逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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激闘の末に勝利を収めたキン肉マン。
しかし、火事場のクソ力を失った状態での戦闘は体に負担をかけていた。
そのことを指摘する技巧チームの大将であるゼブラに腹を立てるキン肉マン。
次に行われる試合に向けて去っていく王子達。
キン肉マンの元に完璧超人率いるネプチューンマンがやって来た。

 


強力チーム vs 知性チーム
工作


 

 

 

 

ネプチューンマンの背後に立つ完璧(パーフェクト)超人とおぼしき男達。

 

 

「コイツらはこの俺を『超人再生術』で蘇らせた連中だ。タッグトーナメントでのお前達の事を話したら直接会ってみたくなったんだとよ」

 

 

「だがその前にお前を病院に連れていく方が先だな」腕を引っ張り、肩を貸す。

 

 

「ま、待ってくれ! ワシはまだそこのフードの男と…」

 

 

アタルの方に手を伸ばして抵抗するが、思いの外ダメージが大きかったのか、ズルズルと引き摺られるようにして連れていかれる。

 

 

「俺はこいつと話す事がある。お前らは病院に行ってろ」

 

 

立てた親指で後ろにいるアタルを指差す。

ミートは何かを言おうとしたが、一度口をつぐんで…

 

 

「今は王子の身が心配ですので、そちらにいる人物の正体と貴方との関係について詮索することは後にしておきましょう」

 

 

軽く一礼をすると、キン肉マン達の跡を追うべく走り去った。

 

 

「早い再会だなアタルよォ。こんだけ派手に暴れてどうするつもりだ?」

 

 

キン肉マンを助けるためとはいえ、大衆の前に姿を現せたアタル。

無論、他の超人達にも目をつけられたことだろう。

 

 

「そのための策は用意してある」

 

 

こちらが何かを言う前に先頭に立って歩き始める。

向かう場所は選手達のために用意された控え室。

道中、見物していた人間からやたらと声をかけられたが…

 

 

「鬱陶しいったらありゃしねェ…」

 

 

「スグルを応援している者達からしてみれば、お前の存在は救世主に見えたんだろう」

 

 

雑談を交わしつつ控え室の扉を開けて中へと入る。

無人の筈の室内には既に一人の超人がロッカーを背にして待ち構えていた。

 

 

「随分と時間がかかったな?」

 

 

過去にキン肉マンら正義超人と戦ったことのある忍び装束姿の超人、ザ・ニンジャ。

前の世界ではもう少し先、アタルとソルジャーマンが入れ替わった後で仲間に加わる筈だが、こっちでは既に声をかけていたようだ。

 

 

「何故そいつがここにいるんだ? チームメイトの一員にするつもりなのか?」

 

 

問いには答えず、ニンジャは一足飛びでアタルに近づき、顔面に掌底を打ち込んできた。

舌打ちを打ちつつ迎え撃つべく前に躍り出ようと動くが、その前にアタルは片手で制して、こっちの動きを止め、敢えて掌底を受け止める。

 

 

派手な音が鳴るかと思いきや…

 

 

「――――忍法・顔写し」

 

 

ニンジャの掌底は相手にダメージを与えるためではなく、自身の掌に相手の顔を写すためのもの…

 

 

掌にアタルの顔を写すと、その掌を自分の顔に当てて転写。

次に肉体を含めた外見そのものがアタルに変化する。

忍者を自称するだけの腕前はあり、二人が揃って並んで立つと見分けがつかない。

さらにアタルはロッカーから黒いローブと帽子を取り出して身に纏い、牧師に変装した。

 

 

「強力チームと知性チームは次に行われる試合の準備のために動けない。技巧チームはニンジャが囮になって惹き付けて、その間に私が残虐チーム共々ソルジャーマンを討ち倒し、入れ替わる!」

 

 

「おいおい、この悪魔超人は信用できるのか? 途中で裏切る可能性がないわけじゃないだろ?」

 

 

声高らかに計画を喋るアタルに水を差すように意見を述べると…

 

 

「安心せい、一度引き受けた仕事を途中で投げ出すような不粋な真似はせんよ。それに邪悪なる者とはいえ神は神。神を謀る機会などそうそう得られるものではない」

 

 

「神を騙すのも悪魔の仕事の内よ」と訝しげる俺をアタルの姿と声で受け流すニンジャ。

知性チームの先鋒であるサタンクロスと戦闘の末に死亡、という芳しくない結果を残したものの、前の世界ではニンジャはアタル率いる残虐チームの一員として戦っていた。

チームのために死ぬこいつが土壇場で裏切ることはないだろう。

 

 

「アタル一人で残虐チームを片付けるつもりなのか?」

 

 

入れ替わった時期は未だに不明だが、正史では訓練のために雪の積もる富士山麓を訪れていた旧残虐チームを一人で壊滅させたアタル。

その技量は凄まじく邪悪の神の一柱、知性の神が憑依した状態のフェニックスを圧倒させる程であり、技の妨害さえなければ勝っていたのはアタルだっただろう、とさえ言わしめている。

 

 

「アタル殿の技量を疑うわけではないが、5対1というのは些か無謀といえよう。入れ替わりの際には拙者らも駆けつけに参る。なぁに、知己に打ってつけの能力を持った御仁が居るゆえ、その者を使いとして各々各人が滞在している場所に向かわせよう」

 

 

「話はそれまでだな? なければ、これより作戦に入る」

 

 

アタルの姿を借りたニンジャが堂々と表通りを出歩き、牧師姿のアタルが街の雑踏の中にまぎれて消えていった。

そいつらを見届けた後、キン肉マンが連れていかれた病院へと向かう。

 

 

 

 

  ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

「やっと着いたぜ」

 

 

げんなりとした声音で言いながら、病室の扉の前に立つ。

数いる超人達の中でも大柄な体を持つ俺は街の中でも非常に目立ち、遠巻きにして見物する人だかりの山ができあがり、その連中を掻き分けながら進んで、ようやく目的地に辿り着いた時には既に日が暮れていた。

 

 

「チームメイトとしてキン肉マンとともに戦うのは悪くはないが…」

 

 

ドアノブに手をかけたところで部屋内にいる人達の会話が聞こえてきた。

会話の内容と少々渋みのかかった声からしてネプチューンマン。

さしずめ、キン肉マンかミートがネプチューンマンを勧誘しているところだろうか…?

 

 

「俺はタッグトーナメント戦でキン肉マン、お前の仲間であるモンゴルマン、ロビンマスク、ウォーズマンの覆面(マスク)を狩り、あまつさえウォーズマンの命を奪った」

 

 

「そんな大罪を犯した罪人がお前と一緒に戦う資格はない…」その言葉の終わりと共に押し黙り静かになる。

 

 

さて、どうしたものか… ドアノブから手を離して顎に手を当てて考え込む。

正史では飛翔チーム戦の途中でテリーマンとロビンマスクが駆けつけてきたが、今回は〝 俺 〟というイレギュラーの影響のせいなのだろうか現れず、その代わりなのかネプチューンマンが現れた。

もっとも話の流れからして仲間にはならないようだが…

 

 

「お前はもう少しだけ『友情』というものを、『裏切りの箱』と『呪いの人形』を使っても崩すことができなかった仲間の絆というものを信じろ」

 

 

数瞬の間を置いて扉が開かれて、ネプチューンマンとばったり会う。

 

 

「話は聞かせてもらったぜ。チームメイトとして参加する気はないのか?」

 

 

こちらを観察するように不躾な視線でじろじろと見ていたが、やがて「悪いがそれは俺の役目じゃない」と、それだけ言うと俺の横を通って廊下の先にある階段を降りていった。

 

 

「ネプチューンマンを迎え入れる案は悪くはなかったと思うぜ」

 

 

空いている席に腰掛けて言う。

病室内を見渡すとむさ苦しい男には相応しいとはいえない色とりどりの花が飾られている。

どれもこれも一回戦突破を祝うものや、早期の退院を願う紙の札が掲げられていた。

言葉が届いているのか、いないのか俺が部屋に入った時からキン肉マンは左腕を擦り、突然その動きを止めると…

 

 

「左腕にある〝 バッファローマンのロングホーン 〟を取り出す」

 

 

かつてネプチューンマンとそのタッグパートナーであるビッグ・ザ・武道の二人が放つ『クロス・ボンバー』から、当時モンゴルマンを名乗っていたラーメンマンを救うために犠牲になったキン肉マンの左腕。

完璧超人二人がかりで放つこの技はキン肉マンの左腕を切断し、さらに中の骨をも粉砕させる威力を持っていた。

そしてその潰れた骨の代わりとして用いられたのがバッファローマンのロングホーン。

 

 

「幸いここは病院だ。骨の代わりになる物はいくらでもあるだろう」

 

 

当然、ミートは猛反対をして、かくいう俺も賛同しかねた。

『火事場のクソ力』のない今のキン肉マンにはこの1000万パワーが秘められているロングホーンは貴重な戦力の筈だ。

もしかしたらマリポーサに勝てたのも、この2本の角があってこその可能性も否めない。

 

 

「ただし条件がある」

 

 

その場で立ち上がり、ビッグ・タスクを伸ばし、4本に枝分かれさせると…

枝分かれさせた根元に手をかけて、へし折った。

 

 

「失った骨の代用には、これを――ビッグ・タスクを使うことだ」

 

 

 

 

  ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

場所は変わって病院内にある手術室の一つ。

キン肉マンに骨を埋め込んだドクター・ボンベの弟子を名乗る数名の超人医師達が牙を叩いて骨の形に整え、キン肉マンの左腕から骨の一部になっているロングホーンを取り出し、代わりに骨の形をしたビッグ・タスクを埋め込んだ。

 

 

知性チームと残虐チームが対戦している時にキン肉マンはバッファローマンにロングホーンを投げ渡していた。

キン肉マンが左腕からロングホーンを取り出したのは、バッファローマンが味方として加わると思ったからなのだろうか…

それとも、御家騒動に他人の力を借りない、という下らない意地を見せるためか…?

味方として現れたと思ったら、敵チームの一員になっていた。

あの時のお前はどんな気分だったんだろうな…

 

 

「俺にはお前たち正義超人の考えが理解できないな」

 

 

手術を終え、ベッドに横たわって睡眠を取っているキン肉マンに向けて言い放った。

その横には椅子の背もたれに体を預けて眠るミートの姿もある。

 

 

「何の因果か、もう一度これを手にするとはなァ…」

 

 

俺の手にはキン肉マンから手渡された2本のロングホーンと、ロビン家の家宝である『アノアロの杖』が預けられていた。

それらを緑色の唐草模様の風呂敷に包んでから、椅子に腰掛けて眠りに入る。

アタルが相手する残虐チームと戦う日を、その知らせを教えてくれるであろうニンジャの使いが来るのを楽しみに待ちながら……

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

たまには戦闘シーンがなくてもいいよね。
しかし、ニンジャの能力って卑怯でチートだわ~、と思っているのは私だけか?

 

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