俺ガイルキャラ生誕祭!!   作:Maverick

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ふう、疲れた。まさかの前後編。

自分もこんなに長くなるとは思ってなかったし、半分位デートだし。とある方と。


場面設定ですが、八幡はなんとか2年生中に奉仕部内の問題を解決←解消ではない。そして3年生に進級、小町は無事に総武に入学できた。とまあ、そんな感じです。では、どうぞ!!


比企谷八幡生誕祭2016!!
八幡のbirthday 前編


8月8日、この日は何を隠そう俺の誕生日である。

しかし、そんな日も俺は関係なく受験勉強に精を出していた。高校3年生となった俺は、ある程度規則正しい生活を送りながら健康的に勉強を進めていた。

去年の事もあり小町は全面的に俺をサポートしてくれる。ついさっきも半日くらい息抜きしたら?と提案してくれるくらいだ。しかもその上、晩飯のリクエストまで聞いてくれた。ありがたい、それだけでお兄ちゃん明日から頑張れるよ。

そんな事もあったので少し早めの昼飯を済ませ現在は正午。リビングで本を読んでいる。

すると、机の上のスマホが震え始めた。なになに、地震なの?机の下に頭入んないよ?どうしよう、と内心パニックになっていた。

 

「お兄ちゃん、電話しないの?鳴ってるよ」

 

「え、だって親父たちは仕事だし小町はここにいるじゃんか。誰が掛けてきてんのかわかんねーのにやだよ」

 

渋々電話に手を伸ばし掛けてきている人を見る。な、なんだと…。まさか、嘘だろ。こんな事あっていいのか!?

 

「…戸塚だ」

 

あまりにも意外過ぎて、頑張って出した言葉がこの四文字。一度深呼吸してから応答ボタンを押す。頑張れ、俺。平常心を装うんだ。

 

「よう、戸塚。どうかしたか?」

 

『よっ、八幡。えっとね、今からお出かけしない?』

 

午後は息抜きしたら?と言われたので読書に勤しもうとしていたが戸塚からのお誘いだ、断るわけがない。

 

「もちろんいいぞ、どこに行くんだ?」

 

『え、えっとららぽかな?八幡、今日誕生日だよね?』

 

驚いた、ただその言葉でしか表現出来ないほど俺の心は驚きで埋め尽くされていたのだ。

 

「あ、ああ」

 

かろうじて出された声。キッチンで洗い物をしている小町がくすくす笑っているのにも反応できないほど混乱していた。これは小町が1枚噛んでるな。よくやった、アイス買ってきてやる。

 

『良かったあ、間違えてたらちょっとショックだったよ』

 

「そ、それはともかくとして何時に何処に集合だ?」

 

『えっと、ららぽの近くの駅前に2時で大丈夫?』

 

恐らく南船橋のことを言っているのだろう。現在の時刻は12時過ぎ、今から準備しても余裕だろう。

 

「分かった、それじゃまた後でな」

 

『うん、また後でね。八幡!』

 

可愛いなぁ、戸塚は。マジ戸塚、とつかわいい。流石トツカエル。

 

「お兄ちゃーん、電話誰からだったのー?」

 

小町が食器洗いを終わらせこっちに歩いてきながら問いかけてくる。こっちの天使も可愛い。トツカエルに対抗するとコマチエルになるのか。よし、画家に頼んで絵にしてもらおう。

 

「戸塚だ、今からららぽ行ってくるわ」

 

「了解であります!あ、お兄ちゃん。部屋の鍵閉めといてくれる?小町のお友達呼ぼうと思うから」

 

小町に頼んで親父に頼んでもらいつけてもらった部屋の鍵。というのも受験勉強の時に変な邪魔(猫って悪意がない分払いにくいよね)が入ると困るので、誰も入れないように付けてもらったのだ。

小町のアホは父親譲りなのか、嬉々として玄関につけるような鍵を付けた。そのため外部から鍵を閉めることも出来る。何やってんだよ、親父。

 

「おう、小町も鍵の管理しないと意味無いけどな」

 

俺が一番信用している小町には合鍵を持ってもらっている。小町の部屋のダイヤル式の鍵がついている引き出しに入っているらしいので、取られる心配はないだろう。

 

「もっちろんだよ!ほらほら、早く準備して、遅れるより早く行くほうがいいでしょ」

 

「それもそうだな、服頼めるか?」

 

「はあ、ほんとにしょうがないごみぃちゃんだなぁ。分かったよ、小町が見繕ってあげる」

 

「いつもすまないね」

 

いつしか言ったようなセリフを吐く。あ、あれだ。ブライダル記事の依頼辺りだった気がする。

 

 

時は流れ1時半、既に駅前に到着している俺はベンチに座り戸塚を待つ。30分も早く来てしまったが、相手が戸塚だとテンション上がってそんな事どうでもよくなる。

 

「はちまーん!待ったー?」

 

改札口から走ってくる戸塚。あんた、男らしく見られたいんじゃないの?なんでショートパンツなんか履いてんの。似合ってるからいいけど。

戸塚の格好は白のTシャツにデニム生地のショートパンツ、動きやすそうな格好にスニーカーでまるで今から運動するような雰囲気を醸し出している。しないよね?八幡やだよ、運動とか。

 

「いや、そんなに待ってない。4,5分くらいだ」

 

「そっか、えっと誕生日おめでとう!」

 

こう、面と向かって言われるの恥ずかしいな。戸塚は気づいてないだろうけど、多分俺今顔赤いわ、マジっべーわ。戸部るくらい気が動転してる。Be cool me.Okey.Perfect.

 

「それじゃ行こっか、何が欲しい?」

 

「そうだな…勉強の合間に息抜きできるようなものがいいな」

 

「うーん、とりあえず雑貨屋で聞いてみよっか」

 

「だな」

 

その後俺達は雑貨屋でピンとくるものを見つけられずにららぽを右往左往する事になった。と、なるとやはりあの人が降臨する訳であって。来なくていいよ、折角戸塚と楽しんでたのに。

 

「あっれ〜、比企谷くんだ〜」

 

「雪ノ下さんですか、お久しぶりです。さようなら」

 

「ちょっと、ちょっとー、もう少しお姉さんとお話しようよ〜」

 

「えっと、八幡?この人って雪ノ下さんのお姉さん?」

 

「ああ、そうだが。去年の林間学校の後雪ノ下迎えに来たろ?」

 

去年の林間学校、小学生のお手伝い。鶴見留美の問題の…解消。クリスマス以来会えていないがどうだろうか。楽しく過ごせているのだろうか、お兄ちゃんスキルの1つである年下の心配が発動された!

 

「ああ、そういえばそうだったね。えっと、雪ノ下さん、初めまして、戸塚彩加って言います」

 

「えー、比企谷くーん。雪乃ちゃんはどうしたのー?去年ここであった時と違うじゃなーい」

 

「去年は利害の一致と言うべき状態でしたし、あと戸塚は男です」

 

「やっだなあ、比企谷くん、お姉さんに冗談は…え、ほんとなの?」

 

やっだなあ、雪ノ下さん、この状況で嘘言うわけないじゃないですかぁ。と、雪ノ下さんと一色の口調を足して2で割ってみる。うん、キモイな。でもまあ一色がやるとあざといで済まされるんだよな。世の中理不尽だ。

 

「マジです、証拠なら俺の頭の中の記憶にあります」

 

「ど、どういうこと…?」

 

「春休み、日帰りで温泉行ったの知ってますよね?」

 

「もちろん、小町ちゃんの合格祝いと奉仕部のこれからの精力付けにって行ったんだよね?」

 

そう、蟠り(わだかまり)が全てなくなり元以上の関係となった奉仕部が、俺の妹の合格祝いのために日帰り旅行を計画してくれたのだ。

その話は今はどうでもいいのだが、話の流れでもうお分かりだろう。

 

「戸塚はその時俺と一緒に男湯に入りました」

 

「そ、そうだったね。ははは、修学旅行では一緒に入れなかったから嬉しかったよ」

 

1度男子の制服を見てもどうしてもジャージのイメージがあるから男子にはあまり見えないのだが、1度裸を見るとその後からは戸塚は美少年だ、というように脳が処理するようになった。優秀だな。

 

「そ、そうなんだ。えっと戸塚くん、でよかったよね?私と雪乃ちゃんでごちゃごちゃするかもしれないから陽乃でいいよ」

 

「は、はい。じゃあ、陽乃…さん?」

 

「ね、ねえ比企谷くん。この子本当に男の子?」

 

あの雪ノ下さんが狼狽えている。面白くなりそうだからちょっと二人きりにしてみよう。経過は見れないが結果だけでもいいだろう。

 

「そうですよ、っとすまん戸塚。ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

「わかった。あ、飲み物買ってきてくれる?喉乾いちゃった」

 

「ああ、適当に買ってくるわ。雪ノ下さんはなんかいります?それともどっか行きます?」

 

「そうだねえ、面白そうだし戸塚くんとお話してようかな」

 

どうやら今日の雪ノ下さんは取り巻きを連れていないらしい。そのせいなのか少し気が緩んでませんか?戸塚みて和んでるように見えるのは俺だけですか、そうですか。

 

「で、何買ってきます?」

 

雪ノ下さんが戸塚を見てフリーズしているので再度声をかける。まあ、雪ノ下さんにとっては雪ノ下とは違うベクトルの可愛さを感じるのだろう。

 

「んー、水とかでいいや。お金使わせる趣味ないし」

 

「わかりました、ではこの辺にいてくださいね。戸塚もな」

 

「「いってらっしゃ〜い」」

 

さてさて、どうなるのやら。と、気になるがまずはトイレトイレっと。

 

 

ふう、トイレを済まして飲み物を買って戻ってきたんだが…状況を整理しよう。

 

「え、えっと陽乃…さん。ちょっと」

 

「どうしたのー?彩加くん?」

 

立場逆転とは想像してなかった。やはり戸塚でも雪ノ下さんには勝てなかったか。雪ノ下さんが戸塚に密着しほっぺもつんつんしてる。百合百合しいんだけど片方男子なんだよな。

とりあえず戸塚を助けるためにふたりに声をかける。

 

「お待たせしました。ほれ、戸塚。お茶な、これでいいか?」

 

「う、うん。ありがと〜、八幡」

 

きっとこの言葉には《助けてくれてありがとう、ほんとに助かったよぉ》という意味も込められているのだろう。ちょっと涙目だし。

 

「で、雪ノ下さんは水ですよね。はいどうぞ」

 

「ほんとに水を買ってくる辺り比企谷くんだよねえ」

 

何を言い出すのかと思えば、今更ですね。世界を変えさせて欲しいと発狂するほど人気なんですから、いいじゃないですか。

 

「さ、戸塚。休憩はこんなもんでいいか?また周ろうぜ」

 

「そういえばなんで比企谷くんと彩加くんが2人でららぽに来てるか聞いてなかったなあ。どうしてかなあ?」

 

「今日は八幡の誕生日なので誕生日プレゼントを買いに来たんです!」

 

「あ、おい、戸塚…」

 

戸塚はやってしまった。というより戸塚にしてやられた。だってこっち見て今までに見たことない小悪魔的な微笑み浮かべてこっち見てんだもん。可愛いけど、今日それやられるとなあ。困る、八幡超困る。

 

「そうだったの!?それはそれは…比企谷くん♪」

 

「はあ、何ですか?」

 

「そうだなあ、まずは誕生日おめでとう!それで、第一志望の大学は何処なの?」

 

「いきなりですね…。一応県内の私立文系ですけど、どうかしました?」

 

なぜこんなこと聞くのだろう。しばらく考えるそぶりを見せた後雪ノ下さんはこっちを見据えて、かなり素に近い笑顔で言った。

 

「じゃあ私からはちょっと早いけど、大学に着ていけそうな服を3セットくらいプレゼントしちゃうね!」

 

「え、そんなにですか?流石に悪いです」

 

「まあまあ、お姉さんの素直な祝福だから。何も言わずに受取りなさい」

 

「まだ合格決まってないんですけどね」

 

でもまあ、正直なところ何とかなるだろうなとは思っている。葉山は結局文系に来たが、サッカー部がいいところまで行っていたらしく引退が遅れていた。その為、俺のレッテル文系学年3位が学年2位に変わったのだ。

このこともあり大学は何となるだろうとは思っているのだ。油断大敵という言葉から習い勉強はしているが。

 

「比企谷くんなら大丈夫だよー。それで、合格してもここに住んでるんでしょ?合格祝いは大人な服買ってあげるわよ。エンジェルラダーに行けるくらいのね」

 

「なんで貴女がその店を知ってるのはこの際置いときますが、それってあまりにも高すぎませんか?」

 

「いいの、いいの!その代わり、ちゃんと連絡したら来てね?月に1回くらいは呼んじゃうかも♪」

 

この人との付き合い方にはもう慣れた。適度に反抗、適度に諦める。つまり、先ほど戸塚という犠牲の下反抗したのだ。だったら次は諦めるしかないだろう。

 

「金あんま使いたくないんで、頻度少なめでお願いしますね。雪ノ下さんに払わせるのはちょっと怖いんで」

 

「ひっど〜い。もう、そんな事言うなら私彩加くんとどっか行っちゃうよー」

 

「…はあ、すみませんでした。訂正します、雪ノ下さんに払わせるのはなんか嫌なんで」

 

「八幡、それ大して変わってない気がするよ…」

 

言うな、戸塚。それを言われたら弱い。が、魔王は納得してくれたらしく仮面の笑顔で何度も頷いている。

 

「じゃ、彩加くんも比企谷くんも行こっか。お姉さん機嫌いいから彩加くんの服も買っちゃうね」

 

「そんなに買うと流石に金なくなりますよ。ユニクロ行きましょ、もしくはしまむら」

 

雪ノ下さんに引っ張られ戸塚と俺はららぽを縦横無尽に移動した。結局一式1万超×4セットを買っているのに余裕そうな雪ノ下さんに、少し尊敬の意を抱く。この人なら俺を養ってくれそうだなとか一瞬考えてしまった。

 

「さて、お姉さん用事あるからもう行くね。またね、彩加くん、八幡♪」

 

連れ回されている間に八幡と呼ばれるようになったが、戸塚も八幡と呼んでいたので、どの八幡呼びに注意すれば雪ノ下さんにヒットしてくれるのか分からなかったので諦めた。

はあ、帰ろ。因みに戸塚には気になっていた作家の完全に独立した世界線の短編集を買ってもらった。これなら1日1話とかで息抜き出来るだろう。ありがとう、戸塚。

 

「んじゃあ俺達も帰るか」

 

「う、うん。えっと、八幡の家に行ってもいいかな?」

 

な、なんだと…。戸塚と半日遊ぶだけでなく戸塚が我が家に来るだと!?今日は最高の誕生日だ!!雪ノ下さん、誰それ、俺の知る雪ノ下は同級生の元部長だけだぞ。

 

「まあ、いいが、小町に誘われたりしたか?」

 

「うん、そんなところ!」

 

うまくはぐらかされた気がしないでもないが、どうでもいい。俺の心の中は戸塚が家に来る幸せでいっぱいだ。マジIPPAI OPPAIだ。

俺と戸塚は電車に乗り我が家の最寄り駅まで行く。戸塚の荷物を自転車の籠に入れて2人並んで家に向かう。雑談が心地よい。

家に着いたところで戸塚が何やらもじもじしてる。どうしたんだろうか。

 

「どうした、戸塚?具合でも悪いのか?」

 

「え、えーっと、そ、そう!ちょっとお腹痛いからお家に入ったらトイレの場所教えてくれる?」

 

「そうか、分かった。とりあえず入るか」

 

「そうだね」

 

かなり慌ててたけどそんなにお腹痛いのか?そんなことにも気づけなかったなんて…戸塚検定2級への道のりは長いな。

 

「ただいまー。小町ー、お客さんだぞー、戸塚が来たぞー」

 

「お、お邪魔します。八幡、トイレどこ?」

 

「あ、そうだったな。えっと、廊下まっすぐいって途中にある左の扉入ったらすぐある」

 

「あ、ありがとう。先にリビングに入ってていいよ。荷物とかもリビングに置いておいてくれればいいから」

 

戸塚はそう言うと、すり足ながらも急いだ様子でトイレに向かった。

にしても、小町からの返事がないな。リビングの電気は付いてるんだが、なんでだろうと思いながら荷物をとりあえず玄関近くに置いて、ドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!!」「比企谷くん」「比企谷!」「先輩!!」「お兄ちゃん!!」「…比企谷」「お兄さん!」「比企谷先輩!」

 

「「「「「「「「誕生日、おめでとう!!!!」」」」」」」」

 

は?なんで家のリビングにこんなに人がいるの?

我が家に響き渡る幾重にも重なった声と音。声は俺を祝福し、音は空気を盛り上げる。半ば放心状態でいるの肩をつつかれる。

後ろを向くと戸塚がいて『パンっ!』クラッカーを鳴らして、笑顔で元気に言った。

 

「八幡!改めて、誕生日おめでとう!!」

 

「ど、どうなってんだ。これ?」

 

「おかえりー、お兄ちゃん!実はね、小町があの手この手を使ってね、知り合いみんなに頑張って声をかけたの。そしたらね、お兄ちゃんのためにってこんなに集まってくれたの!」

 

小町の説明を聞いても理解できない。いや、理解はできてる。が、納得は出来ていないのだ。

深呼吸してから状況を整理する。この場にいるのは由比ヶ浜、雪ノ下、平塚先生、一色、小町、戸塚、川崎、大志、一色弟だ。

雪ノ下、由比ヶ浜、平塚先生、一色、小町、戸塚がいる事にはまだ、なんとか納得できる。なんだかんだで小町以外の5人とは1年近い付き合いがあるのだ。由比ヶ浜の誕生日もつい2ヶ月前に2回目の誕生日会も開いたし、まあ、なんだ、それなりに仲いいんじゃないかなとは思う。

川崎が何故いるのか…恐らく大志経由で来たのだろう。

この春、奉仕部に3人の新入部員が来た。俺の妹の小町、川崎の弟の大志。そして一色の弟、名を一色はやてと言う。

ああ、なるほど。だからこの4人がいるのか、と納得すると同時に涙が溢れてきた。

 

「ちょ、ヒッ、ヒッキーどうしたの!?大丈夫!?」

 

泣いている俺の心配をしてくれた由比ヶ浜が近づいてくる。

彼女の優しさにはなにか裏があるんじゃないかも何度疑っただろうか。しかし、彼女が奉仕部で見せる優しさは紛れもない本物で雪ノ下や俺に対する気持ちも全て本物なのだろう。

 

「比企谷くん、貴方少し感動しすぎじゃないかしら?そんな見る方からしてみれば気持ち悪いだけの顔はあまり長い間する必要は無いわ。今すぐ泣きやみなさい」

 

早口で捲し立てながらそっぽを向いた雪ノ下が毒舌を放つ。

でも、俺は知っている。彼女が早口で捲し立てる時は大体照れている。俺限定で毒舌がオプションで追加されるが、それも今では微笑ましい、子供の足掻きのように見える。彼女も、心に秘めた優しさがあり、正義を肯定する強さも持つ。

一度、深呼吸し涙を止める。あの日、本物を欲した日から泣いてなかったからかなかなか止まらなかったが、なんとか止めうまく働いてくれない頭を働かせ一言一言丁寧に放つ。

 

「由比ヶ浜、雪ノ下、平塚先生に一色、小町に戸塚に川崎、大志と一色弟…めんどくせ、はやてでいいな。俺のためなのかは知らんが一応そういうことにしといて、集まってくれてありがとう。高校3年間ぼっちライフだと思っていたのに、こんな事になるなんてな。平塚先生に奉仕部に連れていかれた時はほんとに不幸を嘆いたが、今では平塚先生には感謝してもしきれないですわ。

これは、そろそろぼっち名乗れねえな。全国のぼっちのみなさんに失礼だわ、とりあえず、あれだ。もう一言言わせてくれ。」

 

ここまで言ってから俯いて、息を整える。なのに俺の胸の中で鼓動を打つ器官が整うわけではなく寧ろ早くなっていく。顔を上げて一人ひとり目線を合わせる。

平塚先生、まだここ泣くとこじゃないんで、一回泣き止んでもらっていいですか?

一色、お前ニヤニヤしながらこっち向くな。恥ずかしいだろ、あっち向いてろ。

小町、まるで保護者のような顔してんじゃねえよ。年齢的には俺の方が上だ。

川崎、お前まで年下見るような微笑み方するんじゃねえよ。ついさっき雪ノ下さんも戸塚に向けてたぞ。

戸塚、ららぽでの小悪魔フェイスしてるな。ドッキリ大成功とか思ってんのか?全く、ほんとに大成功だよ。

大志、そんなキラキラして目でこっち向くな。モンスターボール投げたくなるだろうが。

はやて、サムズアップしてんじゃねえよ。絵になりすぎてて困るわ。

由比ヶ浜、俺達は何回すれ違ってきたんだろうな。お前との付き合いが一番疲れるぜ。なんだよ、その涙目で笑顔作るって芸当、器用だな。それと、個人的に有難うを伝えたいからまた来年にな。

雪ノ下、似ているようで似てなかった俺達だが今じゃ同じ空間にお互いに似たような顔してんな、自分で気づいてないようだがお前泣きそうになってんぞ。来年、覚悟しとけよ。受験の合間に時間見つけてやり返してやる。

心の中で一人ひとりに簡単な挨拶を済ませ決意を固める。一度目を閉じる。そして、ゆっくり開いて俺は言葉を放った。ひとつひとつの音を大切に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら全員、嫌いではない」

 

「「「「「「「「「ぷっ、あははははははは!!!!!」」」」」」」」」

俺にはこれで精一杯だ。雪ノ下や川崎も普通に笑ってるし。まあ、これはこれでいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が笑い終わった後に平塚先生が俺の手を引く。

 

「どうしたんすか?このまま逃避行とか嫌っすからね」

 

「君は私をなんだと思っているんだ。少し悲しいぞ」

 

平塚先生は俺を机の端、所謂誕生日席に連れてくると座るのを促してくる。渋々座ると、皆も手頃な場所に座る。

 

「では、乾杯の音頭を比企谷妹!」

 

「はぁーい、乾杯の音頭をさせていただきます。比企谷小町です!

お兄ちゃん!小町はお兄ちゃんがこんなに素敵な人達に囲まれているのを見れて嬉しいよ…でもでも、やっぱりお兄ちゃんの一番は小町であって欲しいかなーって思います!今の小町的にポイント高い!!

さあさあ、前振りもこの辺に乾杯をしたいと思います。皆さん、コップ持ちましたね?ではでは、お兄ちゃん!誕生日おめでとう!かんぱーい!!」

 

小町の音頭を皮切りにみんなが近くの人達と乾杯していく。そんな中、俺に気を遣って真っ先に俺の方を向いてくれた平塚先生と川崎には心の中で感謝しよう。あざす。

その後も(ジュースを)飲めや(近所迷惑にならない程度に)騒げやの楽しい時間を過ごした。例えばこんなシーン。

 

【ここからちょっと台本形式入れます。苦手な人は飛ばしてください】

《シーン1》

 

雪乃「あの、比企谷くん。少し聞きたいことがあるのだけれど」

 

八幡「なんだ?心配しなくても来年のお前の誕生日も祝ってやるぞ、俺以外の人が」

 

雪乃「それも確かに気になるのだけれど、今は他のことよ」

 

八幡「ん、どうした?俺に画面…見せつけ…て」

 

結衣「ゆきのんもヒッキーもどうしたのー?写真?見せて見せてー!」

 

八幡「戸塚ー!助けてくれ!流れで撮らされたプリクラがリークされた!」

 

彩加「え、別にいいんじゃないかな?僕は気にしないよ?」

 

八幡「ああ、俺のアイデンティティが崩壊していく…。どうした、二人とも?そんなに驚いて」

 

雪乃「これは一体どういうことかしら、比企谷くん。確かに私達の計画では戸塚くんとららぽで時間を潰して貰うというものだったのだけれどなぜプリクラが姉さんが送られてきてさらにプリクラには『はちまん♡はるの♡さいか』なんて書いてあるのかしら、事情を説明してもらえるかしら」

 

結衣「どどどういうことなの!?しかもヒッキーにやけてるし!!マジキモイ!!」

 

八幡「誕生日でもこれかよ…まあいいか。こんなやりとりも久しぶりだし」ボソッ

 

雪乃「何か言ったかしら、早く説明してくれるかしら?説明しないのなら姉さんに聞くわ、今なら姉さんの言うことなんでも信じそうだわ」

 

八幡「わ、分かった実は…」

 

 

《シーン2》

 

八幡「ふぅ、疲れた」

 

はやて「比企谷先輩!」

 

八幡「おお、一色弟…じゃなかった、はやて。てか、はやてでいいか?」

 

はやて「今更ですね、しょうがないんでそれでいいですよ」

 

八幡「そうか、ならお言葉に甘えてはやてと呼ぶことにするわ。ところでよ、はやて。俺ずっと気になってることあるんだけど聞いていいか?」

 

はやて「何ですか?答えられる範囲でなら答えますけど」

 

八幡「一色ってよ、家でもあんなにあざといのか?流石に家では素で過ごしてんのか?」

 

いろは「せせせ先輩!?なんですか、家の中のことまで心配アピールしつつ家庭内事情探ろうとしてるんですか?ごめんなさい、男の子にここまで素を見せられるのははやてと先輩くらいで家族は私の素も知ってますから心配してもらう必要は無いですし、家庭内事情を知りたいなら私と結婚してからパパとお酒の席でゆっくり語っていただけませんか?末永くお願いしたいですけど、まだ付き合ってすらいないのでひとまずはごめんなさい」

 

八幡・はやて「聞いてたのかよ」

 

《シーン3》

 

八幡「なんか皆楽しんでんなあ。いいなあ」

 

小町「なぁに言ってんの。お兄ちゃんが今日の主役でしょ、お兄ちゃんそっちのけで遊んでるように見えてお義姉ちゃん候補同士で牽制しあってるだけだから」

 

八幡「小町ちゃん、その説明聴いても理解出来ないし逆にお兄ちゃん怖くなってきちゃったよ」

 

 

【台本形式終わり】

 

間違いなく今日は18年間で最高の日だ。中学2年生の夏に宅配レンタルしたプリキュアを一週間ぶっ通しで見ていた時より幸せを感じる。

時刻は8時。そろそろ解散時だろう、そう思い帰るように言おうとする。が、ここで小町が喋った。

 

「さあさあ、皆さん。プレゼント、もちろん持ってきましたよね?今からお兄ちゃんに自分の気持ちを伝えながらぁ、渡してもらいます!!」

 

小町が言い終わりはやてにアイコンタクトをとる。はやてはやる気なさげに立ち上がり小町の言葉の続きを言う。

 

「あー、名付けて『どきどき、何でもありの暴露大会♪やったもん勝ちだよ♡』だっけ?」

 

「あーりがとう!はやてくん!」

 

はやて、お勤めご苦労様です。さて、反論を…と思い立ち上がろうとする。あの、平塚先生、立ちたいんで手どかしていただけませんか?服つままれるドキッとする上に動けないんでやめて頂きたいです。

 

「じゃあまずはぁ、お手本の小町から!!」

 

そういうと同時に小町は一度部屋から出ていき階段を上っていく。小町の部屋のドアを開けて、すぐ閉めて、階段を駆け下りる音がして、小町が戻ってきた。

 

「はあ、はあ。ふぅ、お兄ちゃん!小町からはこれを上げる!!」

 

そういって小町が渡してきたのは10枚くらいの紙切れ。観察してみると『お願いごと叶えちゃう券♡(えっちいのはダメだよ!)』と書いてあった。あ、はい。

 

「いつもありがとうね。こんなごみぃちゃんには今すぐにでも結婚相手を見つけて欲しいんだけど、見つけるだけでいいから、小町が高校卒業するまでそばにいて欲しいなぁ…なんちゃって」

 

「あざと可愛い。小町に85点」

 

「ポイント制なんだ!?」

 

それはあれだ、その場のノリだ。気にするな。

しかし、小町の方はそう考えておらず…なんか変なこと言い出しそう。

 

「それもらいです、結衣さん!!

こうしましょう、一番高得点だった人には次のお兄ちゃんからの誕生日プレゼントに何を貰うか決められる権利をプレゼントしましょう!」

 

「はい、質問」

 

「なぁに?お兄ちゃん?」

 

さっき恥ずかしいことを言ったのが効いているのかあんまりこっちを見てくれない。ハチマンカナシイ。

 

「その際に俺の拒否権は?」

 

「あまりにもひどいもの以外ではないと思ってもらって結構です!」

 

やっぱりこうなるのね。小町の返答に了解と乾いた笑いで返答する。

果たして、どうなることやら、はあ。




操作間違えて八幡の誕生日前に投稿してしまったので速攻で非公開にした後コピーして、新しいの作ってイマココ。
パトラッシュ、疲れたよ。.˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚.

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