「おまえ、遅れてきたのに何でそんな偉そうなの?」
すると突然それまで会話に入ってこなかった遊真が割り込んできた
「…………誰、あなた?」
「オサムに助けられた人間だよ」
「やめろ空閑、おとなしくしてろ」
そんな三雲の言葉を無視して数歩前に出た遊真はまた言った
「日本だと人を助けるのにも誰かの許可が要るのか?」
「それはもちろん個人の自由よ、ただしトリガーを使わないのならの話だけど、トリガーを使うならボーダーの許可が必要よ。当然でしょ?トリガーはボーダーの物なんだから」
「なに言って―――」
「違うッスよ木虎、トリガーは元々ネイバーのッス」
これ以上遊真に言わせてたらボロを出すかもしれないオレが言葉を遮り代わりに言った。これ以上言わせてしまうとボーダーに目をつけられてしまう、それは困るなと思ったオレは自然と口が開いていた
「な……何を言ってるのよ護、そんなわけ」
「ボーダー設立時からいるから色々詳しいんス、トリガーがネイバーの物でオレたちはそれを元に複製や新たに開発しているだけッス」
この場にいる者たちはオレの言葉で時が止まったかのように静かにしている
「はーいはい、このままだと話が脱線しそうだから戻そう、三雲君」
さすがにオレの爆弾発言で混乱させてはいけないと思ったのか、嵐山が手を叩いて余計な争いが出ないようにと話を戻そうと言ってきた
「はい」
「後で呼ばれると思うから学校が終わったらそのまま本部に行くように」
「……はい」
そう答える修の表情は少し暗い、違反しているんだから当然だ
「今回のことはうちの隊から報告しておくよ、君には弟と妹を守ってもらった恩があるからね処罰が重くならないように力を尽くすよ」
その後回収に来た人たちがトリオン兵を回収して戻っていった。幸いにも壊れた校舎が人が少ない空き教室に近かったためか通常授業は行われた、そして放課後になりオレも報告書を書くついでに本部に行こうと思い隊長の木崎にそうメールしてから下駄箱で三雲を待つとすぐに来た
「オサム、あそこにいるのってマモルって奴じゃないのか?」
「え?………ホントだ」
「……お?オレも報告書書かないといけないから一緒に本部に行こうッス!」
修と遊真が来て3人で学校を出ようとしたとき校門で人だかりできていて、何事なのかと思っているとその中心にはなぜかファッション誌にでも載ってるようなポーズをとって、生徒たちから写真を撮られている木虎が立っていた
「なに……やっているッスか?」
「………ッハ!?………コホン……待ってたわ、確か三雲君だったわね」
咳払いした木虎はさっきのことを無かったことにするのか何事も無かったかのように振舞っている、しかも校門前で立っていたのは本部基地までの同行、つまり逃げないようにするための監視ってことだ
(誰か~あのカッチカチのプライド揉み解してほしいッスよー)
夕焼けで辺りが橙色に染まった時間に女子と歩くのは少しドキドキする場面だが他に修と遊真がいるからドキドキもしないし一緒にいる理由が本部への同行と報告書の提出だから尚更ガッカリ感がある
「勘違いしないでほしいのだけれど私はあなたをエスコートしに来たわけじゃないわ、あなたが逃げないように見張りに来たのよ」
まさか木虎の口から堂々と言うとは修のことがよほど気に入らないようだ
(勘違いって………あれッスか?ツンデレってやつッスか?)
まだ日本のことをよく知らないオレは木虎のさっきの言動にツンデレかと思ったが、さっきはじめて会ったばかりなのにそれは無いなと思った
「見張られなくたって逃げたりなんかしないよ」
「簡単にルールを破る人間の言葉が信用できる?もう少し自分の立場を自覚したほうがいいわね………………………いいわ、少しくらいは褒めてあげる、C級のあなたをA級の私が今回だけは特別に」
先を行く木虎がブツブツ何か言ったと思ったら少しは修を認める気にはなったようだが何故か「C級」とか「A級」の部分を強調して言った
「いや……あれは」
「ただし、派手に活躍してヒーロー扱いされたかって調子に乗らないことね」
「いや乗ってないよ!全然!」
「ハッキリってあなたがいなくてもあたしたちの隊が事態を収拾してたわ、あなたはたまたま現場の近くにいただけよ」
ここまで派手に修に突っかかる木虎を見ると昔の自分を見ているような気がした
(父さん達からみたオレってこんな感じだったんスかね)
昔のことを少し思い出していると隣にいた遊真が修の前に出た
「いやいや無理だから、別に責めるつもりは無いけどお前全然間に合ってなかったから、普通に」
「なんなのあなたいきなり?何であなたが付いて来ているわけ?」
「いきなりじゃないよ、ずっといたよ。付いてきたのはお前だろ。オレはネイバー来たとき学校にいたけどお前らを待っていたら確実に何人か死んでたぞ、お前はもっとオサムとマモルに感謝してもいいんじゃないの?」
「部外者は黙っててくれる?さっきも言ったけど彼のやったことはルール違反なの、きちんと評価されたいならルールを守ることね」
(部外者どころか思いっきり当事者ッスよ………)
オレがそんなこと思っていると遊真が修に対抗心を持っていると指摘すると、木虎は面白いくらいに動揺した。それからA級がどうとか精鋭がどうとか部外者がどうとか2人が色々と言い争っているとオレたちの近くで
ゲートから現れたのは鯨みたいに大きなトリオン兵だ
「あれはイルガーじゃないッスか!!?こっちの国じゃまだ見たこと無いのに!」
「こっちの国?………護!あれを知っているの!?どうなの!?」
「うるさいッス、とりあえず行きながら教えるッスよ、トリガー
オレに続いて木虎と修がトリガーを起動した、だけど修が自身の武器であるレイガストを出そうとしたがトリオン切れで出ることは無かった
「トリオン切れ?やっぱりC級ね、そこでおとなしくしていなさい」
「護、知っているなら分かっているんだろ?」
「最後が厄介なんスよね?その前に倒すッス」
遊真に聞かれたがイルガーの対処法はあっちの国で経験済みだから問題は無い、そう言うと木虎とともに跳んでイルガーに近づく
「それで?最後が厄介って何よ?」
「イルガーは拠点制圧するための爆撃型トリオン兵ッス、気を付けないといけないのは下にいないこと。トリオンが尽きるまで爆弾を落としまくるんス」
屋根から屋根へ跳び徐々にイルガーに近づく、あと少しでイルガーは橋に近づこうとしていた
「それにイルガーは一定のダメージ負うと全トリオンを使ってそのまま墜落して自爆するんス!!だから木虎には住民の避難と救助をしてほしいッス、イルガーはオレが倒すッス」
「ちょっと待ってよ!自分だけ手柄を取るつもり!?あたしだってA級なのよ!それに対処法を聞いたから問題ないわ!!」
「あ!ちょ……」
オレが止める暇も無く木虎はイルガーの上に飛び乗った
「あの……バカ野郎がっ!」
すぐにオレも飛び乗ろうとしたが落ちる爆弾の下には逃げる親子がいて、春風の銃撃で撃ち落す。そんなことをしているうちにイルガーは既に過ぎ去ってしまい飛び乗ることは出来なくなっていた
「はぁ………木虎が倒してくれるのを期待するしないッスね」
イルガーから落ちてくる爆弾を銃弾で当てて街への被害を減らしていこうと決めた。サブトリガーにある「予測」を使って落ちてくる爆弾の軌道を視界に表示、あとはタイミングを合わせて春風で撃ち落していく
「早くシェルターへ!!……木虎早くしろよ、移動しながら爆弾に当てるのは骨が折れるッスよ」
するとイルガーの上から爆発音が響いて木虎は大丈夫なのかと不安になるがすぐに銃撃聞こえたから無事みたいだった、それでイルガーは何とか倒せたみたいだが。ガキンッと口が歯で固く守られた
(木虎のやつ倒しきれなかったのか!?一か八か………っ!!)
A級だからって自信を持ちすぎた所為でイルガーは自爆モードになってしまった。オレは近くのビルに登って賭けだけど春風を両手に持って屈折旋空を使った。何度も使って横っ腹を攻撃して、何とか川に落とせないかやってみるが思うようにいかない
(ここで旋空の威力を上げれば倒せれるけれど、でも確実に街に落ちるっ!どうしたら………鎖……?)
街へ落ちようとしていたイルガーをどうすればいいのか迷っていたら、腹の中央辺りから鎖っぽいのが河川敷に伸びていくのが見えた。そして鎖に引っ張られるようにイルガーは動くと川に落ちて派手に爆発した
「っ!!木虎は………無事みたいッスね」
爆発があったたりから木虎が上がってきた。オレは近くに行って手を取ると立ち上がらせた
「トリオン体に感謝ッスね、生身なら確実に風邪引いているッスね。大丈夫ッスか木虎?」
「………なんで前もって教えてくれなかったの!?あなたがちゃんと対処法を教えてくれていれば私一人で倒せた!!いい!?私もA級なの!!」
手柄を横取りされた所為なのか木虎は八つ当たりをしてきたが、そのときオレが木虎の頬を叩いた
「な……?………何よっ!?八つ当たりされて怒ったの?そうよね!………っ!?」
オレはまた叩いて今度は何も言わせないように木虎を抱きしめた
「全部言わなかったのは謝るッス、けど自分がA級だからエリートだからってあまりにも自信過剰ッス、そんなこと続けていたらいつか絶対痛い目に遭うッス。だからもう少し自分の周りを見るッス」
「あ……あなたに言われなくたってちゃんと見ているわよ……それよりこれ以上はセクハラで訴えるわよ?」
「わっわっ……ごめんッス!!」
諭すように言うが、唐突に木虎の目が獲物を狩るような目になって、自分を状況を改めて見るとこれは確かに不味いなと思い木虎を離して謝った
「さ、被害の対処にあたるわよ!!」
「は……ハイッス」
上にあがって声がするほうへ行くと一般人に囲まれた修が感謝されていた
「あ、彼女たちです!皆さん彼女たちがネイバーを倒してくれたんです!」
対応に困っていたのか修はオレと木虎を見つけてネイバーを倒したのは2人だと言った、確かに事実だが自分たちになすり付けるのはやめて欲しいと思った
「バカ言うな!!何が助かっただ!?ウチの店は壊されちまったんだぞ!!」
「俺の家もだ!!」
「ボーダーは何をやっている!?」
「何で街にネイバーが出るんだ!?」
命があるだけいいのに家とか店とか、こっちの世界では平和ボケしてる所為で大したことの無いことまで文句を言ってくる、問い詰められて返答に困った修は口ごもる
「それは………」
「ネイバーによる新手の攻撃です。詳しくは近々ボーダーから発表があると思います」
修の近くまで来ていた木虎はイレギュラー
「はいはい、壊れた家や店はその時に聞いてくださいッス、とりあえず今は避難所にいてくださいッス」
オレも続けるように言うと、木虎は修を下がるように言った。 あれから数十分して住民を避難所に行くように納得してもらいオレたちは当初の予定通り本部に向かうため直通の出入り口に向かった
ただの資材置き場にしか見えない場所の倉庫と思われる場所に行くと木虎が壁にトリガーをかざすと扉が開いた
「ふむ、トリガーが基地の扉の鍵になっているのか」
「そうよ、ここから先はボーダー隊員しか入れないわ」
「じゃ、俺はここまでだな、なにかあったら連絡くれ」
「わかった」
空閑は手を上げてそう言うと帰っていった。基地に着くと木虎は修を連れて会議室に向かったので、オレは何処かの部屋を借りて報告書を書こうと歩いていると嵐山隊の
「本部に何か用かな?」
「学校のこととさっきの新型トリオン兵の報告にッス、学校から玉狛まで遠いッスから何処かの部屋を借りようかと思ったんス」
「聞いたよ、爆撃型のトリオン兵なんだってね。初めてなのによく倒せたね」
「あはは、別にオレは初めてじゃないんスけどね……」
「?………まぁ報告書書くならウチの隊の部屋を使うといいよ」
「あざッス!」
時枝に案内されて嵐山隊の部屋に入ると
「お?護じゃないッスか」
「今日はどうしたの?」
2人にPCを借りたいと話すとすぐに借してくれて、報告書を上げると丁度木虎がやってきて同じように報告書を書き始めた
時枝たち3人に礼を言うと部屋を出て玉狛に戻ろうとすると、迅がダンボールに入ったファイルを抱えて本部長補佐の
「お、奇遇だな護~これから会議に行くんだけど一緒に来るか?」
「いや、いいッス。腹減ってるんで」
「そうかーそれじゃまた明日な」
「おつかれーッス」
迅と別れた後本部のラウンジで少し遅めの夕ご飯を食べることにした、会議と言っていたから今日は帰りが遅いだろうから帰って作るよりここで食べた方がいいと思ったからだ
そう思っていると携帯にメールが着信したことを知らせる音が鳴り開いてみると案の定叔父からのメールだった
カツ揚げ定食を頼み席に着くと諏訪隊のオペレーターの小佐野が塩ラーメンを持ってきた
「相席してもいい?」
聞くだけ聞いといて勝手に向かいの席に座り箸を割って食べ始めた、一緒に食べる相手もいないから座ってもよかったけどせめて返事を聞いてからにして欲しかった
「そういえばだけどね」
「ん?」
オレもカツ揚げ定食のカツを一切れ食べ終える頃に小佐野から声をかけてきた
「この前諏訪さんと日佐人を助けてくれたでしょ?2人が礼を言いたいって」
「この前って……1ヶ月近くも前の事じゃないッスか………別にいいのに」
「いや~それでも隊長として言わねぇと示しがつかねぇ!って」
タバコの真似をするように口元に指を2本持って諏訪のモノマネをして言った
あの風貌で礼は言いたいなどと真面目だなと失礼な事を思った、人は見かけによらないとはよく言ったものだ
「分かったッス、今からッスか?」
「今日はもう帰ったから無理ねー、明日以降なら大丈夫だよ」
「そうッスか~」
玉狛に所属しているオレは基本的には本部に用が無い限りは来ない、それならと小佐野は携帯を取り出しメアド交換しようと言ってきた
それなら連絡がつきやすいと護も携帯を取り出し赤外線通信で小佐野のアドレスを登録した
翌日迅がサイドエフェクトでイレギュラーゲートの原因を見つけて開発室の鬼怒田にレーダーに写るように頼み広報室の根付に市民に呼びかけたりして見かけたら連絡するように言ったりしてその後C級隊員も駆り出して小型トリオン兵…ラッドの駆除が始まった
ラッドは倒されたバムスターに内蔵されていたようで周囲の人間からトリオンを少しずつ吸収して
今までボーダー隊員の近くで開いたのは一般人より多くのトリオンを吸収できるからということだった
『レイジさん2時の方向20mに3対いるよ』
「了解した」
『京介、6時の方向55mに1体いるよ』
「了解です、宇佐美先輩」
『小南、3時の方向40mに4体いるよ』
「あ~もう多すぎよ!!」
『護、12時の方向80mに5体いるよ』
「ちょ……俺だけ多くないッスか!?」
『はいはい文句は後~まだまだいるんだからがんばって駆除してー』
「というより護!アンタはサイドエフェクトであたし達より居場所が分かるんだからもっと動きなよ!!」
「ちょっとー!?俺中学生ー!もっと優しくしてッス~」
宇佐美のナビゲート聞きながらラッドを駆除していると小南が苛立ちの所為かオレに半ば八つ当たりをしてきた、だけどオレの心からの叫びは小南の「うっさい!!」で一蹴された
『う~し!これで作戦終了だ!みんなよくやってくれた、お疲れさん』
ラッド駆除作戦が開始されてもう直ぐで1日経とうとする頃、迅が作戦終了を知らせてきた
「はぁ~……はぁ~………もう……無理………俺まだ中学生なのに1日中働かされるなんて…………あだっ!?」
「なーに言ってるのよ?ボーダー隊員なんだから中学生だからって理由は通じないわよ」
「桐絵ちゃんの鬼~痛い!痛いッス!!」
「トリオン体に痛みなんてあるわけ無いでしょ!!」
近くの木にもたれかかっていると小南が近づいてオレにチョップをしてきた、嫌味も込めて言うと今度はグーで叩かれた
「相変わらず小南先輩と護は仲がいいッスね」
「古い付き合いなんだから当然だろ」
2人のやり取りを少し離れたところで見ていた烏丸と木崎はそんな事を言ったが「聞こえているぞ!!」と見事にハモった