あ、それと今年の更新すべて遅くなります。一介の学生には執筆の時間なんて無いに等しいんですよね。部活もあるし。
とまあ、そんなことは置いとくとして。
戸塚彩加の誕生日を祝って!!
戸塚との休日
5月9日、ゴールデンウィーク最終日だ。故に日本の大体の人は憂鬱なんじゃないかなぁとか思う。しかし俺はそんなことない、むしろ今日の為にゴールデンウィークを投げ捨てたまである。
ゴールデンウィーク初日に小町と一緒に買い物に出かけ服を買い、その日からずっと自分磨きに手を抜かなかった、たしかにたった一週間で目に見える変化は皆無に等しいがしかし俺の心境は間違いなく変わっていた!
俺は今千葉駅前で人と待ち合わせしている。かれこれ一時間は余裕で待ってる。嘘です十分くらいです。大きなあくびをしている途中、その人は来た、いや舞い降りたと言うべきだろう。
「はちまーーん!!」
マイエンジェル、トツカエル降臨。
もう外も暑いということで彼もかなり薄着である、しかし戸塚はなぜどんな格好をしてもボーイッシュあるいは男勝りな女の子にしか見えないのか、やはり中の人がさぞ可愛いのだろう。もしも中の人がいるとしたらの話だが。
今日は世界一男の娘であるところの戸塚某とでぇとに馳せ参じるためここ千葉駅前で待ち合わせをしていた。おっと、口調がおかしくなったお、またまた語尾が変でおじゃるぅぅぅ。
なんて茶番はおしまいにして、俺は戸塚に行こうと促す。背負うカバンを担ぎ直して満面の笑みで快く返事をしてくれた。
そうかこの子がマイスイートエンジェル。ビーツが聞こえる!たらーらーらーらー。
というわけでやって参りました、テニスコート!!いやね、戸塚が『僕、八幡とまたテニスしたいな……ダメ?』と見つめられながら言われて断れるわけがないんですよね。身長的に上目遣いされる訳ですから、そりゃもうSAN値MAXまで回復っすよね。
「えっと、予約してた戸塚ですけど」
ななななんと予約までしてくれていたらしい。八幡涙チョチョぎれる。
この日のために用意したウェア(小町曰く無難に似合う)に更衣室で着替えて荷物番をしながら戸塚を待つ。カバンから砂が目に入らないよう持ってきていたメガネを出したところで戸塚が戻ってきた。
「ごめんね、八幡。僕も着替えてて」
「いや、いい。それより、俺のラケットはどうすりゃいい?あと靴」
「ふふっ、ちゃんと借りてきてるよ」
そう言って後ろにまわしていた手を前に出す戸塚。おお、実に俺好みの色合い、YONEXか。まあ、詳しくないし、なんでもいいけど。
とりあえずメガネをかけてからラケットと靴を受け取ろうとする。しかし戸塚は動いていない。さいか は めのまえが まっくらになった!
「は、八幡?」
「あ?そうだが…いきなりどした」
俺の顔になにかついているのか、戸塚が俺の顔を凝視してくる。口が半開きで可愛い。
「いや、メガネに反射する光が八幡の目と…えっと」
「なんだ?遠慮なく言え、俺達は友人なんだから」
言ってなかったが俺たちはいま大学生。もうかなりの長さの付き合いである戸塚はもう俺の友人と言っていいはずだ。今まで言ったこと無かったけど。
「八幡が僕を友達って…じゃなくて八幡の目つきの悪さが自然に消えた!」
目にハイライトが入ったのか、なるほど。八幡納得。で、まあまあ整ってる顔が日の目を見たらしい。俺の目強烈すぎ説。
しかしそうなるとあれだな。俺メガネ付けてればモテるんじゃね?あ、そんなことない?分かりました、しかし大発見だぞこれは。今度メガネ付けて皆の目の前に出没したろ。由比ヶ浜あたりは『ぴぎゃぁ!?』とか言いそうだ。
「さ、八幡も準備が出来たようだからコート行こっか」
「そう、だな」
正直戸塚とまともに打ちあえる気がしない。片やセンスとぼっちに有り余った時間を少しばかりテニスに費やした少年、片や毎日血のにじむような努力を続けてきた美少年っ!!
でもまあ、自分に出来る精一杯をやろう。戸塚のために!
まず軽くラリーをする、ボレボレやボレストはすること無くショートラリーと普通にストレートをした。その後はお互い十数回サーブを打つ。さあ準備は出来た。
俺の戦争を始めるか。
「行くよーっ!」
戸塚がサーブを打ってくる。流石に加減してくれたのか先程より少しばかり遅い。ありがとう、戸塚…。心の中で感激しつつ当てるだけでとりあえず返す。戸塚は少し強く打ち返してきた、回り込んで強打するもあっさり逆に打たれ拾えず失点。
「あはは、本気で行くよ」
「…望むところだ、やってやる」
男の意地を見せつけてやんよ(注:戸塚は男です)。
その後もゲームを続けるも戸塚が2セット取るまでに十数点しか取れなかった。もう少し運動すべきだなと思いました、まる。何が男の意地だよ、せめて点差の維持くらいしろ、山田くん座布団!!
コート脇のベンチに並んで座って片手にスポドリを持ちながら空を仰ぐ。
「戸塚やっぱ上手いな、かれこれ何年やってんだ?」
「もう7年はやってるかな…毎日やる訳じゃないし、高3の時はほぼやってなかったけど」
これを聞いて俺は純粋に戸塚を尊敬した。どうすればそこまで一つに熱中できるのだろうか、それは俺にとってかなりの難問だったがきっと世間一般からすれば一言で終わるのだろう。
聞けばわかる、聞いてみるか。
「なんでそんなに続けてこれたんだ?」
「テニスが好きだからかな…」
胸が金属ハンマーで思いっきり殴られたと錯覚するほど、今の言葉は俺に響いた。
ただ愚直に純粋に何も考えず何も感じず、『好き』の二文字の前に頑張れる戸塚が羨ましかった。
「もちろん辛いことも悲しいことも大変なこともたくさん、たっくさんあった。寧ろ楽しかった時間の方が短いんじゃないかな?基本練習は厳しいし苦しいしやめたいと思うことも数え切れないほどあった、今でもたまに思うよ。でも、それでも僕はテニスが大好きなんだ!」
上を向いていたはずの俺の顔はいつしか戸塚の方に向けられていた。周りの音全てが遮断された。
「一年の練習の末に掴み取った初の一勝っていうのは、それこそ一生の思い出だよ、今でも覚えてるもん。初めは楽しめたらなぁと思って始めたテニスだけど、今では大切な僕を構成する要素の一部分だよ。八幡でいう小町ちゃんくらい、大切なんだ…」
そう語る戸塚の顔を見る限り嘘偽りは微塵もこもってなかった。すべて本当のこと、本音で本物の精一杯の『声』だった。
戸塚には俺がとうの昔に捨てた情熱とか熱意とか意志が、こんな小さい体に凝縮されて込められているように感じた。
「さ、八幡!休憩終わり!八幡やれば出来るんだから頑張ろー!」
「ああ、少し頑張ってみるか」
戸塚と一緒なら熱い心が戻ってくる気がした。というか今既に恋の炎が上がりそうです、今すぐ外国で戸籍登録しようぜマイハニー、じゃなくてダーリン。違和感しかないわ。
テニスも程々に俺達はラーメン屋に来てた。戸塚と飯を食うことになり戸塚が『八幡普段外で食べる時なに食べるか知りたい!』と言うから連れてきた。
「運動の後にこれはきつかったかもね…」
「すまんな、しかし俺が知ってる店というとこってりラーメンしか知らない。あとはサイゼ」
目の前に置かれたこてこてこってりラーメンと対峙した戸塚が弱音を吐く。負けるな戸塚、諦めるな戸塚!まだやれる!なんの応援だよ。
「さあ、食うか」
割り箸を取りパキッと割って右手に装着、左手では既にレンゲを構えてある。臨戦態勢、オンユアマーク・セット、準備万端。
さあ、2度目の戦争を始めようか。
「いただきます」
ちなみに戸塚は替え玉ができないくらいにつらかったらしい。
こういう時でもラーメンをずるずる食べる俺は、熱意をラーメンに向けられる気がしてくるほどだった。
「ちょっと大変だったけど美味しかった!」
「そりゃ良かった。また言ってくれればほかの店も教えてやる」
「うん、ありがと!」
俺は今日戸塚から『熱』を教えてもらった。だからという訳では無いけど、こんなんじゃ些細すぎるかもしれないけど、とりあえずこれからひとつひとつうまいラーメン屋でも教えていこう。いつか俺にも熱が宿る、そんな日まで。