逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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マンモスマンはキン肉マンと戦い、チーム入りを認めさせた。
史実と少しずつ変わる世界。
先鋒に立ち、飛翔チームを撃破していくマンモスマン。
遂には副将の100トンをリングに上がらせた。






混沌と化す試合会場

  

 

 

 

「本来なら相手の実力に合わせて重しを外しているが、キサマ相手には最初から全開の100トンで行かせてもらう!」

 

 

言うや否、リングのど真ん中のキャンバスが裂け、下から巨大な天秤のようなシーソー、二つある天秤皿の片方に俺を乗せるような形でせり上がってきた。

 

 

『ジェット・ローラー・シーソー!』

 

 

100トンが飛び乗ると反動で勢いよく跳ね上げられて天井に激突、体半分がめり込む。

 

 

やがて、重力に引かれるように天井から剥がれ落ち、シーソーの上に再び乗ってしまう。

さらにもう一度技を仕掛けるために跳躍する100トン。

 

 

着地寸前の所を狙って飛びかかり、顔面に掌底を当てて阻止。

100トン共々マットの上を転げ落ちる。

 

 

身を起こしマットに片膝をついた状態の100トンに、背後から首を両腕で締め上げる。

もがく100トンが両手で腕を外しにかかるが、締め付ける力を強めて妨害する。

 

 

だが、突如…

 

 

「パゴォッ!?」

 

 

体の前面――100トンと密着してる面から複数の鋭い突起物で刺されたような痛みが走り、拘束を緩めてしまう。

100トンはその隙を逃さず、強引に腕を振り払って、転がるようにして脱出する。

 

 

100トンを見るといつの間にか、全身にトゲが生えていて、それが体を突き刺したようだ。

奴がマリポーサの掲げるプラカードで変形することを思い出し、背後に目をやる。

だが、指示を出した気配はなく、チームメイトと一緒に腕を組んだまま観戦していた。

 

 

「ケーケケケ、100トンは外部からの信号で身体を変形させることができる超人なのさ!」

 

 

選手控えの席からリング下に移動していたミスター・VTRが得意気に説明する。

 

 

「こっちを見てる暇があるのかな!? やっちまえ、100トン!」

 

 

身を屈みながらのショルダー・タックルが腰に入り、体の芯に響く重たい衝撃を味わう。

そのまま腰に腕を回してリングサイドのロープへと押されていく。

 

 

飛翔チームの誰かの仕業だろう、ピンと張られている筈のロープが真ん中で切断されて、リングの外に落ちる。

落ちた時に背中を強く強打、腹部にも強い衝撃が襲う。

 

 

「レフェリー! 何をぼさっとしている! とっとと、カウントを始めろ!」

 

 

急かすVTRにカウントを始めるレフェリー。

場外カウントアウトを狙った引き分けなのは明白。

 

 

頭部に拳や肘で殴打し続けるも怯まず100トンが腰に抱きついたままで放そうとしない。

 

 

「このキング・ザ・100トン、たとえ首だけになろうともキサマをリングに上がらせん!」

 

 

ますます強い力でしがみつく。

 

 

言葉だけなら比喩表現とも取れないが、今のこいつを見てると本気でやりかねない。

リングではなく場外での決着に内心で舌打ちをしたが、パワー分離される前のキン肉マンなら問題ないだろう……と、この時点では高を括っていた。

 

 

「この時を待っていた!」

 

 

正史では試合中にパワー分離したが、今回は場外で仕掛けるつもりなのか、今まで静観していたミキサー大帝がキン肉マンに向かって駆け出す。

対するキン肉マンは慌てて立ち上がり、迎え撃つ構えを見せるが…

 

 

『アクション・ストップ!!』

 

 

VTRの能力で動きを止められ、ミキサー大帝の巨大なミキサーに飲み込まれてしまう。

キン肉マンを巨大ミキサーの中に入れると腰にあるスイッチを入れて、回転、分離を始める。

 

 

「今のぼろぼろの体ではキン肉マンから火事場のクソ力を分離させることはできません! 何とぞ、お力をお貸しください!」

 

 

会場内にいる運命の5王子――邪悪の神々に懇願。

その願いを聞き入れて、候補者たちがミキサー大帝に飛び込んでいく。

 

 

「腕がもがれても、文句は言うなよ!? 『ビッグ・タスク』!!」

 

 

顔の両脇にある象牙を伸ばして、100トンの両肩――生身の部分を穿つ。

 

 

――が、肩に突き刺したままで動きが突然止まる。

 

 

「『アクション・ストップ』! 俺がいることを忘れるなよ!」

 

 

VTRが会場にあるテレビカメラと自身の体をコードで繋げてこちらに向けていた。

奴が能力を使用できたのはこのためのようだ。

舌打ちをしながらも、唯一自由に動けるミートに指示を出す。

 

 

「ミート、何をしている!? そいつを潰せ! 早く!」

 

 

言われて救出しに駆け出すミート。

そこに透明感のあるガラス質の巨大な影が立ちはだかる。

 

 

「おっとボウヤ、ここから先は危険だから近づかない方がいいぜェ~?」

 

 

富士山で行われたタッグトーナメント以降、会う機会がなかったプリズマンがそこにいた。

 

 

迂闊、運命の5王子がいれば、当然奴らのチームメイトがいてもおかしくない。

万事休すか…? 俺たちのいる目の前で次々とミキサー大帝と一体化、最後の一人であるソルジャーが飛び込もうとした時に、観客席からフード付きのコートに身を包んだ男が飛び出した。

 

 

顔は見えないが、佇まいと雰囲気からキン肉アタルということが分かる。

 

 

奴は一直線にミキサー大帝の元へと駆け寄る。

 

 

「おっと、お客さん? ここは観客席じゃないぜ?」

 

 

プリズマンが立ち塞がり、両手で捕らえようとするも、逆にアタルは前に跳んで接近、相手の腕を腋に挟んで動きを封じると、床を蹴って上昇、体を後ろに反らせて逆さまになり、コーナーポストの頭にプリズマンの脳天をぶつける。

 

 

頭部に亀裂が生じ、プリズマンは気を失う。

 

 

気絶したプリズマンを床に落として放置。

コーナーポストを蹴って、ソルジャーへと跳ぶ。

 

 

ソルジャーがミキサー大帝と合体する間際、ソルジャーの背後から首と片足の腿に、曲げた両足をかけ――――エビ反りにさせていく。

 

 

『マッスル・スパーク!!』

 

 

堪らず顔を苦痛に歪ませて呻き声を漏らすソルジャー。

 

 

「ここは私が食い止める! ミート、お前は目的を果たせ!」

 

 

突如現れたアタルの存在と次々と繰り出される奴の技に誰もが目を奪われてた中、ミートただ一人だけはミキサー大帝の後ろに移動していた。

 

 

「王子! 今、お助けします!」

 

 

胴回りを掴むと軽く跳んでマットから浮かせ、後方に反り返って――――落とす。

 

 

断末魔とともにガラスでできたコップのように爆ぜて床に飛び散り、辺り一面に破片が散乱する。

 

 

砕けたミキサー大帝の欠片が散らばる床、その中にはソルジャーを除く王子とキン肉マンがいた。

双方ともに命に別状はないようだが、ぐったりと倒れていて、その場から動く気配がない。

 

 

そしてミキサー大帝が立っていた場所の跡には、三つの炎の塊が浮かんでいた。

以前ならそのまま邪悪神殿に送られていたが、途中で妨害が入ったせいか、その場で漂っている。

キン肉マンの力の源であり、邪悪の神々を危惧させた物…

 

 

「キョ――――キョキョキョキョッ! キン肉マンの “ 火事場のクソ力 ” は知性チームの一員である、このプリズマン様が頂くぜ!」

 

 

頭に亀裂が入りながらも復活したプリズマンが手を伸ばす――――が、炎が触れることを嫌ったのか、激しく燃え盛り、近づけさせない。

炎が指先を掠り、慌てて手を引っ込ませるプリズマン。

 

 

「ちぃぃぃっ、手に入れられないなら、破壊するまでよ!」

 

 

両手を交差させて虹色の光線を照射、緩やかな曲線を描いて炎に向かって飛来。

だが、プリズマンが光線を発射したと同時にアタルはマスクに手をかけていた。

 

 

「げ、げぇぇぇ~~~~~っ!? 俺様のレインボー・シャワーがァァァ――――っ!?」 

 

 

捲ったマスクの隙間から放たれた黄金色の光線が、虹色の光線とぶつかり、せめぎ合う。

やがて、空中で二つの光が混ざり合い……強烈な閃光となって会場にいる全ての視界を奪う。

 

 

耳に轟く三つの轟音。

 

 

回復した視力で見えた物は、衝撃で吹き飛ばされたのか、天井に大穴を空けて飛び去っていく三つの炎の塊。

 

 

「ちくしょう、今ならまだ間に合う! 追いかけるぞ、サタンクロス!」

 

 

「フェニックスはどうするんですか!? このままにしていいのですか!?」

 

 

「知るかよ! 俺たちは “ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

「だが、フェニックスと知性の神はキン肉マンの “ 火事場のクソ力 ” を分離するために一時的に融合しているんですよ!?」

 

 

二人の男が半人半馬のように合体した超人に問われて「ぐぬぅ…」と、くぐもる。

 

 

 

 

「悪いがテメェらは何処にも行かせねぇし、ここ――熊本城に留まってもらうぜ…」

 

 

 

 

会場の外へと繋がる通路から、廊下を鳴らしながら一つの影が徐々に近づいてくる。

会場内にあるスポットライトの光に照らされて全身が露になると、会場内が静まり返った。

鋼鉄のマスクとトゲつきのベストに身を包んだ筋骨隆々の超人。

 

 

「ネプチューンマン…?」

 

 

シンと静まり返った会場内を観客席にいる誰かが漏らした呟きが静かに響き渡る。

数ヵ月前にキン肉マンと死闘を繰り広げ、最後には超人狼煙となって死んだ筈の男が現れた。

 

 

「場外のえげつねぇ行為に思わず出てきちまったぜ…」

 

 

淡々と、しかし怒気の含んだ声で述べていく。

ネプチューンマンはVTRに目を向けると…

 

 

「そこのカメラ野郎、カウントは既に数え終わっている。解放してやったらどうだ?」

 

 

VTRが能力を解除したのだろう、体の自由を取り戻す。

レフェリーが場を確認すると静かに告げる。

 

 

「――――場外カウントアウトにより両者、引き分け!」

 

 

時間切れと試合結果を知らせるレフェリーの宣告。

試合の決着はお互いの大将に委ねられることになった。

 

 

ただ、この混沌と化した場を収めるために暫し時間を設けられたことと、知性チームが会場から飛び去ったキン肉マンの “ 火事場のクソ力 ” を諦めたことが、せめてもの数いだろうか…?

 

 

 

 

「これよりは、この完璧(パーフェクト)超人ネプチューンが試合を仕切る!」

 

 

 

 

ネプチューンマンが拳を握り締めて、力強く宣言した。

 

 

 

 

「異論は認めねぇ! 文句のある奴ァ、表に出な!」

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

ここまで読んでくれて Thank You
技をどうやって表現すればいいのか悩んだ。 
あとミスター・VTRの能力って、チートだよね。

※「VTRが会場にあるテレビカメラと~~~このためのようだ。」
 つけ加えました。忘れていたよ。スマン。

※前書き作った。 




 

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