逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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場外カウントアウトによる引き分け狙った100トン。
ミキサー大帝のパワー分離を成功させる為に力を合わせる飛翔チームと邪悪の神々。
キン肉マンを助ける為に現れたアタル。
邪悪神殿への封印は免れたが “ 火事場のクソ力 ” を分離されたキン肉マン。
神の行いに怒りを覚え、ネプチューンマンが姿を現した。

 


ネプチューンマンの横行と大将同士の戦い

 

 

 

 

試合会場の観客席に現れた完璧(パーフェクト)超人の一人であるネプチューンマン。

 

 

奴は富士山麓で行われた『宇宙超人タッグトーナメント』の決勝でキン肉マンとテリーマンのコンビに敗れ、迫り来る1000人の完璧超人軍団の侵攻を食い止める為、爆薬入りのカプセルを飲み込んで自爆、人狼煙となって仲間達に敗北を知らせて散った。

 

 

少なくとも俺の記憶の中ではそうなっている。

 

 

「――――富士山の上空で自爆して死んだ筈のお前が何故ここにいて、生きているんだ?」

 

 

試合会場にいる誰もが思った疑問を本人に直接ぶつける。

 

 

「完璧超人に伝わる “ 超人再生術 ” で復活したんだよ。俺としては死んだままでも良かったんだけどな… それと俺がここにいる理由だが単純に興味が湧いただけさ」

 

 

当然と言えば当然か、キン肉星の大王ともなれば発言力も大きくなる。

この王位争奪戦は未来の大王を決める戦い。

それに関心を示さない超人はそうはいない。

 

 

「それで何しに来たんだ? 俺としては集団リンチに遭ったうちの大将を休ませたいんだが…?」

 

 

「俺の目的は求める物は只一つ!」…と叫んで右手人差し指を高々上げる動作をする。

 

 

「キン肉マンの試合が見たい!!!!」

 

 

馬鹿デカイ大声が会場に響き、尚も口上は続く。

 

 

「そこのマンモスマンには悪いが引き分けになりそうな時… “ これでやっとキン肉マンの試合が見れる! ” …と思った程だ!」

 

 

観客席がざわつき始める。

席のあちらこちらからはネプチューンマンの言葉に賛同する声が出てきた

 

 

「なのに蓋を開けてみたら何だこれは!? 俺はこれを見るためにここに来たんじゃねぇ!!!!」

 

 

試合会場の観客達も大声を出して賛同、候補者達に向かってヤジを飛ばし、ついでにリングに物を投げ入れる。

 

 

「超人委員会は役立たずの集まり、そこの候補者どもは信用できねぇ。なら俺が仕切るしかないだろ! このネプチューンマンが!!!!」

 

 

***  ***  ***  ***  ***

 

 

俺と100トンの試合は引き分けで終わり、奇しくも飛翔チームの望んだ通りの結末になった。

運命の5王子たちとキン肉マンは気絶から回復し、対戦者であるマリポーサとキン肉マンを除く各陣営のチームは観客席へと戻っていく。

そのあとにリングとその周辺を超人委員会の関係者たちが片付け始める。

その中には今にも命の炎が消えんばかりのミキサー大帝もいた。

 

 

「キョ――――キョキョキョ! 苦しそうだなァ? ミキサー大帝?」

 

 

知性チームのプリズマンが仮面のような頭部だけのミキサー大帝に近づく。

 

 

「プ、プリズマン……頼む、助けてくれ。このままじゃ、死んでしまう」

 

 

「おいおい、あんだけ場を荒らした元凶のくせに “ 助けてくれ… ” ――だなんて少々おこがましいんじゃないかい?」

 

 

肩を竦めて、呆れたようにものを言うプリズマンに対してミキサー大帝は反論を述べる。

 

 

「でもあれは邪悪の神に言われてやったんですよ?」

 

 

「いけねぇなァ、神様のせいにしちゃあ…」

 

 

口許を愉しそうに歪ませるプリズマン。

彼はおもむろに片足を上げる。

異変に気づいたマリポーサが駆けつけるも…

 

 

「ウギャア! マリポーサ様ぁ!!」

 

 

頭を足で踏み潰されて、粉々になる。

 

 

「貴様、うちのチームメイトに何をする!?」

 

 

プリズマンの非道に憤慨して食って掛かるマリポーサとその仲間達。

そこに知性チームが現れて一触即発の危険な空気を醸し出す。

 

 

「テメェら、俺が目を離した隙に性懲りも無く、おっ始めやがって!!」

 

 

ネプチューンマンが間に割って入り「散れ!」と命令を出して、元の場所に戻させる。

跡にはマリポーサの歯軋りする音と、プリズマンの人をバカにしたような高笑いだけが残った。

 

 

荒れた試合会場を元に戻している超人委員会たちを余所に、熊本城に現れたネプチューンはおもむろにリングの中央に立つと…

 

 

「神聖なリングにおいて、こんな卑怯な行いはあっちゃ~、イケねぇ…」

 

 

「ここから先は俺が決める!」マイクを片手に王子たちを指差す。

 

 

彼の独断の行動に全員が反対するかと思いきや、フェニックスはネプチューンが試合の進行役をやることに賛成、彼を認めた。

 

 

無論、反対意見も出たが…

 

 

「ここでいつまでも言い争う方が時間の無駄だ。それに彼は完璧(パーフェクト)超人。卑怯な行為、不正な試合を最も嫌う者たちの一人。その点に関してだけは信用できる。任せてもいいだろう」

 

 

フェニックスにそう言われて、渋々だが表向きには首を縦に振った。

 

 

「王子、しっかりしてください! 僕が誰だか分かりますか!?」

 

 

キン肉マンの肩に手を置いて揺さぶるミート。

暫く立つと、うっすらと目を開けて意識を取り戻す。

 

 

「おお、ミートよ。ミキサー大帝に囚われてる間にワシは物凄い大技を見てしまったんじゃ…」

 

 

「あの技は一体…?」質問するキン肉マンに、ミートの代わりにアタルが答える。

場外で暴れた後も、アタルはこの場に残っていた。

 

 

「キン肉星、キン肉大神殿に安置されている『フィニッシュ・ホールドの壁画』そこに描かれているキン肉族三大奥義の一つ…」

 

 

アタルが言葉を切って間を取ると、誰かの喉を鳴らす音が耳に届く。

 

 

 

 

「その名も『マッスル・スパーク』!!」

 

 

 

 

驚きのあまり声が出ないキン肉マンとミート。

アタルは固まった二人を無視して話を続ける。

 

 

「キン肉星王族に古くから伝わる数々の技。そのうち最も優れた選りすぐりの三つがそうだ。キン肉王族の代々の王位継承者たちは、この三つの奥義を全て体得するのが義務付けられている」

 

 

「初耳です! それに現王であるキン肉真弓様は!」

 

 

「三つどころか、一つとして体得してはいない。この義務は意味を成さない、もはや形だけの代物と言えよう」

 

 

それを聞いて安心したのか、ホッと胸を撫で下ろす。

 

 

「だが、スグルがこれから戦うために何としても修得すべきだろう」

 

 

「何故なら今のスグルには “ 火事場のクソ力 ” がない…」それを指摘されると二人は押し黙り、何とも言えない重苦しい沈黙が場を支配する。

 

 

「火事場のクソ力に代わる力として、キン肉族三大奥義を身につける必要がある。三つ全てを体得しろ、とは言わん。せめて一つは修得すべきだ」

 

 

「そんな無茶苦茶ですよ! 僕たちには、王子には今から特訓する時間なんてありません!」

 

 

 

 

「それでもワシは行かねばならない。できる、できない関係なくキン肉マンはリングに上がらなければならないのだ…」

 

 

 

 

覚悟を決めた顔でパイプ椅子から立ち上がり、リングに上がっていく。

準備のために設けられた時間はとうに過ぎていて、対戦相手であるマリポーサは既にリングの上で待ち構えていた。

 

 

「祝賀用のシャンパンを用意しておけ」

 

 

自分の勝利は揺るがない、と確信しているのかマリポーサがチームメイトに命令を下す。

 

 

「ミートよ」

 

 

「ハイ! こっちも祝賀用のシャンパンですね!」

 

 

「いや、替えのパンツを用意してくれ、チビってしまった…」

 

 

腕を組んだ状態でパンツを濡らしていた。

大観衆が見ている前でいそいそと履き替える。

 

 

「なァ、アタルよぉ… あの状態のキン肉マンがマリポーサに勝てると思うのか?」

 

 

さすがのアタルでも「ううむ」と唸る。

 

 

ゴングが鳴らされ、リングの上で対峙する両者。

 

 

「――――キン肉マンよ。もしも、そこの男の言う『フィニッシュ・ホールドの壁画』に描かれている必殺技の一つを私がマスターしているとすれば、どうするかね?」

 

 

背後のロープに乗ると、重みでロープが下がり、反動で天井近くまで飛んで見せた。

そこから頭を下にして急降下。

 

 

『マッスル・リベンジャー!!』

 

 

キン肉マンの頭と激突、足下がキャンバスにめり込む。

さらに頭を振って首の力だけで真上に飛び、もう一度キン肉マンに頭突きを食らわす。

尚も攻撃を続けるマリポーサによって、どんどんとキャンバスに体がめり込み、埋まっていく。

 

 

「キン肉族三大奥義の技というからには、どんなスゴい技かと思いきや、随分と地味じゃのぉ?」

 

 

マリポーサの上空からの頭突きが決まる瞬間、首を横に動かして直撃を避け、マリポーサの首を肩口に乗せるようにして受け止め、腿を掴んで抱え上げる。

 

 

キン肉マンの代名詞と言える技『キン肉バスター』の構え。

 

 

「スグル! 体を半分キャンバスに埋まった状態では、その技は決めることができない! 他の技『タワー・ブリッジ』に切り替えるんだ!」

 

 

「むぅっ、そうじゃった。ロビンマスク、お前の技を使わせてもらうぞ!」

 

 

縦から横へ仰向けに倒して両肩に担ぎ上げて乗せ、相手の腿と顎に手をかけて固定。

自分の首を支点にマリポーサの体を二つに折り曲げていく。

 

 

「悪くはないが、この技は両足を地につけてこそ真価を発揮するもの…」

 

 

突如、ヘリのプロペラのようにキン肉マンを巻き込んで回転する。

その勢いは凄まじくキャンバスから飛び出す程である。

 

 

あまりの回転にキン肉マンは目を回し、マリポーサを離してしまう。

 

 

「なんじゃい!『タワー・ブリッジをやれい!』…というから言う通りにやったというのに! 目を回した上に、技から抜け出されたではないか!?」

 

 

「王子、落ち着いてください! そのお陰でキャンバスから抜け出すことができたんです! あの技は相手を痛めつけるのが目的ではありません!」

 

 

指示を出したアタルに憤慨するが、ミートの指摘で「はっ!? 言われてみれば…」と気付き、考えを改める。

 

 

「よそ見をしてる暇はないぞ。左腕を上げろ」

 

 

マリポーサの飛び込みながらの肘打ちに、慌てて腕を上げて防ぐ。

さらに続く打撃による猛攻にも指示を受けながら対応していく。

 

 

「マリポーサ様ぁ! キン肉マンのそれは『肉のカーテン』です! 打撃は効果的ではありません! 左脇腹を狙うか、組伏せてください!」

 

 

VTRが負けじとアドバイスを送る。

マリポーサはそれに従い、右脚を横に振って左脇腹を狙う。

 

 

「――――来ることが分かっている攻撃は対処がしやすい。スグル、お前の記憶の中の友はどうしてた? それとも、戦友と呼べる存在は “ ロビンマスク ” しかいないのか?」

 

 

アタルのやや人を挑発するような物言いに顔をしかめるが、そこには先ほどのような嫌悪感は微塵も感じられない。

 

 

迫り来る右足の蹴りに両腕のガードを解き、両手で右足首を挟んで受け止め、その脚に己の両足を絡ませて、宙に浮くような格好でしがみつく。

堪らずバランスを崩し、マットに尻餅をつくマリポーサ。

 

 

キャンバスに着地と同時に足首を両手で捻りあげる。

 

 

声にならない絶叫が口から飛び出す。

 

 

「マ、マリポーサ様! 体を捻って逃れてください!」

 

 

仰向けの体勢からキン肉マンごと横に回転、両者共うつ伏せ状態になり、技から抜け出せたが…

先に体を起こしたキン肉マンがマリポーサの右足を軸に4の字にして腋に挟み、エビ反りに曲げていく。

 

 

 

 

「テリーの十八番! “ テキサス・クローバー・ホールド ” だ!!!!」

 

 

 

キン肉マンが得意気に叫ぶと会場が歓声に包まれた。

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

書いてるうちに書きたい話が浮かんで、つけたしのつけたしでできた今回。
小説を書くことって、難しいね。

 

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