Re:超高校級の幸運のボクがゼロから始まる異世界生活?絶望的だね   作:エウロパ

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第七話 『ラインハルトの憂鬱』

 

 

〝サテラさん〟〝フェルトさん〟〝ラインハルトクン〟〝エルザさん〟〝ロム爺さん〟〝徽章〟〝盗品蔵〟〝剣聖〟〝腸狩り〟

 

ボクがループで集めた重要なピースはこれだけ。

このピースをどう組み合わせれば今回の事件を解決し同時にループを抜ける事ができるのか……。

 

少しだけボクは考えた。本当に少しだけね。

恐らく考えた時間は一分すらもたっていないと思う。

 

今回の事件はそんなに考えこまなくても直ぐに解決できる事件だ。

 

たぶん誰でも分かるはずだ。

これだけのピースがあればね。

逆に思い付かない人が居るとしたのなら顔を見てみたいよ。

 

まぁ正直、ラインハルトクンというピースがある時点で今回の事件は簡単に終わらせられる。

別にラインハルトクンが居なくても最低三回目のループの時には解決は可能だったんけどね。

 

でも、せっかくラインハルトクンという新たな登場人物が現れたんだから使わない手はないよ。

 

しかも、ボクの考えたこの方法は自分の命を張らなくてもすむんだからね。

 

命を失う可能性が低いからループして精神をすり減らす事もないし、何よりボクがうっかりエルザさんに殺されてループし作戦が失敗する危険性も低いんだ。

 

まさしく〝簡単〟そのものだ。

 

まぁあとはせいぜい不幸が来ない事を祈るしかないね。

剣が飛んできて首切断とか竜車にはねられるとかは正直もう勘弁だよ。

 

さぁ、エルザさん。

こんなくだらない茶番はもう終わらせようか。

 

そして、神様なんてものが居るのなら願おう。

どうかこのループの先に……この世界にボクが求める希望がありますようにってね。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

「……この辺かな」

 

狛枝は歩くのを止めると周囲を見渡した。

狛枝の立っている王都の通りには多くの人々が行き交って沿道には露店商の商店がいくつも軒を連ねている。

狛枝は周囲を注意深く見ながら考えた。

 

(……あの乱闘事件の餌にかかった……と言うことはこの辺りに彼は居るはず……)

 

狛枝はニヤッと笑う。

そして、目を瞑り大きく深呼吸をした。

 

(それじゃあ、やってみようかな。あんまり気は乗らないけどね……)

 

決意を込め目を開く。

 

「スゥ~~……」

 

狛枝は息を大きく吸い込む。

そして……、

 

「おーい!ラインハルトクーン!!居るんでしょ?ねぇ、てばぁ出てきてよラインハルトクーン!!」

 

狛枝は突然大きな声を上げた。

あまりにも突然の行動に狛枝の周りに居る人々は仰天したような目を狛枝に向ける。

中には関わるとまずいと思ったのかそそくさとその場を立ち去ろうとする者。無邪気な子供が母親に「あの人なにやってるの?」と聞きその母親が「見ちゃいけません」と言う様なありがちな光景も見られた。

 

だが、狛枝はそんなのもお構い無しに声を上げ続ける。

 

狛枝は静かなのが好きだ。

 

狛枝も本当はこんな事やりたくてやっている訳ではない。

しかし、これにもちゃんと意味があってやっていることなのだ。

 

「ねぇ!ラインハルトクーン!!」

 

(今、ボクが持っている〝ピース〟ではエルザさんという〝絶望〟に打ち勝つにはどうしてもラインハルトクンの力が必要だ。しかも、今回の作戦はラインハルトクンの協力を早めに取りつけなければならない。それに、ラインハルトクンとは絶対に良い関係を築いておきたい)

 

「ラインハルトクンってば~!!お願いだから出てきてよぉ~!」

 

(ラインハルトクンは前回のループでボクの仕掛けた乱闘事件に駆けつけてくれたはずだ。だとするとラインハルトクンは時間的に見てこの辺りの通りを歩いている可能性が高い。きっと、このまま声を上げ続ければラインハルトクンなら気がついてボクに声をかけてくれるはずだよね……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ラインハルトク~ン!!居ないのー?居ないならボク行っちゃうよ~!!ねぇ~てばぁ~………………あれ?」

 

狛枝は立ち止まり腕を組んで首を傾げた。

 

(お、おかしいな……この辺に居ると思ったんだけど……もしかして……間違えちゃったのかな?)

 

狛枝はポケットから電子生徒手帳を取り出し時間を確認する。

 

(不味いね……この辺に居ないとなると時間もないしもう一度やり直さないといけなくなる……)

 

狛枝はそう思い始めると電子生徒手帳が入っていた方とは逆のポケットに手を突っ込みリボルバーのグリップを握る。

 

(ラインハルトクンがまさかこの辺に居ないなんて……だとするとラインハルトクンは一体何処に……?これは、別の方法を考えた方が良いのかな?やっぱりもう一度、乱闘事件を……いや、でも……)

 

「ねぇ、君」

 

(うーん……ここで自殺しても良いけど、そうなると今回のループは無駄足になっちゃうんだよね……どうしようかな……)

 

狛枝は手を顎に当てる。

狛枝の頭にはラインハルトがこの場にいない幾つかの推測が浮かぶ。

 

その時、狛枝はようやく気がついた。

 

「あの……聞こえてるかい?」

 

考え事をしている狛枝の後ろから青年が声をかけていた。

狛枝は考え事を邪魔されたと感じムッとする。

 

「あ、ゴメン。ちょっと後にしてくれるかな?ボク、今は考え事を……」

 

狛枝は振り返りがら言った。

だが、狛枝は振り返り見たその人物を見て言葉を失った。

狛枝は目を見開く。

 

「あ……」

 

狛枝は自分の後ろに立っていた人物の顔を見てつい呆然とした様子で声を漏らした。

 

「…………」

 

狛枝の思考がフリーズする。

そこに居たのは長身で赤毛の美形の顔立ちをした……

 

狛枝の探していたラインハルトだったのだ。

 

「そ、そうか……失礼したね。それじゃあ、僕はここで待たせて……」

 

一方のラインハルトは呼ばれていたから来たのに何故か狛枝に待つように言われ困惑した様子で苦笑いを浮かべる。

それを見てようやく狛枝は思考を取り戻した。

狛枝は一変して満面の笑みを浮かべ嬉しそうに感激したようにラインハルトの両手を握った。

 

「ラインハルトクン!!君はラインハルトクンだね!?会いたかったよ!!」

 

「ぼ、僕の名前を知ってるなんて光栄だよ。だけど……」

 

ラインハルトは苦笑いを浮かべお世辞を言うと周囲の目線を気にして小声になった。

 

「できれば、その……もう少し声を下げてくれると嬉しいんだけど……」

 

ラインハルトの言葉に狛枝もようやく落ち着く。

 

「あ、ゴメン、ゴメン……ボクみたいなクズが大声で君の名前を呼ぶなんて不愉快だったよね……打ち首になっても仕方ないよね……」

 

「い、いや……誰もそこまでは言ってないんだけどな……」

 

ラインハルトは急にネガティブな雰囲気になった狛枝にまたしても困惑した様子を見せる。

 

「それで……君は僕をずっと探していたみたいだけど、どうしたんだい?」

 

ラインハルトはずっと思っていた疑問を述べた。

それに対して狛枝は顎の下に手を当て考える。

 

「……そうだね。時間もないし再会を喜んでいる時間はないか……」

 

「再会?僕達は前に会ったことはあったっけ?」

 

狛枝の発言にさらなる疑問を感じラインハルトは首を傾げる。

 

「あはは……まぁ、そこは気にしないでよ。実はちょっと困った事があってね、君がこの辺りに居るって聞いたから探しに来たんだ」

 

狛枝は笑顔で言った。

 

「困った事?」

 

「それを言う前に一応、ボクから自己紹介をさせてよ。ボクは狛枝凪斗だよ。よろしくね、ラインハルトクン」

 

狛枝はラインハルトに自己紹介をする。

 

「自己紹介を受けて僕がしない訳にはいかないね。それでは僕も改めて自己紹介をさせてもらうよ。僕はラインハルト・ヴァン・アストレア、既に知っているとは思うけどこれでも騎士だ。よろしく狛枝凪斗君」

 

「別に狛枝でも凪斗でもいいよ。ラインハルトクン」

 

「それでは狛枝と呼ばせてもらおうかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで……どうやら君の話は訳ありみたいだけど君の話は路地じゃないと不味いほどの話なのかい?」

 

狛枝はラインハルトを連れて近くの人気のない路地に入ってきていた。

ラインハルトは首をかしげながら狛枝に聞く。

 

「うん……あまり人のいる場所じゃちょっとねぇ……実はね。今回君に声をかけたのは君にボクの〝仕事〟を手伝ってほしいからなんだ。ちょっとボクだけでは危険過ぎてねぇ……」

 

狛枝は困った様な表情をするが仕事という言葉にラインハルトは怪訝な表情をした。

 

「……仕事かい?悪いけど内容にもよるよ?僕はこれでも騎士だからね」

 

ラインハルトの警戒は最もだった。

ラインハルトは騎士団の一員だ。

騎士である以上、民間人の仕事に介入するのはあまり良いことではない。

 

「うん。安心してよラインハルトクン。君の立場が分かったうえで言っているんだからさ」

 

「そうか……それじゃあ、話を聞かせてもらうよ」

 

ラインハルトは真剣な表情をする。

 

「ボクが君に頼みたいのは……」

 

狛枝がニヤッと笑う。

 

「〝腸狩り〟を捕まえるのに協力してもらいたいって事なんだよぉ……」

 

「……腸狩り?」

 

腸狩りという単語を聞いた瞬間、ラインハルトは険しい表情をした。

 

「また、意外な単語が出てきたね……君は……何者だい?見たところこの国の人間では無いようだけど……」

 

ラインハルトは狛枝に疑いの目を向けた。

 

(ま、初対面だし当然か……流石はラインハルトクン。騎士団に入っているだけはあるね……ここからは発言に気を付けないと……恐らくラインハルトクンは今、ボクの事を〝危険人物〟じゃないかと疑っている……何とかしてラインハルトクンの信用を勝ち取らないと……)

 

「あははは……鋭いねラインハルトクン。そう、ボクはこの国の人間じゃないんだ。仕事もしてないよ?学生だったからね」

 

狛枝は平然を装ってラインハルトとの会話を行うが慎重に言葉を選ぶ。

 

「じゃあ、君はどこから来たんだい?僕の不勉強で悪いんだけど君の服装はちょっと……見たことがなくてね」

 

ラインハルトの疑問に狛枝は腕を組む。

 

「うーん……何て言ったら良いのかな……」

 

狛枝は顔を俯いて困った様な仕草を見せた。

それを見たラインハルトが苦笑いをまた浮かべる。

だが、今度の苦笑いは今までの苦笑いではない。

狛枝の信用を失墜させかねない危険なものだ。

 

「別に答えたくないことは別にい言わなくても良いんだよ?僕は興味本意で聞いただけだから」

 

「いや、そうじゃなくてね。多分、ボクの出身地を言っても君を含めてこの国の人達は殆ど分からないんじゃないかと思うんだよ……信じられないかもしれないけどボクの生まれた国はここよりも遥か遠くにあって恐らく地図にも載っていない様な小さな国だからね」

 

「なるほど……それで君はどうしてそんな遠くの国からこのルグニカにやって来たのかな?」

 

「来たくて来た……という訳じゃ勿論ないよ。だって、ボクこの国の文字読めないし土地勘もないしお金だってもうちょっとしかないもん……ほら」

 

狛枝はポケットから果実店の店主さんから貰ったお金を取り出して見せる。

 

「これが今、ボクが持っている全財産だよ……状況だけでみればかなり絶望的な状況だよ……だけどね、ボクはツイてたんだ。この〝王都〟に辛うじてたどり着いた時に聞いたんだよ!今、この王都を騒がせている〝腸狩り〟って殺人鬼が居るってね!しかも、その殺人鬼を捕まえようと騎士団までが探してるって聞くじゃないか!だとしたら……ボクが先に捕まえちゃおうと思ったんだよ。これでもボク、調べるのは得意だからね」

 

「……ちなみに、何故腸狩りを捕まえようと思ったのかな?」

 

ラインハルトは鋭い目で狛枝の瞳を見つめる。

 

「あっはは!だって、腸狩りを捕まえられればもしかしたら報償金とか出るかもしれないでしょ?だってほら、ボクはこのままだと野垂れ死んじゃうの確定だし……進むも下がるも地獄って感じかな。それにある程度〝情報〟は手にいれたからね」

 

「そうか……」

 

ラインハルトは狛枝の話を聞いて自分の顎に手を当て少し考えた。

ラインハルトは狛枝の顔を見る。

 

(……ボクは〝ある意味〟嘘は言っていない。ラインハルトクンがこれで納得してくれれば……)

 

狛枝の頬に知らず知らずのうちに一滴の汗が流れる。

 

「はぁ……」

 

ラインハルトは目を瞑って大きく溜め息をついた。

 

(どう、かな……?)

 

狛枝は平然を上手く装いながら生唾を飲み込む。

 

ラインハルトは目を開いた。

 

「……君の言いたいことは大体分かったよ。君の状況もね……」

 

「それじゃあ……」

 

「残念だけど君には協力できない」

 

「…………」

 

(バレちゃった……かな?)

 

狛枝は小さく俯く。

 

「僕は騎士だ。騎士として困っている人は見過ごせない。だけど、自ら危険な事をしようとしている人間を止めない訳にはいかない」

 

狛枝はそれを聞いてラインハルトの顔を見た。

そこにあった表情は狛枝に疑惑を向けている人間の顔ではなかった。

ラインハルトの目はまっすぐと狛枝に向けられそれは疑惑の目ではなく明らかに狛枝の身を案じている目だったのだ。

 

それを見て狛枝は笑みを浮かべる。

 

「まさか剣聖のラインハルトクンがボクなんかの身を心配してくれるなんて……嬉しいなぁ」

 

「生活に困っているなら微力ながら僕も力になろう。そんな危険な事をしなくても……」

 

ラインハルトは狛枝に救いの手を差しのべようとした。

しかし、それに対して狛枝は腕を組み怪訝な顔をする。

 

「うーん、それだとちょっと困るんだよねぇ……まぁ、確かにその申し出は嬉しいんだけどさ」

 

「……?」

 

ラインハルトは再び困惑する。

すると、狛枝は右手を腰に据えて右手の人差し指を一本立てて真剣な表情でラインハルトの目を見た。

 

「ラインハルトクン。これは言おうか迷ってた事なんだけど、やっぱり言うことにするよ。そうしないと君は協力してくれなそうだからね。ラインハルトクンにはこれを聞いた上でボクに協力するかしないか決めほしい」

 

狛枝の雰囲気が変わったことに気がついたラインハルトは狛枝の言葉に神経を尖らせた。

 

「……実はね。ボクはこの王都に来てから腸狩りに関する情報をかなり入手する事に成功したんだよ」

 

ラインハルトは狛枝の情報を入手したと言う言葉に反応する。

 

「この情報によると今日、腸狩りが〝とある場所〟で〝ある物〟物を取引するらしいんだよ」

 

「……取引?」

 

「場所と取引される物に関しては君が協力してくれたら教えてあげるよ」

 

ラインハルトは狛枝の対応に目を細める。

 

「続けるよ?腸狩りは〝とある場所〟で窃盗犯の少女と会って少女に盗ませた物とお金を取引しようとしているんだ。被害者は銀髪の少女で精霊術師。彼女の情報は少ないけど外見から見るに身分は恐らく高いだろうね」

 

「っ!?」

 

銀髪の少女と聞いた瞬間、ラインハルトは目を見開き明らかに若干の動揺を見せた。

 

狛枝は心の中で笑う。

 

(よかった。気がついてくれたみたいだね。やっぱりラインハルトクンはサテラさんと面識があるのか……たぶん、ボクの言った人がサテラさんか他の人かまだ心の中では迷っているんだろうけど、銀髪の少女で精霊術師で身分が高い人なんてそう沢山は居ないからね。それにこう言うとき人間は最悪の状況を考える物だし……あと一押しだね)

 

「……しかも、銀髪の少女は盗まれた物がとても大事なものらしいんだ。でも、ここで問題なのは腸狩りに関わる二人の少女の身の安全だよ。下手をすれば命に関わる問題だからね。窃盗犯の少女が盗むのは今日だし、もし被害者の少女が窃盗犯の少女を追いかけたら……それでもし腸狩りの取引現場まで行ってしまったら……あぁ二人はどうなっちゃうと思う?ラインハルトクン」

 

「…………」

 

ラインハルトは静かに押し黙る。

 

「腸狩りに関してはボクよりも君の方が良く知っているはずだよ?ボク程度が集めた情報でも腸狩りの悪名は分かるからね。腸狩りの名前はエルザ・グランヒルテ、傭兵だって話だけど……その実態は傭兵なんて生温いくらいの猟奇殺人者……そんな殺人鬼に今、二人の少女が関わろうとしている……そんなのに関わるって事はすっごく危ない事だとボクは思うんだけどなぁ」

 

狛枝はそこまで言うとラインハルトに笑顔を向ける。

 

「で、どうかなラインハルトクン?ボクに協力してくれたら嬉しいんだけど。でも、無理はしなくてもいいんだよ?断ってくれてもボクは良いしね。その場合はボクなりに何とかしてみるからさ」

 

ラインハルトは狛枝の脅迫混じりの言葉に若干の狂気の様なものを薄々と感じた。

ラインハルトは考える。

本当にこの青年の言うことは本当かと。

しかし、ラインハルトには狛枝を疑う余裕はなかった。

 

ラインハルトは一瞬の間目を瞑って考えていたが直ぐに決心がついた様子で目を開き狛枝を見た。

 

「……分かった。君に協力しよう」

 

狛枝はラインハルトのそれを聞くと満足そうに笑顔で頷く。

 

「ありがとう。君ならそう言ってくれると思っていたよ……」

 

「……それで?僕は何をすれば良いんだい?それと、さっき君が隠した事も教えてもらうよ」

 

ラインハルトは諦めた様に狛枝に聞いた。

 

「分かってるって。それじゃあ、歩きながら話そっか。約束だしね――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狛枝君……ほ、本当にこんな場所に二人が来るのかい?」

 

「うん。彼女達はそろそろ絶対にここに来る筈だよ」

 

ラインハルトと狛枝は例のフェルトとサテラがやって来る路地にやって来ていた。

路地の奥にある通りから死角になる建物の後ろで狛枝とラインハルトは身を屈め小さな声で話す。

 

時間的にはまだフェルトやサテラが来るよりも前の時間だ。

ちなみに三人組の不良に関しては今回は姿を見なかった。

恐らく、ラインハルトと一緒にいたことで襲ってこなかったのだろうと狛枝は納得した。

 

(時間的にはギリギリセーフってところかな……あとはフェルトさんがこの路地にさえ入ってきてくれれば……)

 

狛枝はふとポケットから電子生徒手帳を取り出すと現在の時刻を確認する。

 

(あと三分くらいかな……)

 

「ラインハルトクン、準備は良い?手筈はさっきの打ち合わせ通りでよろしくね」

 

「了解した」

 

ラインハルトは頷く。

その目は真剣そのものだ。

それを見て狛枝は考える。

 

(ラインハルトクン、すごく真剣そうだなぁ。あのあとここに来る途中でラインハルトクンと事件の簡単な概要とか作戦とか色々話したけど盗まれたのが〝微章〟って言ったらすごく驚いた表情もしてたし……一体、あれにはどんな価値があるんだろう?盗まれたサテラさんは血相をかいて追ってくるし、あの〝微章〟を目当てに王国から危険人物扱いされてるエルザさんも手に入れようとしている〝微章〟か……)

 

「……まぁ、それもこのループから脱出すれば分かるか」

 

「ん?何か言ったかい狛枝君?」

 

「え?いや、別になんでもないよ。ただの独り言だから…………っ!?」

 

狛枝は路地の入口を見つめていた目を見開いた。

 

「ラインハルトクン!!」

 

狛枝は大きな声を上げる。

その声にラインハルトもすぐさま反応する。

 

「っ!来たか!」

 

ラインハルトはそう言うと建物の影から飛び出した。

 

「そこまでだ!!」

 

人気の無い路地にラインハルトの言葉が木霊した。

 

そのラインハルトの背中を狛枝は後ろから見つめる。

 

「さぁ……エルザさん。決着をつけようか」

 

狛枝は小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 




皆様、ご無沙汰をしていますエウロパです。

最近、暑くなってきましたね。
今年もアレルギーに悩まされるのかと思うと最悪の気分になってしまいますがサーキュレーターで乗り切ろうと思います。
皆様も、熱中症や体調には気をつけてくださいね。

更新が遅れて申し訳ございませんでした。
正直に言うとV3をやってから私の中のダンガンロンパのイメージがガラリと崩れてしまってそれと同時に狛枝クンが分からなくなってしまいました。
最近ようやく立ち直れてきたので書いた感じです。

今回のお話は文章量がいつもよりも少なめですがご容赦ください。

実は今回のお話、狛枝クンにあまり自信がありません。
ストーリーはV3をやる前に考えていたのでそれ通りに書けたのですが問題は狛枝クンのキャラの感じです。
狛枝クンのネットリボイスやダンガンロンパ2、ニコニコの狛枝クンが幻想入りする動画を見て感じを思い出そうとリハビリに取り組んでいますが、狛枝クンの感じが分からなくなった状況は現在もそうです。
ですので何か狛枝クンのキャラに関しておかしいと感じた事があればぜひ教えてください。
例えるなら今の私の中の狛枝クンのイメージの状態は伸びたうどんの様な状況かもしれません……。

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