はい、材…材なんとか君です。嘘です、材木座君です。
場面設定ですが、材木座は大学卒業済み、大学院には進まず就職。その後は結婚もせず夢に向かって執筆を続けつつも、仕事をしっかりこなしてます。
視点は材木座と八幡の2人構成です。一人オリキャラを出しますが、特に気にしないでください!!文学少年です。
仕事に関しては本編で出てきます。あと、この子誕生日が勤労感謝の日なんで、それを絡めてみました。
こほん、我らが盟友である剣豪将軍、材木座義輝殿の生誕されし日を祝いて!!
我が名は。
適当な大学に入って適当なとこに就職して適当に仕事をこなしていた日々に、そいつは突然やってきた。
片割れ時が終わる頃、家のチャイムがなったので応対しに行った。一昨日頼んだアレかな?
「ふっ、八幡。久しぶりだな」
仕事をしているからという理由で家を追い出され一人暮らしをしていた俺の城にそいつはやってきた。
「お前、材木座か?」
「ああ、お前と青春を謳歌した唯一無二の親友。材木座義輝だ」
「とりあえずあれだ。中入れよ、偶然にも俺明日仕事ないからゆっくりしてけ」
材木座義輝、俺の本当に唯一の男友達である。戸塚?あいつは男の親友であり天使だ。材木座と同じ枠に入れるのは可哀想。
俺の言葉を受け材木座は俺の部屋に入ってくる。少し痩せたか?おしゃれにも若干だが気を使ってるようにも見える。
材木座がリビングで突っ立っていたから適当に座らせて、お茶を用意する。俺も座り材木座に問いかける。
「それで、何しに来たんだ?てかなんでお前俺の家知ってんの?」
「なに、戸塚から聞いただけだ。案ずるな、ストーカーではない」
「逆にストーカーだったらどうリアクションすりゃいいか分からん」
戸塚にはもちろん教えてあったからな。
にしても、こいつの口調かなり変わったな。高校の卒業式以来か?お互いに同窓会には行かんし、大学も違ったからこうして対峙するのは懐かしい。
「それでだな、八幡よ。お前に頼みがあるんだが」
「あ?んだよ、めんどいやつは却下だぜ?」
「問題ない」
そう言うと深呼吸し始めた。なんだなんだ、末期ガンになったからなんかの証人になってとかか?流石に胸糞悪いぞ、それ。
「俺に知恵を貸して欲しい」
「は?」
戸塚から所在を聞いて、俺は旧友である八幡の住まいに向かった。アポなしだったが、八幡優しいから大丈夫だろう。
俺を見て八幡は驚愕を顔に浮かべたが、すぐに平静を取り繕うと俺を家の中に招き入れた。1度門前払いされると思っていたから普通に驚いた。
八幡はお茶を出して、座った。一言二言話したところで本題を出した。
「俺に知恵を貸して欲しい」
「…は?」
「とにもかくにも、その説明の前に俺が高校を卒業してどうしていたかご静聴願いたい」
「あ、ああ。それは構わないが」
無言で礼をした俺は話し始めた。
「高校を卒業した後、俺は県内の私立大学で経営学を学んだ。お前は覚えているかわからんが、川崎だったか、あいつの一件の時に皆で1度ラーメンを食べたろう」
「……ああ、エンジェルラダーか」
「いかにも。その頃から既にラノベ作家を目指しつつも生計を立てる方法を模索していた」
作家というのは今も昔も売れるまでは貧乏生活なのが世の理だ。或いは摂理ともいえよう。それを察したか、八幡も思索した後に首肯する。
「あの時、ラーメンを食べに行ったろ。あの時の雑談で閃いたんだ。ラーメン屋で働きながら執筆をしたい、と」
「あ?そんな話したか?」
「まあ、覚えてないのも無理はないな。ほんと、会話の一節だったからな」
恐らくあの場にいた戸塚も、覚えてないだろう。だが、今の俺の在り方に大きく関わっているのだ。責任、取ってくれよ。
因みにどのくらいの一節かというとニ〇コイのつぐみんの十年前の約束くらいである。
「それで、結局今はどうしてるんだ?」
「ああ、大学で学問に励みつつもアルバイトをしていた。その資金は様々なところに消えたが…。もちろん、そのバイトも今回の相談に関わってくるぞ?」
「わーったから。それで、詰まるところ何が言いたい」
「俺は大学を卒業してから今まで全国チェーン店のラーメン屋で店長として労働していた。それで、今度1から……いいや、ゼロから!自らの店を作ろうと思っているのだが、その店に関することで知恵を借りたい」
なるほど、要約するとあれだ。材木座はエンジェルラダーに行く前に男子?(未だに戸塚が男に見えん)組で行ったラーメン屋での雑談でラーメンの道を歩みながらラノベ作家になろうとしていたのか。
で、今度自分の店を建てるのだが、そこで俺に助けを求めてきたと。なんだよ、すげえめんどくさそうじゃん。なんでさっき問題ないとか言ったの?大問題でしょ。
でもまあ、ね、うん。話くらいは聞いてやるか…。
「話の内容は分かった。しかし、俺はどうすればいいんだ?」
「色々聞きたいことがあるが1番聞きたい事は、どうしたら店を建てれるかだ」
「…お前、それ知らなかったのに店始めるとか言ってたのか?」
「ああ、全く我ながら情けない」
その通りだな。口に出さずとも伝わるであろう表情となってしまった俺。普段あまり動かさない表情筋が頑張ってくれてる。ありがとう、俺の体。じゃかましいわ。
「まあ、あてはある。大学時代の知り合いにそのへんの公務員になったやつがいたはずだからな」
「八幡、お前、大学で知り合いが出来たのか!?」
「お前は俺をなんだと思ってるんだよ…」
俺もこうなるとは思ってなかったけどな。サークルに入る気なかったのに、キャンパス内で本読んでたら文芸サークルに半強制で入れられた時は自分を恨んだ。しかし、住めば都とはよく言ったもんで案外居心地が良かった。
そのサークルのメンバーに1人、公務員になったやつがいたはずだ。というかとある縁でそいつとしか連絡を取れないまである。
「ま、連絡とってみるわ」
「かたじけない。その他にも色々あるのだが、今日はもう遅い。帰らせてもらう」
「おう、じゃあな」
そう言って材木座を追い払う。しかし、材木座は立ったと思ったらそのまま動かなくなって机の上をチラチラ見てる。机の上にあるのはテレビのリモコンと俺のスマホと柿ピー、みそピーだ。
「なんだ、柿ピー食いたいのか?ひと袋だけなら持っていってもいいぞ」
「違うわ。連絡先だ、連絡先」
「…ああ、そういや俺そのへん変えたんだったな」
大学入ると同時にスマホの機種を変えて、めんどくさい説明をボケーッと聞いてたらいつの間にか番号とか変わっていた。そのせいで結衣とか雪乃、あといろはにも散々言われた。……結婚して苗字変わったから下で呼べなんて言われた時にはかなり狼狽したもんだ。
「ほれ、自分でやれ」
ロックを外して材木座にスマホを放り投げる。大学に通っている時は周りが絡みまくってきて、いつスマホを開かれるか分からなかったから流石にロックを掛けていた。その名残で今もロックが掛かっている。別に俺の目の前で確認をとった後に見られるのは構わないんだけどな。
「ああ、分かった」
材木座は俺の連絡先を打ち終えるとでは、と言って帰っていった。さて、俺はあいつに連絡を入れるとしますか。
「…あ、俺だ俺。今大丈夫か?」
材木座の依頼を聞いてから一ヶ月がたった。というのも、俺と材木座とあと一人、俺の知り合いの予定が合うのがこの日しかなかったのだ。
とりあえず俺の家の近くの居酒屋で会合を開くことになったので、今はそこに向かっているところだ。
道の角を曲がり居酒屋まであと少し…ってところで人とぶつかってしまった。
「あ、すみません。大丈夫すか」
相手に声をかけて手を差し伸べる。しかしそこに尻餅ついていたのは、もはや見慣れすぎて飽き飽きする綺麗な黒髪だった。
その人は俺の方を見て、目を見開いたあと微笑を浮かべ俺の手を取り、立ち上がった。
「……あら、奇遇ね。こんなところで何をしているの?八幡菌をばら蒔いているのかしら」
「甘いな、バイ○ハザードのことを言いたいならHウイルスとか言え」
まあ、案の定というかなんというか雪乃ですね。なんでこんなところにいるの、馬鹿なの。お前30手前には見えないんだからぶらぶらしてんじゃねーよ。
「冗談よ、繁殖させようとしても誰にも認識されないもの。それ以前の問題ね」
「それも冗談だと早く弁明してくれ……まあいいや、それじゃあな。気をつけて帰れよ」
「ええ、また今度。その時はいろはさんと結衣さんとも一緒に」
「…だな。適当にいつも通りしてくれ」
そう言って俺と雪乃はすれ違う。この距離間でいい。これが俺と雪乃の最適解であり、俺たち2人の『本物』だ。そう俺は信じている。
と、こんなところで思考に時間を費やしている場合ではない。いそいそと居酒屋へ向かう。
「…おお、来たか。八幡」
「お前だけか、竹田。まあ当たり前だけど」
店に入ると、そこには俺の知り合いであり現市役所公務員の竹田誠也(たけだせいや)がいた。たしかこいつは自治体の条例に詳しかったはずだ。そういう部署にいたこともあるらしいし。
「わざわざ俺の友人のためにありがとな。最近どうだ」
「ああ。毎日仕事づくめさ、残業対策されてる分楽ではあるけどね」
既婚者、二児のパパさんである誠也だが、こいつの嫁はあの海老名姫菜である。なんでも職場に引越しの手続きに来た時に一目惚れしたらしい。そんで竹田から猛アタックして成就。そのままゴールイン、となったらしい。世界って狭いなぁ。
「海老名さんとちびふたりは留守番か?」
「まあね、親も現役バリバリだから問題ないさ。それにしてもお前の友達遅くないか?」
「ああ。それね、1時間くらいあとの時間伝えてある」
まあ、竹田との会話は海老名さんの面白いところとか聴けるし楽しくはある。子供好きな面もある俺からすれば、こいつの子供の話を聞くのも楽しい。
海老名さんのことは特に変えるつもりもなく海老名さんと呼ぶ事にしている。あちらもそれでいいと言ってくれてるし、問題ないだろう。
「お前も鬼畜だな。しばらくふたりで飲もうってか?」
「なんだ、嫌なのか?大学時代から関係切れてないのお前だけだぜ」
「俺はとうとう最後のひとり…か」
「最初っからひとりだよ、大学終わったらみんな連絡取れなくなった」
そんな軽口を叩き合うのは、どこか懐かしく、帰ってこない日々に寂しさを感じられた。と言っても大学時代も高校と大して変わんなかったけどな。強いていえば授業は午前に集中させていたことくらいだな。午前の方が人少ないし。
竹田との雑談を始めてから50分ほど、居酒屋の扉から材木座が入ってきた。
「八幡!俺遅刻しちゃったのか?」
「いや、俺がわざとお前だけ遅らせた。こいつとの話に邪魔されたくなかった」
「どうも〜、八幡の知り合いの竹田誠也です。よろしく〜」
「あ、ああ。俺は材木座義輝という、今後色々迷惑をかけることになるだろうが、よろしく頼む。って八幡!?なに、わざと遅らせたって!?」
どうやら材木座の人見知りというか、ぼっち故のあたふた加減は大人になって軽減されているらしい。接客業してるから、当たり前といえば当たり前だ。
まずは顔合わせということで竹田と材木座が軽く自己紹介をし合う。その後は1度乾杯して本題に入る。
「さて、竹田。概要はメールで伝えておいたよな?」
「ああ、ちゃんと確認もとってあるさ」
「かたじけない、恩に着る」
竹田は気にするなと言った後に説明を始めた。と、言っても俺にはほとんど関係のないことだったから聞き流しつつ、つまみを酒と一緒に食べていただけである。砂肝とハツはちょっと酒にあいすぎじゃないかな。
「なるほど、とても参考になった。店を開いた際には誠也も八幡も呼ぶぞ」
「ああ、よろしく。義輝」
どうやらかなり時間が経っていたらしい。2人は既に打ち合わせを終わらしていた。
「お、終わったか。それじゃ飲むか」
「お前さっきまで飲んでたろ…いやまあ飲むけど」
「おお、さっきの話の続き聞かせてくれよ」
「さっきとは俺が来る前か…なんの話をしていたのだ?」
こうして男3人のむさくるしい会話は闇夜に吸い込まれても吸い込まれても有り余るほど盛り上がった。まあ、こんな日も悪くない…だろ。
前編、終了です!!いやあ、なんかちょっといい話っぽく終わらそうと思いましたけど…開店時の話すべきかなーということで。
(べ、別に他のキャラは2話分作ってるのに対してこのままだと材木座1話だけだなあとか思ってませんよ、ええ)
後編の内容は恐らく一時間後に投稿される(はず)本文を読んで頂ければ幸いですが…八幡も大人になったし、メインヒロイン結婚してるからサブヒロインから嫁を選んでもいいよね(フラグ)。
ではでは。