川崎沙希と比企谷八幡は幼馴染み。家は歩いて5分程度のところにあります。そして、この話に大志は出てこない、というかこの世界に大志はいません。退場していただきました。代わりに小町の同級生に京華ちゃんを導入。純粋なまま育っています。因みに髪型はぴょこんと京華の左側に1本結んであります。さらに、元気すぎる京華を親友に持つ小町は原作より若干落ち着いています。
本編の沙希をそのまま八幡とくっつけるのは苦労しそうなので、この形式にしたんですが、そもそもこの生誕祭短編集で誰かと八幡をくっつけるつもりはないことに設定つくってから気づいた愚者ですが、これからも何卒よろしくお願いします。
では、改めて。川崎沙希の誕生日を祝って!
瞼という、魚は持たない体の部位を通して日光が瞳に照りつける。つまりあれだ、よく俺の目は死んだ魚のようだとか腐っているとか言われているが、瞼という部位を持っている以上魚にはなりたくてもなれないのだ。
「何くだらない事考えてるの」
「…沙希か。おはよう」
「おはよ、ご飯出来てるから早く降りて来て」
部屋の入り口に目を向けるとそこには幼稚園からの幼馴染み、川崎沙希が、こちらを睨みながら、壁に寄りかかっていた。
「…おう」
まだ完全に覚醒しきっていない俺の意識はなんとか返事をすることに成功する。やったね、はちまん。
俺の返事を聞いた沙希は、長いポニーテールを揺らしながら俺の視界から消えた。俺はさながら猫じゃらしを追いかける猫か、はたまた親の尻尾を追う犬のように部屋から出てリビングに向かう。そこまで血眼になってはいないが。
リビングにつく頃には9割くらいは目が覚めている。
リビングに入って、リビングとは反対側、つまりダイニングの方を見る。そこにいたのは、俺の妹小町、沙希、そして沙希の妹の京華だ。
「おはよう」
「あ、お兄ちゃん。おはよ〜」
「はーくん、おはよ!!ご飯食べよ、ね?」
「京華、落ち着いて。八幡、食べるから早く座って」
上から俺、小町、京華、沙希だ。京華には小学低学年までははーちゃんと呼ばれていたが、今でははーくんと呼ばれている。対して変わってない気がしないでもない。
「ん、今座る」
お互い、親が共働きという事もあり当番制でこうして朝ご飯を作って貰ったり、逆に作ってあげる時もある。基本的には沙希と京華がうちに食べに来る。理由は、高校と中学が我が家の方が近いからだ。
距離関係は高校←ー中学ーーー→我が家←→川崎家となっている。
俺が沙希の正面且つ小町の隣に座ると京華が手を合わせる。
「頂きまーす!」
「「「頂きます」」」
京華の元気な挨拶を合図にほか3人は静かに手を合わせる。今日の朝は和食のようだ。白米、大根の味噌汁、鮭の塩焼き。明らかに俺の鮭が焦げているのはきっと錯覚だろう。
「そういえば、お姉ちゃん明日誕生日だね」
「あ、そういえばそうだね。沙希ちゃん何か食べたいものある?お兄ちゃんが何でも作るよ」
「作るの俺なんだ」
明日の当番…も沙希か。だったら作るしかないな。京華と小町にはお手伝いを要請する。折角の誕生日なのに、この中で1番料理下手な俺が作っていいのだろうか。
「…別にこれといって食べたい物はないかな」
「でもでも、食べたい者はいるんでしょ?」
うちの妹は何を言っているのだろう。食べたいものはないって言ってるのに、食べたいものがあるんでしょとか頭おかしくなったの?
「…小町」
「ごめんなさーい」
笑顔なのが逆に怖い。謝りながらも悪びれる様子を見せず、ご飯を口に入れた小町を見ながら沙希に問う。
「で、どうすんだ?作れるもんなら作るが」
「私があんたに作れないもん頼むわけないでしょ…学校にいる間に考えとくから」
「ん、できるだけ早めに教えてくれよ」
その会話を終わらせて食べることに集中する。
数分して皆が食べ終わり、食器を洗ったり着替えたりドタバタして学校へ向かう。俺と沙希は自転車通学だが、そのままふたりで行くと小町と京華を置いていくことになってしまうので、小町を俺の後ろに、京華を沙希の後ろにそれぞれ乗せて中学校に寄る。
毎回どちらかがカバンをかごに忘れるというなんとも迷惑な恒例行事も過ぎ去り、ふたりで総武へ自転車を漕ぐ。
駐輪場で別れてそれぞれの目的地へと足を運ぶ。沙希は図書室へ向かったらしい。俺はベストプレイスの確認だ。昨日は雨降ってたからな、座れる状態か見てこないと。
「っべーわ、もうお昼だわ!ってか、腹減りまくりんぐっしょ!」
このくそ煩い声に目を覚ます。どうやらもう既に昼休みらしい。そういや、4限が数学ってこともあって寝てたわ。クラスの一角にいる沙希にアイコンタクトを送ってベストプレイスに赴く。その途中でお茶を買うのを忘れない。
お茶を二本もってベストプレイスへ行くと、そこには既に沙希がいた。
「ほれ、お前の分」
「ありがと。はい、あんたの弁当」
「さんきゅ」
俺の右手でお茶を渡す。左手で受け取った沙希はそれと同時に右手を出して俺に弁当を渡す。左手は俺の分のお茶でふさがっていたので空いた右手で受け取る。
沙希の隣に腰掛け弁当を開ける。オープンざプレイス!
「いただきます…毎日ありがとなぁ」
「いいよ、それより明日の晩御飯ね」
「ああ、何がいいんだ?」
普段お世話になってる分なんかしてあげたい。勿論全力で行くぜ。バタンキューしないようにしないとな。
「普通にいつも通りの料理でいいよ」
「ん、そんなんでいいのか?作れるものならなんでも作るのに」
「その代わり、今日の帰りに一緒に買い物ね」
「…えぇ」
正直面倒だ。別に沙希と買い物に行きたい訳では無いし寧ろこちらからお願いしたいくらいだ。しかし、沙希はクール系美女としての地位を確立している。そんな彼女とぼっちの俺が歩幅を合わせて歩くのを、傍観者達はよく思わない。
「なに、ヤなの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど」
「じゃあ何?」
ダメだな。こうなると何言っても聞かない。渋々了承すると放課後の待ち合わせ場所を言い渡されてどこかに行ってしまった。
…んー、まあなんとかなるか。
「五分遅刻」
「お前がな。俺は五分前からいた」
「私十分前に一回着いてるから、私から見たら八幡が五分遅刻」
あっそ。世界の中心はあなたなのね。
適当に流して、ららぽの中へ入る。いやだってね、やっぱり最近の女子高生は皆ららぽ好きなんだよ。何でも揃うらしいからな。いや、知らんけど。
「今日もいつも通りね」
「わーってるよ」
沙希と買い物に行く時はいつも自分の分は自分で払う。食べ物も服も何でもだ。例外としては貸し借り(一週間以内に返す)やプレゼント等ある。
プレゼントは毎年お互いに欲しいものを聞いて、その場で買ってその場で渡す。お互いに省エネな性格だから、このくらいの方が気が楽なんだ。
「先にお前の買い物か、お前へのプレゼントだな」
「その前に色々回ろうよ。どうせ今日はここで晩ご飯食べるんだから」
先に小町と京華には連絡を入れてある。両家の親同士、信じ合っているので門限なんてあってないようなものだ。なんなら親父に泊りがけでもしてこいと言われるまである。
「ゆっくり行くか」
こうして、俺と沙希の放課後ショッピングが始まった。
《台本形式↓ふたりが雑談するだけなのでスルー可》
八幡「ところでさ、出来るだけ効率的に回りたいんだが今日はどこに行くつもりなんだ?」
沙希「そうだね。とりあえずこことここと…あとはここかな」
八幡「おかしいな、指が地図の端から端まで動いた気が」
沙希「錯覚だと思った?残念、現実だよ」
八幡「さて、まず一つ目終わったな。次行くか」
沙希「あ、うん。ちょっと買いすぎちゃったな」
八幡「貸せ。持ってやる」
沙希「あ、ありがと」
沙希「あ、八幡八幡。ちょっと止まってよ」
八幡「どした?欲しいものでも見つかったのか?」
沙希「これ京華に似合いそうじゃない?ヘアゴム」
八幡「ほんとにシスコンだよな。人のこと言えないけど」
沙希「そういえば今年のリクエスト言ってなかったっけ?」
八幡「聞いてないぞ…二つ目の店着いたな」
沙希「じゃあさ、この近くの料理用具の店でエプロン買ってきてよ」
八幡「そういやお前のボロボロだったな。分かった、期待するなよ」
《台本形式はここまでです》
沙希と一度別れ料理用具店に入る。どうやら一人暮らしの男性もいることから、俺だけが怪しまれることもないらしい。
「にしても、あいつに似合うエプロンね。難しいな」
青がかったあの髪に近似色を合わせるか敢えて反対色を着せるか。或いは無難に黒で行くか。
「まず反対色はないな。あいつ基本クール着飾ってるし黒でいっか」
適当に手に取ったものを脳内で沙希に着せる。うん、問題なさそうだな。エプロンをレジに持っていく。店員に怪しまれたが独り言のように沙希喜ぶかなぁとか言ったらすぐ警戒を解いてくれた。イイヒトダナァ。
店の外に出るとちょうど沙希がこちらに向かってきているのが見えた。
「最後の店行くか?それとも先に飯食べるか?」
「適当に入ろっか」
「了解」
再び二人並んで歩く。途中で見つけた手頃そうな飲食店に入って晩飯を済ます。普通にうまかった、安くもあったしお気に入り登録しとくか。
「さ、最後行くか」
「あ、明日の晩御飯の買い物はいいの?」
「ああ、そういやそうだな。まあいっか、明日の帰りに行くわ」
そうこうしてるうちに沙希さん希望のお店その三に着き、買い物も終わる。帰るか、と思った時に沙希に肩を叩かれた。
「そういえばさ、もうすぐ寒くなるじゃん?」
「あ?まあ、秋も折り返し過ぎたし。そりゃそうだな」
「せっかくららぽ来たから防寒具買おうよ」
「そう…だな。マフラーかなり草臥れてた気がするわ」
渋々メンズもレディースも売ってるゾーンまで戻る。黒か深緑か紺色のマフラーねぇかな?お、これなんかいいんじゃね。俺これにしよう。
「俺決めたぞ。沙希はどうするんだ?」
「私はなんも買わないよ。手作りする」
そういやこいつは家事スキル高かったんだよな。…買うより安価だよな。
店の中で大声で聞くのもアレだから、口を沙希の耳に近づけ小声で聞く。
「なあ、沙希。俺がこれ買うのと俺が毛糸買ってお前に作ってもらうのどっちが安い?」
「も、もちろん後者だけど。なんで?」
「出来るだけ金使いたくない」
沙希も俺に合わせて小声で喋る。傍から見ればか不審にも程があると言いたくなる構図だろう。
「はあ…分かった。じゃあ明日晩御飯の買い物のついでに毛糸買いに行くから。あんたも着いてきてね」
「おう、そうと決まれば今日は帰るぞ」
マフラーを元あった場所に返して俺と沙希は外に出る。夜の秋風は冬服のみを装備している俺たちには幾分か冷たすぎる。しかし、こいつとの毎日は内側から暖かくなるほど穏やかで安らぐものだ。それを考えれば、秋風も気にならなくなった。
こいつの誕生日の前日なんだから…これくらいキモいこと思ってもバチあたんないよな?
……後半は書きなぐりみたいになりました。反省してます、すみませんでした。
最近は他の方々の小説を読むことに集中していて、川崎の誕生日が近いことに気づいたのはついさっき。
材木座のやつはちゃんとしますんで許してください。
ではでは。