スグル版マッスル・スパークを完成させ、修得したキン肉マン。
しかし極度の疲労からか力尽き倒れてしまい、救急搬送する。
ニンジャと密会するマンモスマン。
その光景を見ていたラーメンマン。
主張をぶつけ合う両者。
そして…
一晩経って試合当日。
試合会場となる姫路城に向かう俺とキン肉マン、そこに新たにラーメンマンが加わった。
さらにその後ろにはマリポーサとビッグボディが俺たちの跡を追いかける。
道中でラーメンマンがバイクマンを襲撃していたことを思い出し…
「ところでラーメンマン。キン肉マンに恩のあるお前のことだ。技巧チームの一人に扮して連中に紛れ込もうとか考えてなかったか?」
「最初はそのつもりだったんだがな……お前の件のこともあって止めることにした」
「そうか……その方がいいだろう。下手すりゃ出場停止を食らってた可能性もあるしな…」
俺が起こした行動は幸か不幸か、思わない弊害を生んだようだ。
テリーマン、ロビンマスクの存在も気になるが、ウォーズマンもどうなることやら…
*** *** *** *** ***
リングを挟んで対峙するキン肉マン・チームと技巧チーム。
技巧チームのメンバーに変更はなく、順番も史実通りになっている。
試合前に行われる儀式――リングの中央で両チームの大将が出場する選手の名が記されたメンバー表を交換し合うと、技巧チームのゼブラが不機嫌な声音で問いかけてきた。
「おい、キン肉マン。何故ここにいない人物の名前が書かれているんだ?」
キン肉マンから手渡されたメンバー表を見て、ゼブラが片眉を吊り上げて、顔をしかめる。
無理もない、そのメンバー表には俺たち以外にも「テリーマン」「ロビンマスク」の名前が書かれているからだ。
両者共この試合会場には来ておらず、なおかつ重要な役職に就いている超人だ。
それ故…
「二人とも中立の立場に立つ超人ではないか!?」
「こんなものは無効だ!」…とリングの床に叩きつける。
無論、そんなことで動じるキン肉マンではない。
「まあ、落ち着きたまえゼブラ君。試合までに時間はある。それまでは待とうではないか? 来ないなら不戦勝扱いとして試合を進ませればよいし、来たら来たでその時に確認すればよい」
滾ぎるゼブラを宥めるのはハラボテ・マッスル。
「両者とも『正義超人軍参謀』『正義超人軍幕僚長』という立場にも関わらず……先日の試合以降に姿を眩ませたのでな、二人がこの場に来るならば、その件について言及しておきたいしのぅ…」
テリーマンとロビンマスクは王位継承の儀でそれぞれ任命されている。
その肩書きのためにキン肉マンに味方をすることができずに飛翔チーム戦の時には参加していない。
「キョ――――――――ッ! キョッキョキョキョキョキョ!!」
その独特の笑い声の正体は、この場にいる誰もが理解しただろう。
ラーメンマンも例に漏れず正体を察し、その声の出所を探り、観客席の一角でその巨体を見つけ、そいつの名をボソッと漏らす。
「プリズマンか…」
ラーメンマンに凝視され、その視線を受け止めると、口の両端を上げて、さらに笑い声を大きく張り上げる。
「光栄だぜ。過去に三大残虐超人の一人として『東洋の悪魔』と渾名され、恐れられていたアンタに覚えられるとはなァ?」
「残虐超人時代の己を思わせる戦いぶりを見せる相手だ。たとえ私じゃなくても興味が沸くというものだ」
「違いねぇなぁ~? 時間までまだあるんだ。折角だ、それまでお喋りして暇を潰さねぇか?」
「丁度よい。私もお前に聞きたいことがある」
ずかずかと無遠慮にラーメンマンに近づくプリズマン。
確認の意味を込めてか、リング上にいるハラボテに視線を向ける二人。
「キン肉マン・チームが全員揃うか、時間になったら大人しく観客席に戻ること……最低限これだけは守ってもらう。それができない場合は他の超人たちに頼んで力付くで追い出させてもらう。それでもよいならな?」
ハラボテは渋々ながらも許可を出す。
「会津若松城で見せたアレは私への当て付けか?」
強力チームと知性チームが行われた会津若松城。
プリズマンはペンチマンをキャメルクラッチで真っ二つにして惨殺している。
ラーメンマンはその事を述べている。
プリズマンは大げさに肩を竦めつつ首を振って否定を示し…
「とんでもない! 俺はむしろアンタを尊敬しているんだぜ?」
――残虐超人時代のアンタをな…?
本人を目の前にして、以前のアンタは強かったが正義超人に転身後は他人に甘くなり弱体化しただの……と身ぶり手振りを交えつつ自分に酔いしれているかのように語り始める。
そんな様子のプリズマンを無表情で静観しているラーメンマン。
正義超人に憧れる人間がいるように、残虐超人に敬意を表する奴がいても不思議ではない。
プリズマンもその口の一人になったのか…?
「理想を語るのは勝手だが……それを受け入れるかどうかは受け手次第だ。そして私はお前の戦いぶりを見て確信した」
〝 私の生きる道は『正義超人』! 私が目指す拳法は相手を活かす『活人拳』!〟
…胸に拳を当てて声高らかに宣言した。
「相手を殺す拳は相手だけじゃなく己の未来も閉ざし、逆に活かす拳法は相手の可能性を引き出す。キン肉マンこそがその切っ掛けを作ってくれた恩人だ」
キン肉マンに顔を向けて軽く頭を下げる。
キン肉マンの方も満更でもないという締まりのない表情で照れる。
それが不愉快で面白くないのか、プリズマンは不機嫌さを露程も隠さずに口元を歪ませて舌を打つ。
「
他にもあるんじゃないのか? …と問うと先程とは打って変わって嬉々として答える。
「俺には『知性チーム』を優勝に導く以外に『とある超人を抹殺する』…という目的がある」
王位争奪戦が始まる前、宇宙超人タッグトーナメントが終わった直後に、アタルと一緒にいるところをプリズマンから襲撃されたことがある。
奴のいう
「俺は俺が持っている〝 能力 〟 には絶大の自信を持っていた」
プリズマンが放つ『レインボー・シャワー』は、担架で運ばれていくゼブラを一瞬で白骨化させて死亡させる威力を持つ危険な技。
プリズマンの代名詞ともいえる技だ。
「だが先刻、俺の『レインボー・シャワー』に対抗した超人が現れた」
プリズマンがキン肉マンの『火事場のクソ力』をレインボー・シャワーで破壊しようとしたときに、アタルはフェイス・フラッシュで打ち消した。
「そいつが現れた後、俺さまはレインボー・シャワー以外にも、戦うための手段が必要と身をもって感じたのさ」
「それが私の『超人拳法』というわけか…」
「キョキョキョ。そういうことだぜ」
「だが解せぬ。超人拳法修得の道は苛酷なものだ。短期間で身に付けるような、やわなモノではない。それは超人拳法伝承者である私が一番知っている」
「確かに並の超人ならそうだろうぜ。だがこの俺なら……超人を抹殺するための超人として、超人神の一柱、あの御方の手によって
突然の暴露に会場内にいる人間、超人たちがざわつき始める。
無理もない、俺の知る限りでは超人神と関わりがある超人など、正義の神から「金のマスク」と「銀のマスク」を受け取ったキン肉星の王族ぐらいしか思い付かない。
「随分と面白そうな話をしているが、そこまでにしてもらおうか……」
「おいおい、これから楽しくなるってとこなのによ~。どこのどいつだァ? 水を差すバカは?」
背後から声をかけられ、後ろを振り向いた瞬間、体が固まるプリズマン。
そこにいたのは自分のチームの大将であるフェニックスとそのチームメンバー。
「お前がラーメンマンに対して並々ならぬ拘りを持っているのは知っているが……些か喋り過ぎだとは思わないか?」
フェニックスに言われて、なんともバツの悪そうな顔をする。
「まぁ、ラーメンマン。キサマが参戦してくれたお陰で退屈そうな王位争奪戦にやっと楽しみが増えたんだぜ。どこぞのチームは見てくれだけで、てんで話にならなかったしな?」
キョキョキョ…と笑いながら、観客席で悔しそうに拳を強く握りしめるビッグボディを見る。
「やれやれ……まだ試合が始まってもいないのに私たちのチームとそこにいる技巧チームにもう既に勝った気でいてもらっては困るな」
通路の奥から、五つの影がこちらに向かってくる。
いったい誰が漏らした呟きか「キン肉マン・ソルジャー…」五つの影の中心に立つ人物の名を明かす。
候補者の一人、しかし中身は本物とすり変わった元キン肉王族の長男であるキン肉アタル。
「バッファローマンに、アシュラマン…」
「ザ・ニンジャにブロッケンJr.もいるぞ」
「何で正義超人と悪魔超人が一緒にいるんだ?」
突然の来訪者たちに場内は一気にどよめく。
興奮が未だに冷めやらぬ中、アタルの朗々とした声が響き渡る。
「これが残虐チーム改め……」
〝 超人血盟軍のメンバーだ 〟
大将のアタルは堂々と、それに付き従うメンバーもどこか誇らしげにその場に立っていた。
久しぶりに会う友人たちとこんな形で再び会うとは思わなかっただろう、キン肉マンはバカみたいにあんぐりと口を開けて惚けていた。
「むっ、気持ちは分からんでもないが、惚けている場合じゃないぞキン肉マン。残虐チーム……いや、超人血盟軍以外にもここに来るのがいる」
何かを勘づいたラーメンマンがキン肉マンを揺さぶって正気にさせる。
ラーメンマンの言う通り、何者かが廊下を鳴らしながら近づいてくる。
距離が近づくにつれて徐々に露になっていき…
「ま…待たせたな。キン肉マン」
まさに疲労困憊といった状態の体に、片手で抱えるようにして持っているのは炎が灯ったランタン。
その傍らには騎士風の鎧を纏った超人ロビンマスク。
「おかえり、テリーマン…」
テリーマンとロビンマスクが会場に姿を現した。
(´・ω・)にゃもし。
一晩で半分以上書き上げた。
次はいよいよ試合ですが、その前にややこしいことを…
あと戦闘シーンは短めにしようと思ふ。