逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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王位争奪戦はフェニックスのための出来レースだと唱えるマリポーサ。
キン肉マンはマリポーサとビッグボディの協力を得て《マッスル・スパーク》の完成度を上げる。
そこにラーメンマンが現れた。
 
 


試合前日

 

 

 

 

時間に余裕があったことと元候補者であるマリポーサ、ビッグボディたちの協力、そして何よりもラーメンマンの存在が大きかったのだろう。

試合前日にキン肉マンは《スグル版マッスル・スパーク》をものにした。

少し考えすぎかもしれんが、正義超人たちはこれを見越してラーメンマンを送ったのだろうか…?

 

 

「やりましたね王子!」

 

 

「もはやキン肉マン・ゼブラなんぞ恐るるに足らずじゃ!」

 

 

よほど嬉しかったのか、リングの中央で手を取り合い満面の笑みでぐるぐる回るキン肉マンとミート。

その周囲には飛翔チームと強力チームの面々が片膝を屈しながらも満足気な表情を浮かべている。

人手が必要と感じたマリポーサとビッグボディが元チームメイトに懇願し、メンバーもまたその願いを聞き入れてここにやって来たのだ。

無論、先の試合で命を落とした奴はこの場にはいないが…

 

 

技の完成に安堵を漏らしたのも束の間、夜通しで特訓に勤しんだせいか……キン肉マンは糸が切れた人形のように派手な音を立ててキャンバスに倒れこみ、そのまま気を失った。

 

 

すぐさまラーメンマンが駆けつけて声をかけつつ体を軽く揺らすも反応は無し。

 

 

「体の一部ともいえる〝 火事場のクソ力 〟を失ったせいもあるかもしれないな。幸い試合まで一日ある。それまではキン肉マンを休ませておこう」

 

 

両手で抱き上げると、ミートとともに病院のある方角へと急ぎ足で駆けていく。

 

 

「俺は奴らの跡を追うが、お前たちはどうする?」

 

 

「俺とビッグボディは暫く休んでから向かうことにしよう。大人数で行っても迷惑をかけるだけだ」

 

 

「それもそうだな…」と、マリポーサとビッグボディたちをその場に残して俺は跡を追いかけた。

 

 

走りながらも頭の中を一抹の不安がよぎる。

このままキン肉マンをマリポーサに続いてゼブラと戦わせてもいいものか? ……と。

飛翔チーム戦以降、俺が予言書を燃やされ、消滅するまでの間にキン肉マンが戦った相手は?

まず真っ先に思い浮かぶのはこれから戦うであろう技巧チームのゼブラ、その次に知性チームのサタンクロス、その二人しか記憶にない。

その後にフェニックスとキン肉マンは突然、血を吐いて苦しみ出した。

フェニックスはどうか知らんが、キン肉マンは〝 火事場のクソ力 〟を失った状態で戦ったせいだろう。

前回と違って今回は1億パワーの超人二人と戦うことになり、体にかかる負担は前回の比ではない。

たとえゼブラに勝ったとしても、その戦闘が元で戦えない体になってしまえば意味がないのでは?

 

 

「いや、俺の目的は『キン肉マン スーパー・フェニックス』と、そいつに憑依している『知性の神』をこの手で倒すこと……」

 

 

俺がキン肉マンたちと一緒にいるのは、その方が目的を完遂するのに都合がいいと判断したからだ。

キン肉マンとその仲間の安否など二の次。

決勝戦のいずれかでフェニックスと戦えればそれでいい。

 

 

「――――如何にキン肉マンとはいえ、力を抜き取られた状態での特訓は堪えるようだな」

 

 

俺の横で並走しながら声をかけるのは、西ドイツに行ったハズのニンジャ。

こいつ(ザ・ニンジャ)がここにいるということは、アタルはメンバーを集め終えたということか…?

 

 

「人払いも兼ねてお主らを見張っていた。アタル殿の依頼でな?」

 

 

ああ見えても肉親には甘いらしい。

これから起こりうるであろう未来を考えると……なんとも不運な男といえよう。

 

 

「それと明日の試合前に『残虐チーム』のメンバーが御披露目される。楽しみにしているといい」

 

 

こちらが返事を返す前に人混みの中へと入っていき、人の波に飲み込まれるようにして消えていく。

その後も走り続けること数分、目的地に到着していた。

 

 

「あの姿形、出で立ちは悪魔六騎士の一人『ザ・ニンジャ』で間違いないな、マンモスマン?」

 

 

病院へと続く門扉の前にてラーメンマンが立ちはだかり、普段から閉じているのか開いているのか分からないその右目を僅かに開けて問いただした。

 

 

「覗き見とは趣味が悪いなラーメンマン? この俺を探っていたのか?」

 

 

「熊本城で行われた飛翔チームとの団体戦。メンバーの欠けたキン肉マン・チーム。そこに世間では名を知られていない強豪超人が力を貸す。随分と都合の良い展開とは思わないか?」

 

 

「たまたまだろ? それよりもキン肉マンはどうした? ちゃんと運んだんだろうな?」

 

 

「無問題だ。ベッドの上でグースカと豪快なイビキを掻きながら寝ている。それよりも私としてはニンジャ……悪魔超人との関係性を聞きたいんだが…」

 

 

この問題は避けられそうにないな……と思っていたのも束の間。

 

 

「残念ながらキン肉マンとミートから王位争奪戦の決着が着くまで、その話題に触れないようにと頼まれている」

 

 

キン肉マンは兎も角、あのミートからもというのは意外といえば意外だ。

真っ先に正体を探ろうと第三者に依頼という形で頼み込む可能性もあると思っていたが…

 

 

「お前が何のためにキン肉マンに近づきメンバー入りしたのか、はたまた目的は何なのかは、いまいち不明だが……お前のチーム残留がキン肉マンの望みなら、私はそれに従わざるを得ないといえよう」

 

 

後ろを振り向き、こちらに背を向けると…

 

 

「かつて悪魔超人だったバッファローマンが正義超人に転身したように、或いは完璧(パーフェクト)超人以外の超人を駆逐しようとしたネプチューンマンの考え方を改めさせたように、そして残虐超人として名を馳せていた私の生き方を変えたように、お前がキン肉マンと関わることで変わっていく可能性も無きにしも(あら)ずだ」

 

 

言いたいことを全て言って満足したのか、そのまま病院の敷地内へと入っていく。

一瞬見えた奴の横顔は明らかに笑っていた。

知性チームみたいな人を小馬鹿にしたような笑みではない。

正義超人たちが仲間内でするような、あの笑みだ。

 

 

「いいか、これだけは言っておくぞ? 俺とお前たちの関係はお互いの目的を達成するために利用する、されるの関係しかない。それ以上でも、それ以下でもない。俺は超人破壊士(デストロイヤー)のマンモスマンで、お前たちは正義超人だ。俺は俺で、お前たちは、お前たちだ。そこに違いはない!」

 

 

何とも形容し難い不快な感情に、早足でラーメンマンに近づき一気に捲し立てる。

 

 

「私は一向に構わない。お前がいずこかの勢力の一人、もしくはどこにも属さない者であろうとな? キン肉マンがお前を信じてチームメンバーに入れたように、私もまたキン肉マンを信じている。ただ、それだけだ」

 

 

それからは終始無言のまま進み、エントランスホールの入り口に差し掛かった頃に、こちらに腕を大きく振るキン肉マンの姿を目にした。

 

 

「あれだけ騒いでおいて、もう動けるのかよ。人騒がせな野郎だな。あのアホヅラを殴るか…」

 

 

「いや待てマンモスマン。お前がやるとただではすまないから」

 

 

「本気で言ったわけじゃねぇよ。軽く小突く程度だ」

 

 

「試合前はマズイ。せめて試合後にしてくれないか?」

 

 

何かを勘づいたのか傍目からでも分かるほどにビクッと体を震わせるキン肉マン。

やがてマリポーサとビッグボディたちとも合流し、静かだった病院が少しだけ賑やかになる。

 

 

「明日は試合だってのに暢気な連中だ」

 

 

俺はその光景を離れたところから眺めていた。

長い間、氷の中で一人で過ごしていた俺としては、ここに自分がいることに違和感を感じ、煩わしいとも感じる。

 

 

 

 

「俺に友情も、正義も似合わないな…」

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

特に理由はないが、週一投稿を心掛けているが…
ペースが遅くなっている。ヤバいね。

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