王位争奪戦で予言書を焼かれて消滅したマンモスマン。
彼がもう一度目覚めた時は王位争奪戦が始まる前だった。
ソルジャーマンと入れ替わる前のアタルと出会い、さらにマンモスマンを追ってプリズマンを伴った知性の神と遭遇、一戦を交じるが相手はあっさりと引いた。
知性の神に対抗する為にマンモスマンとアタルは手を組む…
日本の国立競技場。
今この場所にはキン肉星の新たな大王誕生の瞬間を一目見ようと大勢の人間で溢れ返っている。
その中には頭付きのマンモスの毛皮を纏った巨漢と、フードつきのコートで全身を隠した怪しい風体の二人組の超人が紛れ込んでいる……言わずもがな俺とアタルの二人だ。
俺たち二人は人目を避けるようにスタンドにある出入口のうちの一つに身を潜め、通路の中から覗き見するように事の成り行きを眺めている。
グラウンドの中央に設置された階段状のタラップ。
その最上部に、宝石のついた錫杖を手にしたキン肉マンが佇んでいる。
スタンドを埋め尽くす観客の見守る中、キン肉星大王の戴冠式、邪悪の神を含む105柱の超人の神による御披露目が始まった。
先ずは100柱の善良の神々が上空に顕現、キン肉マンに小言を言いながらも王冠を授けた。
次いで5人の邪悪の神が現れる。
先ほどの善良の神々と比べて明らかに違う存在感に観客が静まり返る。
その厳かな雰囲気の中、5人いる邪悪の神の一人、知性の神が王位継承の証として深紅のマントを与える、と口にしたが……キン肉マンに渡されたのは汚れのない純白のマント。
当然、キン肉マンたちは抗議の声を上げるが……知性の神たちはキン肉マンが生まれた後に起こった病院での火災事件を持ち出してきた。
『その際に別の赤子と取り違えられた可能性がある』――――と。
五つの落雷と共にマントを羽織った5人の超人が現れる。
一目見てキン肉族、それも超人だとわかる特徴を持っている。
『こやつらはその時に取り違えられた可能性のある候補者たち “ 運命の5王子 ” だ』
勝ち誇った顔で邪悪の神々たちは嘲笑った。
*** *** *** *** ***
「わざわざ、ご苦労なことだ。嫌がらせもここまでやるとかえって称賛したくなるな……ところでアタルよ~、お前が今出ていけば問題が解決するんじゃねェのか?」
顎でグラウンドを指して促してみるが…
「今さらキン肉王家の長男が出ていったところで場をさらに混乱させるのが関の山だ。最悪、偽者呼ばわりされて袋叩きにされる恐れがある。今は静観していた方がいいだろう」
「そういうもんか?」と相槌を打ち、再度グラウンドに目をやる。
フェニックスが大王を継ぐ者は強くならなければならないと主張、そのフェニックスにキン肉マンが突っ掛かるが、白熊の毛皮を纏った超人が間に割り込んで立ちはだかり、逆に弾き飛ばされる。
さらにフェニックスは団体戦を提案し、他の候補者たちも賛同する。
キン肉マンはロビンマスクとテリーマンに助けを求めるが、両者は中立の立場にあるためか助けには応じず、ただ傍観するのみ……その様子を見て落胆したキン肉マンは競技場を出ていき、そのあとをミートが追う。
「どうでもいいが、キン肉マン……お前の弟がやさぐれているんだが、放っておいていいのか?」
「ミートが付いていっているから大丈夫だと思うが、念のために跡を追うか…」
*** *** *** *** ***
競技場から出ていったキン肉マンはドブ川に架けられた橋の上で黄昏ていた。
「お前の弟、背中が煤けているぞ?」
「仲間からの助けがなかったのが、よほど堪えたみたいだな」
「タッグトーナメントで優勝した奴と同一人物とは思えない変わりぶりだな」
建物の陰から見ていると何を思ったのか顎に手をかけてマスクを脱がしにかかる。
――――すると、キン肉マンのマスクと素顔の隙間から強烈な光が川に向かって照射、黒く濁った川が透明感のある透き通った水と変化、その水の中を魚たちが泳ぐ。
「げげ~~~~~っ!? 腐ったドブ川がみるみるうちに魚が泳ぐ澄んだ川に!?」
「この光は王家の者だけが使える “ フェイス・フラッシュ ” の光! やはり、スグルはキン肉王家の血筋を引く者!」
驚く俺をよそにアタルが興奮を隠しきれない様子で語る。
「――だが、王家の印であるKINマークすらも偽造する邪悪の神たちがフェイス・フラッシュ対策を施さない筈がない」
昂った気持ちが落ち着いたのか、熱く語ってた姿から一転して冷静で的確な判断を下す。
「奴らのルールに則って勝ち上がるのが一番の近道なのかもしれん…」
ミートが説得したのか、キン肉マンは競技場へと戻っていく。
俺たち二人もそのあとを追った。
*** *** *** *** ***
俺とアタルが競技場に戻った時には既にキン肉マンと5人の王子たちの姿は何処にもなく…
「日本の各所にある城で戦うわけか、なかなか面白いことを考える」
アタルが感心して見ているのは王位争奪戦、それの対決方法が示された白い絨毯の上に赤い染料で描かれた日本列島。
その赤い日本列島の所々には5人の王子を示す5本の剣と、キン肉マンを表す1本の杖が突き刺さっていた。
アタルはそのうちの一本、名古屋城に突き刺さっているのを引き抜いて頭上に翳すと…
「私はこの剣を投げ放った者と入れ替わろう」
アタルが引き抜いたのは残虐の神が推すソルジャーが突き刺した物であり、フェニックスがビッグボディに勝ち上がった場合の次に戦う相手だ。
「私はソルジャーと入れ替わるタイミングを計るために奴に張りつく。お前はどうする? 私と同じチームに入るか?」
「いくら覆面をしていても俺と一緒にいれば勘づかれるし、正体がバレる可能性が高くなる。俺は決勝でぶつかるキン肉マンのところに行くぜ。俺が派手に騒いで目立てば、いい陽動にもなるだろうしな」
アタルが無言で頷いて納得すると「また、会おう」…そう言い残して俺の前から立ち去り、俺はキン肉マンが住居として使っているキン肉ハウスへと向かった。
*** *** *** *** ***
公園内に建てられているキン肉マンを模した掘っ立て小屋。
明かりがついているところから、中に住人がいることだろう。
「邪魔するぜ」
家主の了承を得ずに勝手に入り口のドアを開ける。
俺の姿を見たキン肉マンが「ゲーッ、象の超人!?」と驚くが気にせずに家の中へと入り込む。
どうやら出場メンバー表に名前を書くところだったようで筆を片手に動きを止めていた。
「お? 丁度いいや、筆を貸せ」
筆を奪われて呆気に取られていたキン肉マンたちをよそに、二人の目の前で先鋒に自分の名を書き込み、ついでに大将の場所にキン肉マンの名を記す。
「ぬわぁ~~~、キサマ何てことをしてくれたんじゃ~~~!?」
我に返ったキン肉マンが記入済みのメンバー表を両手に持って、小刻みに体を震わせる。
「あのハラボテ委員長は一枚しかくれなかったから書き直しができないんじゃぞ!?」
「王子! 問題はそこじゃありません! あなたも自分がいったい何をしたのか理解しているんですか!?」
口煩く喚く二人に対して…
「ロビンマスクとテリーマンは、それぞれの立場がある。ウォーズマンは前のタッグトーナメントで死んでいるから、この場にいないのはわかる」
俺は前々から疑問に思ってたことを話す。
先ほどまで騒いでたのが嘘のように黙って聞いている。
「――だが、なぜ他の奴に声をかけない? キン肉マン、テメェがそいつらに一声かけりゃ喜んで協力するだろうによ~」
その質問をキン肉マンにぶつけると、奴はこちらを見据えてから答えた。
「キン肉王家の御家騒動に仲間を巻き込ませたくないからだ」
偽善者の語る綺麗事みたいな回答に思わず「くだらねぇ」と悪態をつく。
無論、言われた当人はいい気分になる筈もなく顔を歪める。
「お前が俺を歓迎しないのは分かっている。だが、こっちは目的のために貴様らと組まないわけにはいかねェ。無理矢理にでもチームメイトに入らせてもらうぜ、キン肉マン?」
「目的を言わないうえに素性の知れない奴など信用できん。それに何もワシのところじゃなく、他の王子もおるだろうに…」
「メンバーが既に揃ってて、俺が入る余地がねぇんだよ。だから、ここに来たんだよ」
それでも首を縦に振らないキン肉マンに業を煮やし、問答無用に首根っこを掴んで外へ、そのまま建物の外に設置されているリングに放り投げる。
尻餅をついて涙目になっているキン肉マンが文句を言うが…
「ぐちぐち言うのは性に合わねェ。ここは超人らしく、試合で決めようぜ?」
(´・ω・)にゃもし。
アタル兄さんって、いつ入れ替わったんだろう……そう思いながら執筆。
マリポ戦の前にマンモスマンさんは軽い運動をして体をほぐすつもりです。
マンモスマンさんの代わりの白熊さん(?)はウォーズマン、超人閻魔とかいろいろ考えた結果ですねん。
ちょっと展開が強引かな? …と思ったが原作は本作品以上に強引なのを思い出し、気にしないことにした。
※前書きという名の前話のあらすじを付け加えた。