鮮烈に神速の如く   作:真姫神ramble
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先輩と後輩

その空間だけは何かが違った。そこで行われているのは普通の試合だ。ただ戦ってる者たちが異色、詳しく言うと身長や年齢といったものに差があるように見える...それもかなり。

中学生くらいだと思われる女の子が拳を繰り出すが、相手の高校か大学生くらいの青年は難なくかわす。その女の子が蹴打を当てようとしても、青年はまるで技を知っているかのような素早さでいなす。


「遅い、遅いでぇ...そないにキレイな型やと先がある程度見えるんや。予測がついてしまえば、あとは避けるだけでえぇ。と言っても予測なんてしとらんけどな。正直動き始めを見てからでも回避は間に合う」


青年はそう漏らす。確かにその動きは速いが少女よりも早く動いていることはないようだ。俗に言う"見てから回避余裕でした"というやつだろう。後出しでも避けられる身体能力もさることながら、その洞察力も恐ろしい。


「まぁなんや、そないちっこくなってる分リーチやらパワーやらが落ちてるんは分かっとる。大きなった時にまたやってくれたらええわ。取りあえずこの場は引き分けってことで。互いにダメージゼロ、見事なまでにイーブンやろ?」

「4分経過、そこまで!なんつーか...引き分け、でいいのか?」

「どっからどう見ても引き分けやろ。一撃ももらってないんやし」


"引き分け"――そう、青年は少女の攻撃を避けるだけで自分は手を出していなかった。避けるのに精一杯だったのか、それとも...。


「...なにが引き分けですか。貴方は攻撃しようと思えばできたじゃないですか。だというのに回避だけで打ってこない...手加減のつもりだったんですか?」

「それはやな、ちょーっとオレのポリシーに反してたんよ。"女子供に力は振るわない"ってのが掲げとる信条や。もちろん試合なんかは別やけどな」

「一応これは試合のはずなんですが...」

「お前は大きなる変身魔法使っとらんし、急に組まれたからしゃーないやろ。女を殴るのには心の準備がいってなぁ」


そう言って青年は頬をかいた。


「どうしても決着つけたい言うんやったら、今度は事前に決めて連絡寄こすくらいしてくれや。ほんのちょっと考えた後に"NO"を叩き付けたるから」

「...それ受ける気ゼロですよね?」

「そうとも言ったりするかもなぁ」

「そうとしか言いません!」


青年はまともにとりあうつもりが無い様子。さらには気の抜けた顔をしながらの発言であったことも手伝って、おとなしそうに見える少女も憤慨している。

ヒートアップしている少女を尻目に先程まで観戦していた場所に戻る青年。こうして突発的に決まった試合は引き分けという結果で幕引きとなった。





***





あの女(ノーヴェ)が勝手に決めて強制的にやらされた試合から少し経った。今日も変わらず学校で部活に勤しんでいたのだが...作業を進めていくうちに職員室に行かなくてはならない用事が出来た。

それが高等科の職員室ならよかったのだが、ここは同じ敷地に小中高の3つの校舎がある。そのため部活動も中学生と高校生が一緒に行っている。何が言いたいかというと()()()()()()()()行かないといけないということだ。


「むぅ...なんで中等科の校舎に行かなあかんのや。ちっとは顧問だけでやってあげようとか思わんのか!絶対変な目で見られるやんけ...」


とか喚いていても変わらないので、大人しく目立たないように中等科の校舎に向かう。3年間通っていたので道に迷うことはないんだが...やはりチラチラ見られる。制服が違うから当たり前と言えば当たり前なのだけども、やはり居心地は悪い。

早く用事を済ませないとメンタルがやられてしまうので、最短経路で職員室に直行する。


「失礼します。高等科3年のモリオカなんですけど...」

「モリオカ...あぁ、担当の先生ならあっちよ」

「お、あの人かな?ありがとうございます」


示された方を向くと見覚えのある先生がいることが確認できた。さっさと用事を片づけて帰ろう。

担当の先生と話して部の活動に関するアレコレをまとめていく。中高生が混在する部には、原則として顧問が最低二人いる。中等科と高等科の教員それぞれ一人ずつだ。だからこういった部活動の運営に関することは、わざわざ校舎を移動してまで伺いたてなくてはならない。面倒なことだ。


「それにしても貴方も大変ねぇ。中等科の部員は一人だというのに」

「はは...まぁ大事な部員ですから。彼女のおかげで残ったようなものですし」

「...そうね。はい、これでオーケーよ。わざわざありがとうね」

「いえいえ。それでは失礼します」


そう、中等科の部員は一人だけ。しかしその"一人"が大きかった。彼女が入ってくれたお陰で今がある。いち部員としては感謝するばかりだ。


「ほんじゃま、失礼しまし...ん?」

「――え、なんで...?」


職員室を出ようとしたら、目の前に誰かが立ちふさがった。中等科の制服は当たり前として、何とも目を引く緑がかった銀髪。さらには紫と青の虹彩異色ときた。こんなに珍しい容姿をしているヤツは一人しかいない――


「お?こんなとこで奇遇やなぁ。元気しとったか?」

「な、なななな」

「な?」

「なんで貴方がここにいるんですか!?」


アインハルト・ストラトス、先日出会ったばかりの少女だ。


「なんでも何も...用事があったから、としか言えんけど」

「そんなことを聞いているのではありません!どうしてこの学校にいるのかということです!!」

「そんなもんオレの制服見たら分かるやろ?St.ヒルデ魔法学院高等科に在籍しとる。お前の先輩やな。高町は気づいてたぞ」

「......」


見事にフリーズしている。そこまで驚くようなことか?手を振ってみたり呼びかけてみたが反応がない。


「なんもないんやったらオレは行くからなー。ほんならあのコーチらにもよろしく、じゃあな」

「......」


無反応。もういいやと来た道を戻る。また視線を感じなければならないのかと気分が沈んだりするが、ここまで来たら帰るだけなのだからいくらか楽だ。

歩き続けて中等科の校舎を出た。校舎を結ぶ廊下は外にあり、壁や窓はなく柱と屋根のみの構造だ。晴れている日はいいが、雨が降ると少しぬれたりするので好きではない。


「待ってください!」


唐突に後ろから声が聞こえた。周りには誰もいないので、オレに向けて発せられたものだろう。というかストラトスの声だ。


「あん?なんか用か?」

「...貴方は前に言いましたよね?決着をつけるのであれば事前に言え、と」

「確かに言ったなぁ。受けるとは言っとらんけど」

「三日後の午後13時30分から彼女と再戦の約束をしています。その試合が終わったら、もう一度私と戦ってくれませんか?」

「彼女って高町か?いやいや、オレを巻き込むんやないわ」


正直いって面倒だ。女子供は殴れない。試合といってもまた避けるだけだ。


「受けてもらえないんであれば、当日に貴方の教室へ乗り込んで連れ出します」

「なんでや...」

「私も決着をつけたいんです。覇王の拳の強さを証明するために」

「見に行くのだけやったらワンチャンあったけどなぁ...試合は勘弁やぞ。そもそもあの子と試合した後って疲れてるやろ。連戦はキツいと思うけど」

「...なら見に来るだけでもいいです。それと...彼女に負けるつもりはありません」


なんだかんだ言っても一回戦を見ていた身としては、行く末がどうなるのか気になるのも事実。見物だけなら吝かではないのだが。


「場所は?」

「まだ分かりません。決まり次第連絡する、とのことです」

「それやったら決まったら教えてくれ...いや、やっぱいい。自分で聞いとくわ」

「分かるのならいいですけど...どうやって聞くんですか?」

「主催者に直接聞くんや。一応連絡はできるからな」


まさかこんなところで役に立つとは...デバイスの連絡できるようにしておいて良かった。まぁオレとストラトスの試合が終わった後に、ほとんど無理やり聞きだされたのだが。


「そういう訳やから、気ぃ抜かんようにしろよ?案外強いかもしれんからな」

「...言われなくても。それでは」


どんな結果になるのか...楽しみだ。



だいぶ空いてしまいましたが、第三話更新です。

10月からはViVidの二期が始まるということで、非常に楽しみにしてます。どういった展開になるのか...。






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