勝ちとかではなく、誰が一番優秀なのかを競えば良いのよ」

 

「優秀……っすか?」

 

「そう、誰が淹れた紅茶がレジス・エンリ・フォートレス様のお口に合うか競って、一番良いものをお届けすれば良いと思わない?」

 

 ……確かに、それが一番理にかなっている。

 

「成る程! よくわかったっすよ!」

 

 どうやらルプスレギナも乗り気のようだ。

 

「では尋常に……」

 

「「「「「勝負!」」」」」

 

 こうして、第一次紅茶戦争が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて全員が準備を終えた……残るは審査のみ。

 

「ぼ……私はダージリンにしました」

 

「私はアッサムです」

 

「アールグレイっすよ!」

 

「ウバですわー」

 

「……コーヒー」

 

 見事に全員種類がバラバラだ……あれ。

 

「……シズはコーヒーなの?」

 

「ちゃんと……ブラック」

 

 ま、まぁ確かにレジス様は必ず紅茶を持ってこいとは言ってなかったが……

 

 そしてお互いが淹れた紅茶……一つ違うが、飲み合いをしどれが一番美味しいかを競い合った。

 しかし種類が違うとはいえ、全員が全員なかなかの腕前なためどれが一番か決めることがなかなかできずにいた。

 

「……何やってるんだ?」

 

 すると突然キッサテンの扉が開き、中に誰か入ってきた。

 

「れ、レジス様!?」

 

 そしてその正体はまさかのレジス様だった。

 慌ててその場で全員跪く……

 どうやら全員、夢中になり過ぎて時間の流れを忘れていたようだ。

 

「あー、別に跪かなくていいから……いつまで待っても来ないからどうしたのかと思って見に来たんだけど」

 

「も、申し訳ございません! 実は……」

 

 レジス様に今までの経緯を説明する。

 

「そ、そうか……別によほど味がおかしくなければなんでも良かったんだが……」

 

 そう言ってレジス様は何かを考え込む素振りをし……

 

「……じゃあこうしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんで紅茶ポットが五つも? しかも何故か一つだけ紅茶じゃなくてコーヒーだ」

 

「まぁ、折角なので全部貰ってきました。モモンガさんも飲みます?」

 

「俺、飲んだら寛骨の下を通って床にこぼしちゃいますよ」

 

 

 

 

 

 




殆ど勢いで書きました。
反省はしてる、だけど後悔はないです。

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