ワールドトリガー「Re:自戒の絆」   作:悠士

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久々の自戒の絆だ~

相変わらずの心理描写の下手さ・・・時間が掛かったよ・・




19話 嘘の代償

 凍えてしまう寒さに耐えながら何をあげようか悩む。去年は高いチョコを買った。1つ500~600円もするようなのを。今年もそれでいいかなと思うけど、同じものをあげるのは飽きてしまうしつまらない

 

「うーーん、悩むなぁ」

 

 あと叔父さんには何をあげようかも考える。こっちはすぐに決まった。目を向けた先に時計があったから、色々ある中で腕時計の1つに決めた。艶のないブラックの、文字盤が黄緑色に輝くものを

 喜んでくれるといいなと、期待を膨らませながら支払いを済ませて商品を受け取った。あとは支部のパーティーのプレゼント、と考え始めた矢先見つけた

 

「スノードーム・・綺麗だなー」

 

 ガラスの球体の中に置物があり、逆さにしたり振ったりすると、中の雪に似せた粉みたいなのだ水で満たされた中を舞うやつだ。大小様々で、中の置物もツリーみたいなのからサンタクロースみたいなのとか、ログハウスとかだったり魚だったり。綺麗だなって見惚れていた。プレゼント用じゃなく部屋に飾るための個人にも欲しいなと思ってしまった

 

玄界(ミデン)って本当に、綺麗なものがいっぱいあるッスなー・・」

 

 建物は綺麗で、晴れた日の空も澄んでいて青い、動物も多いし。何よりご飯がとびっきりにおいしい。調理器具一つとっても色々ある。というかありすぎるほどだ

 母さんから聞いていたよりずっとすごい国だ。ネイバーに対しては肩身狭いけれど

 

「そういえば何でオレの噂が広まったんだろ・・・?遠征部隊に三輪隊くらいしか心当たりがないな。まさか広めてる・・わけないッスよね」

 

 考えたくは無いけど、誰かが言わなければ噂が立つわけもない。火のないところに煙は立たぬって諺もある。オレの事を知っている誰かが口を滑らせたのかは分からないけど。これ以上広まらないでいてほしいところだ。最悪、バレてしまって街の人たちから恨まれてしまうかもしれない。それは避けたい。好きなものとか気に入ったお菓子が売られている店に入れなくなるのは嫌だ

 

 噂の解決策を探ろうとしても中々見つけられず、悶々としたままスノードームを3種類買った。ログハウス、クリスマスツリー、サンタクロースの5cmほどの人形が入っている。全体は拳くらいの大きさだから、部屋に飾るのに丁度いい大きさだ。これでプレゼント選びの悩みから解き放たれたからか、小腹が空いてきた

 

「何か食べよ・・お?フルーツジュースか」

 

 淡い色合いのカラフルな看板が目に入った。そこはジュースの専門店らしく、注文してからフルーツを絞ったり、ジューサーで刻んだりしているため新鮮な味がするらしい。オレはパイナップルが好きだからそれを注文。濾していないから果肉入りで半透明の液体に浮かんでいるのが見えた。2分ほどで透明なカップには黄色い果汁と果肉が入ったジュースが差し出された

 

「ん~~おいしい!」

 

 ストローに口を付けて吸うと甘くて酸っぱいパインの果汁が口の中に広がった。好きな味に満足してもう一度吸うと今度は果肉がきた。太目のストローだから詰まることもなく口に入ってきた。目的のものも買って目標達成したから、今日はもう帰ることにした。道中何を作ろうかなと考えた

 

「豚挽き肉はある・・キャベツもまだ半玉あるし。あ、でも冷凍が少ないっけ?弁当のおかず少なくなるなー」

 

 冷蔵庫の中身を思い出しながらメニューを考えていると、足りないものもあることも思い出したので結局スーパーに寄って材料を買って帰ることになった。おかげで重たいの持ったから手が痛かった

 

「さてと、はじめるか」

 

 エプロンを着てご飯を作り始めることにした。テレビから聞こえるニュースを聞きながら

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あ、お帰り!」

 

 もうすぐで完成ってところでおじさんが帰ってきた。リビングに入るとネクタイを緩めてキッチンを覗いてきた

 

「お。今日はハンバーグか?」

 

「うん。あとロールキャベツ。ひき肉の期限がちょっとやばかったから」

 

「そうか。いつもありがとうな」

 

 お礼を言ってくれるのは嬉しいけど、そういうのは恋人に言ってあげたらいいのにと思う。というかおじさんももう30前なのに好きな人とかいないのか不思議だ。もう4年半もいるけどそれらしい影や噂は全く聞かないのだ。むしろ鈍感なのかもしれない。沢村さんから好意を寄せられているのに

 

 意地悪して唐辛子でも入れてやろうかな、なんて思ってしまった。やったら料理で遊ぶなと怒られそうだからやらないけど。大分できるようになったハンバーグとロールキャベツを食べ終えると学校の準備をした。といっても明日は終業式だから課題を入れるバッグを持っていくだけでそれ以外は必要ないけれど

 

「ぁ、星が・・」

 

 ふと窓を見てみれば雲ひとつない夜空に星が煌いていた。どの国でも見える空は同じだなと思う。戦闘のあとだと少し悲しく見えるが、それ以外だといつも綺麗に見える。もし、父さんと母さんがこの星から見ているのだったらこう言いたい

 

「大丈夫だよ、オレは平気だから」

 

 慕ってくれている仲間もいる。頼れる人たちもいる。仲のいい親友もできた。噂が流れてしまっているけど証拠はないし多分近いうちに忘れられると思う。それに明後日はクリスマスで、玉狛支部でパーティーをやるから楽しみだ。午前中は青柳たちと遊んだりもするし。大晦日の大掃除は面倒だけど

 

 

 

 

 目が覚めて起きると部屋はあまり明るくない。カーテンを開けると雲が広がっていて雨か雪が降りそうだった

 

「うわ~傘必要なのかな・・」

 

 みてるだけで気分が下がりそうなほど暗い。とりあえずベッドから出てご飯の準備をしようと立った。キッチンで準備をしていると叔父さんも起きてきた

 

「おはよう護。今日は天気が悪いな」

 

「うん。午後から雨になりそうだって」

 

 テレビを点けていたから朝の天気予報で知った。曇りのち雨とお天気キャスターが言っていた。幸い今日の終業式は午前中だけだから傘とか持っていく必要はないけど、夜には防衛任務があるから濡れながらやることになる。トリオン体と言っても服装とか濡れると普通に重くなる。撥水機能とかあればいいのにと毎回思ってしまう

 オレのトリガーにはバックワームを入れていないから雨合羽代わりになんてできない。仕方ないとは言え濡れると動きが少し鈍くなってしまう。地面も滑りやすくなってしまうから慎重に動かないといけない。本当に面倒だ

 

「じゃあ明日は雪になるかもしれないな」

 

「うん。その可能性が高いって言ってたし」

 

「丁度いいじゃないか、クリスマスに雪が降るとか」

 

「そうだね。はい、味噌汁できたよ」

 

 会話をしながらも慣れてきた準備を終わらせてテーブルに並べて食べる。予定を確認してから制服に着替えてカバンも持つ。一応折りたたみ傘を入れて学校に向かう

 

「ん?なんだ・・・?」

 

 通学路でいつもと違うことに気付いた。雰因気が少し尖っている感じがする。誰かに注目を浴びせているような、そんなはっきりとは分からないがあまりいい気分にはなかった。気にはなるがとりあえず学校に行くことにする、だけど段々と近付くことでなんとなくわかってきた。オレに注目が集まっていることに

 

 あまり納得はできないけど、学校には行かないと冬休みの課題とか受け取らないといけないから上靴に履き替えて教室に向かう。階段を上って真ん中の教室のドアを開けると、そこには目を疑う光景が広がってた

 

「はよーッス!」

 

「きゃぁぁ!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「え・・?オレ、なにかしたッスか?」

 

 ドアの近くにいた女子が大げさに驚いて何度も謝ってきた。何かした覚えもないのに謝られると頭が真っ白になる

 

 すると、青柳がオレに信じられないことを、眉間に皺を寄せて言い放ってきた

 

「なにしに来たんだよ!!ネイバー!!」

 

「っ!!・・・え・・?なん・・・ぁ!!うそ・・・」

 

 まさか親友にネイバーと言われるなんて信じられなかった。心のどこかで大丈夫だろうと思ってしまっていたのだろう。言われた瞬間に感じた衝撃が強すぎた。ハンマーで頭を殴られるとはこんな感じなのかと思うくらいに

 

 そしてやっと黒板にも書かれている言葉に気がついた

 

『忍田護はネイバーだ!!』

『アイツはオレたちを騙している!』

『裏切り者!!』

『スパイは消えろ!!』

『家族を返せ!』

『お前が死ね!!』

『人殺し!!』

 

 など色々と

 

 納得がいった。尖った雰因気はオレに対する敵意だったんだ。オレはソレを知っているのに、なんで気付かなかったのだろう。こっちの空気に染まってしまったのかもしれない。だから鈍くなったのかも

 

「ち・・ちが・・・オレは・・・」

 

「何が違うんだよ!!ずっと僕達を騙してたくせに!」

 

「そうだよ!ねえ!学校にネイバーが来たときもトリガーのこと詳しかったよね!」

 

「そうだよ!ネイバー現れたのも絶対お前がいたからだよ!!」

 

「違う!あれは!」

 

「黙れよ!!お前がネイバーじゃないって証拠はどこにあるんだよ!?」

 

「そ・・・れは・・・」

 

 何もいえなかった。言わせてもらえなかった

 

「っ!・・ぃて。いたっ!・・・っぃ!」

 

 何を言っても信じてもらえない状況に呆然とすると筆箱が投げられた。ペットボトル、教科書、体育館シューズ、丸められた紙とかも。するとみんなの怒りは上がって椅子まで投げられた。腕で防いで顔に直撃は免れたけど、背もたれの板が額に当たった

 勢いでバランスも崩れて壁に激突して、そのまま崩れ落ちた

 

 痛い。顔もだけど、何より心が。親友の青柳にネイバーと言われた。裏切られた気分だった

 

 ああ、そうか。そういうことか。裏切られるって・・・・すっごい痛い・・あいつ等が・・どれほど苦しかったのか、今になって分かるなんて・・・

 

 春多と一菜の経験した痛みをこんな形を知ることになるなんて思わなかった

 

「隊長!!」

 

 騒ぎを聞きつけてなのか2人が来た。後から遊真と修と千佳ちゃんも。

 

「っ・・・おまえらっ!!」

 

「春多!・・・教室に戻れ」

 

「でもっ!」

 

「戻れ!・・・いいからっ・・戻れ」

 

 血を流しているオレを見て激昂する春多だが、なんとか止めることはできた。納得できない2人は怒りを込めた表情から戻さなかった

 

「おい!おまえボーダーなんだろ!そいつ捕まえろよ!!」

 

「そうだよ!なんでこんなところにいるんだよ!!」

 

「何だよこいつ等?ネイバーだと分かったらこんなことするのか?」

 

「落ち着け空閑」

 

 同じネイバーの遊真も状況を理解すると表情が険しくなった、そこに修が出てなんとか抑えた。苦しい中なんとか考え出したのはみんなが納得するように修に拘束されることだ。頭が痛むがなんとか立ち上がって廊下へ出る

 

「修・・・行こう」

 

「護・・・」

 

「護・・っ!大丈夫か?」

 

 血が顎にまできた。拭き取らないと制服を汚してしまう。雨に濡れても大丈夫なようにもしものために持ってきていたタオルで拭こうとしたとき、階段からレイジさんが現れた。一瞬驚いたがすぐにいつものポーカーフェイスに戻った

 

「っ・・・レイジ・・ざん・・・」

 

「本部長から電話があってきた。今マスコミとかに発表する準備とかしている」

 

「レイジさん!」

 

「修。護はオレが連れて行くから、お前達は学校が終わったら玉狛に来い」

 

 傷口を押さえて涙を流している間にも話が進んでいく。いまのオレには何かを言えるような余裕もない

 

「行くか、護」

 

「・・・・・ごめん、春多、一菜・・・ごめん」

 

「隊長が謝ることじゃない!」

 

「そうです。隊長が悪くないですよ」

 

「ごめん・・・・ごめん・・」

 

 階段を降りるときに2人に何度も謝った。何も相談もせず捨てて行ったことに対して、あのことが一体どれだけの傷を負わせたのか。今のオレみたいに相当辛い想いしたはずだ。気付いてくれてるのかは分からないけど、あとでちゃんと謝ろう。こんなことで罪が消えるわけじゃないが、言っておかないと納得ができない

 

 車に乗って移動している途中、レイジさんが一つの封筒を渡してきた

 

「これは・・・?」

 

「冬休みの課題だ。やっておけ」

 

 中を開けると確かに数学や国語や物理など課題が入っていた。戻ってくるのが少し遅いと思ったらこれを受け取っていたのか。でもこんなの今更意味なんてないのに

 ネイバーだとバレてしまっているから学校に行ったところでもう意味なんてない。カバンに入れてしばらく車に揺られていると本部に着いた

 

 まず行ったのは医務室だ。頭の怪我を治すためにだ

 

「少し痛いけど我慢してね」

 

「・・・っ・・っぃ・・・!」

 

 切れた傷口を縫うための針が刺された。注射なんかよりも痛くて手を握り締めて耐える。3針ほど縫ったところで糸が切られガーゼが被せられて包帯を巻かれた。大袈裟だと漏らしたが、先生が言うには傷口が小さい割りに出血が多かったと。椅子を投げられたと言うと驚かれた。むしろこの程度で済んでよかったとまで言われた、当たり所が悪いと障害が出る可能性もあったという。ほんとうにこの程度で済んで良かったと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





【挿絵表示】

繋心「お前達ネイバーなんだって?」
護「うん、そうだよ!」
怜「ああ、それがどうした?」

繋心「オレと友達になろうよ!」


護がこんな目に遭ったばかりというのに笑っていられるのは心にグッっと来るものがありますね・・それにネイバーを恨んでいる繋心が友達になろうと言うのは嬉しさもあったり

と続けてですが、傭兵のネイバーの篠島怜が主人公の「彼方の傭兵」も書いています。よければそちらも読んでいただけると嬉しいです!

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