バッファローマンとアシュラマンに体を支えてもらいながら立方体リングの上部に移動するアタル。
そこにはフェニックスを筆頭に知性チームのメンバーがすでに待ち構えており、リングの上空には預言書のページを持った残虐の神が宙に浮いていた。そしてその側に漂っている飛行船のモニターには現キン肉星大王のキン肉真弓が映っている。
「すまないアタル」
アタルと大王。画面を通じて再会を果たした両者。
親子二人の会話は、大王の涙を流しながらの謝罪から始まり……アタルもまた大王との会話により涙を流す。
「くっくっく…。遠い昔に別れた親子が再びこうして再会を果たす。
なかなか粋な計らいだとは思わないか?」
そこへフェニックスが割って入ってきた。
「もしかしたら自分の兄かもしれない、兄となる人物を倒すのは忍びない。
どうだ? ここは父である大王とお互いのために身を引いてくれないか?」
「黙れフェニックス!
キサマが大王を父と呼ぶことも、私がキサマから兄と呼ばれる筋合いはない!!」
「大王云々は兎も角。俺も勉学に嫌気を差して家出をするような軟弱な輩を兄とは呼びたくはないな。
それが原因で御家騒動が起きたんだからなぁ?」
アタルから立方体リング下にいるハラボテへと視線を移し…
「超人委員会、委員長ハラボテ・マッスル氏よ。
この試合は無効だ。とっととゴングを鳴らして終わらせろ」
言われて腕を大きく上に振り上げるハラボテ……その腕がゴングに向かって降り下ろされる。
…が、横から黒い腕が伸びてゴングを掠め取られ、打ち鳴らすためのハンマーが空を切った。
「カカカ。たかが紙切れ一枚で試合を終わらせるのは勿体無い。
それにあの預言書が用意された真っ赤な偽物の可能性もあるのではないか?」
悪魔超人ブラックホール。
ザ・ニンジャとブロッケンJr.を病院に送り届け終えたのか顔なしの超人が戻ってきた。
「ぬぉぉぉっ!?」
ブラックホールに視線が集まった瞬間、上空で残虐の神の呻き声が響く。
頭上ではバッファローマンが上昇しながら体当たりを喰らわせ、預言書の切れ端を奪うことに成功していた。
さらにだめ押しにロングホーンによる突き飛ばしで彼方に吹き飛ばす。
預言書を手に入れてホッとしたのも束の間。
「いけないなァ~? 神を冒涜するような真似を!!」
下のリングで横たわっていたプリズマンがバッファローマンの両足を掴み…
上下逆さまに反転した後に落下、バッファローマンの頭部を鉄柱に叩きつける。
頭頂部から激しく出血し、リングのマットに倒れ伏す。
そこへヒラリヒラリと宙に舞う預言書のページ。プリズマンが手に取ろうとした時に──バッファローマンの角が回転しながら飛来、プリズマンの右腕を砕き、これを阻止した。残った角をへし折って投げたようだ。
次いでプリズマンが行動するよりも速くバッファローマンが接近、背後から腕で首を絞めつつ、側面のリングへ飛ぶ。
身動きの取れないプリズマンの代わりにポーラマン、サムソン・ティーチャーに化けたオメガマンがリングのマットに落ちた預言書を回収すべく駆け寄る。
しかし、何者かが投げた四本の円錐型の針が付いた拳がポーラマンの掌に突き刺さり、コーナーポストに縫い付けられた。
「先に仕掛けたのは知性チームのプリズマンだ。文句は言わせんぞ?」
フード付きのローブで身を隠した超人が立方体リングに入っていた。
フードの隙間から見える黒のプロテクターとポーラマンの掌に突き刺さっている爪の付いた拳から正体を連想するのは容易かった。
「「ウォーズマン!!!!」」
タッグトーナメントで死した男がこのタイミングで現れた。
「積もる話は後だ。先ずは預言書のページを!」
急かすウォーズマンに動くアシュラマンとオメガマン。
オメガマンの手が届くよりも早く、アシュラマンの飛び蹴りが胸部に炸裂、二人揃ってバッファローマンたちとは逆のリングに落ちる。
尚も異変は続く。
急な横風に吹かれたのか、マットを滑るように移動する預言書のページ。やがて立方体リングのロープの隙間から落ち、右へ左へと振り子のような軌跡を描きながら…
吸い込まれるように俺の掌へと収まった。
「キョキョキョ。やっぱし最後に手に取るのはテメェだなァ、マンモスマン!!」
首を絞められながらも片腕を高々と掲げるプリズマン。その腕から細長い光の束が下に向かって照射され──預言書へと伸びていく。
舌打ちをしながらも後ろへと飛び退き、数瞬後の先に足下に穴を穿たれるであろう光線が……緩やかな曲線を作りつつ預言書の端を掠め……火が付いた。
「おっと、悪い悪い。化石野郎に当てるつもりが預言書に当たっちまったみてェだなァ?」
キョキョキョ。…と笑うプリズマンにバッファローマンは激昂するものの、アタルは逆にバッファローマンをたしなめる。
「私も超人レスラーの端くれ。戦いで命を落とす覚悟など、とうの昔にできている。
それでも消えゆく私のために思うならば…」
このキン肉アタルの最期の戦いを目に焼き付けてほしい。
アタルの一言に場は静まり返る。
「わだかまりを捨てて戦え! アタル──ッ! 燃え尽きるまで────っ!!」
飛行船に備え付けられている巨大モニターを通じてアタルに声をかける大王。
その声を受けてアタルは全身に炎を纏わせてフェニックスに急接近、腕を掴むと頭上に放り投げる。
……やがて落ちてきたところをブリッジ体勢で受け止めつつ、ブリッジ運動による腹筋の押し上げる力で再度フェニックスを上空に打ち上げた。
それを何度も繰り返し行い、打ち上げられる度に高度を増していく。
やがて頭上高くまで高度を上げると跡を追って跳び、すれ違いざまにフェニックスの首と片脚のそれぞれに足を引っ掛け、次に体を後ろに反らさせ──技を極めた。
それはキン肉マンが対マリポーサ戦で見せた未完全版のマッスル・スパークと同じもの…。そのことにキン肉マンらを含め会場にいた見物人たちが驚愕し声を張り上げる。
驚く観客たちを余所にアタルは次の行動に移す。
腕を掴んでフェニックスと背中合わせになると、体を弓なりに反らし──同時にその弓の内側で相手の体を「く」の字に折り曲げさせ──さらに手足で固定させ…
「これが私の知る50%のマッスル・スパークのかけ方だ──っ!!」
その体勢を維持したまま落下、フェニックスの頭と胴体をリングに叩きつけた。
この王位争奪戦で初めて見る技とはいえ、それが決まった瞬間にキン肉マンたちが歓声を上げるのも仕方がないことだろう。
──だが、アタルが技を解いて解放させると…
頭部からの出血で顔面を塗らし、ふらふらした足取りながらも二本の足でリングに立ち上がり、周囲を驚かせた。
「両足が消えかかったせいで技のかかり具合が甘くなったんだろうよ。
本来なら技の受け手側の両脚を両足で押さえる必要があるからな…」
愕然とした表情のキン肉マンたちにそう説明する。
以前も両足が消えたためにフェニックスを倒すことはできなかった。
これから起こることも、おそらく…
立っているのがやっとのアタルを上空に放り投げ、落ちてきたところを頭突きで打ち上げる──フェニックスのフィニッシュ・ホールドである「マッスル・リベンジャー」の第一段回目。
フェニックスの上昇しながらの頭突きを受けつつもアタルは叫ぶように話しかけてくる。
「スグルよ。今からお前にキン肉王家三つの心得を伝授する!!」
眼下にいるキン肉マン──スグルもこれを受けて承諾した。
その一、正義超人界の平和維持に近道はない!
穏やかな道とイバラの道の二通りの道があるとすればイバラの道を進め!!
強烈な頭突きの連続で割れたのだろう、額から血が噴出し、マスクの隙間から血を流しながらも続ける。
キン肉マンたち正義超人はその光景を目に焼き付けながら応えた。
その二、いかなる戦争においても自分のために戦うな!
人々のために戦え!!
ほどよい高さに達したのだろう、頭突きによる突き上げは終わり、フェニックスはアタルと交差したところでアタルの体を複雑に極めていく。
逆さになった相手の腕を掴み、両足で両脚を押さえつつ、二つに折り曲げるマッスル・リベンジャーのフィニッシュ・ホールド。
体を固められてもアタルの口上は止まらない。
その三、正義超人から友情を取り除くということは、この世から太陽を除くことと同じ…
そんな暗黒の世に超人界を絶対にしてはならぬ!!
アタルの頭頂部を下にして高速で落下、その落ちる先にあるのは鉄柱の頭。
「刮目せよ! キン肉アタルの死に様を──っ!!」
言い終えると同時に鉄柱の頭と激突、口から血を吐き、リングの外──何もない空中へと投げ出され、幾つもの悲鳴の声が上がる。
地上に向かって落ちていくアタル、ほんの短い時間ののちに──背中から床に叩きつけられた。
(´・ω・)にゃもし。
時間がかかったスマン。
結末はこの通りだが、途中の展開に悩んだ。