俺ガイルキャラ生誕祭!!   作:Maverick

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城廻先輩も書きました。はい、正直もう少し誕生日バラバラでもいいんじゃないかーとか思いますけど、一年は書くって決めましたしね。書きます。

さてさて、今回八幡には城廻先輩と同じ学年になってもらいました。かつ学年は城廻先輩に合わせてあるので、結衣や戸塚は一個下の学年になってます。それに伴って小町も既に中3です。
クラスのみんなは八幡を嫌いではありません、というかもうマスコット的な?ビクってしてるのが可愛いなと思ってる的な?感じです。

ではでは、城廻先輩の誕生日を祝って!!


城廻めぐり生誕祭2017!!
文化祭実行委員


文化祭が間近に迫っている。この事実は確実にあるのだが、しかし俺の中に実感はなかった。昨日までは…。

昼休みを目前に控えた4限目のHRは体内の消費可能エネルギーも少なく、安定して惰眠を貪っていた俺が、目を覚ました後に黒板を見るとそこには何故か俺の名前が。もう1度黒板をじっくり見ると、どうやら今の時間に文化祭の実行委員を決めていたらしい。

とりあえず経緯を聞こうと教壇にいた平塚先生の元へ向かい声を掛ける。

 

「あの、平塚先生。なぜ俺がいつの間にか文化祭の実行委員に指名されてるんすか?」

 

「仕方が無いだろう。君が寝ていたのが悪い」

 

異議を申し立てればなんとかなるのではないか、と思っていたところに後ろから声を掛けられる。

 

「よろしくね!比企谷くん」

 

振り返り声の主を視認する。彼女は…確かもうひとりの女子の方の実行委員だったか。名前は知らん、クラスで名前知ってる人がいないからなあ。仕方ないと言えば仕方ない。

しかし、これから暫くは会話を嫌でもすることになるのだから、いまさら名前を聞いて気まずい雰囲気が流れてしまうのは不味い。何か名前の情報はないのかと少しキョロキョロしていると、視界の端に黒板に書かれていた『城廻めぐり』という名前が映った。恐らくこれが彼女の名前だろう。

そう賭けて俺は城廻めぐり(仮)に言葉を返す。因みに平塚先生はどっか行ってた。ちっ、逃げられたか。

 

「ああ。よろしくな…っと城廻だったか?」

 

「うん!」

 

どうやらあっているらしい。

こうしてさりげなく名前を確認する俺は自らを策士だと思いました。うん、どうでもいいな。

にしてもこいつクラスで一二を争う可愛さじゃないか?特徴的なお下げ髪だが、昭和の文学少女のような暗さは一片もない微笑を浮かべる顔、甘いが透き通っていてとても聞き取りやすい声、全体的にふっくらとしていると形容できるがメリハリのついた身体、どれをとっても欠点がなかった。少なくとも外見に関しては。

 

「早速今日の放課後に会議あるらしいから、一緒に行こうね」

 

「…いや待て。別に一緒に行かなくてもいいだろ」

 

どうしてこういうコミュ力が高い女子はなんでも一緒にしようとするのだろうか。これ大学の卒論で出来そうだよな。心理学とかそのへんで普通に受け入れてもらえそうだ…とくだらないことを考えている場合じゃないな。

 

「あ、うん。ごめんね…」

 

俺の返答に明らかに沈んだ様子になる城廻。少し俯いている。

ちょっと、俺の罪悪感半端ないんですが。クラス中からの視線が痛いんですが。なんだよ、お前らが面白半分で俺を実行委員にしたんじゃないのか?もし違うなら平塚先生の仕業だ。ヤロー、とっちまえてやる。

兎にも角にもまずは城廻だ。なんと言えば良いのだろうか。一瞬考えた末に言うセリフが決まった俺は声を発した。

 

「そ、そういや…俺会議どこでやるか知らなかったわ。お、おお教えるついでに一緒に行ってくれにゃいか」

 

…殺せ。いっそのこと俺を殺して楽にしてくれ。

クラスメイトからの視線攻撃もなかなかメンタルに来た。が、それ以上に俺が女子にこんなこと言うことに緊張した俺は噛み噛みになった。ほんと、なんだかなあ。

しかし、それでも城廻にはしっかり伝わったようで俯いていた顔をガバッと上げ、屈託ない笑顔をつくって見せた。これが演技なら俺もう何も信じれなくなるわ。

こうして文化祭までの日々にもれなく城廻がついてくることが決定した…いやまあ仕事の時だけだけどね。

 

 

 

 

 

放課後になった。と、なるとやっぱり会議があるわけで。と、なるとやっぱり城廻と行くことになるわけであって。

何が言いたいかと言うと、満面の笑みで俺の方へ来る城廻との会話をするのはいいんだけど、クラスメイトからの目が怖いんですよね。

ああ、城廻が俺の横に…。

 

「行こっか、比企谷くん!」

 

「あ、ああ…」

 

答えた俺の言葉を聞いた途端にその場でぴょんぴょんしながらうきうきしてる。癒されるな…下の名前はめぐりだったかな。めぐりっしゅ…うん、いいなめぐりっしゅ。うちの妹並みに癒されるぞ。後は小耳に挟んだことがあるテニス部の戸塚とかいう人も癒し枠らしいからなぁ。三人揃って癒します三姉妹!的なプリティでキュアキュアなことやってくれませんかね。あ、してくれない?残念。

俺が準備を終え、立ったのを見て城廻は俺の前を歩く。その三歩後ろを歩く嫌な大和撫子。誰だそんなやつは!俺だよ!的な一人芝居を心の中でやっていると、いつの間にか横にいた城廻が話しかけてきた。

 

「ねえねえ、比企谷くん。比企谷くんって普段なんで一人なの?」

 

うわあ、のっけからいいパンチ打ってくんな…。

 

「いや別に。一人が好きなだけだ」

 

中学の頃は友達をつくろうと躍起になっていたんだが、高校まで来ると友達の必要性を自問自答するようになって結論として『友達とかいらないな』というところに落ち着いた。べ、別に友達ができないことを肯定的に捉えようと頑張った結果じゃないんだからね!

 

「そ、そっか…じゃあ、やっぱり迷惑だったかな」

 

どうやら城廻は俺の言葉を聞いて、こうしてふたりでいることが迷惑じゃないか不安になったらしい。や、まあねあまりこうして誰かと二人で歩く経験は小町くらいしかないからなんとも言えませんけどね。というかなんなの貴女。ほんとに感情が表に出るよね。

 

「今は迷惑どうこう言ってられる状況じゃないからな。これから喋らなきゃならんのだから、寧ろ俺から話しかけるのはハードル高いし、助かったまである」

 

「…ふふっ。そっか、慰めてくれてありがとね」

 

俺はお前を慰めたつもりは無いんですけどね。城廻がそう思うなら、もういいや。

こうして特に気まずくなることもなく会議する場所につき、俺達は適当なところに座る。そうして、会議は始まった。

 

 

 

 

 

1時間半ぐらいで会議はお開きとなった。と言っても今日は初めの1歩であるから、委員長決めて係分担して、その係内でリーダー決めて軽く自己紹介して終わった。逆になんでこれで1時間半かかったのか今になって不思議になるが、まあどうでもいいな。よし、帰るぞと思い廊下を歩いていた俺の制服が何者かに引っ張られた。

 

「ひっきがーやくん!」

 

あのですね、そういう行為が男子を勘違いさせて結果告白の後に玉砕し青春にトラウマが植え付けられるのです。自分が原因でそうなって欲しくないなら今後そういうことはやめて頂けると嬉しいのですが…と、心で唱えても仕方ない。意を決して城廻に言おうとする。

 

「あのな「ところで比企谷くんは自転車?」…そうだけど」

 

ダメだ、俺にはこの純粋な城廻にそんなこと言えない!弱い俺を許して…。

城廻ご俺の登下校手段を聞いてくる理由がわからなかった。まあ言ってくれるだろうと城廻の言葉に耳を傾ける。

 

「だったらこのあと付き合ってくれないかな?」

 

俺の身体の中でリピートされた言葉は『付き合って』のところのみだった。我ながらハッピーな頭してる。

暫く八幡脳内会議が開かれていたが、一人いた天才がなんとか場を収め、そして城廻の言を訂正することによって俺の冷静さは息を吹き返した。

 

「は、はあ。なんでまた…正直嫌なんだが」

 

「ほんとに正直だね…。ママに色々買ってきてって頼まれたんだけど、ひとりで行くの寂しいなーって、ダメ…かな?」

 

んーとですね。率直に言わせてもらうとここで断れる人は最早男じゃないんで精神科に行くか、自分の殺意を抑えるよう努力してください。立ち読みして当たりだったから後日全部買っちまったよ、あのマンガ。

とにかく可愛くてスタイルがいい子のうるうる上目遣いの頼みを、なんぞ引き受けざるの俺は緊張しながらも答えを返す。

 

「俺と行ってもどうせ寂しいと思うんだがな」

 

「ふふっ、ありがと。それじゃ駐輪場に行こーっ!」

 

俺の手が温もりに包まれる。案の定その手の主は城廻で、彼女は今俺の目の前で俺を引っ張りながら楽しそうに歩いている。こ、これが…これが青春なのか…。

 

 

 

 

 

その後なんやかんやであっちゅー間に日が過ぎて、気づけばもう文化祭当日。

記録雑務としての仕事の一環で出し物の写真撮影をしている頃、彼女は来た。いや、彼女ら…か。

 

「お兄ちゃーん!」

 

「比企谷くーん!」

 

廊下の前方から我が愛しの妹小町が、後方から癒しのクラスメイト城廻が走ってきた。そのまま小町は俺の左肩に右手を、同じように城廻は右肩に右手を置く。二人共走ってきたのだろう、俯いて息を整えていざ顔をあげると、反対の肩に覚えのない手があることに驚き尻もちをつく。

 

「うわっ!」

 

「わっ!?」

 

ここまでの行動、全く一緒で寸分の狂いもなくふたり同時だった。後は声を先に小町が出した所さえあってれば完璧だったのにとおもいつつ、前方にいた小町に手を出し立たせてから振り返り城廻も立たせる。

 

「およ?お兄ちゃんこの人は?」

 

「あれ?比企谷くん知り合いいたの?」

 

うっ…そういう純粋な笑顔でそういうこと言うのやめてね…。偶然にも出会ってしまった癒し三姉妹の長女と三女、ここは俺が仲を…と思うのは杞憂でいつの間にか俺抜きで談笑していた。いや、いいんだけどさ。

癒し三姉妹の次女とは偶然にも文化祭の仕事の一環で関わったので、癒し三姉妹を味方にした俺はもう何にでも立ち向かえます。例え再生の祝福がなくとも氷の魔女に立ち向かって倒すし。チョー余裕やし!

 

「ほうほう、めぐりさんはお兄ちゃんと一緒に実行委員やってるんですか」

 

「うん、そうだよー。比企谷くんちゃんと自分の仕事こなしてくれるし、時間余ったら私のも手伝ってくれるんだ」

 

そういうことを小町に言うと俺が家に帰った後に弄られるからやめて欲しいんだけどな…。予想通り小町の口角は気持ち悪いほど上がっており、ろくなことを考えてないことがひと目でわかる。

 

「あ、お兄ちゃん。小町は友達とまわってくるね!めぐりさん、こんな兄ですがどうぞよろしくお願いします」

 

小町は言い終わるか終わらないかの瀬戸際で廊下の先に走っていってしまった。さて、俺は仕事を再開するとしますか。歩き出そうとした俺は城廻が俺の制服の裾を掴んでいることに気づく…はあ。

 

「せめて横を歩け。流石にこの人混みに後ろをついてこられても困る」

 

聞いてすぐに俺の隣に来て何も言わずに手を握る城廻。顔は俯き、その姿は何かに憤りを感じているか、はたまた恥じらいを感じているようだった。この数週間の中で小町の次に喋った城廻の、感情はわからないが心理はある程度把握できるつもりでいた。それも傲慢であったと、今それを見て感じているが。

 

「そういえば城廻。お前は仕事大丈夫なのか?」

 

「私の仕事はもう後始末の時にしか残ってないんだ。だから文化祭中はお暇なんだよ」

 

「そうか。なら友達誘えばよかったのに」

 

「ふふっ。私たち2人にはシフト回ってないでしょ?クラスのみんなが実行委員の2人は頑張ってくれたからクラスのことは自分たちに任せてって張り切ってたよ」

 

なるほどそういう理由でシフト表貰えなかったのね。俺てっきり『比企谷?…あー、ヒキタニ君ね。忘れてたわ、テキトーに入って。あははは!!』とか言われるのかと思ったわ。

そして驚くべきことに、どうやら俺はクラス内で嫌われている訳では無いらしい。なんでも俺が実行委員になってしまった理由は城廻にあるらしい。この機会に本人に聞いてみよう。

 

「なあ、城廻。この間俺が寝てる時にクラスのやつが俺が実行委員になった理由は城廻的なことを話してたんだが、どういう意味だ?」

 

「あ、ああ……えっと。怒らない?」

 

「内容によるが少なくとも今は怒るつもりはない」

 

「うーん、信じられないよ…」

 

なんだかんだで暇つぶしになったし並大抵の事じゃ怒るつもりはない、というか城廻相手に怒って気まずくなるのは今はまだ避けたい。

考えた末にいうことに決めた城廻はこっちを見ながら理由を話す。

 

「最初も言ったけど比企谷くんいつも1人だったよね?」

 

「…ああ、初日にそんなこと言ってたな」

 

「うん。比企谷くんはそれが好きなのはなんとなくわかったんだけど、それって私からしたら少し寂しいなって思ったんだ」

 

なんだそんなことか。概ねわかったが、しかし無駄だ。確かに俺はひとりが好きだ、大好きだ。愛してると言ってもいい。故に「ひとり」から離れたい時もある。小町から借りて読んだ少女漫画にも書いてあった、恋人関係でも距離を置くことがあるらしい。だったら、俺も「ひとり」という状況から距離を置くことが必要ではないか。その時間を俺は小町との会話で消費していた。その時間のほんの少しが城廻に回ってきただけだ。俺の生活は変わらない。

 

「だから、私は比企谷くんと仲良くなりたかった。こんなの自己満足だってわかってた。比企谷くんはこのこと、望んでないだろうなって薄々感じてた」

 

「余計わからん。ほんと、なんでこんな事を」

 

「……これ以上は言えないかな。けど、これだけは言わせて」

 

一呼吸置く。人の雑踏も、模擬店から聞こえてくるはずの声も、文化祭の雰囲気でさえ、遠いもののように感じた。

 

「私は、比企谷くん『で』良かったんじゃない。比企谷くん『が』よかったんだよ」

 

「…そうか。ならいい、俺も楽しくなくはなかったからな」

 

こいつの近くは居心地がいいことを、俺はそろそろ認めなければいけないらしい。

こいつと話すことが楽しいことを、俺はそろそろ認めなければいけないらしい。

そして、どうやら…

 

こいつに惚れたことを、俺はそろそろ認めなければいけないらしい。


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