あと、今回かなり短いです(-_-;
前回で自己紹介が一通り終わったので、一応新章開始となります。
え?妹様ですか?丁度いま放浪中でして、帰ってきしだい顔合わせとなります。
スペルカードルール
翌日、早めに昼の仕事を切り上げた俺は、さとりさんの書斎へやってきた。
コンコンとドアをノックする。
「さとりさーん。来ましたよー!」
「入って大丈夫ですよ。」
返事が返ってきたので、ドアを開け部屋に入る。
「失礼します…おお、本が沢山ありますね…。」
部屋に入ると、奥に大きな机が見え、こちらと向かい合うような形で椅子に座っているさとりさんを確認できた。
ソファや花壇といった多少の家具こそあるものの、壁一面に本棚が並んでいて、そこには本がびっしりと詰まっている。
全部数えたら凄まじい数になるだろう。
「そうですね。私が本を読むのが好きな上、地底の皆さんがあまり本を読まないのもあって、ここは地底中でもかなりの本が集まっているところとなっています。
お燐もたまに地上から持ち帰ってくれますし。
外の世界からの本もかなりの数混じってますよ。」
そう説明してくれるさとりさんの手にも一冊の本が。
俺を待つ間にも読んでいたんだろう。
「ホントにたくさんありますねー。
因みに、今は何を読んでいるんですか?」
ふと気になったので問うてみる。
「これは、外の世界から流れてきた本で、夏目漱石と言う方について書かれた本です。
ユーモアあふれる数々の名作を生み出した方のようで、そのユーモアは講師時代にも出ていたそうですよ。
中でも、愛を囁く台詞の訳し方には感銘を受けました。
一度で良いので使ってみたいものです。」
愛を囁く…? 恋愛の話でもでてくるのかな?
「いえ、そういうわけではないのですが…。
そうだ、今度読んでみてはいかがですか?
きっと面白いと思います。」
笑顔で勧めるさとりさん。
「良いんですか?
それでは、今度読ませて頂こうと思います。」
「ええ。わかりやすいところに置いておきますので、いつでもどうぞ。」
今度余裕が出来たら読んでみよう。
「それでは、本題に入りますね。
萃儀さんは、『スペルカードルール』というものに覚えがありませんか?」
そう問いかけてくるさとりさん。
あいにくだが、俺には全く聞き覚えがない。
「いえ。昨日の夕食の時に少し聞いた程度ですね。」
俺がそう答えると、さとりさんは少し考え込むような仕草をした後、話し出す。
「『スペルカードルール』を知らない…というのは少し気にかかりますが、記憶出自が分からない以上考えても無駄ですね。
それでは、まずは『スペルカードルール』そのものについてお教えしますね。」
「お願いします。」
俺が頭を下げると、さとりさんはうんうんと頷き、説明を開始する。
「『スペルカードルール』並びにそれを用いた戦闘。これらは弾幕ごっことも呼ばれています。これは、殺傷の可能性を限りなく抑えた決闘方法です。
弾幕を撃つ際は殺傷力を極力削ぎ、見た目の美しさを重視します。
また、弾幕を撃つ際は、必ず抜け道を作らなければなりません。」
「抜け道…ですか?」
俺が聞くと、さとりさんは頷く。
「このルールには、弱者でも強者に勝つことができるよう、様々な工夫がされています。
まずは、両者は戦闘の前に使用するスペルカードの枚数を宣言。
その枚数を相手に攻略されてしまった場合は、例え余力が残っていても負けを認めなければなりません。
スペルカードの攻略には二つ方法があって、まず一つが、相手に攻撃を当てて攻撃を中断させる方法。
そしてもう一つが、カードに定められた攻撃を使い尽くさせる方法です。
『カードを作る段階であらかじめ定められた、そのカードで放つ弾幕の種類、量、時間。それらを使い切ることでも、そのスペルカードは攻略されたものとしてその戦闘で使用するのをやめないといけない。』という規則があるため、後者の方法が成り立ちます。
また、いくら力があるからと言って、隙間の一切ない弾幕を放ってはいけません。
必ず、回避可能なスペースをつくることが義務付けられています。
他にも、『人間は何度でも異変解決に挑むことができる』『スペルカードルールに則った戦闘で敗れた妖怪は負けを認めて速やかに引き下がる』など色々ありますが、あとは実地で慣れていけばいいかなと思います。
ここまで何か質問はありますか?」
話を区切り、問いかけてくるさとりさん。
結構細かいルールがあるんだなぁ。
「いえ、大丈夫だと思います。」
「それでは、早速ですがカードを作ってみましょうか。」
そういって引き出しから白紙のカードを取り出すさとりさ…
いや、ちょっとまって。
心の静止が聞こえたんだろう。取り出すのを中断し、小首を傾げる。
あ、その仕草かわ…じゃなくて!
「そもそも、弾幕ってなんですか?」
「……あ。」
完全に意識の外だったのだろう。
左手はカードを取り出そうとした姿勢のまま、右手を開いた口に当てている仕草が印象的だった。