逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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引き分けに終わった100トン戦。
超人委員会に任せることができずに試合を仕切るネプチューンマン。
アタルの口から告げられる『マッスル・スパーク』
火事場のクソ力を失ったまま戦いに赴くキン肉マン。
だが、アタルのアドバイスを聞いて試合を有利に進ませていく。

 


第一回戦、決着

 

 

 

 

「マリポーサ、お前はよくやった! ギブアップしても誰も文句は言わんぞ!」

 

 

テキサス・クローバー・ホールドをかけたままキン肉マンは試合の棄権を促す。

 

 

しかし、マリポーサの全身から炎が突然吹き出てキン肉マンを怯ませる。

 

 

怯み、力が緩んだ瞬間にマリポーサは両腕で胴体を持ち上げ、キン肉マンの股の下にできた隙間に上半身をくぐり抜けさせると、キン肉マンの腰を足で挟んでしがみつき…

 

 

腹筋の要領で体を起こしてキン肉マンの頭に何度も頭突きを食らわせる。

頭蓋骨と頭蓋骨がぶつかる音が何度も鳴る。

 

 

「王子! ジャイアント・スイングです!」

 

 

足首を掴んで、その場でコマのように回り始める。

回転数を増やすごとに速さが増していき、炎が風に揺らめいては消えていく。

炎が消えたと同時にコーナーポスト目掛けてマリポーサを放り投げ、頭から激突させる。

 

 

マリポーサは足元をよろけさせながらも立ち上がり、コーナーポストの中にある鉄柱を素手で引き抜くと鉄柱の底を蹴ってキン肉マンに向けて飛ばす。

 

 

その鉄柱の頭が腹部に直撃、マットに倒れる。

 

 

『秘技・鉄杭縛り!!』

 

 

さらに鉄柱が空中で四つに割れ、ダウンしたキン肉マンの四肢を突き刺し、キャンバスに縫い付けて動けなくしてしまう。

 

 

「アステカ・ドロップ!」

飛び込みながらの肘打ち。

 

 

「アステカ・セントーン!」

尻からの落下による圧殺。

 

 

「アステカ・ニードロップ!」

ジャンプし、曲げた片膝をぶつける。

 

 

「アステカ・ヘッドバット!」

倒れた相手に頭部を打ち付ける。

 

 

ダウンしたキン肉マンに炎を纏った状態で次々と打撃技を加えていく。

攻撃を与えていく最中、己の境遇、身の上を語り始める。

 

 

「俺には妹がいた! 母がいた! だが、薬を買うための金がない程の貧乏故に皆死んでしまった! 俺は貴様らみたいな金持ちが赦せない! 何で金持ち共は俺達を、貧しい人間達を助けてくれなかったんだ!?」

 

 

さらに激しさを増していくマリポーサの猛攻。

 

 

「お前みたいな何の不自由なく育った人間が大王になるよりも… 貧しさを知り、弱者を知る、民と同じ目線に立てる者が大王になるべきだ!」

 

 

尚も執拗に攻撃をし続け、打撲傷と火傷が増えていく。

 

 

「お前の境遇には同情するが、だからと言ってこの私――キン肉マンが負けるわけにはいかんのじゃァ~~~~~っ!!」

 

 

獣が吠えるのような雄叫びとともに体を反らせ、四肢を貫いている鉄柱を跳ね退ける。

 

 

そこへ跳躍からの膝打ちを加えようとしたマリポーサの攻撃を腹筋で受け止める。

さらに体をブリッジ体勢に何度も勢いよく反らせて、その腹筋でトランポリンの如くマリポーサを弾ませて跳ね上げ、段々と高度を上げていく。

 

 

「マ、マリポーサ様ぁ~~~!? 今、お助けします!!」

 

 

テレビカメラを動かして、キン肉マンに照準を合わせる――VTRが能力を使用する時の予兆。

 

 

「おっと、セコンドが出していいのは口だけだぜ?」

 

 

今まさに胴体にあるボタンを押そうとする腕を掴み、そのまま握り潰す。

 

 

「ウォォ~~~ッ!?」

 

 

潰れた腕を押さえながら転げ回る。

 

 

場外からの妨害を阻止する傍ら、リング上にいるキン肉マンの動きに変化が起きる。

跳ね上げた後、空中で右膝の裏で首を、左足で片足を挟んで「K」の字を作るように固定、マリポーサの体を反らせる。

 

 

「キン肉マン、スペシャル・ホールドNo.3! 未完成『マッスル・スパーク』!!

 

 

体から軋む音を出しながら顔を苦痛で歪ませ、重力に従って落下し始める。

キン肉マンの未完成マッスル・スパークでもマリポーサに多大なダメージを与えたが、意識を刈り取るまでには至らなかった。

 

 

それが分かるや否、マリポーサを逆さにして、その首を肩口に乗せ――『キン肉バスター』の構えを取る。

 

 

「今更ここでキン肉バスター、過去に対処法が幾つも確立された技など!」

 

 

そう叫び、マリポーサは体を動かそうとするが、ガッチリと固定されて身動きが取れない。

 

 

「それは万全の状態の時のみだ! 私のマッスル・スパークで〝 首 〟と〝 背中 〟と〝 片足 〟の三ヶ所を痛めた今のお前にこの技から抜け出す方法も力もない!」

 

 

リングの中央にお尻から落下、轟音と共にキャンバスのシートを激しく波立たせる。

 

 

 

 

五所蹂躙絡み(ごどころじゅうりんがらみ)『 キ ン 肉 バ ス タ ー !! 』――――と。

 

 

 

 

マリポーサが意識を失ったと同時に拘束を解き…

解放されたマリポーサがキン肉マンの後ろを背中から落ちて、仰向けになって倒れる。

 

 

静まり返る観客席。

レフェリーがすぐにリングに上ってマリポーサの状態を確認、二度と立ち上がれないと判断を下し…

 

 

「勝者、キン肉マン!」

 

 

キン肉マンの勝利を告げると、会場内が降って沸いたかのように騒ぎ出した。

 

 

 

 

   ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

「俺は敗れたのか…?」

 

 

リングの中央で大の字のまま意識を取り戻したマリポーサが開口一番にそう呟く。

マリポーサの側にいる100トンが重苦しく頷いて敗北を肯定する。

 

 

「同じマスクマン超人として覆面(マスク)を剥がすのは気が引けるが…」

 

 

ミートから純白のマントを手渡されたキン肉マンが近づく。

 

 

「マスクを剥いだ程度じゃ足りないだろう」

 

 

上半身を起こして懐から一本の杖を取り出すと、尖った部分で自分の腕を突き刺した。

周囲が驚くのをよそに腕から吹き出す鮮血で純白のマントを紅く染め上げていく。

 

 

「この杖、アノアロの杖は昔、お前の仲間であるロビンマスクの家から盗み出した物であり、今回の王位争奪戦で使っていくつもりだったが、もはや俺には必要のない物だ」

 

 

杖をキン肉マンに投げ渡し、体をよろけさせながらも二本の足で立つとチームメイトに向けて…

 

 

「キン肉マン・マリポーサ、盗人ジョージはこの通り無様に負けた! 飛翔チームはこの場で解散! おのおの好きに生きろ! 俺に従う必要はもうない!」

 

 

そう言い残してリングにかけてあるタラップを下りていく。

下りた先には両腕に包帯を巻いた100トン。

マリポーサに無言で片手を差し伸べると…

 

 

「たかだか一度の敗北で仲間を見捨てるような薄情な男は我が飛翔チームにはいませんよ。たとえ神に見限られても私達はあなたについていきますよ、ジョージさん?」

 

 

ミキサー大帝の頭部の欠片を手に持ち、100トンに肩を支えてもらいながら、VTRらと共に会場を出ていく。

 

 

「キン肉マン・マリポーサ。品位、人格、実力どれをとっても超人として一流で、キン肉大王になってもおかしくはない男だった」

 

 

去っていく背中を眺めながらキン肉マンはマリポーサをそう評価し…「ただ一つの欠点は心が貧しすぎたことだった」とも付け加えた。

 

 

「あの辛く苦しかった盗人生活から、ようやく脱出できるんだ」

 

 

涙声混じりの悔しそうなジョージの声が細長い通路で反響し、俺達の耳に届いた。

 

 

 

 

   ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

飛翔チームが去っていった後「パン、パン、パン…」と気持ちの込もっていない乾いた拍手の音が無言の会場に響く。

運命の5王子の一人、キン肉マン・ゼブラとそのチームメイト達が発したものだ。

 

 

「先ずは一回戦目勝ち抜きおめでとう。不幸な事故で火事場のクソ力を失ってしまったようで、俺としては全力のキン肉マンと戦ってみたかったんだがなァ~?」

 

 

「おのれ~~~っ、言わせておけばぁ―――――!」

 

 

ゼブラ達に向かって突進を試みるキン肉マンだが、途中で糸が切れた人形のようにその場で倒れた。

床に身を伏せたまま困惑するキン肉マンにゼブラが憶測を告げる。

 

 

「火事場のクソ力を失った状態での戦闘はお前の想像以上に身体に負担をかけさせたようだな」

 

 

上からキン肉マンを見下し、ほくそ笑む。

その態度に対して伏せた状態から睨み付けて「ぐぬぬぬぅ…」唸り声を上げる。

 

 

「言いたい事は山ほどありそうだが、決着はリングの上で着けよう。そのための王位争奪戦だ」

 

 

キン肉マンをその場に残して、ゼブラ達は去っていく。

 

 

「会津若松城で行われる試合に向けて俺達も行くとするか、ビッグボディよ?」

 

 

ビッグボディを連れ立ってフェニックス達もいなくなり、最後に残虐の神が力を貸しているソルジャーマンが残った。

 

 

そいつはフードを被ったアタルを指差すと――――

 

 

「何処のどいつか知らないが、さっきはよくもこの俺に恥をかかせてくれたな!?」

 

 

ミキサー大帝のパワー分離機で他の王子とともにキン肉マンから火事場のクソ力を分離するときに唯一、ソルジャーマンだけがアタルの手によって妨害されていた。

 

 

「神の力を借りているにも関わらず成果を上げられなかったのだ。この上無い恥と言えよう」

 

 

言外に無能と言わんばかりにアタルは語り、さらに「他の候補者達は皆、成功しているのにな…」歯に衣を着せぬ物言いに顔を赤らませるソルジャーマン。

人を射殺すほどの激しく燃える怒りが視線に込められているのが分かる。

 

 

暫く視線を合わせていた二人だが… ソルジャーマンの方が先に折れて目線を逸らし「覚えていろ!」という捨て台詞を吐いて出ていった。

 

 

 

 

   ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

「久しぶりだな、キン肉マン」

 

 

実況席でアナウンサーと一緒に試合を観戦していたネプチューンマン。

 

 

「タッグトーナメントで完璧(パーフェクト)超人の代表として、お前達と戦って負けた経験は良くも悪くも俺に影響を与える程の強烈なものだった。それは俺以外の完璧超人が関心を示す程にな?」

 

 

ネプチューンマンの背後に現れる超人達。

 

 

「敗北からの成長」

「互いに切磋琢磨し、励み合う仲間」

「我々、完璧超人には持っていないものを持つ超人達の一派」

「相手を一切認めず」

「否定、批判するだけの批判家の言葉にいったいどれだけの価値があるのか…」

 

 

そいつらは順々に口を開いて淡々と述べていき、最後にネプチューンマンが締め括った。

 

 

 

 

「俺たち完璧超人はお前たちの試合から学び、考えることにした」――――と。

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

もうちょっと書こうかなと思ったけど止めた。
ここまで読んでくれて Thank You 
 
 

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