逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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会津若松城で行われた《強力チーム》と《知性チーム》の試合。
圧倒的な力を見せつける《知性チーム》のプリズマン。
ギブアップをするビッグボディに容赦のない技を仕掛けるポーラマンとフェニックス。
ビッグボディを救うためにキン肉マン、マリポーサ、ネプチューンは技の下敷きになった。
 
 


敗北の後

 

  

 

 

キン肉マン、ネプチューン、マリポーサの三人が受け止めたとはいえ、超人三名、おおよそにして300kgは下らない体積の物が高速で落ちてきたのだ、その上技の掛け手の一人であるフェニックスの超人強度は超人神と同じく1億パワー。

その破壊力は推して知るべし、だ。

火事場のクソ力を失ったキン肉マン、復活したとはいえ人狼煙でバラバラになっていたネプチューン、脱落したが元候補者の一人であるマリポーサとて無事には済まされず、すぐさま担架が持ち込まれ三人と一人、ビッグボディらを上に乗せて運んでいく。

 

 

「コイツはいい。俺たち技巧チームと戦う前に、敵を、それも迷うことなくギブアップするような軟弱者を助けてケガするなんざなァ?」

 

 

「ハハハ」…と運ばれていくキン肉マンを見て高笑いを上げるゼブラ。

 

 

「おっと、その前にコイツから血液を頂かねェ――となァ~~?」

 

 

四人を運んでいく途中、ビッグボディを乗せた担架に立ちはだかるプリズマン。

鋭利な三角錐でできた腕を振り上げると……ビッグボディの腕に目掛けて一気に振り下ろす。

 

 

「血液を採取するだけなら病院で採ればいい。何も血生臭いことをする必要はあるまい」

 

 

プリズマンの腕がビッグボディの腕に落ちる寸前、真横からキン肉マン・ソルジャーが片手で刃を掴んで止めていた。

正確にはソルジャーマンと入れ替わった後のアタル。

 

 

「キョ――――ッ、キョキョキョキョ! この図体がデカイだけしか取り柄のねぇ負け犬だけじゃなく、今ここでテメェの血液を搾り取ってもいいんだぜェ?」

 

 

掴まれた腕を振りほどいて、その切っ先をアタルに向ける。

 

 

「血液云々よりもテメェらがルールを守らなかったせいで、うちの大将がケガしたんだ。それについてどう弁解するんだ?」

 

 

プリズマンを含む知性チームに対し、声に凄みを利かせて睨み付ける。

 

 

「あのツープラントン技は一度かけたら脱け出すことは不可能。……とまでは言わんが途中で解除することが難しい技でな……。それでも死なないようには手加減はしたぞ? もっともあの三人は何を勘違いしたのか、体を張って受け止めたがな」

 

 

「不可抗力ってやつさ、キョキョキョ」

 

 

顔をにやけさせながら宣うフェニックスとプリズマン。

さっきから無言で何を考えているのか分からない無表情のポーラマン。

連中と向かい合って対峙している俺とアタル。

我関せずと事の成り行きを観察しているゼブラたち。

 

 

「試合は既に終わっている。我々、超人委員会はこのあとの片付けをせねばならんし、次の試合の準備もせにゃあならんのだ。用もないのにいつまでもここに居てもらっちゃ困る」

 

 

今にも爆発しかねない一触即発の空気に、場違いな呑気な声が流れてきた。

委員長の肩書きとキン肉族と似たような風貌を持つハラボテ・マッスル。

 

 

「この王位争奪戦はキン肉星の大王を決める大事な戦い。それはここにいる全員は理解しておるな?」

 

 

何を当たり前なこと言っているんだコイツは? 

口にこそ出していないが他の連中も同じことを思ったのだろう、訝しげに委員長を黙視する。

その中でアタルだけは無表情をしていたが…

 

 

「だが、この王位争奪戦に勝ち残ったとしても大王になれない可能性がある」

 

 

手でアゴを擦りながらそう語る。

 

 

「どういうことだ!? 大王を決める戦いがこの王位争奪戦ではないか!?」

 

 

ゼブラが委員長に食って掛かり、フェニックスがその訳を話す。

 

 

「キン肉星の大王は105人の超人の神から認められなければならない。俺たちは5人いる邪悪の神から推されてはいるが……他の100人の神々からの承諾は得ていない」

 

 

「それともう一つ、超人委員会からの賛同も必要だ。君たちは邪悪の神から推薦されてこの『キン肉星王位争奪サバイバル・マッチ』に参加しているものの……105人の超人の神と、ワシがいる超人委員会。その二つから承諾を得ていないし、得られなければならん。だがその前に君たちはすぐにでも身につける必要のあるものがある。それは――――」

 

 

勿体ぶるように暫し間を置いてから委員長は口にした。

 

 

「大王としての品格だ」

 

 

多少の自覚はあるのだろう、言われて言葉に詰まる候補者たちとそのチームメイト、中には露骨に舌打ちするのもいる。

 

 

「無論、それが一朝一夕で身につけるものではないのは重々承知だが、不格好でも大王らしい姿を見せた方が、天上の神々には受けがいいじゃろ?」

 

 

「さあ、出てった出てった」両手を叩いて促す委員長に、渋々と従う一同。

 

 

「今まで散々キン肉マンに嫌がらせしてきた奴が一体どういう風の吹き回しだ?」

 

 

「このワシかて()が私怨で動くべきじゃないことぐらい分かる。それにここで働かなきゃ何処ぞの超人たちに仕切られそうだしな」

 

 

…と、アゴで運ばれていくネプチューンと観客席にいる完璧(パーフェクト)超人たちを指す。

 

 

「お前さんたちのデカイ図体は後片付けするスタッフの邪魔になるんじゃ。悪いけど、はよう出ていってくれ」

 

 

後ろから背中を押される形で会場を追い出され、城を後にした。

 

 

 

 

  ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

城を追い出され、負傷した超人たちが搬送された病院に向かう途中、超人委員会のスタッフに変装しているニンジャと出くわした。

 

 

「アタル殿はメンバーのスカウトのために西ドイツに渡った」

 

 

短く簡潔にそう伝える。

ついでに俺がいない間にフェニックスたちと揉め事があったことも聞かされたが…

どちらにしろ、これでアタルが率いる「超人血盟軍」は結成される。

そして超人予言書の消失によるアタル消失の未来。

超人予言書についてどうするべきか思案してるとニンジャが気になることを話した。

 

 

「正義超人たちが動き出している。その中には〝 アイドル超人 〟も含まれておる」

 

 

アイドル超人――――キン肉マンを中心とした正義超人の一派、ともいうべきグループ。

 

 

「ようやく連中が重い腰を上げたってことか…」

 

 

「うむ。いずれはキン肉マン・チームの下に駆けつけることだろう」

 

 

試合は三日後に行われる。

俺の知っている知識では……先鋒の試合途中にウォーズマンがリングの下から現れ、ラーメンマンはバイクマンに化けていた。

技巧チームが了承したからいいもの、本来ならどっちもルールとしては不適切なものだ。

 

 

「ではそれがしはアタル殿が待つ西ドイツに向かわなければならぬ故、御免!」

 

 

忍者がやるような印を片手で結ぶと、体が蜃気楼のようにブレて……掻き消えた。

 

 

「そういや、ニンジャはサタンクロスに殺されるんだよなァ」

 

 

サタンクロスの大技で胸を裂かれて死んだニンジャ。

しかし今回は前回と違ってブラックホールと知り合えた。

ニンジャに頼み込んで試合当日にブラックホールに来てもらえば……奴の能力で瞬時に病院に送ることができ……一命を取り留める可能性が生まれる。

次に会うときに頼んでみるか…?

 

 

 

 

  ***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

受付にいるナースからキン肉マンたちがいる病室を聞き出し、そこへ行くと予想外の人物がいた。

病室を入って扉の近くに…

 

 

「よお」

 

 

強力チームの一人、レオパルドンが弱々しく声をかけてきた。

 

 

「お前、生きていたのか…」

 

 

プリズマンに心臓を突かれて死んだと思っていたが、よほどの強運の持ち主らしい。

もっとも胸を刺された以外、目立った外傷はないから、見た目ほど酷いケガを負ったというわけではないのかもしれない。

さすがに他の二人……胴体を真っ二つにされたペンチマンと、首を捻じ切られたゴーレムマンは当然だがこの場にいない。

 

 

「奥にキン肉マンたちがいる」

 

 

それだけを言うとベッドに横たわり無言になる。

かける言葉が見つからず「ああ」と適当に返事を返して奥に向かうと……

 

 

背中から「ちきしょう…」という悔しそうな言葉が聞こえてきた。

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

レオパルドンは正史でも生きていたらしいです。
試合について残した言葉が「ノーコメント」だそうです。
強力チームが弱いわけじゃないんだが、相手が悪すぎた。
 
 

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