ゼロと底辺を結ぶ銀弦   作:ゆにお

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五話 決闘 その1

 天を見上げれば吸い込まれそうなほど青空が広がっていた。

 今の時刻は昼下がり、学院の広場には休み時間を利用して少年少女が思いのままに過ごしている。

 ボールを魔法で操作して篭に入れあう競技をする者たち、テラスでカップを傾けながら談笑に華を咲かせる者たち等の姿などなんとも微笑ましかった。

 けれど、そんな広場の一角ではベンチに腰掛け灰色の男が燃え尽きたと言わんばかりに項垂れており広場の美観を損なっていた。

 

 それはまさしく浅利ケイツであった。

 ケイツは先ほどのルイズとのやり取りを思い出す。

 少女が自らの劣等感に羞恥しながらケイツに向けたのはまさしく羨望と嫉妬である。多くの場合、敗者から勝者へと向けられるものだ。

 ケイツが今まで相手に向け続けていた視線を、今度はケイツがその身に受けることになった。

 それはケイツが欲して止まぬものであったはずだ。

 だが、どういうわけかケイツは喜ぶことが出来ないでいた。

 ベンチに腰掛けていたその身を前に屈め、重苦しい呼気を吐き出す。この背中に圧し掛かる重圧感は一体なんなのか。

 ケイツは自分を苛むものが一体何という感情なのか分からなかった。

 

「――あ、あの」

 

 不意に、どこかで聞いた声がケイツに耳に届いた。

 痩せ窪んだ目を声のする方向へと向けると、今朝一悶着あったメイドの少女――シエスタがおずおずといった様子でケイツの傍らに佇んでいる。

 

「どうしたのだ」

 

「えっと、大したことじゃないんです。ただ理由が知りたくて」

 

「理由だと?」

 

 脈絡も無い言葉にケイツは首をかしげた。

 

「はい、朝は思わずショックで立ち去ってしまいましたが、常識で考えれば初対面の女の子に男なのかなんて聞くわけないですよね? だから何か理由があるんじゃないかって」

 

 乙女心を傷つけられてなおシエスタは健気であった。

 ケイツは湧き上がる罪悪感に後押しされ。口を開いた。

 

「すまなかった。大したことではないのだが、私には私を尊敬するメイドの少年がいたのだ」

 

 ケイツはリュカの事を回想する。かつて一度相似世界に帰還した時にとある事件で捨て駒にされた彼を助けたことがあった。

 それ以来、リュカはケイツの事を崇敬していると言うので傍においていたのだ。

 焼けた金髪に潤みのある瞳、艶やかな唇、中性的な声、身はすらっと細く白い肌は瑞々しかった。

 ケイツは地獄で最期の時自らの身を呈して、この超ミニスカメイド少年を助けて倒れたのだった。

 自分はもはや助からないと確信して、自分を敬っている者まで無慈悲に殺されることにケイツは怒った。

 

 無事に逃げおおせただろうかと、不意に感傷がわきあがって来る。

 ケイツが遠い目をしていると、草が踏みしめられる音を耳にして回想を打ち切った。

 シエスタが後ずさっていた。

 

「つまり女の子そっくりの男の子を連れていたから私が男なのか気になったのですね。事情は分かりました。でも安心しました。ほら私はちゃんと女の子ですから」

 

 そういってシエスタは胸を張った。お仕着せの上からでも分かる豊満な女性の象徴がそこにあった。

 

「ああ、分かってもらえると助かる」

 

 シエスタはケイツの言葉に身の安全を確信し、ほっと安堵の息をこぼす。

 そうなるとどこか親近感のある笑みを浮かべ気さくに話しかけてくるのだ。

 

「いえいえ、お貴族様に仕えるには何かと苦労が多いと思います。お互いがんばりましょうね」

 

「ああ」

 

 朗らかな少女の笑顔に、優しくされることに慣れていない男はなんとか引き攣った笑顔で笑った。

 

「そういえば、お昼ご飯まだですか? 賄(まかない)があるのでよかったらどうでしょう。ケイツさんのこと、じゃなくて。ケイツさんとそのメイドの少年との馴れ初めなんかを聞かせてもらえたらなって……。メイド仲間にそういうことに詳しい子がいるんですよ」

 

「……少女よ。どうしてそんな目で私を見るのだ」

 

 シエスタに引かれる様にケイツは厨房へと向かった。

 余談だがシエスタは『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』などという耽美本を読むのがささやかな趣味である。

 しかし少し前に、メイド仲間から借りた『筋肉男爵の歪み無き闘争』という物語を読んで以来、彼女の価値観は薔薇色に染まった。

 

 

 

「うまい」

 

 ケイツはシチューをすすった。残り物で拵えられたことは明白だが職人の工夫がケイツにさえ窺えた。

 厨房の片隅では、金髪のメイド――ローラと、シエスタを筆頭に何人かが頬に手を当て身もだえしていた。

 既に根掘り葉掘り聞きだしたケイツとリュカの馴れ初めを妄想という名の筆で塗りたくり黄色い声を上げていた。

 

 年若い娘たちに囲まれているというのに、灰色を通り越して真っ白になりそうだったとケイツは嘆息した。

 骨の髄まで染み渡るシチューが神の恵みにすら思えた。

 

「はっはっは、気に入ってくれたようで何よりだ」

 

 豪放な哄笑がケイツの耳に飛び込んできた。料理長のマルトーと名乗った屈強な男だった。

 がっしりと引き締まった体躯に、精悍な顔つきの中年がケイツの賛辞に心から感情を表現したのだ。

 

「実際、生まれて以来これほどのものを口にしたのは初めてかもしれん……」

 

「いいってことよ! おめぇさんも急に呼び出されていろいろ大変だろう。そんな痩せちまって、ぶっ倒れねぇようにしっかり食いな。貴族に仕えるのはそりゃもう大変だからよ!」

 

 マルトーはしきりに笑ってケイツの背中をバンバンを叩く。

 シチューを口に含んでいたケイツは思わずむせてしまった。

 

「……馳走になった」

 

 なんとかシチューを平らげたケイツがマルトーに嘘偽り無い礼を述べた。

 誰かに感謝の念を抱くと言うのはケイツの記憶の中にもそれほどないかもしれない。

 

 返礼に何かしようと思い立ったケイツはふと気付いた。先ほどから片隅で囁いているメイドたちの視線がおかしい。

 マルトーとケイツの方をチラチラと見て、セメとかウケなど口にしているのをケイツは耳聡く聞き取った。

 言葉の意味はよく分からないが、不穏な気配を感じてしまったケイツは居心地がよくなかった。

 

「……何かあったらいずれ礼はしよう。これで私は失礼する」

 

「おう、また来な!」

 

 厨房を去っていくケイツにマルトーは朗らかに見送った。

 メイドたちの視線がケイツの背中を焦がすような気がしたが錯覚であって欲しいとケイツは願う。

 

 

 

 厨房を出ると食堂に着いた。豪華絢爛を極めたアルヴィーズの食堂も今朝のように厳粛としているならともかく、思い思いに生徒たちがたむろしている今では、町の酒場とどれほどの違いがあるのか分からなかった。

 腹も膨れて思考も順調に回りだしたケイツは、主となった口うるさい少女のことを思い出す。

 置き去りにしてしまい、また小言でも言われるかと思うと少しげんなりしたが、遅いか早いかの違いなら早いほうがいいとケイツはルイズを探すことに決めた。

 

 昼時、他にすることもないようだったルイズもおそらく食堂にいるのではと考えいたり、ケイツはアルヴィーズの食堂の喧騒を視線で掻き分けルイズを探し始めた。

 その一角で、ケイツの目が止まった。

 小さな小瓶が大仰な身振りで歓談している男子生徒のポケットから、はずみで落ちたのを目撃したのだ。

 放っておこうとも考えたが小瓶は小さく曲線を描き、ケイツの足元へと転がってくる。

 

 ケイツは小瓶を拾い上げ、持ち主と思しき男子生徒の下へと歩みを進める。

 

「――おい、これはお前のではないのか」

 

 ケイツが少年へと声をかけた。

 振り向いた少年が着古したコート着たケイツに目を留めるや、その瞳は嫌悪で濁った。

 

「お前だと? 今、お前と、そういったかね?」

 

 仰々しく足を組み胸元にフリルのついたシャツで着飾った金髪の男が芝居じみた様子で足を組み変えた。

 どうやらケイツの態度に立腹したようだ。

 

「お前の懐からこれが落ちたぞ。拾ってやったのだ感謝しろ」

 

 そんな男子生徒の怒りなどケイツは構わず、香水をテーブルの上に置く。

 同席していた少年達がそれを見るやおもちゃを与えられた子供のように色めき立った。

 

「おい、ギーシュ! これはモンモランシーが特別に調合している香水じゃないか」

 

「ああ、こんな綺麗な紫色をしているのは他にないぜ。それがお前のポケットから出てきたという事はつまり、お前は今モンモランシーと付き合っている。そうだな?」

 

 少年達が囃し立てる。どうやら色恋沙汰の話をしている最中であったらしい。決定的な証拠をケイツが投げ込んでしまった。

 池に餌を投げ込んだときの魚のように、同席している少年たちの関心が小瓶に向く。

 

「待ちたまえ、違う。いいかい? 彼女の名誉の為に言っておくが……」

 

 少年たちが大声で騒ぎ立てるものだからギーシュと呼ばれた少年が目に見えてうろたえ出した。

 その様はまるで飛び火しないように鎮火に勤しんでいるようにも見えたが何もかもが手遅れだった。

 

「ギーシュ様……」

 

 小さく震える鈴の音に似た声が、少年たちの喧騒の中でさえはっきりと聞こえた。

 後ろのテーブルに座っていた茶色のマントを羽織り、栗色の髪をした少女がギーシュの方へと歩み寄った。

 着ているマントの色が異なっていることから下級生だろうか。

 少年たちが静まり返ったのは、この少女の目に涙が浮かんでいたからだ。

 依然として食堂全体は騒がしいのに、この周囲だけ異世界に切り取られたかのようだった。

 

「やはり、ミス・モンモランシーと……」

 

 涙声で少女は糾弾した。

 

「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ……」

 

 ギーシュが最後まで言い訳を紡ぐ事はできなかった。ケティと呼ばれた少女が思い切り平手打ちを頬に叩き込んだからだ。

 

「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」

 

 憤然とした怒りに涙を滲ませながらケティは食堂の人並みを割って出て行った。もはや食堂の喧騒は止み、全ての人々が騒動の渦中を見守っていた。

 ギーシュは既に生徒達の注目の的である。別の女生徒がそんなギーシュの元へと歩み寄ったことで新たな波乱の幕開けを皆が感じた。

 巻き髪の鮮やかな金髪の女の子がギーシュの前にいかめしい顔つきでやってきた。

 彼女が何か言う前に、ギーシュは狼狽しながら先制した。

 

「モ、モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで……」

 

 ギーシュは首を振りながら訴えた。冷静な態度を装っていたがどう見てもへたれていた。

 そんなギーシュとケイツとの間に銀弦が繋がった。

 ケイツはすぐにそれを断ち切った。どうしてかこの時だけは流石のケイツも不快に感じたからだ。

 

「やっぱり、あの一年生に手を出していたのね」

 

 ギーシュの弁明なんてお構いなしにモンモランシーは糾弾する。

 

「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪ませないでおくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!」

 

 モンモランシーはテーブルの上に置いてあったワインの瓶を掴み、ギーシュの頭の上で逆さにした。

 そして、濡れそぼるギーシュにケティとは逆の頬を一閃する。

 

「嘘つき!」

 

 一際甲高い声が響き渡り、彼女は去っていった。

 後に残されたギーシュに注目が集まった。

 誤魔化すように乾いた笑いを浮かべながら、ハンカチを取り出しゆっくり顔を拭った。

 そして芝居がかった所作で言う。

 

「あのレディ達は薔薇の存在の意味を理解していないようだ」

 

 打ちのめされても不遜な態度だけは崩さないギーシュとケイツの間に、またも相似弦が伸びてくるが、ケイツは繋がる前にそれを断ち切った。

 ケイツは汚れたような気がしてその場に居たくなかった。無言で足早に立ち去ろうとしたところをギーシュが呼び止める。

 

「待ちたまえ!」

 

「……なんだ?」

 

「君の軽率な行動のおかげで二人のレディの名誉に傷がついたではないか。どうしてくれるんだね」

 

 誰に聞こうと悪いのはギーシュだった。

 

「私には関係のないことだ。二股をしているお前が悪いのだろう」

 

 ケイツのくせに正論だった。だが正論なので周囲も同調した。

 

「その通りだ! ギーシュ。お前が悪い!」

 

 生徒たちの煽りにギーシュの頬に赤みが差す。

 

「それになんだ、君のそのさっきから無礼な態度、平民が貴族にそんな口を聞いていいと思っているのかね?」

 

「何を言っている。お前こそ私が誰だか分かって言っているのか」

 

 だが、着たきりの冬物のコートを羽織ったみすぼらしい男が放つ尊大な台詞と、その疲れ果て負け続けた容貌はケイツの言葉に何の説得力も与えない。

 

「君は……ああ、ゼロのルイズが召喚した平民だったか。まさか彼女の家柄が自分の力になると勘違いしているんじゃないかね? そもそも使い魔もちゃんと躾けることも出来ないとは、さすがゼロのルイズだ」

 

 ギーシュはケイツの不遜を公爵家の看板を当てにしたものだと推察した。

 ギーシュからすれば礼儀知らずで常識知らずのケイツは笑いものの道化以外の何物でもなかった。

 

「もういい。行きたまえ」

 

 出来る限りの侮蔑を表情に乗せ、ギーシュは言った。

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

 少年の物言いにケイツは不愉快なものを感じたが、話が終わったのだ。そこに留まる理由はない。ケイツは踵を返す。

 

「な、何ぃ! 待ちたまえ!」

 

 だというにも関わらずギーシュは再びケイツを呼び止める。

 

「……どうした、一体なんなのだ」

 

 ケイツはもはや面倒くささを隠そうともせず言う。

 

「君は、恥ずかしくないのか? ここまで言われて引き下がるとはそれでも男かね?」

 

 ギーシュはケイツが挑発に乗ってくるものだと予想していた。

 平民だから仕方ないにせよ。唯々諾々と逃げ去るなど想定外だった。

 

「なぜ恥ずかしいのだ?」

 

 相似大系魔法世界の頂点に立てるかもしれないほどの才能を持ったこの男は、既知魔法世界の命運を決する≪地獄≫での大決戦で襲い来る刺客達に頭を下げ、敵の再演干渉を開放することを餌に逃げ延びてきた。

 今更、逃走することなどケイツには何の躊躇いもなかった。

 

 だが、ギーシュはそれが面白くなかった。せめて屈辱を顕わに膝を折り泣き喚いた所に、改めて貴族の寛大さを総身に染みこませ、感涙するとなれば許す気もあった。

 でもこうも醜態を晒すことに頓着がない男を見ていると微妙な心持ちになりそうだ。

 

 ふと、名案が浮かんだかのようにギーシュは笑う。

 

「君は礼儀というものを身につけるべきだ。もしよければ僕が貴族の礼儀というものを教えてやろう。ヴェストリの広場で待っている」

 

「よかろう」

 

 そのぐらいのことならとケイツは応じたのだが、その瞬間、なぜか食堂は歓声に沸いた。

 生徒たちはギーシュの宣言の意味を理解していた、愉悦に胸を弾ませ、皆はこぞって広場へと向かう。

 ケイツはよく分からず呆然としていたが、そんなケイツのもとにつかつかと歩み寄ってくる人物がいた。

 

「あんた見てたわよ! 何勝手に決闘の約束なんかしているのよ」

 

 憤然と問い詰めてくるルイズの言葉に我が耳を疑ったケイツが尋ね返す。

 

「待て、私が一体いつ決闘の約束をしたのだ」

 

 ルイズは思わず頭を抱えた。確かに決闘の二文字はどこにも出ていなかったが、状況が決闘から逃れることを許さなかった。

 

「謝っちゃいなさいよ」

 

 ルイズとしてはギーシュに同意できないが、客観的にみてケイツに至らぬところがあったのは確かだ。

 ルイズとてケイツを騒動に巻き込むのは不本意なのだ。先ほど受けた不器用な男なりの心遣いも彼女は忘れていない。

 

「そうさせてもらおう」

 

 途端にルイズは膝を突きそうになった。

 あっさりと謝罪を決意するケイツの言動に肩の力が抜け落ちたからだ。

 

「……あんたって、なんで凄い魔法使いなのにそんな臆病なのよ」

 

「うるさい。私は臆病などではない二度とそのような呼び方をするな」

 

 まるで漫才でもしているかのようであった。だが本人は至って真剣だ。

 

「――おっと、待てよ。そうは行かないぜ」

 

 ルイズとケイツの算段を打ち砕こうと横合いから呼び止める声があった。

 傍に控えていた男が二人。おそらく逃げないようにケイツを見張っていた男。先ほどギーシュの席に同席していた少年だった。

 

「何よ、あんた関係ないでしょ。すっこんでて」

 

 そんな彼にルイズが怒鳴る。

 

「そうはいかない。なんせここまで事を大事にしたんだ、ごめんなさいで済んだら面白くないだろ」

 

 既に決闘の宣言をしてしまったことで生徒達は興奮の渦中に身を投じている。ここで肩透かしされては非難の矛先が変わってしまう恐れさえあった。ソレを嫌った彼らはケイツが逃げることをよしとしないのだ。

 

 だが、ケイツがギーシュに虐げられることを望んでいる二人の少年に対して、ルイズはどこまでも強気だ。

 

「いいこと? ケイツは凄い魔法使いなんだから。彼が本気出したらギーシュなんてぼっこぼこよ。分かる? あんたらのために言ってんの。退きなさい」

 

 ケイツの魔法の冴えを知っているルイズはどこまでも強気だった。これは贔屓などではなくギーシュとケイツ双方の実力のほどを知ってるが故の正当な分析の結果なのだ。

 

「こいつが魔法使いだって? 平民なんじゃなかったのかよ。はっはっはははは、『ゼロ』のルイズ、妄想も大概にしろよ。こんな臆病者が凄い魔法使いなわけないだろ」

 

 強さとは力であり、力とは勇気である。少なくとも臆病なものが強いわけないというのが彼らの理屈だ。

 ケイツとルイズが何を言おうと彼らを笑わせる以外のことは出来なかった。

 沸点の低いルイズに限界がきた。

 

「いいわ。そこまでいうならあんたたちにケイツの力を見せてやろうじゃない。ケイツ! ギーシュなんか叩きのしちゃいなさい。行くわよ!」

 

「おい、待て。話が違うぞ」

 

 自分の胸元までしかない背丈の少女にケイツは引きずられて広場に向かうことになった。

 今ここに異なる魔法大系同士の決闘が始まろうとしていた。


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