あくまで冒険者やってます   作:よっしゅん

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 きりがいい終わり方にしたかったので短めです。
今回から試験的にルビ振りしてみました。このまましばらく使ってみて問題がなさそうなら本格的に使ってみようと思います。


第12話

王国の東側には大きな山脈がある。名前はアゼルリシア山脈といい、周囲にはトブの大森林という大きな森までもが広がっている。

山脈には小山人(ドワーフ)が住んでいるとも言われているが、小山人(ドワーフ)だけでなくドラゴンも存在しており、その山脈を支配しているらしい。

アゼルリシア山脈は、西側と東側にある二つの国に挟まれている形になっている。西側はリ・エスティーゼ王国、そして東側はバハルス帝国という国が治めている。

そんなバハルス帝国とアゼルリシア山脈の中間にも山脈があるが、アゼルリシア山脈と比べると遥かに小さい山脈だ。さらには山脈の盛り上がった部分……山には魔力を帯びた植物がたくさん生息しているため、なんの対策もしていないのに迂闊に山に入ると幻覚を見たり病気にかかってしまったりするし、最悪死にいたる。そのため山に入ると人は滅多にいない。いるとすれば、魔力を帯びた植物を目的とした錬金術師くらいだろう。

 

「あとはこんな山の中に呼び出された俺とか……だな」

 

そんな山の中をレジスは山頂に向かって山登りしていた。

わざわざ飛行(フライ)を使わずに歩いて登っている理由は、飛んでいくよりも歩くのが好きだというだけだ。

 

「……結局山登りはすることになったな」

 

こんな小さい山を登るつもりではなかったが、と少し愚痴っているうちに目的地に着いたようだ。

ちょうど山の山頂付近、木々などがなくひらけた場所にでた。真上の空には雲ひとつない青空と太陽が輝いて、この辺りを照らしている。息を吸えば草の匂いや花の香りといった自然の香りが鼻を刺激してきて、まるで幻想にいるかのような感じだった。

 

「この景色をブルー・プラネットさんが見たらどんな反応するんだろうなぁ……ふふ」

 

ギルドに誰よりも自然を愛している人がいたが、もしその人がここにいたらきっとこんな反応するだろうと想像していると自然と笑みがこぼれる。

レジスは生い茂ってる草花達をできるだけ優しく踏みながら、広場の中央にあるポツンと建っている木造の小屋へと向かった。ポツンと建っているわりには、周りの景色とうまく噛み合っている気がしたが木造の小屋だからなのか、それともこの程度なら景色が崩れることはないというほどここの自然が美しいのかはレジスにはわからないが、別に追及するほどのことでもないので考えないことにした。

やがて小屋のドアの前にたどり着くと、二、三回ノックをした。レジスの予想通りならここで、すぐさま小屋の中から友人が飛び出してきて「久しぶりね」とハグの一つでもしてくれるはずなのだが、ノックに反応したのは静寂だけであった。

 

「居ないのか……?」

 

来るのが早すぎたのだろうか。まさか呼ばれて来てみれば留守だとは思わなかった。呼んできた手前どこか遠くに出掛けているとは考えにくいが、どうしたものか。

もしくはノックに気付かなかったのかもしれない。そう思い、先程より少し強めにノックをするがやはり返事はない。

 

「まいったなぁ。一回出直して……」

 

幸い近くにはバハルス帝国がある。そこで時間を潰してからまた訪ねればいい。そう思い来た道を引き返そうと身を翻すと目の前に誰かがいた。

肌色は健康的な小麦色をしているがどことなく白みがかかっている綺麗な肌。髪は背中の肩甲骨辺りまで伸びている金色で、太陽の光が反射して余計に輝いて見える。顔立ちとしては20歳前後に見えるほど整っていて、極め付けに顔の横についてる耳はとんがっている女性だ。

簡潔にいってしまえば、レジスはこの女性を知っている。彼女こそレジスを手紙で呼び出した人物で、森妖精(エルフ)の友人だ。

左手には色んな植物が入っている籠を持っていることから、小屋の中にいなかった理由は察しがついたが、どうにも一つ不可解なことがあった。

 

「…………」

 

「…………」

 

何故か彼女は、腰を低く落としている姿勢で固まっていた。お互い目があってもその姿勢のまま此方を見つめている。

 

「…………」

 

「…………やぁ」

 

このままでは埒が明かないので、こちらから声をかけることにした。

すると彼女は落としていた姿勢からスッと立ち上がり、右手で肩にかかっていた自分の髪をバッと背中に戻しながら何事もなかったように答えた。

 

「は、はぁいレジス。お久しぶりね……」

 

「お前もなソフィー。元気そうで何よりだ」

 

彼女の名前はソフィー。さっきも説明した通りエルフで、第三位階魔法まで使えるというこの世界では結構熟練している魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。

久しぶりに会った友人がどこか大きく変わったりしたところはないかと、ソフィーのつま先から頭のてっぺんまで一通り見ていて再び目が合うと視線を横にそらされた。

 

「ち、違うのよ……薬草採取が終わって家に帰ろうとしたら、家の前に貴女がいたからこっそり近づいて驚かしてやろうなんて思ってないわよ」

 

別に聞いてもいないことをわざわざ自分から暴露していく彼女はどうやら変わっていないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ときにモモンさ……ん。一つお聞きしてもよろしい……いいですか?」

 

「どうしたナーベ?」

 

少しでも堅苦しい敬語をしないようにと、慣れない言葉遣いでそう聞いてくるナーベラル。

二人は今、ひとまず金銭的な面での解決を図ろうと仕事を探しに宿屋を出て冒険者組合に向かっていた。

 

「はい。……先程のお話についてなんですが」

 

先程の話。つまりそれはレジスについての話だろうとアインズは察する。

 

「そのことなら、ひとまずは冒険者の仕事をしつつ金銭の確保をしてからこの街で情報収集をするということに決定したはずだが……何か不満があったか?」

 

別にお金がなくとも情報収集の手段はいくらでもある。だが、冒険者になりたてのよそ者がレジス・エンリ・フォートレスについて情報を集めている。そんな噂がたってしまったなら怪しさが目立ってしまう。だから金銭的な解決も含めて、まずは冒険者の仕事をしばらくすることにした。

 

「い、いえ。不満とかでは決してございません! ただ疑問に思うことがありまして……」

 

「ふむ……言ってみてくれ」

 

部下がわからないことは上司が教えるべき。確かあの本にはこうも書いてあったはずだ。

 

「はい。あの話については、まだモモンさんと私だけの……その……ひ、秘密ですよね?」

 

「あぁその通りだ。この話はまだ私とお前しか知らない秘密だ」

 

それがどうしたのだというのか。この時のアインズはそう思った。しかしそれがすぐに自分が愚かだということに気付かされた。

 

「でしたら、私たちの他に外に任務に出ているソリュシャンや、セバス様。それにシャルティア様にもこの話は秘密なのはどうしてなのか疑問でして……」

 

「…………あ」

 

ナーベラルの言いたいことをまとめるとこうだろう。

外に……今のアインズやナーベラルのようにナザリックを出ている他の三人にもレジスの話をしないのは何故か。確かに同じように外に出ていれば、その三人がレジスの情報を手に入れる可能性もあるだろう。

ならば何故アインズはナーベラルだけに話したのか……その理由は。

 

(わ、忘れてたぁ! そういえばあの三人も外に出てたんだった……)

 

単純に忘れていただけであった。

 

(どうするべきか……魔法を使って他の三人にも同じこと伝えとくか? 多分あの三人も秘密にしろって言えばしてくれるだろうし。あぁでも、ナーベラルに『二人だけの秘密だ』とかなんとか言っちゃったしなぁ。今から伝えるなんて馬鹿みたい……いや、忘れてた時点で俺は馬鹿確定か)

 

「モモンさん?」

 

できる事なら今ここで正直に、忘れてました。と言いたいものだ……しかしアインズはNPCからの忠誠に応えなくてはならないため、そんな言葉を言うことは絶対に許されない。間違いなく失望ルートへのフラグになるだろう。

 

「あ、安心しろ。そのことも含めて、全て私の計画のうちだ。お前は自分のことに集中していればいい……」

 

そのことってどのことだよ。計画のうちってそもそも計画なんてものはないだろ。と内心で自分に突っ込みながら今言える言葉を出した。

 

「はっ……考えが浅い私めをお許しください」

 

どうやら誤魔化せたようだ。しかし街中で跪くのはやめてほしいものだ。

当分ナーベの癖を注意するのに苦労するだろうなと思いながら、アインズは組合に向かって再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

 

「ありがとう」

 

とりあえず小屋の中へと招かれ、質素な木製のテーブルに出された紅茶を礼を言いながら一口飲んでみる。……文句なしに美味かった。

リアルにいた頃は根っからのコーヒー派だったが、紅茶というのも悪くないものだ。もっともリアルの飲食事情に比べればこの世界のものは何でも美味しく感じられるのもあるかもしれないが。

 

「……それにしても、随分来るのが早かったわね。数日前に魔法で操作したカラスに手紙を渡したばっかだったのに」

 

テーブルの向かい側に自分に出した同じ紅茶の入ったカップを置きながら座るソフィー。

 

「あぁ、エ・ランテルの周辺を歩いていたところだったからな。距離も近いし、やる事も決まってなかったしすぐに向かったんだよ」

 

「あら、そうだったの。どこにいるかわからなかったから王国辺りから探させたのが正解だったようね」

 

この大陸に居てくれて手間が省けたわー。なんて言いながら上品そうに紅茶をすする彼女を見ながら自分ももう一口飲んだ。

 

「……それで、仕事って書いてあったけど」

 

「え? あ、あぁそうだったわね。仕事ね仕事、久しぶりに私のお仕事手伝ってくれない?」

 

自分で誘っといて忘れていたのだろうか。これがペロロンチーノがいつの日か言っていた『天然キャラ』というものなのかもしれない。

 

「手伝うのは構わないんだが……」

 

実はソフィーの仕事というものを手伝ったことは過去何回かあったが、確か最後に手伝ったのは三年ほど前のことだ。それからはお互いの都合が合わなくなった等の理由ではなく、ソフィー自らがレジスに手伝ってもらうことを望まなかったから手伝うことはなかった。

なぜ望まなくなったのかはレジスにはわからなかったし、詮索するつもりもなかった。そういった理由もあって、今回こうして呼ばれたことにレジスは内心驚いていた。だから「どうして急にまた?」と聞くつもりで言葉を繋げようとしたのだが……

 

「あらありがとう! 貴女ならそう言ってくれると思ってたわ! じゃあ早速準備してくるから待っててね〜」

 

ドタドタと部屋の奥に行ってしまったためタイミングを逃してしまった。

 

「……まぁ、別にいいか」

 

カップに残っている紅茶を一気に飲み干しながらそう呟いた。




ソフィーの仕事の内容とはいかに……次回明らかになります!

さりげなく主人公以外のオリキャラ出してますが許してください。
何十人も出すつもりはありませんが、これからもメインなオリキャラが増えるかもしれないのでご注意を。
もうしばらくしたら、主人公も含めてこの小説のオリキャラ達のキャラ紹介でもしようと思ってます。

次回のシナリオはあらかたできてるので、そう待たせないつもりです!これからもこの小説を読んでいただけると幸いです。


追記
あれれーおかしいぞ〜ちゃんと会話分以外の文頭には空白入れてるのに実際に読んでみると空白がないぞ〜
第10話はしっかりと空白あるんだけどなぁ……みなさんの方ではどうですか?ちゃんと空白ありますかね?

さらに追記
空白についてはなんとかなりそうです!今まで読みづらい文章で申し訳ありませんでした。次回から空白がちゃんと導入されるはずです!

誤字報告ありがとうございますm(._.)m

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