俺ガイルキャラ生誕祭!!   作:Maverick

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城廻先輩の3年生編です。

毎回毎回少ない字数に無理やり詰め込んですみません…。これからはもうちょっと設定しっかり考えます。

城廻先輩には文系に行ってもらいました。原作を読んだのがだいぶ前でほんとはどっちか忘れました!

八幡と城廻先輩は同じクラスで、今回はセンター試験が終わり一息つく頃ですね。私立の人はすぐあるようですが…。

ではでは、どうぞ。


センター試験後の比企谷家

『青春』という二文字の前で、高校生は何を思うのだろう。

『青春』という二文字の前で、大人は何を思うのだろう。

『青春』という二文字の前で、俺自身は何を……。

 

 

 

 

太平洋側だろうと関係なく、山を越し、関東平野を駆けてきた季節風が吹き付ける。一昨日やっとセンターから開放されたというのに、これでは気分が冷めてしまう。しかしいつまでも浮かれているわけには行かなかったから、これはちょうどよかったのかもしれない。そう思っていた時、ポケットに入っていた携帯が振動する。この長さは電話だろう、相手も検討はついている。近くに公園があったから、そこのベンチに座り電話に出る。

 

『こんにちは、八幡くん』

 

「おう。どうした、城廻」

 

二年の文化祭後、ちょくちょく話す機会が出来た。三年生になってもう1度同じクラスになった。クラス発表のその日に城廻が携帯電話とメールアドレスを交換したいと言ってきた。素っ気なく返したつもりだったが、城廻の友人には緊張がバレバレで恥ずかしくなった。

 

『えっとね、八幡くんのセンターどれくらいだったか気になったの』

 

「そんなことか…一応志望校には届いてはいた」

 

『そっか、よかったね…私はギリギリだったよ』

 

俺達は同じ大学を目指している。決して俺が城廻と離れたくないからとか、そんな理由は全体の一割程度を占めている程度だ。残りは単にその大学を気に入ったからだ。

 

「まあ、城廻なら頑張れば行けるさ。応援してる」

 

『う、うん。ありがとね、八幡くん』

 

「気にすんな」

 

たまにこうして少し話すことが、最近の俺の些細な幸せだったりする。もう少し雑談を続けた後に電話を切って家へ向かう。視界の奥の空模様は、左右で雲量が違ってまるでどちらかが落ちることを暗喩しているかのように思えた。

 

 

 

 

 

さっきの雲に少し不安を感じた俺は、家に帰って勉強をしていた。まあ、俺はまだ余裕があるから落ちるとすれば城廻だ。城廻はかなり頑張ってきているらしい。このまま頑張って欲しいが、体は壊して欲しくない。彼女の心配をしているといつの間にか自分の手が止まっていたことに気づく。一度心の中でよしっと掛け声、勉強を続けようとした、が。

 

「おにーちゃーん!はいこれ!」

 

「どうしたの小町ちゃん…ああ、これね。ありがと」

 

うちの学校はセンターが終わるのと同時に自由登校となる。故に学校のプリント等はわざわざ学校に取りに行かなければならない。ついでにその日に残りの単位をとるのだとか。まあ、毎週月曜はみんな行くらしいが、やだ、めんどい。せいぜい3週間後に一回行こうかと思ってる程度だ。

というわけで最愛の妹に持ってきてもらっている。

 

「あ、それと今日のもよろしくお願いします!」

 

「あ?おう。戸塚は何時だ?」

 

「いつも通り!」

 

去年の9月くらいから、俺の家に戸塚が来て勉強するというイベントが二週間に一回の頻度で開催されている。小町は高校に入り、やってみたかったらしいテニス部へ入部した。そこで戸塚と接点を持ったらしい。その後11月頃に戸塚が小町に告白し、小町が了承したことにより2人は恋人となった。小町が兄離れするのは寂しいが仕方の無いことだ。それに戸塚なら任せられるからな。因みに付き合い始めるまで戸塚が男だと知らなかった。あの可愛さで男とか正直ありえないんだが、見てしまったからな、下。まあ、その経緯はどうでもいいな。

小町が部屋から出たあとに、俺は勉強を始めた。数時間経って戸塚が家に来る。ドアの音が聞こえたのを合図に、勉強道具を持ってリビングに降りる。

 

「あ、比企谷先輩。こんばんは!」

 

「おう、最近どうだ」

 

「部活も楽しいですし、勉強も順調です」

 

リビングには既に戸塚がいて、勉強道具を開いている途中だった。小町は見当たらないが、多分お菓子を取りに行ったかしてるんだろう。

 

「ところで比企谷先輩?」

 

座って勉強の準備をする俺に戸塚が話しかけてきた。返事をすると、戸塚は俺にとって原爆レベルの爆弾を容赦なく落とす。

 

「城廻先輩にはいつ告白するんですか?」

 

「…は?」

 

「あ、すみません。聞かない方が良かったですか?」

 

いやいや、する気ないんだけども…その前になぜ戸塚がそのことを知っているかが問題だ。考えるまでもなく小町が絡んでるけどね、どうせ。まあ、戸塚ならいいか。

 

「いや、なにどうせ小町から聞いちまって気になってたんだろ。別に気にすんな」

 

「ほんと、すみません…えへへ」

 

笑えば許してもらえると思うんじゃありません!……ま、まあ今回は戸塚に非はないわけだし、許さなくもないかなー、というか許す。

せっかくの機会だしと戸塚に俺の本心を話そうと思う。ふはは、戸塚にとって俺はいわば義理の兄になる予定の男だ。嫌でも話は聞いてもらうからな。

 

「で、質問の答えなんだが俺はする気ない」

 

「えっ!?…あ、すみません」

 

「なんでそんなに驚く?勝ち目のない戦いはしないのが俺のポリシーだ」

 

「え、城廻先輩は比企谷先輩が好きなのかと思ってましたけど」

 

いやいや、それはないだろ。たまたま戸塚が見た光景が俺と城廻が(俺だけかもしれないが)楽しそうに会話している場面であって、城廻はほかの男子とも楽しそうに喋るからな。俺だけ特別とか勘違いしねぇし。

会話のボールを戸塚に投げようとしたところで、横から入ってきた小町に横取りされる。

 

「およよ、お兄ちゃんめぐりさんに告白するの?」

 

「しません。というかこの話小町には一回しただろ」

 

「いやあ、気が変わったのかと思った」

 

初志貫徹が俺の信念だと言ってもいいんだからな。なんて言ったって未だ専業主夫の夢を諦めてないからな。これはまさに初志貫徹だろう、つまり俺すごくいい人間。

で、何の話だっけ。ああ、俺が告白するとかしないとかね。

 

「城廻は顔もいい、スタイルもいい、性格もいいと3いいが揃ってるんだぞ?」

 

「なんですかその3Cみたいなやつは…」

 

「それに比べて俺は顔はそこそこ、スペックも普通、性格は普通ですらないんだからな」

 

「ぐっ…ひ、否定出来ない」

 

それは自分でも思ってるけど他人に言われると傷つくな。しかし、そういうことなのだ。仮にもしも、本当にもしも城廻が俺のことを好きでも世間とやらはそれを許容しない。いや、彼女をいずれ取り巻く環境が許容しないのだ。

 

「ま、そういうこった。叶わない恋なんて、かっこいいことは言わんがそれでも不釣り合いなのは確かなんだよ」

 

「…比企谷先輩」

 

戸塚が憂うように俺を見る。戸塚は悪くないのに、何かが俺を蝕む。

やめろ、哀れむな。

やめろ、同情なんてしてほしくない。

やめろ…俺は、自分に絶望したくない。

分かってる。結局何かを理由に逃げているだけだと。3年生になってからは大学受験を理由に逃げてきた。俺はこれからも彼女を想うようにして自分の身を案じ続ける醜い男だ。

今まではこれが普通で、こんな自分が嫌いじゃなかった。自分第一な考え方なんて誰でもする。しかし、今はそんな考え方の俺が、俺は嫌いだ。

気づくと俺の目からは雫が1粒零れていた。気づいてしまっては止めようがない。止めようと思わない。ただただ静かに突っ立ったまま、俺は泣いた。正面にいた戸塚と、隣にいたはずの小町は消えている。その心遣いに感謝しながら、胸の内で号哭し続けた。

 

 

 

 

 

気がつけばもう既に大学入試二次試験。あの日は結局あたりが暗くなるまで泣いていた。我ながら恥ずかしい。小町と戸塚に頭を下げたが、2人とも気にしないでと言ってくれ、心が少し軽くなった。

その後はちゃんと勉強に集中できたし、今日まで人智を尽くしてきた。受かる確信が俺にはあった。それと同時に、俺と隣を歩く少女に気持ちを伝える覚悟も、俺にはあった。俺は彼女の名前を、告白の時は苗字ではなくフルネームでと密かに決めていた俺は彼女の名前を呼ぶ。

 

「城廻めぐりさん、俺はあなたの事がーーー」

 

ここから、俺の大学生活が、人よりちょっと早い、人より何倍も勇気がいるスタートを切った。




ふう、なんとか終わった。

次は折本…なんかね、書ける気がしません(笑)。

まあ、何かしら書いて見せます。きっと、多分、恐らく。

ではでは。

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