姫路城にて行われる試合。
先鋒、次鋒を打ち破るもテリーマンは負傷する。
中堅であるバイクマン相手にラーメンマンがリングに上った。
人型からバイク形態に体を変形させ、ラーメンマンに向かって突進を開始するバイクマン。
交差するすれ違いざまに前輪を使った打撃と、後輪を用いた蹴撃で一撃を与えては離脱する。
繰り返される一撃離脱の戦法に防戦を強いられるラーメンマンだったが…
ようやく反撃への糸口が見えたのか、構えを見せた。
リングを走るバイクマンを真正面で見据え
ぶつかるその直前、バイクに跨がるようにバイクマンの背に飛び乗った。
さらに背に乗ったまま《チョークスリーパー》で首を絞め
操縦不能に陥ったバイクマンがラーメンマンを乗せたまま金網に激突。
倒れ伏せたところをすかさずアゴを掴んで《キャメル・クラッチ》にかける。
体を後ろに反らしてバイクマンの胴体をゆっくりと二つに折り曲げていくラーメンマン。
その背後でタイヤが動き出す。
「気をつけろ! ラーメンマン! タイヤが独りでに動いておるぞ!」
キン肉マンが大声で警告を発する。
金網に激突した際に手放した二つのタイヤ。
その内の一つがラーメンマンの後方から頭部目掛けて飛んできた。
飛来するタイヤを躱すために体を横に捻るが…
そのせいでアゴにかけていた両手を外してしまう。
その隙を逃さずラーメンマンごと上体を起こして押し退け――――脱出、すかさず距離を取る。
試合開始前のように二人は向かい合って対峙し、戦闘を再開する。
「ラーメンマンがあの球形状の金網デスマッチを受け入れたときは心配していたが、あの様子からして金網に対する恐怖は克服したようじゃな」
リング上で戦うラーメンマンを心配するように見つめるキン肉マン。
直接この目で見たわけではないが、ラーメンマンは過去にウォーズマンと戦ったことがある。
その時に行われた『金網デスマッチ』でトラウマを残すほどの重傷を負ったと云う。
バイクマンが動き出す。
内側から金網の壁を引っ張ってモトクロス――競技用のバイクが使うジャンプ台を一つ作ると
バイクに変形して金網でできた鉄球の内部を縦横無尽に走り回り始める。
自分の周囲360度を黒い排気ガスを撒き散らしながら四方八方に駆け巡るバイクマン。
ラーメンマンはその姿を捉えるべく常に首と体を動かして注視する。
やがてリング内部を黒い煙が充満して覆い隠し、中にいる二人の姿が見えなくなった。
バイクマンが排出した排気ガスは煙幕の役目を果たしていたようだ。
静かになる観客席に対して、リングからはぶつかり合う音が幾度も響く。
暫くして音が止み、唐突に天井の金網を突け破って二つの影が躍り出た。
それはバイクマンを蹴り上げるラーメンマン。
さらに両足を持って肩に担ぎ上げ、空中で半回転して上下逆さまになり――――
〝
バイクマンの頭部を下にし、突き破ってできた穴を通ってキャンバスへと落下。
数瞬後、先ほどよりも大きな轟音が暗闇の中から鳴り、周囲は事の成り行きを静かに見守る。
何処からか流れてきた風が黒煙を払い退けると…
片膝を屈しながらも意識のあるラーメンマンと、リングに伏せたまま動かないバイクマン。
対比する両者の姿が現れた。
「勝者! ラーメンマン!」
ピクリとも動かないバイクマンを見て、レフェリーはラーメンマンの勝利を告げた。
*** *** *** *** ***
「しゃ…鯱が白鷺を銜える時…つ…強者、関の原につ…集う……」
重傷を負ったが、バイクマンは辛うじて生きていた。
敗れたバイクマンは件の予言を残して気を失う。
どんな意味を持っているのか、考えを巡らせるキン肉マンたち。
「鯱は金のシャチホコがある名古屋城のこと。姫路城は別名『白鷺城(ハクロジョウ)』と呼ばれている。そして強者とは、王位争奪戦に参戦している超人のことだろう…」
ラーメンマンが憶測を立てて説明する。
以前は名古屋城と姫路城が宙に浮かび、空中で合体して一つの城になるという展開だったが…
「だがラーメンマン。ここは『関の原』ではないぞ?」
疑問点を口にするキン肉マン。
既に候補者たちが集まっているせいなのか、城が合体することはなく、移動することもない。
「いや、それよりもキン肉マン。何故バイクマンが……一介の超人がキン肉王家の秘密を知っているのかが問題だぞ」
ロビンマスクに言われて気づく。
当の本人は気絶しており、返答を得られそうにない。
その疑問はバイクマンの代わりにモーターマンが答えた。
「俺とバイクマンは『宇宙超人タッグマッチ』に出場するために日本にやって来たことがある」
タッグマッチの出場枠は限られていた。
当然、参加の資格を得られなかった奴らも少なくない。
コイツらもその内の一組だったのだろう。
「俺たちが試合を見ていた時、フードを被った怪しい男に教えてもらったのさ『近々、日本で面白い団体戦が行われる』…ってな? その時ついでに予言も聞かされたんだよ。聞かされた時は意味が分からなかったが…」
フードを被った怪しい男。
どう考えても邪悪の神の一人だな。
ロビンマスクじゃないが一介の超人が王家の機密情報を盗む出せるとは思えんし…
ということは奴らはこの時から今回の王位争奪戦を考え、仕組んだのか?
「『チーム・キラーモータース』シングル戦ではラーメンマンお前一人に負けちまったが、タッグじゃ誰にも負けない自信と実力を持っているつもりだ。当然『2000万パワーズ』にもな?」
「勝負を望むならば…。このラーメンマン、バッファローマンをタッグに受けて立とう」
再戦の約束を交わすとバイクマンを肩に、去り際に言葉を残す。
「礼を言うぜラーメンマン。お前の〝 活人拳 〟のお陰で相棒を失わずに済んだ」
通路の奥へ消えていく二人、その後ろ姿を満足気に眺めると突然、体勢を崩し前方に倒れかかる。
隣に立っていたキン肉マンが慌てて受け止める。
ラーメンマンの体をよく観察すると身体中にタイヤの痕が刻まれており、先ほどの試合が如何に激闘かを物語っていた。
この状態では次の副将戦は困難だろう。
だが残す敵は副将と大将の二人のみ、それに対してこっちは3人であり、数の有利は覆せない。
「――ところでキン肉マンよ。勝負を一気に着けるためにこの後の試合をタッグマッチによる試合形式にしてみないか?」
ゼブラが史実通りに提案をしてきた。
無論、これは向こう側が有利になるだけでこちらはデメリットしかない。
奴は知った上でそう要求してきた。
「ほう、それは面白そうだな。対戦相手にチャンスを与えるのも大王の矜持とは思わないか? 少なくともこの俺はそこのビッグボディに戦う機会を与えてやったぞ?」
フェニックスがその提案に賛同、ビッグボディをアゴで差す。
ロビンマスクがタッグマッチを受け入れる必要はないと諭すが…
「ラーメンマンが『どんな試合でも逃げずに受けるのが自分の流儀』と答えて、挑戦を受けて立った。ここで私が恐いからと突っぱねたらカッコがつかないではないか?」
「このキン肉マンにカッコをつけさせてくれ…」そう真摯に語るキン肉マンにロビンマスクは折れた。
「大将であるキン肉マンは勿論だが、もう一人はどうするつもりだ? 俺達はどちらでも構わんぞ?」
事が上手く運んだのが愉しいのか、ほくそ笑みを浮かべるゼブラたち。
キン肉マンとロビンマスクの二人は技巧チームの二人に打ち勝っている。
「ロビンマスク、お前が出ろ」
俺が躊躇いなくそう言ったのが意外なのか「何故だ?」と問いただしてきた。
「俺はタッグによる経験はない。それに俺とキン肉マンでは上手く連携が取れるほど長い付き合いをしているとは言い難い。その点、お前たち二人なら話は別だろう?」
その説明で納得したのか一つ頷くと、キン肉マンはロビンマスクとのタッグを宣言、『ブルー・インパルス』を結成した。
もっともタッグはないと言っただけで3対3の試合形式の経験はあるが、この二人なら正史通りに勝利するだろう。
わざわざ危険を冒してまで過去を変える必要はない。
「待ってくれ、試合を行う前にアレを渡してくれないかマンモスマン」
マリポーサが俺の懐にしまってある『アノアロの杖』を指差す。
ああ、そうだったとロビンマスクに手渡す。
昔を思い出したのか、懐かしそうにそれを眺めていると…
「これを盗まれたせいで私は親父にこっぴどく叱られた」
杖を片手にマリポーサに近づき…
「お前を殴るのは試合後、勝利した後にするとしよう」
それまではおあずけだ。
それだけ言うとリングに上った。
ゴングが鳴らされ、キン肉マン・チームと技巧チームの終盤戦が始まる。
(´・ω・)にゃもし。
これが俺の精一杯だ。
空飛ぶ城なんて、どうやって納得のいく説明ができるんじゃい。
あ、あと書き方をこの作品の元となった短編「マンモスマン リベンジ」に似せてみたよ。
個人的にはこっちの方がしっくりくる部分があるね。
先日、日間ランキングにランク入りしてた。驚いたよ。
ここまで読んでくれて Thank You.