新・平成ライダー創世記   作:ニーソマン

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弐:不器用な戦士と笑顔の戦士1

「これ…どうやるんですか?」

「待って下さい。今説明書を…」

 

氷川誠と後藤慎太郎。

狭い覆面パトカーの車内で2人はカーナビと格闘をしている。

 

《目的地を設定しました"恐竜屋本店"でよろしいでしょうか?》

「あぁ!違う!」

「説明書がない!」

 

この30分間、

氷川はカーナビにレストラン"アギト"を入力しようと奮闘するものの、ひたすらに有名カレー店をセットし続けている。

一方後藤は説明書を探しているが、後付けのカーナビなので、ないと考えたほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ホワイトボードに張り出された組み合わせ。

チームぶきっちょ 氷川誠、後藤慎太郎

担当:仮面ライダーアギト、555、オーズ

 

恐らくメンバー分けは本願寺によるものだろう。

悪意のあるチーム名である。

 

 

他には、

チームリア充 照井竜、朔田流星

チームヤング 加賀美新、泊進ノ介

チームクール 一条薫、大門凛子

といった面々だ。

名付け親の本願寺は、

「私は統括ですから常にここにいますよぉ〜」

と、お茶をすすりながら携帯でいつもの占いをチェックしていた。

 

 

 

そんなこんなで割り振られたこの2人。

 

 

《目的地を設定しました"恐竜屋池袋店"でよろしいでしょうか?》

「だぁああああ!もぅ!!」

豆腐をハシで掴めない男、氷川と。

「説明書!!!!!!!」

容量を掴めない男、後藤慎太郎。

 

 

全く捜索にが進展しないまま40分。

♪デデンデンデデン〜やーみのなーk

不意に氷川のガラケーが鳴る。

 

 

「はい、氷川です」

「あ、もしもし?氷川ちゃん?」

「本願寺さん?どうしました?」

「いえね、まだパトカーが動いてないって聞いたから、あぁカーナビで躓いたのかな、と思いましてね?」

「う…その通りです…」

本願寺純、意外と抜け目のない男である。

 

「代わりに後藤ちゃんのスマホにデータ送っときましたんで、そっちを使って下さい」

「えぇっ!ありがとうございます!」

「いえいえ〜頑張ってねぇ〜」

 

 

 

 

こうしてようやく動き出すチームぶきっちょ。

 

「意外と小回りの効く人、なんですね」

スマホを操作しながら、後藤。

 

「ええ。少し意外でした。」

運転しながら、氷川。

 

 

というか、言葉を続ける氷川

「後藤さんは機械出来るんですね?」

「えぇ、一応は。でも、説明書を熟読しないと使うのが怖いので…」

「いいなぁ、僕は全然ですよ。車の試験だって何回やり直した事か。」

お互いに似た雰囲気を感じたのか、スムーズに馴染んでいる2人。

人付き合いは器用にこなせるらしい。

 

 

「今から向かう"アギト"と言うのは?」

「仮面ライダーアギト、津上さんが経営してるレストランなんですが…」

「仮面ライダーがレストランを?」

「えぇ、変な人でして、家庭菜園とか、料理が趣味の人で。器用になんでもこなすんですよ。手品とか。」

「なんか、随分と柔らかい人なんですね。」

後藤の脳裏にオーズ、火野映司の姿が浮かぶ。

「変身したら人が変わったように淡々と戦うんですけどね。」

「へぇ…会ってみたいです。」

「もう、そろそろ…着きましたよ。」

路肩に車を停める氷川。

 

「久しぶりだなぁ…ここ。」

「そうなんですか?」

「仕事が忙しくて、道を忘れちゃうくらい久しぶりです。」

頭を掻きながら語る氷川の目はどこか遠くを見ている様だった。

 

 

「さ、行きましょう」

白を基調とした洋風な店のドアに手を伸ばしノックする。

 

…返事はない。

 

 

「あれ?休業日じゃないよな?」

ドアに書かれてる営業時間を氷川が確認する。

 

「氷川さん…あの…」

「えっ?」

一歩後ろにいる後藤が青ざめた顔でこちらに話しかける。

「あれ…」

 

ドアの反対側に貼られている、

[売家]の看板を指差しながら。

 

 

「えっ!?」

「「ええええええええええええええ!?」」

2人の悲鳴は人が少ない通りを響き渡った。

 

 

「どどどどどうしましょう????」

完全に慌てている氷川。

 

「携帯番号とか、共通の知り合いとかは…?」

「先月携帯が水没してしまって…電話帳が…」

想定外の事態に慌てふためく2人。

 

 

「このお店に、何か用かい?」

振り向くと腰の曲がった老婆が話しかけてきた。

 

「あぁ、はい…その、知り合いの店でして…」

正気を失った氷川が答える。

「そうかい、この店は半年前に閉店してねぇ…とてもいい店長さんだったんだけど、お人好しすぎて、経営が上手く行かなくなったのさ。」

「津上さんらしいな…」

「ここらの人間で何とかしようとしたんだけどねぇ…」

どうやらレストランアギトは地元に人間に愛されていたようだ。

 

 

「そうだったんですね、ありがとうございます。」

深々と頭をさげる氷川。

 

「悩んでいても仕方ないですし、予定通りに次の目的地に行きましょう。」と前向きな後藤。

 

「そう、ですね。」

「ついでにそこで夕食でも如何ですか?」

 

少し嫌味にも感じる後藤の発言に氷川もムッとしたが、

すぐに後藤なりの励ましと自分と同じ不器用さが伝わり、是非、と快く了解した。

 

 

 

 

 

 

 

20分後、後藤に案内で着いた先は、

多国籍料理店クスクシエ

アジア風の様な、インド風の様な不思議な外観を持つお店。

 

美味しそうな香りに2人のお腹が鳴る。

 

店に入ると、「いらっしゃいませー!!」

と、インドの民族衣装、サリーに身を包んだ女性店員が現れる。

 

「あらー!後藤くんじゃない!久しぶり!」

「お久しぶりです。」

やたらテンションの高い女性はクスクシエのオーナー、白石知世子。

身元不明でパンツを手に持つ変態と、ニワトリ見たいなヤンキーを親身になって住み込みでバイトをさせる(シフト自由)

という超が付くほどのお人好し。

それでも店が潰れないのは料理の味と彼女の人柄による物が大きいだろう。

 

今日も平日の夕方にしては、中々の混み具合である。

 

「あら、お隣さんは?」

「後藤くんの同僚の、氷川です。よろしくお願いします。」

「ご丁寧にどうも。話は聞いてるわよ。奥へどうぞ!」

「ありがとうございます。あ、それと食事をしても大丈夫ですか?」

「もちろん!大歓迎よ!ごゆっくり〜」

 

そう言うと知世子は手を合唱の様に合わせ、体を揺らしながらオーダーを取りに行った。

「本願寺さんに似てますね…」

「わかる気がします…」

 

苦笑いを零しながら用意された席につく2人。

「お久しぶりです。後藤さん。」

席には1人の少女が座っている。

 

「お久しぶりです、泉さん。」

泉比奈。

仮面ライダーオーズとグリードの戦いに身を投じ、生き延びた少女。

(彼女が、そうか)

行き掛けに話を聞いていた氷川は、心の内で納得する。

 

「氷川誠です。よろしく。」

「お兄ちゃんと同じ職場の氷川さん、ですよね?」

「あぁ、信吾くんにはいつもお世話になっているよ。」

 

氷川誠と泉信吾はたまに同じ事件を追う事もあり、よく知った仲である。

彼が1年間病気療養していたのは知っていたが、まさか兄妹揃って仮面ライダーオーズと関わりがあったとは。

 

「最近はお変わりありませんか?」

着席を促しながら後藤が比奈に投げかける。

「そうですね…映司君が向こうに行っちゃって、お店が忙しかったんですけど、半年前にコックの人が入ってきてくれて」

「それは何よりですね。」

「すいません、本題を。」

氷川が割って入る。

 

「あ、失礼しました。泉さん、お願いします。」

「はい!」

比奈は自身のカバンからタブレットを取り出し、ビデオ通話を操作する。

『もしもーし!』

電話口から若い男性の声が聞こえる

『比奈ちゃーん!聞こえるー?』

「聞こえてますよー」

「久しぶりだな、火野。」

『お久しぶりです、後藤さん!』

画面に映るのは、砂漠に木の棒を突き刺して座っている青年。

木の棒には何故かパンツが括り付けてある。

 

 

「はじめまして、警視庁の氷川です。」

「はじめまして、火野映司です。」

画面の中の青年、火野がそう答える。

彼こそが、欲望の器を受け入れ、欲の怪人と戦い、世界を得た仮面ライダーオーズ。

現在は、共に戦った友人、グリードのアンクを蘇る方法を探し求め世界中を旅している。

 

「すまないな、突然。」

『いいんですよ。事情は本願寺さんって人から聞きました』

「こっちには帰ってこれそうか?」

『3日後の飛行機があるのでそれで帰国する予定です。』

「助かる。」

『いえいえ』

 

少しの談笑。

「あ、そういえば。」

比奈が何かを思い出す。

 

「お兄ちゃんは今回のメンバーじゃないんですか?」

泉比奈の兄、泉信吾は、グリード復活の際瀕死の重傷を負い、アンクが死ぬまでの間、"アンクとして"戦線に参加していた。

と言っても、本人には一度目が覚めた時の記憶しかない訳だが。

 

 

「そういえば…どうなんでしょうか。」

思いもよらぬ質問に後藤が困惑する。

 

「資料では、あまり戦闘の経験がない、とありましたから、敢えて外されている可能性が大きいかと」

氷川が答える。

 

「そっか…分かりました」

そんな和気藹々とした会話をしていると、

 

 

 

「おっまたせしました〜」

コック帽を被った男が料理を運んでくる。

 

「本日は夏野菜を贅沢に使ったインドカレーです」

ナンとルーが目の前に配膳される。

ルーには細かく刻んだ鶏肉と大粒のナスやジャガイモが入って、美味しそうなスパイスの香りが鼻腔を刺激する。

 

「わぁ、おいしそう!」

「これは…すごい…」

「おいしそうですね…」

比奈、後藤、氷川がそれぞれ目の前の料理に釘付けだ。

 

「自家栽培、無農薬の野菜なんで自信作です!」

手に腰を当て、えっへん、とポーズをとる男性。

 

 

「あ、スプーン置いてきちゃった。すぐとって来ますね。氷川さん。」

「よろしくお願い…」

何故か名前を呼ばれ視線をカレーから男へと移す氷川。

 

 

 

 

 

「津、津上さん…」

 

「どうも!」

 

 

 

 

 

 

 

目を見開く氷川と後藤に爽やかな笑顔を見せる男。

仮面ライダーアギト、津上翔一がそこにいた。

 




更新ペースがやたら早いのは、テスト期間だから…


こういう時は学生でよかったなと思います。
全然良くないんですが。



さて、チームぶきっちょ始動です。
2人の性格もさる事ながら、
オーズとアギトも中々のそっくりさんだと思います。

やっぱ話を作ると周囲の人物像って似通って来ちゃうんですかね?



これからは更新ペースが落ちると思いますが、
気長にお待ち下さい。

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