腕の手術が終わり会津若松城へと向かうキン肉マン一行。
突然のブラックホールの来訪。
富士山麓に行われる入れ替わり。
アタルは語る「火事場のクソ力は未だに手に入れていない…」と。
「運命の5王子たちは邪悪の神たちから〝 火事場のクソ力 〟の探索とアタル殿の抹殺を命じられている。ここでソルジャーマンと入れ替わるのは妙手といえよう」
邪悪の神どもの手足でもある陣営の一つを潰して乗っ取り、同時に隠れ蓑としても使う。
ニンジャの言う通り、入れ替わるなら今がいいかもしれん。
ニンジャがおもむろに片手を地面に置いて術の名を呟くと……雪が捲り上がってソルジャーマンを含む残虐チームを雪で包み込むように覆い隠した。
「雪崩が起きない限り、こやつらが発見されることはあるまい」
得意気に語るが、この旧残虐チームはいずれ発見されるだろう。
見つかるのは前と同じく超人血盟軍と知性チームの試合、その終盤あたりか…?
このままいくとアタルは予言書を焼かれた上に敗北を喫し、最後にはこの世から消えるという散々な目に遭ってしまう。
その予言書をたいまつに放り込んだのは他でもないこの俺。
以前は知性の神の陣営として戦わなければならなかったが、今は違う。
超人血盟軍が勝ち上がると困るが、かといって
さて、どうしたものか…
*** *** *** *** ***
日付が変わり、強力チームと知性チームの試合を見るために会津若松城にぞくぞくと人が集まり始める。
試合をする各陣営の選手は勿論のこと、他の候補者たちや俺たちキン肉マン・チーム、ネプチューンマンに熊本城で見た
キン肉マンの左腕につけられたギプスを見て心配する見物人の中から一回戦で敗れたマリポーサが現れて…
「敗れたとはいえ王位争奪戦に携わった者として最後まで見届ける義務が私にはある」…そう言ってキン肉マンの横に座る。
レフェリーの格好をした超人の呼び掛けにより双方の先鋒がリングに上がる。
強力チームは頭と両腕が巨大なペンチの形状をしているペンチマン。
対して知性チームは俺が予想していた白熊ではなく…
「キョ――――キョキョキョキョキョ!」
半透明の三角柱の集合体の超人、あのプリズマンだった。
疑問に感じたと同時に納得もする。
プリズマンは知性チームの中でも血の気の多い方であり、そんな奴が先鋒を務めても不思議ではない。
ゴングが鳴り、試合の序盤。
ペンチマンが鋼鉄でできた両手でプリズマンを何度も殴打、一撃一撃が入る度に細かなヒビが入る。
強力チームの陣営はこれを好機と見て、さらにペンチマンを囃し立てて攻めさせる。
それに対してプリズマンの実力を知っているのだろう、不気味に笑うだけで何もしない知性チーム。
やがて全身を隙間なく亀裂が入り……砕け散るプリズマン。
強力チームが思わず「やった!」と、声を上げるのも無理はないだろう。
だが今しがた砕け散ったのは体の表面部分。
表面部分を砕かれ、本体を現したプリズマン。
その姿は、先ほどよりも幾分細くなり、両手両足は鋭利な三角錐に変化していた。
知性チームに在籍していた俺でも一度しか見ていない姿だ。
奇声を発しながら突進、身軽になった分、動きも速くなり……そのせいだろう、ペンチマンはプリズマンの動きを見誤り、肘から先を切り落とされてしまう。
この時点でプリズマンの勝利は目に見えていたが、さらにペンチマンを蹴飛ばして転ばし、うつ伏せにさせると……その背に乗り、背後から腕を使って首を締め上げる。
「王子! あの技は!?」
「わかっておる、ラーメンマンのキャメルクラッチだ。両手でアゴを掴む代わりに腕で押さえているようだが…」
苦々しく答えるキン肉マン。
ラーメンマンが得意としている技の一つ、相手を死に至らしめる正義超人らしかぬ無慈悲な技。
プリズマンはゆっくりと体を後ろに引き倒してペンチマンをエビ反り状にしていく。
試合会場は静まり返り、リングの中央からプチプチと何かが千切れる音が静かに響く。
「キョ――――ッ、キョキョキョキョキョ!」
奇声を発すると同時に一気に体を後ろに倒し――――ペンチマンの胴体を二つに分断して、惨殺。
切断面から血が噴き出してキャンバスを真っ赤に染め上げていく。
尖った右腕でペンチマンの上半身を突き刺し、トロフィーでも掲げるかの如く高々に掲げて笑い声を上げる。
凄惨な殺人現場を目の当たりにして観客席のあちこちから女性の甲高い悲鳴が上がっては消える。
「つ…つぎ次鋒でろ!!」
「次鋒レオパルドンいきます!!」
大将のビッグボディから名指しされて、背後から襲い掛かるも……振り向きざまに鋭く尖った腕の三角錐で胸の心臓部分を一突き、断末魔の悲鳴を残しながら仰向けになって倒れた。
レフェリーは動かない強力チームのメンバーを見て試合終了のゴングの鐘を鳴らす。
チームの惨敗続きにビッグボディも「ああ…」と弱気の表情を見せてしまう。
そして中堅ゴーレムマン。
プリズマンの鋭利な両手をもってしても頑丈なボディに浅い傷をつけるのが精一杯だが、対するゴーレムマンも鈍重な見た目通りにパワーはあってもスピードはなく、繰り出される攻撃を次々と躱わされ避けられてしまう。
プリズマンは大振りの攻撃を避けて股下をくぐり抜けると、ゴーレムマンを肩車のように担ぎ上げてから跳び、空中で半回転して上下逆さまになったのちに、ゴーレムマンの頭をキャンバスに激突させ、頭をキャンバスの下へとめり込ませる。
「バカな、あの技は!?」
周囲が怪訝そうな表情を見せるのも構わず席から立ち上がり叫ぶ。
キャメルクラッチもそうだが、九龍城落地(ガウロンセンドロップ)王位争奪戦でラーメンマンが使っていた大技。
それを何故プリズマンが使っているのかが理解できない。
俺の知っているプリズマンは《レインボー・シャワー》を主体にしてた超人のハズだ。
さらにキャンバスに頭を突き刺したまま回転、首を支点に足から捻りあげ、体を絞っていき、リングに巨大な渦を作り上げ……
首を捻じ切った。
残った胴体が力なく横たわり、頭部を失った体から血がとめどもなく流れ出て……リングに血でできた水溜まりができあがる。
「
俺の漏らした呟きが聞こえたのか唸りながら頷くキン肉マンたち。
強力ではあるが日が沈むと使えなくなる《レインボー・シャワー》
《立方体リング》での引き分けと《ジャングル・ビッグ・ジム摩天楼デスマッチ》とかいう大層な名前がつけられた巨大ジャングルジムで見せた醜態のせいで強いイメージが沸かなかったが…
「フハハハ。こんな血塗れのリングじゃ、お互い気持ちよく戦えまい。観客席にいる見物人たちも休ませる意味も込めて、どうだ強力チームの諸君、我々も休憩を取るべきとは思わないか? 無論、只でとは言わん」
リングのキャンバスは三人分の超人の血で染まっている。
フェニックスの言う通りにとてもじゃないが試合をする環境とは言い難い。
休憩を取っている間にリングを掃除させるのだろう。
「次の試合、両チームの〝 副将 〟と〝 大将 〟によるタッグマッチでケリを着けないか?」
フェニックスの隣に座っていたミステリアス・パートナーが被っているローブを脱ぎ捨てて正体を現した。
白熊の毛皮を纏った巨漢の超人、自分のことを「ポーラマン」と名乗った。
先鋒のプリズマンたった一人に三人を倒された強力チーム。
残った二人で未だ五人健在している知性チームに勝つためには、フェニックスの提示する試合方法に従うしかなく、首を縦に振らざるえなかった。
時間を挟んで、双チームの副将と大将によるタッグ戦が始まった。
『見よ! バスターズ・ドッキング――――ッ!』
知性チームの二人が背中合わせになり、二人の左右の肩には直角に交わるように強力チーム二人のそれぞれの頭を乗せ、さらに脚を片方ずつ持ちながら落下、リングのキャンバスに激しい音を鳴らして激突する。
強力チームの副将であるキャノン・ボーラーは前のめりになってダウン。
よろけながらも立ち上がるビッグボディにはポーラマンが思いっきり蹴り上げる。
「とくと見な――――っ! こいつが元祖《マッスル・リベンジャー》と《キン肉バスター》のツープラントン技だ――――っ!!」
頭を下にして落ちてくるビッグボディをフェニックスが下から頭突きを繰り返して上空に跳ね上げ……天井の照明灯と激突。
落ちていくところをポーラマンがキン肉バスターの体勢でビッグボディを受け止め、そこへ上からフェニックスが両手首を掴み、両足で脚を押さえる。
「うわ――っ!? 動けない~~~っ!!」
唯一動かせる首を左右に振るも、ガッチリと技が決まってて抜け出すことができない。
「フェニックス! ビッグボディはもう戦意喪失している! 技を解くんだ!」
キン肉マンがフェニックスに解除を促すが、技を解くような素振りを一切見せず、口の端を上げて笑みを浮かべ、落下速度を速める。
「命が惜しいのならギブアップをしろ。このままでは技の餌食になるだけだ」
マリポーサからギブアップを勧められて、にべもなく「ギブアップ!」と叫ぶが、技の勢いは止まらず……ビッグボディを助けるべくキン肉マンがリングへと掛け上がり、少し遅れてネプチューンマンとマリポーサも上っていく。
リングを真っ二つにしかねない衝撃と轟音。
「ギブアップした相手に必要以上に攻撃を加えるのは明確なルール違反だ。完璧超人として見過ごせない行為だ」
フェニックスとポーラマンによるツープラントン技を、三人が円陣を組んで受け止めていた。
「何故、俺を…?」
「同じ日に生まれた兄弟みたいなものだから、助けた」
ビッグボディの疑問に苦悶の表情でキン肉マンが答えると、円陣が崩れ、倒れ伏せた。
(´・ω・)にゃもし。
ゲームやってて、危うく週一のペースが崩れるとこだった。