おっさんPの奮闘記   作:九十九茄髪子

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これからは週一目標ですかね


第2話

「はぁ・・・」

 

今日何度目か解らない溜め息を吐きながら駅前のベンチに腰掛ける。すっかり着なれたスーツも、歩き回って少し汗を吸った今では不快に感じる。

カシュッ

買って置いたコーヒーを飲みながら道行く人達を眺める。可愛い娘、綺麗な娘、ちょっとあか抜けない娘。皆違って皆良いねぇ。

あー今の娘とかかなり良かったな-彼氏が居なければ。んーあの娘は・・・ちょっと化粧が濃すぎて元が分からんな。しかし茶髪や日焼け?顔が真っ黒な娘が増えたよな本当。それに、あのルーズソックスってのは歩きにくくないものかねぇ。

人を見ていたはずなのに何時しかファッションの方に意識が逸れている。ってかこうやってじっくり眺めてるとホント怪しい人だよな俺。通報されるのも納得だわ。

ここ最近で慣れたことに自嘲気味にフッと息を吐く。

平日の昼間っから駅前で俺がしていること、そうスカウトである。(ナンパじゃないよ)

出来たばかりのうちのプロダクションには当然、デビューするアイドルが居ない。

オーディションも募集しているし、社長や俺がこうしてスカウトに繰り出しているが、いかんせんプロダクションの知名度がないというのが絶望的だ。

下手なナンパと間違われたり、警察を呼ばれることもしばしば。本当にこのままでやっていけるのかとも少し不安になったりもする。

それと社長から言われているスカウト基準も曖昧なのだ。社長いわく、「直感でティンとくると思うよ。君達と会ったときもそうだった。」らしい。

 

(ティンってなんだよティンって)

 

今の所声はかけてはいるがそのティンと来た娘は居ない。

だからまだ大丈夫、そう言い聞かせて尻を払いながら立ち上がる。

 

「ちょっとアンタ」

 

(次は反対側の出口に回ってみるか)

 

「聞いてんの?呼ばれたら返事ぐらいしなさいよ」

 

(あーでもその前に一服したいな)

 

「聞きなさいってのこのっ」

 

(よし取り敢えず喫煙所n)

 

「無視するんじゃないわよっ!」

 

「うおっ」

 

一歩踏み出しそうとした所を後ろから思いっきり引っ張られる。つまり、今の俺は踏ん張りが効かないわけで-

 

「うおおおおぉぉ?!」

 

「ちょっあんた、きゃっ!?」

 

思いっきり後ろにひっくり返ってしまう。・・・道路に倒れこんだ割には全然痛くない、むしろ背中の辺りが柔らかい・・・?

そもそも何で俺は倒れたんだっけ?確か後ろから女の子の声がして-

 

「どけっどきなさいよっ!」

 

「ご、ごめん」

 

背中越しに伝わったくぐもった声を聞き慌てて身体を起こす。

振り向いた先に現れたのはセーラー服の少女の姿、最近の流行りと違い日焼けとは無縁の白い肌。少し垂れ気味の目にはんしてどこか勝ち気な印象を受ける。

制服なのだが可愛いというより綺麗系、衣装が変われば充分色気があるだろう。

視線を更に下げるとめくれ上がったスカートと白いシンプルな布地、そこは年相応なんだなって少し安心したりも-

 

「いつまでジロジロ見てんのよこの変態」

 

ドスッ

そんな音をたてながら彼女の足が俺の股間に突き刺さる。

 

「   」

 

文句を言ってやりたいがパクパクとするだけで口から声がでない、全身に嫌な汗が流れる。

周囲の人は好奇的な視線を向けてくるが、男性陣の大半は同情の視線を向けてくれる。

 

「ちょっと、そんなに強く蹴ってないでしょ」

 

さっきの少女が気軽にいってくれるがこっちはそれどころではない。急所の一大事なのだ、威力が強いとか弱いとか関係ない。ああ段々周囲の人が増えてきたな。

 

「ああもう。行くわよ」

 

少女の手に引かれるまま連れていかれる。抵抗する気力すら起きない。これ潰れてないよね?

その日某駅前ではスーツ姿の男が女子高生に連れていかれるという少し変わった光景が見られたという。

 

 

 

「で、俺に何の用だったんだい?」

 

あれから少女に引っ張られること数分、少し落ち着いてきた俺達は喫茶店で向かい合っていた。目の前にいる少女が先程凶行に走った娘と同一人物とは思えない。

凄い美少女だし、何て言うかオーラがある・・・気がする。こんな娘をプロデュース出来たらなぁ。

 

「アンタが最近居るっていう芸能事務所の人で合ってる?」

 

「合ってるけど、なんで知ってるんだい?」

 

「学校で有名よ、駅前で聞いたこともないプロダクションから勧誘されたって」

 

「確かにうちの事務所は出来たばかりだからなぁ。で、その無名事務所に何か用かい?」

 

「その前に聞かせて、アンタの所の事務所は何を目指してるの?」

 

あれれー?なんで俺が聞かれてんの?と言うか立場が逆転してませんかね?

 

「うちの目標は単純だ、日高舞を越えるアイドルを排出する。その為には社長や俺が全力でサポートする。」

 

「本気で言ってるのね?」

 

「当然だ。」

 

「分かったわ。なら私がアンタ達の目標を叶えてあげる。」

 

「はい?」

 

「だから私が日高舞を越えるアイドルになってやるって言ってるのよ」

 

ええと、どういうこと?彼女がうちのアイドルになる?

そんな急に言われたって、そもそも彼女のスペックは

顔-文句なし

スタイル-文句なし

何かオーラ持ってる。さっきまで俺はプロデュースしたいと思ってた。アイドルのスカウト権は任されている。

あれ?これ問題なくないか?

混乱しながら彼女の目を見つめると強い眼差しで見つめ返してくる。

一切逸らされない視線の奥に火が燃えているような気がして、引き込まれていくのを感じる。彼女が輝くところが見たい、いや俺が輝かせてみせる。

何時の間にか彼女をプロデュースしないという選択肢は消えていた。

 

「ちょっと無視は止めなさいよ、で返事は?」

 

姿勢をただし、彼女に手を伸ばしながら告げる。

 

「こちらとしても是非宜しくお願いします。」

 

「私は高橋礼子よ、これから宜しくお願いするわねプロデューサー?」

 

そう言ってこちらの手を握り返しながら笑う彼女はとても魅力的だった。




ようやくアイドルが一人登場
礼子さんが若い、NGとかこの辺赤ん坊ですよ

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